30秒でわかる、この記事の要点
- 「純度99%」は測り方で変わります。同じ検体を2つの測定法で測ると、数字は最大5.2ポイントずれました。
- 純度が同じでも、中身は別物です。純度97%台の2検体で、検出された不純物の種類は3種と7種に分かれました。
- 体内で働かないα体は、数字に現れません。化学合成ではβ-NMN(体内でNAD⁺の材料になる物質)と分子式が同じα体が混じり得るため、製法と「β-NMNとして」の含量表示を確認する必要があります。
以下、この3点を「純度99%」の3つの盲点として順に見ていきます。図1・図2の数値は、当社が入手した4検体の実測データによるものです。
同じ検体でも、測り方を変えると純度は最大5.2ポイントずれる
「純度99%」は、どの装置で測ったかとセットでしか読めない
結論から述べます。測定法の記載がない「純度99%」は、比較の物差しになりません。同じ検体でも、測り方によって数字が変わるからです。
NMNの純度測定には、主に2つの方法が使われます。LC-UV法(高速液体クロマトグラフィー・紫外検出。紫外線の吸収で成分を測る方法)と、NMR法(核磁気共鳴。磁場を使って分子の構造を調べる方法)です。
この2つは、見ているものが違います。たとえるなら、LC-UV法は暗い倉庫を1本の懐中電灯で照らすような測り方です。紫外線という「光」に反応する成分は見えますが、塩・溶媒・水分のように紫外部で吸収を示さない成分は、そこにあっても照らし出されません。一方のNMR法は、倉庫全体を棚卸しするように、水素を持つ成分を広く拾います。
実際に同じ4検体を両方の方法で測ると、次のようになりました。
検体Aは、どちらで測っても99%前後で一致します。ところが検体Bは、LC-UV法で97.2%、NMR法では92.0%。5.2ポイントの差があります。検体Cも3.9ポイント違います。
直感的なポイント
この差は、測定の誤差ではありません。懐中電灯(LC-UV法)では見えていなかった成分が、棚卸し(NMR法)では見えているということです。2つの数字の差が大きい検体ほど、紫外部に吸収を持たない「何か」を多く含んでいる可能性があります。
したがって「純度99%」どうしを比べるときは、まずそれがどの方法による数字なのかを確認してください。測定法が違う数字は、そもそも同じ土俵に乗っていません。
純度の差が0.3ポイントでも、不純物の種類は2倍以上違う
純度は「残りの数%が何か」を語らない
2つ目の盲点はこうです。純度は「NMN以外が何パーセントあるか」しか示しません。その数パーセントの中身が何であるかは、まったく別の情報です。
同じ4検体について、LC-UV法で検出された不純物の種類数を並べます。
検体Bの純度は97.2%で不純物は3種類、検体Dは97.5%で7種類。純度の差は0.3ポイントしかありませんが、検出された不純物の種類は2倍以上違います。純度だけを並べると、この2つは「ほぼ同等の原料」に見えてしまいます。
直感的なポイント
純度が近い2つの原料は「同等品」ではなく、中身の分からない残り数%を、それぞれ別に抱えた2つです。純度の数字そのものよりも、残りの数%として何が・いくつ検出されたかを確認してください。
体内で働かないα体は、純度にも不純物リストにも現れない
不純物の出どころは、製法でほぼ決まる
3つ目の盲点を見分ける手がかりは、製法にあります。不純物の中身は、作り方で決まるからです。NMNの製造方法は大きく3つに分かれます。
| 項目 | 完全合成法 | 酵母発酵法 | 生物酵素触媒法 |
|---|---|---|---|
| 作り方 | 化学反応で組み立てる | 酵母に作らせる | 酵素反応で変換する |
| 立体の作り分け | α体が混じりうる | β体のみ | β体のみ |
| 想定される不純物 | 反応試薬・溶媒の残留、α体 | 培養に由来する成分 | 基質・酵素に由来する成分 |
| 確認したい点 | 残留溶媒、β体としての含量 | 培養由来成分の除去工程 | 未反応の基質の残留 |
どの製法が優れているかを示すものではありません。製法ごとに想定される不純物の種類が違うため、確認すべき点も変わります。
ここで、純度の数字にも不純物の一覧にも現れない違いが出てきます。表の「立体の作り分け」の行にある「α体」です。
右手と左手の話 — 分子にも「利き手」がある
α体を理解する近道は、自分の両手です。右手と左手は、鏡に映せば同じかたちに見えます。でも、重ねようとしても重なりません。右手用の手袋に、左手は入りません。
分子にも同じことが起こります。原子の種類も数も、つなぎ方もまったく同じなのに、立体の組み立て方だけが違う——そういう分子どうしが存在し、立体異性体と呼ばれます。鏡に映した関係にあるものが鏡像異性体、一部の立体だけが違うものがジアステレオマーです。
そして体の中の酵素は、この違いを厳密に見分けます。手袋と同じで、かたちが合わなければ働きません。
「β-NMN」の β が指しているもの
製品名や規格に書かれている「β-NMN」の β は、まさにこの「立体のかたち」を指す記号です。NMNには β体 と α体 があり、その関係は、リボースの1か所だけ立体が違うアノマー(糖の1か所だけ立体が違う関係)にあたります。
生体内でつくられ、NAD(細胞のエネルギー代謝に関わる補酵素)に変換されていくのは β体 です。α体は自然界には存在せず、化学合成の過程でβ体と一緒にできるもので、NADに変換される経路には乗りません。査読論文でも「生理活性を持たないα-NMN」として扱われています。
完全合成法は、この立体を作り分けることが難しく、α体が混じります。酵素反応や発酵を使う製法は立体特異的なので、β体だけが得られます。
直感的なポイント
α体はβ体と分子式が同じです。そのため、分子式で並べた不純物の一覧には、別の成分として出てきません。「NMNとして99%」と書かれていても、そのうちどれだけがβ体なのかは別の情報です。見分ける手がかりは、製法と「β-NMNとして」の含量表示の2つになります。
資料で確認したい3つの点
ここまでの3つの盲点は、供給元へのそのまま使える3つの質問に置き換えられます。原料を比較検討されるときは、この順でお尋ねください。
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純度は、どの測定法によるものか
LC-UV法だけの数字なら、紫外部に吸収を持たない成分は反映されていません。測定法の記載がない純度は、他社の数字と並べても比較になりません。
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純度以外に、何を測っているか
水分、残留溶媒、重金属、エンドトキシン(細菌に由来する発熱性物質)など、試験項目の数と内容が実質的な情報量です。純度の数字は「残りの数%が何か」を語らないためです。
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製法は何か。規格は「β-NMNとして」の含量で書かれているか
α体が混じり得るかどうかは、ここで分かります。酵素反応や発酵を使う製法は立体特異的で、β体だけが得られます。
当社の β-NMN は、純度試験に加えて含有水分量・重金属4項目・エンドトキシンの試験結果を製品ページに掲載しています。製法や測定条件についてのご質問はお問い合わせから承ります。
このデータについて
図1・図2は、当社が入手した4検体の分析データに基づく当社調べです。市販されているNMN原料全体の傾向を示すものではなく、特定の4検体の結果です。検体名・製造国は記載していません。
掲載の意図は、個々の検体の優劣ではなく、「測定法によって純度の数字が変わる」「純度が近くても不純物の種類数は違う」という2つの関係を示すことにあります。原料を比較される際の確認の観点としてお使いください。
よくあるご質問
「純度99%以上」と書かれていれば十分ですか。
その数字だけでは判断できません。どの測定法で測ったかによって数字が変わりますし、純度は「NMN以外が何パーセントか」しか示さないため、残りが何であるかは別の情報になります。測定法と、水分・重金属・エンドトキシンなど純度以外の試験項目を合わせて確認してください。
LC-UV法とNMR法では、どちらの数字が正しいのですか。
どちらが正しいということはなく、見えるものが違います。LC-UV法は紫外部に吸収を持つ成分しか検出できず、NMR法は水素を持つ成分を広く拾います。2つの数字の差が大きい検体は、紫外部に吸収を持たない成分が含まれている可能性があります。
α体が混じっているかどうかは、どうすれば分かりますか。
α体はβ体と分子式が同じため、分子式で並べた不純物の一覧には別の成分として現れません。製法を確認するのが実務的です。酵素反応や発酵による製法は立体特異的でβ体だけが得られます。また、規格が「NMNとして」ではなく「β-NMNとして」の含量で書かれているかも確認してください。
本記事は原料の分析方法と製造方法について説明したものです。当社のβ-NMNは研究用試薬として供給しており、摂取による特定の効果を示すものではありません。