30秒でわかる、この記事の要点
- 冷凍庫がなくても在庫を持てます。フリーズドライ製剤の保管条件は暗所常温(40℃以下)で、猛暑日に空調のない室内でも実測34.5℃だからです。
- 常温でよいのは「保管」だけです。輸送中の温度は当社側で管理するため、配送は年間を通じて冷蔵クール便(2〜8℃)に統一しています。
- 剤形は設備と使用頻度で選びます。冷凍設備のない施設はフリーズドライ、−20℃冷凍庫があり使用頻度の高い施設は液体凍結が向きます。
1. 「40℃以下」は、どれくらい余裕のある条件か
結論から述べると、空調のある室内でこの上限を超えることは、まず起こりません。当社のフリーズドライ製剤は暗所常温(40℃まで)で保管でき、液体凍結製剤は冷凍保存(−20℃以下)が必要です。
「40℃」という数字だけを見ても、厳しい条件なのか緩い条件なのかは分かりません。そこで、この2つの保管条件を、実際に測られている温度と同じ軸の上に並べてみます。
日本気象協会の観測では、猛暑日に暑さ対策をしない室内の温度は、14時時点で 34.5℃ でした[1]。冷房を切った真夏の部屋という不利な条件でも、40℃には届きません。空調の入る室内や保管庫であれば、これをさらに下回ります。
一方、JAFのユーザーテストでは、外気温35℃で窓を閉め切った車内は 57℃ に達しています[2]。40℃という線を超えるのは、こうした閉め切られた空間です。
つまり「40℃以下」は、通常の施設内の保管においてはほとんど制約になりません。避けるべきなのは、窓際・暖房機器の近く・締め切った物置や車内といった、限られた場所です。
直感的なポイント
40℃という上限は、冷房を切った真夏の室内(34.5℃)よりさらに高い位置に引かれています。日常の室内でこの線を超えることはまず無く、超えるのは真夏の車内のような「蒸し風呂」状態の閉鎖空間だけです。
2. 「常温配送」ではなく「常温管理」 — 配送と保管は別の話
ここで、よく混同される点を先に整理します。常温でよいのは到着後の保管であって、配送ではありません。当社のフリーズドライ製品は、冷蔵クール便(2〜8℃)でお届けしています。
フリーズドライ製品は、それ自体としては常温配送も可能です。しかし輸送中に40℃を超える環境が生じる可能性があり、その温度を当社が管理することはできません。品質を確実に担保するため、2026年4月7日より、年間を通じて冷蔵クール便に統一しました(製品保管環境に関するご案内)。
常温で長く保存できる食品でも、真夏の宅配ではクール便を選ぶことがあります。発想は同じで、環境を選べない輸送中だけは、当社の側で温度を固定するということです。
到着後は、40℃以下であれば常温で保管いただけます。「冷蔵で届いたのだから、冷蔵設備が必要な製品だ」と受け取る必要はありません。
3. 在庫運用として何が変わるか
要点は、フリーズドライなら保管棚だけで在庫を持てることです。2つの剤形(製品の形状)の条件を、在庫を持つ側の視点で並べます。
| 項目 | フリーズドライ | 液体凍結 |
|---|---|---|
| 保管温度 | 暗所常温(40℃まで) | 冷凍保存(−20℃以下) |
| 必要な設備 | 保管棚 | −20℃冷凍庫 |
| 有効期限 | 製造から2年 | 製造から1年 |
| 推奨使用期間 | ラベル記載の使用期限内 | 納品後6ヶ月以内 |
| 配送 | 冷蔵クール便(年間を通じて) | 保冷剤で冷凍発送 |
| 適した施設 | 冷凍設備を持たない施設、長期在庫を前提とする施設 | −20℃冷凍庫があり、使用頻度が高い施設 |
容量はいずれも 1mL / バイアル。品質基準は両剤形とも同一です。本製品は防腐剤を使用していないため、無菌環境下でお取り扱いいただき、開封後はできるだけ速やかにご使用ください。
冷凍庫が要らない、ということの意味
冷凍庫を1台置くと、設備そのもの以外にいくつかの管理が付いてきます。設置場所と電源、庫内温度の記録、そして故障や停電が起きたときに在庫が一度に失われるリスクです。
言い換えると、冷凍庫は在庫を「ひとつのカゴ」に集める装置でもあります。カゴが壊れれば、中の在庫は同時に危険にさらされます。
フリーズドライ製剤は保管棚に置けます。停電しても、室温が40℃を超えなければ影響しません。冷凍設備を持たない施設でも導入でき、複数の拠点へ分けて置くことも容易になります。
直感的なポイント
有効期限にも差があります。フリーズドライは製造から2年、液体凍結は製造から1年(納品後6ヶ月以内の使用を推奨)。使用ペースがゆっくりな施設ほど、フリーズドライの長い期限が在庫の廃棄リスクを下げます。
4. それでも冷蔵・冷凍を推奨する場合
結論として、より低い温度で保管できる環境があるなら、それに越したことはありません。常温で保管できることと、常温が最適であることは別だからです。当社は次の場合に、冷蔵(2〜8℃)または冷凍(−20℃以下)での保管を推奨しています。
- 保管環境の温度が40℃を超える可能性がある場合
- より長期にわたる品質の安定を重視される場合
常温保管の価値は、冷凍設備がなくても導入できることにあります。設備をお持ちの施設が、あえて常温に切り替える必要はありません。
5. どちらの剤形を選ぶか — 設備と使用頻度で決める
結論はシンプルです。設備と使用頻度で決まります。
フリーズドライが向くケース。冷凍設備を持たない施設、使用頻度がそれほど高くない施設、複数の拠点に分けて置きたい場合です。使用前に、1mLにつき1mL程度の純水または生理食塩水を加えて溶解する手順が入ります。
液体凍結が向くケース。−20℃冷凍庫があり、使用頻度が高い施設です。凍結保護剤(凍結時の損傷を防ぐ添加物)を使わず、室温で5分程度で解凍できます。ただし、含まれるタンパク質成分は凍結状態でも徐々に変性する可能性があるため、納品後6ヶ月以内でのご使用を推奨しています。
詳しい仕様は製品ページに掲載しています。導入の可否は保管設備の有無で決まることが多いため、ご不明な場合はご相談ください。
フリーズドライ(凍結乾燥)という工程そのものの原理はフリーズドライ(凍結乾燥)とはに、剤形ごとの価格の読み方は培養上清液の「1mL〇〇円」はなぜ比較指標にならないのかにまとめています。
よくあるご質問
常温保管できるのに、なぜ冷蔵クール便で届くのですか。
保管条件と配送方法は別に決めているためです。フリーズドライ製品は常温配送も可能ですが、輸送中に40℃を超える環境が生じる可能性があり、その温度を当社が管理できません。2026年4月7日より、年間を通じて冷蔵クール便に統一しています。到着後は40℃以下であれば常温で保管いただけます。
施設内のどこに置けばよいですか。
40℃以下の暗所であれば、通常の保管棚で問題ありません。避けていただきたいのは、窓際、暖房機器の近く、締め切った物置や車内です。空調の入る室内であれば、真夏でも40℃に達することはまずありません。
出典
- [1] 日本気象協会による室内温度の観測。猛暑日に暑さ対策をしない室内の温度は、14時時点で34.5℃と報告されています(図1に注記)。
- [2] JAF(日本自動車連盟)によるユーザーテスト(車内温度の検証)。外気温35℃・窓を閉め切った条件で、車内温度は57℃に達しています(図1に注記)。
本記事は製品の保管条件と在庫運用について説明したものです。当社の幹細胞セクレトームは研究用試薬として供給しており、特定の疾患に対する効果を示すものではありません。
有効期限は製造日を起点とします。納品時点で製造から経過した分だけ、お手元での残存期間は短くなります。実際にお使いいただける期限は、バイアルのラベル記載をご確認ください。一定以上の残存期間が必要な場合は、ご発注時にお申し付けください。