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幹細胞培養上清液は1mL単価で比べると損をする理由
見るべきは1本の価格ではなく濃さと中身

見積もりの「1mLあたり」が安い製品には、理由が2つ考えられます。ひとつは水で薄めていること。液量は薄めれば増えるので、中身が1つも増えなくても1mLあたりの金額は下がります。もうひとつは必要な検査を省いていること。ロットごとの試験をせず、ロット別の品質成績書(COA)を付けなければ、そのぶん安く売れます。どちらも「安い理由」であって「お得な理由」ではありません。この記事では、その2つをどう見分けるかを図で説明します。当社の製品を選ぶかどうかとは関係なく使える形にしています。

30秒でわかる、この記事の要点

  • 薄めれば、1mLあたりの金額は下がる。原液を水で2倍に割れば液量は2倍になり、1mLあたりの価格は半額になります。中身は1つも増えていないのにです。
  • 必要な検査を省けば、金額は下げられる。ロットごとの無菌試験やマイコプラズマ検査をせず、ロット別の品質成績書(COA)を付けなければ、そのぶん安くなります。
  • フリーズドライにしても、粉の量では中身の量が分かりません。飛んでいくのは水だけで、残る固形分の大半は培地由来の塩と糖だからです。
  • 見るべきは、1本の価格ではなく濃さと中身。COAに載っている実測の総タンパク濃度で確かめられます。
罠 01

「1mLいくら」は、中身の価値ではなく「水の量」を測っている

薄めるほど、安く見える

培養上清液の見積もりは、多くの場合「1cc(=1mL)あたりいくら」と書かれています。どれも同じ書き方なので、そのまま並べて安い順に選べそうに見えます。ここが最大の罠です。

液量は、薄めれば増えます。原液を水で2倍に割れば液量は2倍になり、「1mLあたりの価格」は半分になります。中身の成分は1つも増えていません。それでも薄い製品ほど「1mL単価が安いお得な製品」に見えてしまうのです。

水を足すと成分は増えないのに1mLあたりの価格は半額になる 左は原液のバイアルです。液量は1mL、価格は1本10,000円で、中身の成分を表す青い粒が12個入っています。ここに水を足したものが右のバイアルで、液面は2倍の2mLまで上がりますが、粒は同じ12個のまま薄く広がっているだけです。価格も1本10,000円のまま変わりません。その結果、1mLあたりの価格は10,000円から5,000円へと半額になります。成分の数は12個から12個で変わっていません。 原液に水を足しただけ。成分は1つも増えていない 青い粒は成分のたとえ 1mL 水を足す 2mL 原液 1本 10,000円 水を足したもの 1本 10,000円のまま 1mLあたりの価格 10,000円 水を足したあと 5,000円半額 成分の数 12個 → 12個 変わっていない 水を足すと成分は増えないのに1mLあたりの価格は半額になる 上は原液のバイアルです。液量は1mL、価格は1本10,000円で、中身の成分を表す青い粒が12個入っています。水を足したものが下のバイアルで、液面は2倍の2mLまで上がりますが、粒は同じ12個のまま薄く広がっているだけです。価格も1本10,000円のまま変わりません。その結果、1mLあたりの価格は10,000円から5,000円へと半額になります。成分の数は12個で同じです。 原液に水を足しただけ。 成分は1つも増えていない 青い粒は成分のたとえ 原液 1mL 1本 10,000円 成分 12個 水を足す 水を足して 2mL 1本 10,000円のまま 成分 12個(同じ) 1mLあたりの価格 10,000円→5,000円 半額になる 成分の数は同じ(12 → 12)
図1:原液に水を足しても、中の成分(粒)は12個のまま増えません。それでも液量が2倍になるぶん、「1mLあたりの価格」は10,000円から5,000円へ半額になります。

下の3本は、いずれも液量1mL・同じ価格です。違うのは、その1mLに成分がどれだけ入っているかだけです。

同じ1mLでも中身の量が違うため、必要な本数が変わる 3本のバイアルはいずれも液量1mLで液面の高さは同じ、価格も同じです。しかし含まれる総タンパク量が違い、原液のままのものは1.0mg、2倍に濃縮したものは2.0mg、5倍に希釈したものは0.2mgです。総タンパク2.0mgを用意しようとすると、必要な本数はそれぞれ2本、1本、10本になります。1本の値段が同じなら、かかる費用も2倍、1倍、10倍です。 どれも 液量 1mL・同じ価格。違うのは中に入っている量。 1mL 原液のまま 総タンパク 1.0mg 2倍に濃縮 総タンパク 2.0mg 5倍に希釈 総タンパク 0.2mg 同じ成分量(総タンパク 2.0mg)を用意するのに、必要な本数は 2本 1本 10本 1本の値段が同じなら、かかる費用も 2倍・1倍・10倍。数字は説明のための例。
図2:液面の高さ(=液量)は3本とも同じで、価格も同じ。それでも中身の量は10倍ひらきます。同じ成分量を用意しようとすると、右の製品は真ん中の10倍の本数が要ります。

右の製品は「1mLあたり」で見れば他と同額です。ところが同じだけの成分を用意しようとすると、真ん中の製品なら1本で済むところに10本要ります。1本の値段が同じですから、かかる費用は10倍になります。

なぜ、こんなことが起きるのか — 表示のルールが無い

培養上清液は薬機法の承認を受けた医薬品ではありません(再生医療の第1種・第2種・第3種とはで扱った法の対象からも外れます)。そのため、濃度や濃縮倍率の表示方法を定めた公的な基準がありません。

厚生労働省が令和6年(2024年)7月31日に出した2本の事務連絡も、この点には触れていません。医政局研究開発政策課の「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」は、薬事承認を得た医薬品が存在しないことの周知と安全な実施の依頼です。医薬局監視指導・麻薬対策課の「エクソソーム試薬に係る監視指導について」は、医薬品のような効能効果をうたう(標ぼうする)製品を無承認無許可医薬品として指導するよう、都道府県等に求めたものです(指導・取締りの根拠は薬機法であって、事務連絡そのものではありません)。該当する製品の類型が6つ挙げられています。いずれも扱っているのは効能効果の標ぼうであって、含有量や濃度の表示方法ではありません(両文書に「濃度」「含有量」「表示」の語は出てきません)。

業界側の基準としては、一般社団法人日本臨床培養上清研究会の「幹細胞培養上清安全性基準」があります。ただし、審査項目は細胞提供者・感染症・培養工程・保存輸送・情報開示の5領域です。濃度・濃縮倍率・含有量に関する項目は置かれていません。

濃度の項目が無いことは、同会が公表している認定製品一覧の書き方にも表れています。「容器形状/内容量」の欄には、「クライオチューブ1ml/1バイアル1cc」「クライオバイアル/2ml」「Ampoule/1Kit(Vial 1: 20mg / Vial 2: 5ml)」「凍結乾燥」といった表記が並びます。単位が mL と cc と mg で混在し、「凍結乾燥」とだけ書かれて量の記載が無い行もあります。同一覧に濃度・濃縮倍率・総タンパク量の欄はありません。業界の認定を受けた製品でさえ、分母が揃っていないのが現状です(2026年9月4日確認)。

したがって、「5倍濃縮」という表示を見ても、何を基準にした5倍なのかは分かりません。回収した上清液そのものを基準にしているのか、培養に使った培地量なのか、その会社の標準品なのかで意味が変わります。供給元に聞くべきは倍率ではなく、実測の総タンパク濃度(mg/mL)です(液1mLに含まれるタンパク質の重さ)。

認定製品一覧の内容量欄に並ぶ、4通りの表記 業界団体の認定製品一覧の「容器形状/内容量」欄には、クライオチューブ1ml/1バイアル1cc、クライオバイアル/2ml、Ampoule/1Kit(Vial 1: 20mg / Vial 2: 5ml)、凍結乾燥、という4通りの表記が並んでいます。何を単位にしているかは順に、mL、mL、mgとmLが混在、そして凍結乾燥の行には量の記載がありません。この一覧に濃度・濃縮倍率・総タンパク量の欄はありません。 認定製品一覧の「容器形状/内容量」欄に、実際に並んでいる表記 表記(そのまま) 何を単位にしているか クライオチューブ1ml/1バイアル1cc mL クライオバイアル/2ml mL Ampoule/1Kit(Vial 1: 20mg / Vial 2: 5ml) mg と mL が混在 凍結乾燥 量の記載が無い 濃度・濃縮倍率・総タンパク量の欄は無い 認定製品一覧の内容量欄に並ぶ、4通りの表記 業界団体の認定製品一覧の「容器形状/内容量」欄には、クライオチューブ1ml/1バイアル1cc、クライオバイアル/2ml、Ampoule/1Kit(Vial 1: 20mg / Vial 2: 5ml)、凍結乾燥、という4通りの表記が並んでいます。何を単位にしているかは順に、mL、mL、mgとmLが混在、そして凍結乾燥の行には量の記載がありません。この一覧に濃度・濃縮倍率・総タンパク量の欄はありません。 業界団体の認定製品一覧 「容器形状/内容量」欄に 実際に並んでいる表記 クライオチューブ1ml/1バイアル1cc 単位:mL クライオバイアル/2ml 単位:mL Ampoule/1Kit (Vial 1: 20mg / Vial 2: 5ml) 単位:mg と mL が混在 凍結乾燥 量の記載が無い 濃度・濃縮倍率・総タンパク量の欄は無い
図3:業界団体の認定を受けた製品一覧でさえ、内容量の書き方(分母)が揃っていません。mLとmgが混在し、量の記載が無い行もあります。濃度・濃縮倍率・総タンパク量の欄はありません。
罠 02

「フリーズドライなら安心」とは限らない — 薄い液を乾かせば、粉も薄い

フリーズドライは、もとの液体を乾燥させたもの

「液体の単価が当てにならないなら、粉末状のフリーズドライ品を選べば確実だろう」と思われるかもしれません。ここにも注意が要ります。

フリーズドライ(凍結乾燥)は魔法の製法ではありません。もとの液体から、水分だけを飛ばして乾燥させたものです。飛んでいくのは水だけで、それ以外は何も足されず、何も濃くなりません。詳しい原理はフリーズドライ(凍結乾燥)とはにまとめています。

ここから、ひとつの帰結が出てきます。もとの液体の濃度が薄ければ、フリーズドライされた製品に入っている有効成分も、その分だけ少なくなります。劣悪なまでに薄められた製品を乾燥させれば、水が飛んだ容器の底にはほとんど何も残っていないということすら起こり得ます。

粉にしても、中身は濃くなりません。すべては、乾燥させる前の液体の濃度で決まります。

同じ1mL表示のフリーズドライでも1本に入っている総タンパクの量が違う 3本のフリーズドライのバイアルは、いずれもラベルの表示が1mLで同じです。しかし乾燥前の液をどれだけ薄めていたかによって、1本に入っている総タンパクの量が変わります。原液のまま乾燥したものを1とすると、3倍に薄めて乾燥したものは3分の1、10倍に薄めて乾燥したものは10分の1です。1mLで戻したあとの1本あたり総タンパクは、それぞれ1.00mg、0.33mg、0.10mgです。ラベルの1mLは液量の表示であって、中身の量を表していません。 どれもラベルは「1mL」。違うのは、中に入っている総タンパクの量。 1mL 原液のまま乾燥 中身が最も多い 1mL 3倍に薄めて乾燥 中身は3分の1 1mL 10倍に薄めて乾燥 中身は10分の1 1mLで戻したあとの、1本あたり総タンパク 1.00mg 0.33mg 0.10mg ラベルの「1mL」は液量の表示であって、中身の量ではない。数字は説明のための例。
図4:ラベルはどれも「1mL」。乾燥前の液を薄めていれば、1本に入っている中身はその分だけ少なくなります。バイアルの絵は中身の量を模式的に表したものです。

フリーズドライ品のラベルにある「1mL」は、たいてい乾燥前の液量か、戻すときの液量です。バイアルに入っている中身の量ではありません。前の節でふれた認定製品一覧にも、内容量欄が「凍結乾燥」とだけで量の記載が無い行がありました。

だから、もとの液体が濃いかどうかがすべてになる

逆に言えば、もとの液体が濃い製品は、乾燥させてもバイアルにしっかりと中身が残ります。フリーズドライという工程は、もとの液体の濃さをそのまま持ち越すからです。

当社の幹細胞セクレトームは、回収した上清液を希釈せずに製剤化しています。もとの液体が濃いまま乾燥させているため、フリーズドライにしてもバイアルには相応の量の有効成分が残ります。1本あたりの量は、ロット別のCOAに実測の総タンパク濃度として記載し、製品に同梱しています。

ひとつだけ補足します。粉の見た目だけで量を判断することはできません。バイアルに残る固形分の大半は、培地由来の塩・糖・緩衝剤です。さらに、中身の少ない液ほど賦形剤(かたまりの形を作るために加えるマンニトール、トレハロース等)を足すため、粉が多く見えることと中身が多いことは結びつきません。目で見て分かるのは「底に何も入っていない製品を外す」ところまでです。量そのものはCOAの総タンパク濃度で確かめてください。フリーズドライ品を検討されるときは、賦形剤の添加の有無もあわせてご確認ください。

フリーズドライ品のバイアルに残る固形分の内訳 フリーズドライ品のバイアルに残る固形分を、横一本の帯で三つの区画に分けて示しています。左から順に、細胞が出した成分、培地由来の塩・糖・緩衝剤、加えられることがある賦形剤(マンニトール、トレハロース等)です。細胞が出した成分の区画がいちばん小さく、いちばん大きいのは培地由来の塩・糖・緩衝剤です。区画の大きさは模式的なもので、実際の割合を表したものではありません。目視でできるのは底に何も入っていない製品を外すところまでで、量はCOAの総タンパク濃度で確かめます。 バイアルに残る固形分フリーズドライ品の粉 粉の大半は、細胞が出した成分ではない 培地由来の塩・糖・緩衝剤 賦形剤(加える場合) マンニトール、トレハロース等 細胞が出した成分 目視でできるのは「底に何も入っていない製品を外す」ところまで。 量は COA の総タンパク濃度で確かめる。 フリーズドライ品のバイアルに残る固形分の内訳 フリーズドライ品のバイアルに残る固形分を、縦一本の帯で三つの区画に分けて示しています。上から順に、細胞が出した成分、培地由来の塩・糖・緩衝剤、加えられることがある賦形剤(マンニトール、トレハロース等)です。細胞が出した成分の区画がいちばん小さく、いちばん大きいのは培地由来の塩・糖・緩衝剤です。区画の大きさは模式的なもので、実際の割合を表したものではありません。目視でできるのは底に何も入っていない製品を外すところまでで、量はCOAの総タンパク濃度で確かめます。 バイアルに残る固形分 粉の大半は、細胞が出した成分ではない 細胞が出した成分 培地由来の塩・糖・緩衝剤 賦形剤(加える場合) マンニトール、トレハロース等 目視でできるのは「底に何も入っていない 製品を外す」ところまで。 量は COA の総タンパク濃度で確かめる。
図5:フリーズドライ品の粉に残る固形分の内訳。細胞が出した成分の区画がいちばん小さく、大半は培地由来の塩・糖・緩衝剤です。これに、かたまりの形を作るために加えられることがある賦形剤が続きます。区画の大きさは模式的なもので、実際の割合を表したものではありません。

もうひとつ、何mLで戻すかを決めるのは使う側

同じ1本でも、純水1mLで戻せば1mLの濃い液に、5mLで戻せば5mLの薄い液になります。中身は1本分のままですが、5mLで戻せば「1mLあたりの値段」は5分の1になります。

フリーズドライ品は戻す液量で1mLあたりの価格が変わる 同じフリーズドライ1本を純水1mLで戻すと、液量1mLで濃度は5倍になり、1mLあたりの価格は1本の値段と同じになります。同じ1本を純水5mLで戻すと、液量5mLで濃度は1倍になり、1mLあたりの価格は1本の値段の5分の1になります。粒で示した中身の量はどちらも15個で変わりません。フリーズドライ品はミリリットルではなく本(バイアル)単位で比べる必要があります。 同じ1本。何mLで戻すかは使う側が決める(原料の上清液 5mL 分を乾燥した例) フリーズドライ 1本 純水を 1mL 加えて戻す 純水を 5mL 加えて戻す 液量 1mL 濃度 5倍 粒は15個で同じ 液量 5mL 濃度 1倍 1mL あたりの価格 = 1本の値段 1mL あたりの価格 = 1本の値段 ÷ 5 中身は1つも変わっていないのに、「1mLいくら」は5倍動く。 フリーズドライ品は本(バイアル)で比べる。
図6:同じ1本から、1mLの濃い液も5mLの薄い液も作れます。中身(粒)の数は変わりません。それでも「1mLあたりの価格」は5倍動きます。

ですからフリーズドライ品を mL 単価で比べることはできません。並べるのは1本あたりの価格で、そのうえで1本に何mgの総タンパクが入っているかをCOAで確かめます。戻したあとの液量が製品の仕様として決まっている製品どうしなら、mL で比べても構いません。

罠 03

もうひとつの安さの理由は、必要な検査を省いていること

検査を省けば、そのぶん安くなる

価格を安くできる理由は、水で薄めることだけではありません。もうひとつが、ロットごとの検査を省くことです。

ロットごとに無菌試験やマイコプラズマ検査を行い、その結果をロット別の品質成績書(COA)として添えれば、そのぶん試験の費用がかかります。逆に、製品共通の代表値だけで出荷すれば、ロットごとの試験費用はかかりません。そのぶん安く売れます。これは企業努力というより、安全確認にかけていない分の安さです。

これは良し悪しの話ではなく、何を買っているかの話です。同じ成分量あたりの費用が同じ2製品があったとして、片方にロット別の試験報告書が付くなら、その2つは同じものではありません。どの試験で何を確かめるのかは培養上清液の安全性試験にまとめています。

解

正しい比べ方 — 1mL単価ではなく、濃さを確かめてから総額で見る

3つの手順で、総額に直して比べる

  1. 見積書と一緒に、ロット別の品質成績書(COA)を請求する

    COA(Certificate of Analysis/品質成績書)は、そのロットを実際に試験した結果です。製品共通のカタログ値しか返ってこないのか、ロット別のものが出てくるのかは、請求してみれば分かります。ロットごとに試験をしていなければ、ロット別のCOAは出てきません。

  2. COA の「実測の総タンパク濃度(mg/mL)」を確認する

    ここで見るのは「N倍濃縮」という倍率ではなく、実測の数値です。薄めた製品ほど、この値は小さくなります。この濃度に1本の液量(mL)を掛ければ、1本に入っている総タンパク量(mg)が分かります。

  3. 必要な本数を出して、総額に直す

    必要な総タンパク量に届くまで何本いるかを数え、1本の価格を掛けます。比べるのはこの総額です。フリーズドライと液体のように剤形が違って揃えられないときは、1mL単価ではなく1本あたりの価格で並べてください。それだけでも、薄めた製品が安く見えることはなくなります。

同じ成分量を用意するのにかかる総額を出すまでの3手順 比べるのは1本の価格ではなく、同じ成分量を用意するのにかかる総額です。そこへ至る手順は3つあります。手順1は、見積書と一緒にロット別の品質成績書COAを請求すること。製品共通のカタログ値ではなく、ロット別に出るかどうかがここで分かります。手順2は、COAに書かれた実測の総タンパク濃度をmg/mLで見ること。N倍濃縮という倍率の表示ではなく、実測値です。手順3は、必要な本数に1本の価格を掛けて総額に直すこと。並べるのは、この総額です。 並べるのは1本の価格ではなく、同じ成分量を用意するのにかかる総額。 1 COA を請求する ロット別に出るか どうかが分かる 2 総タンパク濃度 実測の値(mg/mL) 倍率ではない 3 必要な本数 × 1本の価格 = 総額 並べるのは、この金額 同じ成分量を用意するのにかかる総額を出すまでの3手順 比べるのは1本の価格ではなく、同じ成分量を用意するのにかかる総額です。そこへ至る手順は3つあります。手順1は、見積書と一緒にロット別の品質成績書COAを請求すること。製品共通のカタログ値ではなく、ロット別に出るかどうかがここで分かります。手順2は、COAに書かれた実測の総タンパク濃度をmg/mLで見ること。N倍濃縮という倍率の表示ではなく、実測値です。手順3は、必要な本数に1本の価格を掛けて総額に直すこと。並べるのは、この総額です。 並べるのは1本の価格ではなく、 同じ成分量を用意するのにかかる総額。 1 COA を請求する ロット別に出るかどうかが、 ここで分かる 2 総タンパク濃度 実測の値(mg/mL)を見る 倍率ではない 3 必要な本数 × 1本の価格 = 総額 並べるのは、この金額
図7:比べるべき数字は、1本の価格ではなく「同じ成分量を用意するのにかかる総額」です。見積書と一緒にロット別のCOAを請求し、実測の総タンパク濃度(mg/mL)を確かめ、必要な本数を出して総額に直します。

総タンパクだけでは分からないこと

ここまで総タンパク濃度を分母に据えてきました。実務で最も揃えやすく、COAに載る量的な数値がそれしかないことも多いからです。ただし限界もあります。

  • 血清やアルブミンを使っている製品では、総タンパクの数字が中身を表しません。数字の大半をウシ血清アルブミンなどが占めてしまい、細胞が出した成分の量が分からなくなります。培地設計はゼノフリー・血清フリー・プロテインフリーで扱っています。
  • 量が多くても、成分が働くとは限りません。成分が壊れて働かなくなっていても、総タンパクの測定値は同じです。
  • 粒子数と併せて見るのが本来の形です。日本再生医療学会のガイダンス[出典2]は、細胞外小胞の定量性を示す指標として粒子数とタンパク量が頻用されるとしたうえで、「これらに相関関係があることが望ましい」と述べています。粒子数とタンパク量のどちらか一方しか書かれていない資料は、その意味で判断の材料が足りません。粒子数の読み方はエクソソームの「〇〇兆個」は本当に信用できる?にまとめています。

それでも、大きく薄めてある製品を見つけるには総タンパクで十分です。まずCOAの総タンパク濃度で必要な本数と費用を出し、次に血清を使っているかどうかと粒子数を確かめる、という順序でご確認ください。

総タンパクが同じでも中身の内訳はまったく違う 2本の帯で、総タンパクの内訳を比べています。上は無血清・プロテインフリーの培地で作った製品で、帯のほぼ全部が細胞が出した成分です。下は血清やアルブミンを使う培地で作った製品で、帯の大半がウシ血清アルブミン等の培地由来のタンパクで占められ、細胞が出した成分は左端のごく一部しかありません。それでも総タンパク濃度は、どちらも同じ値になりうるものです。 総タンパクが同じでも、中身はまったく違う 無血清・プロテインフリーの培地 細胞が出した成分 血清・アルブミンを使う培地 ウシ血清アルブミン等、培地由来のタンパク 細胞が出した成分はここだけ 総タンパク濃度は どちらも同じ値に なりうる 総タンパクが同じでも中身の内訳はまったく違う 2本の帯で、総タンパクの内訳を比べています。上は無血清・プロテインフリーの培地で作った製品で、帯のほぼ全部が細胞が出した成分です。下は血清やアルブミンを使う培地で作った製品で、帯の大半がウシ血清アルブミン等の培地由来のタンパクで占められ、細胞が出した成分は左端のごく一部しかありません。それでも総タンパク濃度は、どちらも同じ値になりうるものです。 総タンパクが同じでも、 中身はまったく違う 無血清・プロテインフリーの培地 細胞が出した成分 血清・アルブミンを使う培地 ウシ血清アルブミン等、 培地由来のタンパク 細胞が出した成分はここだけ 総タンパク濃度は どちらも同じ値になりうる
図8:血清やアルブミンを使っている製品では、総タンパクの数字が中身を表しません。同じ総タンパク濃度でも、細胞が出した成分の量はまったく違います。

1本1万円の製品が、1本5万円の製品より高くつく

言い換えると、こうなります。

1本1万円の製品でも、成分が薄くて10本必要なら、総額は10万円です。
1本5万円の製品でも、成分が濃くて1本で済むなら、総額は5万円です。

同じ見積書でも、どの数字で並べるかによって順位が入れ替わります。

同じ見積書を、分母を変えて並べ替えると順位が変わる(数字は説明のための例)
並べる数字A社
原液・1mL
B社
2倍濃縮・1mL
C社
5倍希釈・1mL
1本の価格10,000円10,000円10,000円
総タンパク(1本)1.0mg2.0mg0.2mg
1mLあたりの価格10,000円 同率1位10,000円 同率1位10,000円 同率1位
総タンパク2.0mgに
必要な本数
2本1本10本
そのときの費用20,000円 2位10,000円 1位100,000円 3位

1mLあたりの価格で見るかぎり、3社は同額です。同じ成分量に必要な本数で見ると、10倍の差が出ます。

1mL単価では同額でも、同じ成分量をそろえる総額は大きく開く 上下2段の棒グラフです。上段は1mLあたりの価格で、原液・1mLのA社、2倍濃縮・1mLのB社、5倍希釈・1mLのC社はいずれも10,000円、棒の長さも同じで同率1位です。下段は総タンパク2.0mgを用意する費用で、棒の1目盛りが1本(10,000円)にあたります。A社は2本で20,000円、B社は1本で10,000円、C社は10本で100,000円となり、C社の棒だけが飛び抜けて長くなります。上下で目盛りは異なり、上は1mLあたりの価格、下は総額です。数字は説明のための例です。 1mLあたりの価格 見積書に並ぶ数字 A社 原液・1mL 10,000円 B社 2倍濃縮・1mL 10,000円 C社 5倍希釈・1mL 10,000円 同率1位 総タンパク 2.0mg を用意する費用 棒の1目盛り=1本(10,000円) A社 必要 2本 20,000円 B社 必要 1本 10,000円 C社 必要 10本 100,000円 上下で目盛りが違う(上=1mLあたりの価格、下=総額)。数字は説明のための例。 1mL単価では同額でも、同じ成分量をそろえる総額は大きく開く 縦に2段の棒グラフです。上段は1mLあたりの価格で、原液・1mLのA社、2倍濃縮・1mLのB社、5倍希釈・1mLのC社はいずれも10,000円、棒の長さも同じで同率1位です。下段は総タンパク2.0mgを用意する費用で、棒の1目盛りが1本(10,000円)にあたります。A社は2本で20,000円、B社は1本で10,000円、C社は10本で100,000円となり、C社の棒だけが飛び抜けて長くなります。上下で目盛りは異なり、上は1mLあたりの価格、下は総額です。数字は説明のための例です。 1mLあたりの価格 見積書に並ぶ数字 A社 原液・1mL 10,000円 B社 2倍濃縮・1mL 10,000円 C社 5倍希釈・1mL 10,000円 同率1位 総タンパク 2.0mg を用意する費用 棒の1目盛り=1本(10,000円) A社 必要 2本 20,000円 B社 必要 1本 10,000円 C社 必要 10本 100,000円 上下で目盛りが違う。上=1mLあたり、 下=総額。数字は説明のための例。
図9:1mL単価では3社とも10,000円で並ぶ。しかし同じ総タンパク量(2.0mg)をそろえる総額は、10,000円から100,000円まで開く。

最後に、金額と中身を並べて見る

安く見える製品を選ぶ前に、必要な成分量をそろえるのにいくらかかるかと、その価格に安全性試験の書類が含まれているかを、並べてご確認ください。

結局、並べるのはこの2つ

① 同じ成分量を用意するのにかかる費用 ② その費用にロットごとの試験と書類が含まれているか

①だけで選ぶと、ロットごとの試験をしていない製品が安く見えます。②だけで選ぶと、必要以上に払うことになります。二つを並べて、はじめて比べられます。

供給元に投げる6つの質問

そのまま送れる形にしました。すべて書面で答えられる内容です。

  1. 1本に入っている総タンパク量は何mgですか。ロット別のCOAをいただけますか。 濃度(mg/mL)と液量(mL)の両方が分かれば、こちらで分母を揃えられます。ロットごとに出るかどうかも同時に分かります。
  2. 「N倍濃縮」と表示されている場合、何を基準にした何倍ですか。 基準が回収した上清液なのか、培地量なのか、自社標準品なのかで意味が変わります。公的な表示基準がないため、各社に聞くほかありません。
  3. フリーズドライの場合、何mLで戻す前提の価格ですか。 何mLで戻すかを使う側が決める製品では、1mLあたりの金額は決まりません。1本あたりの価格で比べてください。
  4. フリーズドライの場合、ラベルの「1mL」は乾燥前の液量ですか、戻すときの液量ですか。1本あたりの乾燥固形分量と、賦形剤の添加の有無も教えてください。 同じ表示でも、乾燥後に残る量は製品ごとに違います。賦形剤を加えていれば固形分は増えるので、目視だけでは判断できません。
  5. ロットごとに無菌試験・マイコプラズマ否定試験・エンドトキシン測定を行っていますか。その費用は見積価格に含まれていますか。 ロットごとの試験をせず、製品共通の代表値だけで出荷すれば、そのぶん価格は下がります。試験報告書が付く製品と付かない製品は、同じ金額でも同じものではありません。
  6. 最小発注本数・送料・支払条件を教えてください。 1本が安くても、最小発注本数が多ければ、1回に支払う金額は大きくなります。1か月あたりにかかる金額で見るために必要な数字です。

当社の分母

比べていただくために、当社側の分母を先に開示します。

幹細胞セクレトームの、価格比較に必要な仕様
項目内容
1本の容量1mL/バイアル(フリーズドライ・液体凍結とも共通)
フリーズドライの戻し方1mLにつき1mL程度の純水または生理食塩水を添加。戻したあとの液量が仕様として決まっているため、mLでも比較できます
希釈していません。回収した上清液を薄めずに製剤化しています
乾燥固形分粉の量では中身の量は判断できません。1本に入っている量は、ロット別COAの総タンパク濃度でご確認ください
総タンパク濃度ロット別のCOAに記載し、製品に同梱
最小発注本数10本から
ロットごとの試験無菌試験・マイコプラズマ検査・エンドトキシン測定(0.1 EU/mL未満)を全ロットで実施
価格会員ページで開示(会員申請のうえご確認いただけます)

価格そのものは会員ページでの開示としていますが、上の表は会員登録なしで確認いただけます。他社製品と並べるために足りない数字があれば、お問い合わせからご請求ください。

濃さを確かめたら、次に見るのは中身の作られ方です。何をどこまで確認すればよいかは供給元に確認すべき6項目に、培地設計の違いはゼノフリー・血清フリー・プロテインフリーにまとめています。

よくあるご質問

結局、何を分母にすれば比べられますか。

「同じ成分量を用意するのにかかる費用」です。COAに載っている実測の総タンパク濃度から、1本にどれだけ入っているかが分かります。必要な量に足りる本数を数えて1本の価格を掛ければ、その製品の総額が出ます。総タンパク濃度はロット別のCOAに記載されるのが一般的なので、見積書とあわせてCOAの写しを請求してください。剤形が違って比べにくい場合は、1本あたりの価格で並べるのが次善です。

「5倍濃縮」と書いてあれば5倍濃いのですか。

その表示だけでは分かりません。何を基準にした5倍なのか(回収した上清液そのものか、培養に使った培地量か、自社の標準品か)で意味が変わります。培養上清液は薬機法の承認を受けた医薬品ではないため、濃縮倍率の表示方法を定めた公的な基準がありません。倍率ではなく、実測の総タンパク濃度をmg/mLで聞いてください。

フリーズドライ品と液体凍結品は同じ土俵で比べられますか。

1mLあたりでは比べられません。フリーズドライ品は何mLで戻すかを使う側が決めるため、液量が製品の仕様として決まっていません。1本あたりの価格と、1本に入っている総タンパク量で並べてください。戻したあとの液量が仕様として決まっている製品であれば、mLでも比較できます。

フリーズドライのバイアルの底に、ほとんど何も見えません。不良品ですか。

不良とは限りません。乾燥前の液が薄ければ、残る固形分は少なくなります。ただし逆は成り立たず、粉がしっかり見えるからといって中身が多いとは限りません。固形分の大半は培地由来の塩と糖で、賦形剤が加えられていることもあるためです。ラベルの「1mL」が乾燥前の液量か戻すときの液量かを確認したうえで、1本あたりの総タンパク量をCOAで確かめてください。

固形分が多く見えるほど良い製品ですか。

そうとは限りません。培養上清液の乾燥固形分には、培地由来の塩と糖が含まれます。培養に使うDMEM(高グルコース)の公表組成を足し上げると、無機塩だけで約10.9 g/L、グルコースとアミノ酸を含めると約17.1 g/L になります。さらに凍結乾燥では、固形分の少ない液ほど賦形剤を加えてかたまりの形を作るのが通常の製剤設計です。目視で分かるのは「そもそも中身があるかどうか」までで、量そのものはCOAの総タンパク濃度で確かめてください。

安いほうを選べばよいのではないですか。

1本の価格が安くても、薄ければ必要本数が増えて総額は上がります。また価格差の理由が希釈ではなく、ロットごとの試験をしていないことにある場合もあります。同じ成分量を用意するのにかかる費用と、その費用に何が含まれているかの2つを並べてください。

価格だけ揃えれば選べますか。

揃えて比べられるのは、金額までです。総タンパク量が同じでも、何が入っているかは製法で変わります。血清を使っているか、どの工程まで無血清か、ロットごとの試験報告書が出るかは、価格の比較とは別に確認してください。

出典・参考

本記事の金額・濃度・倍率はすべて計算の考え方を示すための例であり、市場価格や特定の製品の仕様を示すものではありません。当社の幹細胞セクレトーム(細胞が培養中に分泌した成分の総体)は研究用試薬として供給しており、特定の疾患に対する効果を示すものではありません。

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