30秒でわかる、この記事の要点
- 区分は選ぶものではなく、省令への当てはめで決まる。第1種→第2種→第3種の順に判定し、同じ細胞でも「誰の細胞か」「どこへ入れるか」で区分が変わります。
- 区分で変わるのは、審査する委員会・提供を始められる時期・罰則の重さ。第1種だけは、計画の提出から原則90日間、提供を始めることができません。
- 細胞を含まない培養上清液・セクレトームは、現時点で法の対象外。ただし「細胞が含まれないことが明らかである場合」という条件付きで、施行後2年を目途に扱いを見直す条文も置かれています。
以下、実際の判定と同じ順番で見ていきます。どの論点も、法律・政令・厚生労働省令の条文で確認できる内容です。
1. そもそも「再生医療等」に当たるのか
区分を考える前に、まずその技術がこの法律の対象かどうかを確かめる必要があります。対象でなければ、第1種・第2種・第3種という区分の話は始まりません。
ここで扱うのは再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法/平成25年法律第85号。以下「法」)です。2014年11月25日に施行され、医療機関が自らの責任で患者に再生医療等を提供する場合の手続きを定めています。第1種・第2種・第3種は、この法律の中に置かれた区分です。
法の対象は、次の2つです。
この法律において「再生医療等技術」とは、人の身体の構造若しくは機能の再建、修復若しくは形成又は人の疾病の治療若しくは予防に用いられることが目的とされている医療技術であって、次に掲げるもののうち(中略)政令で定めるものをいう。
一 細胞加工物を用いる医療技術(中略)
二 核酸等を用いる医療技術(中略)
「細胞加工物」は人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したものと定義されています(法第2条第4項)。細胞そのものが入っているかどうかが、最初の分かれ目です。
第2号の「核酸等」は、2024年の改正(令和6年法律第51号、2024年6月14日公布)で加わり、2025年5月31日から施行されています。体外で細胞を加工せず、体内で直接遺伝子を導入する治療(in vivo 遺伝子治療)を対象に取り込むための改正です。それまでは、細胞を加工しないタイプの遺伝子治療はこの法律の外にありました。
もうひとつ、条文のかっこ書きに重要な除外があります。承認された再生医療等製品を、その承認に係る用法・用量どおりに使う場合は、ここでいう「細胞加工物を用いる医療技術」から除かれます(法第2条第2項第1号)。すでに薬機法で審査を通った製品を添付文書どおりに使うのであれば、医療機関が別途この法律の手続きを踏む必要はない、という切り分けです。核酸等についても同じ構造の除外が置かれています(同項第2号)。
なお、輸血や造血幹細胞移植は、性質を変える操作を加えていない限り対象から外れます(再生医療等安全性確保法施行令第1条第1号)。また、承認を目指す治験として行う場合は「再生医療等」から除かれます(法第2条第1項)。治験は薬機法とGCPの世界で管理されるためです。
2. 3つの区分は、リスクの大きさで分かれている
対象だと分かったら、次に区分を決めます。基準を一言でいえば、その技術が「どれだけ読めないか」です。条文の書きぶりを並べると、それがはっきりします。
第一種再生医療等技術…人の生命及び健康に与える影響が明らかでない又は相当の注意をしても人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることから(中略)厚生労働省令で定める再生医療等技術
第二種再生医療等技術…相当の注意をしても人の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることから(中略)厚生労働省令で定める再生医療等技術(第一種再生医療等技術に該当するものを除く。)
第三種再生医療等技術…第一種再生医療等技術及び第二種再生医療等技術以外の再生医療等技術
3つを見比べると、違いは「重大な」の有無と、影響が「明らかでない」ものを第1種に含めている点です。実績がなく、どう転ぶか分からないものほど上の区分に置く、という考え方です。
ただし条文だけでは実際の当てはめができません。具体的な線引きは再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号。以下「施行規則」)が定めており、第1種は施行規則第2条、第2種は施行規則第3条に列挙されています。第3種にはリストがありません。「上の2つに当たらないもの」がそのまま第3種になるためです。
直感的なポイント
区分は応募先を選ぶようなものではなく、ふるいに上から順にかけるイメージです。まず第1種のふるい、次に第2種のふるいにかけ、どちらにも引っかからず残ったものが第3種になります。
判定は、次の順序で行います。
- 施行規則第2条の5類型のどれかに当たるか。当たれば第1種。
- 当たらなければ、施行規則第3条の3類型のどれかに当たるか。当たれば第2種。
- どちらにも当たらなければ第3種。
3. 第1種に当たるもの — 施行規則第2条
第1種は、ES細胞・iPS細胞、遺伝子操作、動物の細胞、他人の細胞といった、未知の要素が大きい5つの類型です。施行規則第2条が列挙しており、2025年5月31日に第5号が加わりました。
| 号 | 条文の内容 | 当てはまる例 |
|---|---|---|
| 第1号 | 人の胚性幹細胞、人工多能性幹細胞又は人工多能性幹細胞様細胞に培養その他の加工を施したものを用いる | ES細胞・iPS細胞から作った細胞を移植する |
| 第2号 | 遺伝子を導入若しくは改変する操作を行った細胞、又はその加工物を用いる | 取り出した細胞に遺伝子を入れて患者に戻す(CAR-T と同じ手法を医療機関が自ら行う場合) |
| 第3号 | 動物の細胞に培養その他の加工を施したものを用いる | ブタなど、ヒト以外の動物に由来する細胞を用いる |
| 第4号 | 投与を受ける者以外の人の細胞に培養その他の加工を施したものを用いる | 他人(ドナー)由来の間葉系幹細胞を培養して投与する |
| 第5号 | 人の体内で、その人の細胞に核酸などを導入する | ウイルスベクターなどで体内に直接遺伝子を送り込む |
第1号の「人工多能性幹細胞」は、人工的に多能性を誘導された幹細胞と定義されています(施行規則第1条第2号)。第5号は2025年5月31日施行の改正で加わったもので、条文上、細胞の分泌物を含有する物は除かれています。
直感的なポイント
第4号に注目してください。細胞の種類ではなく「誰の細胞か」で区分が上がります。同じ間葉系幹細胞でも、患者本人から採ったものなら第2種、他人から採ったものなら第1種です。免疫の拒絶反応や感染症の伝播といったリスクが、他人由来では読みにくくなるためです。
4. 第2種に当たるもの — 施行規則第3条
第1種のふるいを通り抜けたもののうち、培養した幹細胞・組織の再建等が目的・相同利用でないものという3類型が第2種です。施行規則第3条が定めています。
| 号 | 条文の内容 | 当てはまる例 |
|---|---|---|
| 第1号 | 培養した幹細胞、又はその加工物を用いる | 自分の脂肪から採った間葉系幹細胞を培養して投与する |
| 第2号 | 培養した細胞、又はその加工物のうち、人の身体の構造又は機能の再建・修復・形成を目的とする(第1号を除く) | 自分の軟骨細胞や線維芽細胞を培養して組織の修復に使う |
| 第3号 | 細胞の相同利用ではないもの(第1号・第2号を除く) | ある部位から採った細胞を、機能の違う別の部位に使う |
「相同利用」という言葉
第3号の「相同利用」は、かみ砕くと細胞に「元の職場と同じ仕事」をさせることです。施行規則は次のように定義しています。
「相同利用」とは、採取した細胞が再生医療等を受ける者の再生医療等の対象となる部位の細胞と同様の機能を持つ細胞の投与方法をいう。
施行規則第1条第4号厚生労働省の施行通知は、この判断の具体例を示しています。腹部から採った脂肪組織由来幹細胞を、乳癌の術後の患部に乳房再建の目的で投与するのは相同利用にあたります。ところが同じ細胞を糖尿病の治療目的で経静脈的に投与すると、脂肪組織の再建を目的としていないため相同利用にあたりません。
培養しない場合も同じ考え方です。末梢血を遠心分離して培養せずに用いる場合、皮膚や口腔内への投与は相同利用ですが、関節腔内など血流の乏しい組織への投与は相同利用にあたらないとされています。
直感的なポイント
同じ細胞でも、どこに何の目的で入れるかで区分が変わります。相同利用でなければ、施行規則第3条第3号により第2種に上がります。「何の細胞か」だけでなく、「誰から採り、どこへ、何のために入れるか」までそろって初めて区分が決まる構造です。
5. 第3種は「それ以外」
第1種にも第2種にも当たらないものが第3種です(法第2条第9項)。列挙されたリストはなく、2つのふるいの下に残ったものを受け止める「残りの箱」にあたります。
条文に沿って言い換えると、第3種になるのは次の条件をすべて満たす場合です。ES・iPS細胞でも遺伝子操作した細胞でも動物の細胞でもなく、患者本人の細胞であり(施行規則第2条に当たらない)、培養した幹細胞ではなく、身体の構造・機能の再建・修復・形成を目的とせず、かつ相同利用である(施行規則第3条に当たらない)。
たとえば、患者本人の免疫細胞を培養して、同じ免疫の働きのために体内へ戻す治療は、この条件を満たします。同じ治療でも細胞が他人由来であれば施行規則第2条第4号に当たり、一気に第1種まで上がります。
6. 区分によって、何が変わるのか
ここからが実務上の本題です。区分が違うと、意見を聴く委員会・計画の提出先・提供を始められる時期・罰則の重さが変わります。一覧にすると次のとおりです。
| 第1種 | 第2種 | 第3種 | |
|---|---|---|---|
| 意見を聴く委員会 | 特定認定再生医療等委員会 法第7条 | 特定認定再生医療等委員会 法第11条 | 認定再生医療等委員会 法第4条第2項 |
| 計画の提出先 | 厚生労働大臣 本省が処理する | 厚生労働大臣あて。ただし権限は地方厚生局長に委任されている 施行規則第118条第1項第1号 | |
| 提供を始められる時期 | 提出から原則90日を経過した後 法第9条 | 待機期間の定めなし | 待機期間の定めなし |
| 厚生科学審議会 | 変更命令を出す前に意見を聴く 法第55条第4号 | — | — |
| 提供基準に含まれる事項 | 施設・人員に関する事項を含む(法第3条第2項第1号) | 施設・人員の事項は除かれる | |
| 計画を出さずに提供した場合 | 1年以下の拘禁刑 又は100万円以下の罰金 法第60条第1項第1号 | 50万円以下の罰金 法第62条第1号 | |
いずれの区分でも、提出の前に委員会の意見を聴き、その意見の内容を記載した書類を計画に添付します(法第4条第2項・第3項)。第1種・第2種はいずれも特定認定再生医療等委員会の意見が必要です。ここは「第1種だけが特別」ではありません。特別なのは提供開始までの待機期間と罰則の重さです。
2種類の委員会は何が違うのか
2つの委員会は、別々に作られた制度ではありません。法第26条第1項の認定を受けた委員会が認定再生医療等委員会で、そのうち同条第4項各号の要件をすべて満たすものが特定認定再生医療等委員会です(法第7条)。
第3種の計画だけを扱う委員会は、審査能力に関する要件の一部が緩和されます(法第26条第1項かっこ書き)。違いは委員の顔ぶれに表れます。
- 第1種・第2種を審査する委員会:分子生物学等の専門家、再生医療等の科学的知見を有する者、臨床医、特定細胞加工物等の製造に識見を有する者、法律の専門家、生命倫理に識見を有する者、生物統計等に識見を有する者、一般の立場の者という8つの類型を、兼任させずに置く必要があります。核酸等を扱う場合はさらに2類型が加わります(施行規則第44条)。男女それぞれ2名以上、設置者と利害関係のない者2名以上、同一の医療機関に所属する委員は半数未満という基準もあります(施行規則第46条)。
- 第3種のみを審査する委員会:類型は3つで足り、委員5名以上、男女それぞれ1名以上、利害関係のない者2名以上という基準になります(施行規則第45条・第47条)。
7. 第1種だけにある「90日ルール」
第1種で最も影響が大きいのが、提供開始までの待機期間です。計画を出しても、すぐには始められません。条文は2つに分かれています。
ひとつは法第8条第1項で、厚生労働大臣は、計画が再生医療等提供基準に適合していないと認めるとき、提出があった日から起算して90日以内に限り、変更などの措置を命ずることができます。もうひとつが法第9条で、医療機関の管理者はこの期間を経過した後でなければ提供してはならない、と定めています。
直感的なポイント
90日は「審査にかかる期間」ではなく、国が「待った」をかけられる持ち時間です。この間、国は厚生科学審議会の意見を聴いたうえで、変更を命じるかどうかを判断します(法第55条第4号)。
この期間を守らずに提供すると、法第9条違反として1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります(法第60条第1項第4号)。また医師・歯科医師の側にも、施術の前に期間の経過を確認する義務が課されています(法第13条第2号)。
8. 細胞を加工する場所にも、別の規制がある
ここは誤解の多いところです。細胞を培養・加工する施設(細胞培養加工施設)にも規制がありますが、その分かれ目は第1種・第2種・第3種ではありません。施設が医療機関の中にあるかどうかで決まります。
| 手続き | 対象 | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出 | 病院・診療所に設置される施設など(薬機法の製造業許可を受けた製造所、臍帯血供給事業の施設を含む) | 法第40条第1項 |
| 許可 | 上記以外で製造をしようとする者。外部から製造を受託する事業者はこちら | 法第35条第1項 |
| 認定 | 外国で、日本国内の再生医療等に使う特定細胞加工物等を製造しようとする者 | 法第39条第1項 |
これは条文の作りからも確かめられます。製造について定めた法第4章(第35条〜第54条)と施行規則第4章には、「第一種」「第二種」「第三種」という語が一度も出てきません。種別で分ける発想がそもそも置かれていないということです。
許可には有効期間があり、5年ごとの更新が必要です(法第36条第1項、再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令第5条)。申請時には構造設備が基準に適合するかの調査が行われ(法第35条第5項)、この調査は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行うことがあります(法第38条第1項)。施設ごとに、生物学的知識を持つ管理者を置くことも求められます(法第43条)。
医療機関が製造を外部に委託する場合、委託先は上の届出・許可・認定のいずれかを受けた事業者でなければなりません(法第12条)。
9. 提供が始まったあとに続く義務
計画を出して終わりではありません。提供中は、次の報告と記録が続きます。
- 疾病等の報告:提供に起因すると疑われる疾病・障害・死亡・感染症を知ったときは、認定再生医療等委員会(法第17条第1項)と厚生労働大臣(法第18条)の両方に報告します。期限は内容で分かれ、死亡または死亡につながるおそれのある症例は7日以内、入院・入院期間の延長・障害・障害のおそれ・重篤・後世代の先天異常は15日以内です(施行規則第35条第1項)。これら以外は大臣報告の対象外で、委員会にのみ60日ごとに報告します。
- 定期報告:提供の状況を、委員会(法第20条第1項)と厚生労働大臣(法第21条第1項)に報告します。提供計画を提出した日から起算して1年ごとに、その期間の満了後90日以内です(施行規則第37条・第38条)。その期間の提供実績が0件でも提出が必要です。厚生労働大臣は取りまとめて概要を公表します(法第21条第2項)。
- 記録の作成と保存:実施した日時・場所・内容などを記録し、管理者が保存します(法第16条)。
- 中止の届出:提供を中止したときは10日以内に委員会へ通知し、厚生労働大臣に届け出ます(法第6条)。
問題が起きたときは、厚生労働大臣が一時停止などの緊急命令(法第22条)や改善命令(法第23条第1項)を出せます。命令に従わないときは提供の制限を命じられます(同条第2項)。立入検査の規定もあります(法第24条)。
10. 守らなかったときの罰則
罰則は、区分と行為の組み合わせで決まります。最も重いのは緊急命令への違反で、次いで第1種の無届提供・90日ルール違反です。
| 違反の内容 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 緊急命令に従わなかった | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科あり) | 法第59条 |
| 第1種で、計画を出さずに提供した/90日の期間内に提供した | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | 法第60条第1項第1号・第4号 |
| 許可を受けずに特定細胞加工物等を製造した | 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 | 法第61条第1号 |
| 第2種・第3種で、計画を出さずに提供した | 50万円以下の罰金 | 法第62条第1号 |
| 届出をせずに特定細胞加工物等を製造した | 20万円以下の罰金 | 法第63条第1号 |
法人の従業者が業務に関して違反した場合は、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます(法第64条・両罰規定)。
11. 培養上清液・エクソソームはどの区分に入るのか
当社への問い合わせで最も多い質問です。結論から書くと、細胞を含まない培養上清液やエクソソームの投与は、現時点でこの法律のどの区分にも入りません。区分の前段階で、法の対象そのものから外れているためです。
理由は定義にあります。法の対象は「細胞加工物を用いる医療技術」と「核酸等を用いる医療技術」の2つでした(法第2条第2項)。培養上清液は細胞を取り除いた液体なので、細胞加工物(人又は動物の細胞に加工を施したもの)には当たりません。核酸等の側についても、2025年に加わった施行規則第2条第5号は、対象となる物から「細胞の分泌物を除く」と明記しています。
この点は推論に頼る必要がありません。厚生労働省は2025年のQ&Aで、「セクレトーム」という語を名指しして回答しています。
Q. 培養上清やセクレトームを用いる医療技術は法の対象か。
A. 培養上清に細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である。セクレトームについては、細胞から細胞外に分泌されるタンパク質全般を指す呼称である。当該物質に細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である。なお、改正法の附則において、細胞の分泌物を用いる医療技術については、改正法施行後2年を目途として、法の適用の在り方等について検討を加えること等が定められている。
直感的なポイント
読み落としてはいけないのが、「細胞が含まれないことが明らかである場合」という条件です。名前が「培養上清液」であれば自動的に外れる、という書き方はされていません。細胞が残っていないことを示せる製法と試験があって初めて、この整理に乗ります。
同じQ&Aは境界も示しています。サイトカイン(成長因子を含む)のみを投与する医療技術は対象外(A.1-1-09)。一方で、細胞を加工して得たミトコンドリアは特定細胞加工物に当たり、法の対象です(A.1-1-10)。細胞に由来するものが一律に外れるわけではありません。
そして「規制がないから問題ない」という意味でもありません。厚生労働省は2024年、提供機関の管理者に向けて次の事務連絡を出しています。
ヒトの幹細胞の培養上清液及び当該上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞等の細胞の分泌物(以下「エクソソーム等」という。)を用いた医療(中略)については、現時点で、使用されるエクソソーム等で諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はありません。このため、当該医療を行う場合には、実施する医師・歯科医師の責任のもと、特にその安全性について留意する必要があると考えられます。
厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」(令和6年7月31日)この事務連絡は、日本再生医療学会の「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」を参照するよう求めています。法律の対象外であることと、品質やリスクの管理が不要であることは、別の話だという整理です。
この扱いは見直しの対象になっている
「対象外」は、恒久的な整理ではありません。2024年の改正法には、次の検討条項が置かれています。
政府は、この法律の施行後二年を目途として、細胞の分泌物(中略)その他の物を用いる先端的な医療技術に係る研究開発、当該医療技術を用いた医療の提供及び諸外国における当該医療技術に係る規制の状況等を勘案し、当該医療技術に対する(中略)法律の適用の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
令和6年法律第51号 附則第2条第1項施行日が2025年5月31日ですから、目途は2027年5月ごろになります。現在の「対象外」という整理は、いま時点のものとして扱うのが安全です。
当社の幹細胞セクレトームは研究用試薬として供給しており、特定の疾患に対する効果を示すものではありません。製法と品質管理の考え方はセクレトームとは、試験の内容は培養上清液の安全性試験で解説しています。
12. 手続きの窓口
提供計画の提出や認定再生医療等委員会への申請は、厚生労働省のオンライン手続サイト「e-再生医療」で行います。届出済みの提供計画の一覧と、認定再生医療等委員会の一覧も同サイトで公表されており、どの医療機関がどの区分で何を届け出ているかを誰でも確認できます。
区分の当てはめに迷う場合は、意見を聴くことになる認定再生医療等委員会と、地方厚生局の再生医療等担当窓口に事前に相談するのが確実です。
よくあるご質問
第1種・第2種・第3種は自分で選べますか。
選べません。厚生労働省令が定める類型に当てはまるかどうかで決まります。施行規則第2条の5類型に当たれば第1種、当たらず第3条の3類型に当たれば第2種、どちらにも当たらなければ第3種です。判定はこの順序で行います。
自分の細胞を使えば必ず第2種以下になりますか。
なりません。自己の細胞であっても、遺伝子を導入または改変する操作を行っていれば施行規則第2条第2号に当たり第1種です。逆に、培養した幹細胞を自己に投与する場合は施行規則第3条第1号の第2種、同じ細胞を他人に投与すれば施行規則第2条第4号の第1種になります。
第1種の90日は必ず待つのですか。
変わることがあります。厚生労働大臣が再生医療等提供基準に適合していると認めれば期間を短縮でき(法第8条第3項)、90日以内に命令を出せない合理的な理由があれば延長されます(同条第2項)。短縮・延長のいずれも管理者へ通知されます。
細胞を加工する施設の許可と届出は、種別によって変わりますか。
変わりません。分かれ目は第1種・第2種・第3種ではなく、施設が医療機関の中にあるかどうかです。病院・診療所に設置される施設などは届出(法第40条第1項)、それ以外で製造を受託する事業者は許可(法第35条第1項)になります。
幹細胞培養上清液やエクソソームの投与にも提供計画は必要ですか。
現時点では必要ありません。厚生労働省のQ&A(令和7年5月30日事務連絡)A.1-1-08は、培養上清やセクレトームについて「細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である」と回答しています。ただし「明らかである場合」という条件が付いている点に注意してください。名称ではなく、細胞が残っていないことを示せるかどうかで判断されます。また令和6年7月31日の事務連絡が安全性への留意を求めており、改正法附則第2条は施行後2年を目途に扱いを検討するとしています。
本記事は2026年9月4日時点で施行されている条文に基づく一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際の区分の判定と手続きは、認定再生医療等委員会・地方厚生局・厚生労働省にご確認ください。当社の幹細胞セクレトーム(細胞が培養中に分泌した成分の総体)は研究用試薬として供給しており、特定の疾患に対する効果を示すものではありません。
出典
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000085
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令(平成26年政令第278号)/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/426CO0000000278
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号)/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000100110
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
- 厚生労働省医政局研究開発政策課「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて」(令和7年5月30日事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001498987.pdf
- 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等の施行について」(令和7年5月15日 医政研発0515第18号) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001512549.pdf
- 厚生労働省医政局研究開発政策課「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」(令和6年7月31日事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/content/001281987.pdf
- 厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について(概要)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/plan.html
- 厚生労働省「e-再生医療」(再生医療等の各種申請等のオンライン手続サイト) https://saiseiiryo.mhlw.go.jp/
- 一般社団法人日本再生医療学会「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」 https://www.jsrm.jp/cms/uploads/2024/05/news14993-2.pdf