30秒でわかる要点
- 中心の処分は3つの条文にある:国の基準(厚生労働省令で定める基準)に合わないときの改善命令は、第72条です。法令違反があったときの業務運営の改善措置命令は第72条の4、許可の取消しと業務の停止は第75条です。命じる人は、製造販売業者などには厚生労働大臣、薬局開設者・販売業者などには都道府県知事です。
- 業務の停止は第75条だけではない:第72条第1項・第2項(項は、条文の中の段落)でも、改善を行うまでの間、業務の全部または一部の停止を命じることができます。第75条の停止は期間を定めて命じるもので、終わり方が違います。
- 取消しの後の3年と、2027年の番号の移動:第75条第1項で許可を取り消されると、第5条第3号イにより、取消しの日から3年は許可を与えないことができます。2027年5月20日からは第72条の4から第72条の6までが1つずつ繰り下がり、いまの第72条の4は第72条の5になります。
1. 業許可に対する処分には、どんな種類がありますか?
中心は3つです。改善命令(第72条)、業務運営の改善措置命令(第72条の4)、許可の取消しと業務の停止(第75条)で、どれも薬機法第13章「監督」にあります。
命じる人は条文と項ごとに分かれ、製造販売業者の品質管理などは厚生労働大臣、薬局開設者・販売業者などは都道府県知事です。製造業者・修理業者の構造設備(第72条第3項)は、厚生労働大臣又は都道府県知事です。
薬局を開く。医薬品を売る。化粧品を製造販売する。こうした仕事をするには、国や都道府県から許可を受けます。これを業許可(業の許可)といいます。
許可を受けた後も、行政は事業者を監督します。薬機法は、そのための条文を第13章「監督」にまとめています。
第13章には、立入検査(第69条)、廃棄・回収その他の措置の命令(第70条)、検査命令(第71条)が並んでいます。改善命令(第72条)や許可の取消し等(第75条)も、ここにあります。このうち第70条・第71条が向けられているのは物(製品など)です。名宛人(その条文で義務や禁止の対象になる人)も要件も、業の許可に向けられた条文とは別です。
このページが扱うのは、業の許可・登録そのものに向けられた命令と処分です。中心になるのは次の3つです。
- 改善命令(第72条):品質管理などの方法や構造設備(建物や設備)が、厚生労働省令(厚生労働省が定める細かい決まり)で定める基準に合わないときの命令です。改善を行うまでの間の業務の停止や、施設の使用の禁止も、この条文にあります。
- 業務運営の改善措置命令(第72条の4):法令違反の行為があった場合の命令です。健康への害が起きたり広がったりするのを防ぐために必要と認めるときに、業務の運営の改善に必要な措置を命じることができます。
- 許可の取消しと業務の停止(第75条):違反する行為があったときなどの処分です。違反の対象は、薬機法、政令(内閣が定める決まり)で定めるそのほかの薬事に関する法令、またはそれに基づく処分です。許可を取り消すか、期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じることができます。
表1は、これらを含めて、業の許可・登録に向けられた条文を順に並べたものです。右の列は、命じる人(命ずる者)です。
| 条文 | 定められている | 命ずる者 |
|---|---|---|
| 第72条 | 品質管理・ | 第1項・ |
| 第72条の2 | 薬局・ | 都道府県知事 |
| 第72条の2の2 | 第9条の2、 | 厚生労働大臣・ |
| 第72条の3 | 薬局開設者が | 都道府県知事 |
| 第72条の4 | 法令違反行為が | 厚生労働大臣・ |
| 第73条 | 管理者・ | 厚生労働大臣・ |
| 第74条 | 配置員の | 都道府県知事 |
| 第75条 | 許可の | 厚生労働大臣・ |
| 第75条の2 | 登録の | 厚生労働大臣 |
出典:薬機法(昭和35年法律第145号)第72条〜第75条の2。条文の見出しは e-Gov 法令検索の2026-05-21施行版による。第72条の2・第72条の2の2・第72条の3・第72条の4には条文の見出しが付されていない。
例
ある薬局で、構造設備が基準に合わなくなった場面を考えます。この場面では、第72条の改善命令が問題になり得ます。表1の第72条の行を見ると、第4項・第5項は都道府県知事が命じます。薬局開設者の構造設備を扱うのは第4項です(2.の節)。
ある医薬品の販売業者に、法令違反の行為があった場面では、第72条の4や第75条が問題になり得ます。どちらも、それぞれの条文の要件にあたるかどうかで見られます(3.の節・4.の節)。
罰則・課徴金(違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金)・回収を含めた全体の見取り図は『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』にあります。
2. 改善命令(第72条)は、何が基準に合わないときに出されますか?
品質管理・製造販売後安全管理(市場に出した後の安全対策)の方法、製造管理・品質管理の方法、構造設備が、それぞれ厚生労働省令で定める基準に合わないときです。
同じ条文には、改善の命令のほか、改善を行うまでの間の業務の全部または一部の停止や、施設の使用の禁止も置かれています。
第72条は5つの項でできています。項ごとに、命令を受ける相手(名宛人)と、合わせるべき基準が違います。
- 第1項:製造販売業者(製品を市場に出す責任を持つ事業者)の品質管理または製造販売後安全管理の方法。製造販売後安全管理とは、製品を市場に出した後に、品質・有効性・安全性などの情報を集めて検討し、その結果に基づいて必要な措置をとることです。
- 第2項:製造所における製造管理または品質管理の方法
- 第3項から第5項:構造設備(建物や設備)
第1項・第2項を命じるのは厚生労働大臣です。第1項の条文は次のとおりです。
条文の最後に「改善を命じ、又はその改善を行うまでの間その業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる」とあります。改善の命令と業務の停止が、1つの文に並んでいます。業務の停止は、第75条だけの処分ではありません。
例
冒頭のA社の場面で考えます。化粧品の製造販売業者であるA社の品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に合わなくなったとします。この場面では、第72条第1項により、品質管理の方法の改善の命令や、改善を行うまでの間の業務の全部または一部の停止の命令が問題になり得ます。
許可の入口と同じ基準が使われる
第1項が引いている第12条の2第1項第1号・第2号(号は、項の中で一、二…と番号を付けて並べた箇条)は、製造販売業の許可の基準そのものです。どちらも、許可を与えないことができる場合として置かれています。
同じ基準が、許可の入口では、許可を与えるかどうかの判断に使われます。許可の後にその基準に合わなくなったときに使うのが、第72条第1項の改善命令です。
原文で確かめる(第12条の2第1項第1号・第2号)
申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品の品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき
申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造販売後安全管理(中略)の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき
薬機法 第12条の2第1項第1号・第2号。e-Gov 法令検索 2026-05-21 施行版第2項の基準には、品目の限定がある
第2項が引くのは、第14条第2項第4号です。承認(製品ごとに国が審査して、製造販売を認めること)の要件を定める規定です。
この号の冒頭には、「政令で定めるものであるときは」という限定が置かれています。申請された品目が、政令で定めるものである場合についての定めです。
原文で確かめる(第14条第2項第4号)
申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき
薬機法 第14条第2項第4号。e-Gov 法令検索 2026-05-21 施行版第72条第2項の要件は、この基準に合わないことだけではありません。その製造管理・品質管理の方法によって、医薬品などの製品が一定の物に該当するようになるおそれがある場合も、同じ項に置かれています。
条文が挙げるのは、第56条、第65条若しくは第65条の5に規定する物、又は第68条の20に規定する生物由来製品です。
構造設備の命令は、相手ごとに項が分かれる
構造設備についての第72条第3項から第5項は、命令を受ける相手と、命じる人が、項ごとに分かれます。
- 第3項:医薬品(体外診断用医薬品を除く)・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の製造業者と、医療機器の修理業者の構造設備。体外診断用医薬品は、病気の診断に使い、体に直接は使わない医薬品です。医薬部外品は、医薬品よりも作用がおだやかな製品(薬用化粧品など)です。再生医療等製品は、人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。厚生労働大臣又は都道府県知事が、改善を命じるか、改善を行うまでの間の施設の全部または一部の使用の禁止を命じることができます。
- 第4項:薬局開設者、医薬品の販売業者、医療機器の販売業者・貸与業者(第39条第1項・第39条の3第1項のもの)、再生医療等製品の販売業者の構造設備。命じるのは都道府県知事です。
- 第5項:地域連携薬局等(地域連携薬局・専門医療機関連携薬局など、認定を受けた薬局)の開設者の構造設備。命じるのは都道府県知事です。
基準そのものを定める厚生労働省令の名称・番号とその内容は、『6-4 製品の回収や品質・安全管理の決まりは、どこにある?』で扱います。
3. 法令違反があったとき、業務運営の改善を命じる条文はどれですか?
第72条の4第1項です。法令違反の行為があり、保健衛生上の危害(健康への害)の発生や拡大を防ぐために必要と認めるときに命じられます。
第2項は、承認などに付けられた条件に違反する行為があったときの是正措置命令(違反を正しい状態に直すための措置を命じるもの)を、別の要件で定めています。
第72条の4第1項の要件は、次の2つです。
- この法律(薬機法)またはこれに基づく命令の規定に違反する行為があったこと
- 保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するために必要があると認めること
このとき、「その業務の運営の改善に必要な措置」をとるよう命じることができます。措置の中身は、条文に列挙されていません。
命じる人は相手によって分かれます。製造販売業者、製造業者、医療機器の修理業者には厚生労働大臣です。薬局開設者、医薬品の販売業者、再生医療等製品の販売業者などには都道府県知事です。
条文は「第七十二条から前条までに規定するもののほか」で始まります。その前には、第72条(基準への不適合)、第72条の2(体制の整備)、第72条の2の2(措置が不十分な場合)、第72条の3(薬局開設者の報告)があります。第72条の4第1項は、これらとは別に、法令違反の行為があった場合の要件を定めています。
なお、この条文の番号は、改正法の施行(法律の決まりが効力を持ち始めること)に合わせて変わります(6.の節)。
この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の5 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の4 は医薬品の製造販売業者の報告義務違反に対する是正命令等になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。
この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。
例
ある医薬品の販売業者に、薬機法の規定に違反する行為があった場面を考えます。都道府県知事が、健康への害が起きたり広がったりするのを防ぐために必要と認めれば、第72条の4第1項の命令が問題になり得ます。
第2項:承認などに付けられた条件への違反
第2項は、要件が別です。承認などには、条件が付けられることがあります。その付された条件に違反する行為があったときに、違反を是正するために必要な措置をとるよう命じることができます。
条件を付す根拠として第2項が引いている条文は、次の7つです。
第14条の2の2第1項、第14条の2の2の2第1項、第23条の2の6の2第1項、第23条の2の6の3第1項、第23条の26第1項、第23条の26の2第1項、第79条第1項
同じ並びにある、ほかの命令
第72条から第73条までには、ほかにも命令の条文があります。
- 第72条の2(体制の整備):薬局・店舗、配置販売業者、地域連携薬局等が、体制の基準や要件に合わなくなったときに、合うように業務の体制を整えることを命じるもの。店舗は、店舗販売業の店舗です。配置販売業者は、家庭などに医薬品を置いてもらい、使った分の代金を受け取る形で売る業者です。
- 第72条の2の2(措置が不十分なとき):第9条の2・第18条の2などの条文が事業者に求めている措置が、不十分だと認めるときに、改善に必要な措置を命じるもの
- 第72条の3(薬局開設者の報告):薬局開設者が決められた報告をせず、又は虚偽の報告をしたときに、期間を定めて報告すること、又はその内容を是正することを命じるもの
- 第73条(管理者などの変更):管理者・責任技術者に法令違反の行為があったとき、又は管理者・責任技術者として不適当と認めるときの命令。その製造販売業者・薬局開設者等に対して、変更を命じるもの。管理者・責任技術者は、薬局や製造所などで、業務を管理するために置かれる人です。
それぞれが引いている条文は、次のとおりです。
- 第72条の2:薬局・店舗は第5条第2号・第26条第4項第2号の体制の基準、配置販売業者は第30条第3項の基準。地域連携薬局等は、要件を欠くに至った場合
- 第72条の2の2:第9条の2、第18条の2、第23条の2の15の2、第23条の35の2、第29条の3、第31条の5又は第36条の2の2の規定による措置
- 第72条の3:第8条の2第1項・第2項の報告
ここに並ぶのは、どれも薬機法の条文が命令として定めているものです。条文に根拠を持たない働きかけとの違いは、行政指導(役所が、法的な強制力なしに協力を求めて行う指導)のページで扱います。
4. 許可の取消しや業務の停止は、どんなときにできますか?
薬機法や政令で定める薬事に関する法令、それに基づく処分への違反か、第5条第3号の欠格事由(許可を与えないことができる申請者の事情)に当たるようになったときです。
処分の内容は、許可の取消しと、期間を定めた業務の全部または一部の停止の2つです。
第75条第1項の要件は、次のどちらかです。
- この法律(薬機法)その他薬事に関する法令で政令で定めるもの、又はこれに基づく処分に違反する行為があったとき
- 事業者(法人であるときは、薬事に関する業務に責任を有する役員を含む)が、第5条第3号の欠格事由に当たるようになったとき
命じる人は相手によって分かれます。製造販売業者、製造業者、医療機器の修理業者については厚生労働大臣です。薬局開設者、医薬品の販売業者、医療機器の販売業者・貸与業者、再生医療等製品の販売業者については都道府県知事です。
第2項は、都道府県知事から厚生労働大臣への連絡の決まりです。都道府県知事は、製造販売業者等について第1項の処分が行われる必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に知らせなければなりません。
直感的なポイント
第72条と第75条の業務の停止は、終わり方が違います。たとえるなら、第72条の停止は、やり方を直すまで休む形です。改善を行うまでの間の停止なので、改善で終わります。
第75条の停止は、期間を決めて休む形です。条文も「期間を定めて」と書いています。
例
ある薬局の開設者に、薬機法の規定に違反する行為があった場面を考えます。この場面では、都道府県知事による第75条第1項の処分、つまり許可の取消しや、期間を定めた業務の全部または一部の停止が問題になり得ます。
登録を受けた製造業者の場合(第75条の2)
第75条の2は、許可ではなく登録についての条文です。登録には、たとえば保管のみを行う製造所の登録(第13条の2の2第1項)があります。厚生労働大臣は、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造業者について、その登録を取り消すか、期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じることができます。
要件は、次の3つのどれかです。
- 法令違反の行為があったとき
- 不正の手段により、第13条の2の2第1項又は第23条の2の3第1項の登録を受けたとき
- 第13条の2の2第5項・第23条の2の3第4項において準用する第5条(第3号に係る部分に限る)に当たるようになったとき。準用とは、ある規定を、必要な読み替えをして別の場面にも使うことです。
取り消された後に使われる欠格事由
第75条第1項と第5条第3号は、出口と入口でつながっています。許可を取り消すのが第75条第1項です。取り消された者に許可を与えないことができる場合を挙げるのが、第5条第3号イです。登録の取消し(第75条の2第1項)には、同じ号のロが対応します。
例
第75条第1項で薬局の開設の許可を取り消された者が、取消しの日から3年を経過しないうちに、また薬局の開設の許可を申請した場面を考えます。この場面は、第5条第3号イにより、許可を与えないことができる場合にあたり得ます。
第5条第3号は、許可を与えないことができる場合を、イからトまでの7つ挙げています。申請者(法人であるときは、薬事に関する業務に責任を有する役員を含む)が、次のどれかに当たる場合です。
- イ:第75条第1項の規定により許可を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者
- ロ:第75条の2第1項の規定により登録を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者
- ハ:拘禁刑(刑事施設に収容する刑)以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者
- ニ:法令又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者(イからハまでに該当する者を除く)。ここでいう法令は、この法律、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法その他薬事に関する法令で政令で定めるものです。
- ホ:麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
- ヘ:心身の障害により薬局開設者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- ト:薬局開設者の業務を適切に行うことができる知識及び経験を有すると認められない者
ヘとトに「薬局開設者の業務」とあるのは、第5条が薬局の開設の許可(第4条)についての規定だからです。
第5条第3号は、ほかの許可にも準用されています。たとえば、製造販売業(第12条の2第2項)、製造業(第13条第6項)です。医療機器等の製造販売業(第23条の2の2第2項)、再生医療等製品の製造販売業(第23条の21第2項)なども同じです。第75条第1項は、これらの準用規定に当たるようになったときも、要件に含めています。
第75条には、このほかの項もあります。第3項は、血液製剤等に関する、期間を定めた業務の全部又は一部の停止です。第4項は地域連携薬局の認定の取消し、第5項は専門医療機関連携薬局の認定の取消しです。許可・認定・登録・承認がどう並ぶかは、『1-7 承認・認証・届出・許可は、何が違う?』で扱います。
5. 処分の前後の手続は、薬機法のどこに書かれていますか?
薬機法が手続の条文を置くのは、課徴金納付命令(第75条の5の6〜第75条の5の8)と、更新の拒否(第76条)です。第72条・第75条にはありません。
手続の条文が無いことは、手続が要らないという意味ではなく、薬機法が自前の手続を用意していないという意味にとどまります。
ここでいう手続とは、行政が処分をする前にしなければならないことです。たとえば、処分を受ける側に弁明(自分の言い分を述べること)の機会を与えることです。処分の後に不服を申し立てる仕組みは、この節の最後で扱います。
薬機法が処分の手続を条文で定めているのは、次の2か所です。
- 課徴金納付命令(第75条の5の6から第75条の5の8まで)。課徴金は、違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金です。
- 許可などの更新を拒む場合(第76条)
第72条の改善命令と第75条の許可の取消し等については、薬機法の側に手続の条文がありません。
課徴金納付命令の手続
第75条の5の6は、「厚生労働大臣は、課徴金納付命令をしようとするときは、当該課徴金納付命令の名宛人となるべき者に対し、弁明の機会を与えなければならない」と定めています。進み方を時間の順に並べると、次のとおりです。
まず、厚生労働大臣が前もって書面で通知します(第75条の5の8)。通知は、弁明書(弁明を記載した書面)の提出期限まで相当な期間をおいて行います。書くのは、納付を命じようとする課徴金の額、課徴金の計算の基礎とその課徴金に係る課徴金対象行為、弁明書の提出先と提出期限です。
次に、相手はその期限までに弁明書を出して、弁明することができます(第75条の5の6・第75条の5の7)。口頭での弁明は、厚生労働大臣が口頭ですることを認めたときに限られます。
例
厚生労働大臣が、ある事業者に課徴金納付命令をしようとする場面を考えます。この場面では、命令より前に、上の順で書面の通知と弁明の機会があります。
更新を拒む場合の手続
第76条は、許可の更新、認定の更新又は登録の更新を拒もうとするときの手続です。処分の相手に対し、「その処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない」と定めています。
第75条の5の18で行政手続法第3章を使わない処分は、課徴金などに限られる
行政手続法は、行政の手続について定めた別の法律です。薬機法の条文の中で「行政手続法」という語が出てくるのは2か所です。第75条の5の18(行政手続法の適用除外)と、第76条の2です。
第75条の5の18は、行政手続法第3章の規定を適用しない処分を、条文で挙げています。挙げられているのは、第75条の5の2から第75条の5の16までの、課徴金納付命令その他の処分です。第72条(改善命令等)と第75条(許可の取消し等)は、ここに入っていません。
課徴金納付命令については、この適用除外を置いたうえで、薬機法自身が上の手続を定めています。
原文で確かめる(第75条の5の18)
厚生労働大臣が第七十五条の五の二から第七十五条の五の十六までの規定によつてする課徴金納付命令その他の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章の規定は、適用しない。ただし、第七十五条の五の二の規定に係る同法第十二条の規定の適用については、この限りでない。
薬機法 第75条の5の18(行政手続法の適用除外)。e-Gov 法令検索 2026-05-21 施行版もう1か所の第76条の2(聴聞の方法の特例)は、外国特例承認(外国で製造して日本に輸出する者が受ける承認)の取消し等についての特例です。対象は、第75条の2の2第1項第5号のうち、選任製造販売業者(承認を受けた者が日本で選ぶ製造販売業者)に係る部分です。同項の処分をしようとするときの行政手続法第3章第2節の適用では、相手の選任製造販売業者を、同法第15条第1項の通知を受けた者とみなします。薬機法の条文の中で「聴聞」(処分の前に、相手の意見を聴く手続)の語が出てくるのは、この条の見出しだけです。
行政手続法の本文は、このページの作成時点で取得できていません。そのため、同法が定める手続の内容は、このページでは扱いません。
処分を受けた後
審査請求は、処分に不服があるときに、行政に見直しを求める手続です。薬機法がこれについて置いている規定は、機構(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が行う調査・審査等に係る処分についてのものです。
第13条の2第5項は、「機構が行う調査に係る処分(調査の結果を除く。)又はその不作為については、厚生労働大臣に対して、審査請求をすることができる」と定めています。不作為とは、申請に対して何もしないことです。この場合、厚生労働大臣を機構の上級行政庁(上の立場の役所)とみなします。同じ規定が、第14条の2の3第7項、第23条の2の7第7項、第23条の23第5項、第23条の27第7項にもあります。
第80条の10第5項も、機構が行う原薬等登録原簿(医薬品の原料などの情報の登録簿)の登録について同様ですが、対象と準用の範囲が違います。対象は「登録若しくはその不作為、申請の却下又は登録の抹消」です。みなしの対象として準用する行政不服審査法の条文は、第25条第2項及び第3項、第46条第1項及び第2項並びに第49条第3項です。ほかの5か所にある第47条は入っていません。
逆に第43条第4項は、同条第1項・第2項の検査の結果については、審査請求をすることができないと定めています。
厚生労働大臣・都道府県知事がする第72条・第75条の処分そのものについては、薬機法の側には、不服申立てに関する規定がありません。不服申立ての手続を定める法律には、薬機法も引用する行政不服審査法(平成26年法律第68号)があります(第13条の2第5項ほか)。同法の手続の内容も、本文を取得できていないため、このページでは扱いません。
6. 2027年5月20日から、これらの条番号はどう動きますか?
第72条の4から第72条の6までの番号が、1つずつ後ろへずれます(繰り下がり)。空いた第72条の4には別の規定が入り、第72条の8(役員の変更命令)も新しく置かれます。
2025年の改正法による変更で、第6条系でも同じ入れ替えが起き、第6条の4に健康増進支援薬局(都道府県知事の認定を受けて名乗れる薬局)が入ります。
2025年5月21日に公布(成立した法律を国民に知らせること)された改正法は、2027年5月20日から、第72条の並びに新しい条を差し込みます。
差し込まれる位置は第72条の4です。そのため、いま第72条の4にある業務運営の改善措置命令は、第72条の5へ移ります。その後ろの第72条の6までの条も、1つずつ後ろへずれます。
第72条・第72条の2・第72条の2の2・第72条の3は、番号が動きません。ただし、このうち第72条・第72条の2・第72条の2の2は、同じ日に本文が変わります。登録受渡業者・登録受渡店舗(2027年5月20日に新しくできる登録の制度。第29条の5)と、健康増進支援薬局(第6条の4)が対象に加わります。
表2の「(新設)」は、新しくできる条を表します。
| 2026年5月21日施行版 | 2027年5月20日から | 規定の内容 |
|---|---|---|
| (新設) | 第72条の4 | 医薬品の |
| 第72条の4 | 第72条の5 | 業務運営の |
| 第72条の5 | 第72条の6 | 違反 |
| 第72条の6 | 第72条の7 | 損害賠償責任の |
| (新設) | 第72条の8 | 薬事に |
| (新設) | 第6条の4 | 健康増進支援薬局。 |
| 第6条の4 | 第6条の5 | 認定の |
出典:e-Gov 法令検索の2026-05-21施行版(335AC0000000145_20260521_505AC0000000063)と2027-05-20施行版(335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)を条単位で照合。新設の第72条の4には条文の見出しが付されていないため、規定の内容を要約して示している。
例
2027年5月20日より後に、社内の資料に「第72条の4」とだけ書かれているのを見かけた場面を考えます。その時点の薬機法で第72条の4を開くと、医薬品の製造販売業者の報告義務違反に対する是正命令などが書かれています。資料が、いまの版(2026年5月21日施行版)の条文をもとにしているなら、指しているのは業務運営の改善措置命令などです。その移り先は第72条の5です。
新しくできる第72条の8(役員の変更命令)
第73条は、管理者・責任技術者の変更命令でした(3.の節)。これに対して第72条の8は、役員の変更命令です。命じるのは厚生労働大臣で、相手は医薬品等(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品)の製造販売業者又は製造業者です。
要件として挙げられているのは、次の3つです。
- 法令違反の行為があった場合
- その役員が、第12条の2第2項等において準用する第5条(第3号に係る部分に限る)に該当するに至った場合
- 許可・登録を受けた時点で、既に該当していたことが判明した場合
そのうえで、命じることができるのは、役員を変えなければ業務の運営の改善を見込めない、と認めるときです(下の「原文で確かめる」の条文の後半)。ここでいう改善は、健康への害の発生や拡大を防ぐために必要なものです。
原文で確かめる(第72条の8)
第75条と第75条の2も、同じ日に変わる
第75条には第6項が加わります。都道府県知事が、健康増進支援薬局の認定を取り消すことができる場合を定める項です。
同項第2号が挙げるのは、「第六条の五第一項の規定又は同条第二項において準用する第五条(第三号に係る部分に限る。)の規定に該当するに至つたとき」です。認定の基準が第6条の5へ移った後の番号で引かれています。
第75条の2には、「都道府県知事は、登録受渡業者について」が加わります。これで、第29条の5第1項の登録(登録受渡店舗に係る登録。同日新設)が、取消し・業務停止の対象に入ります。
処分・罰則・課徴金を含めた全体の見取り図は、『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』にあります。
理解の確認
第72条第1項の業務の停止と、第75条第1項の業務の停止は、命じられる条件と停止の終わり方で、どう違いますか?
第72条第1項の停止は、品質管理または製造販売後安全管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合しないときに命じることができます。「改善を行うまでの間」の停止なので、改善で終わります。第75条第1項の停止は、「期間を定めて」命じるものです。条件は、薬機法その他薬事に関する法令で政令で定めるもの若しくはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、または第5条第3号に該当するに至ったときです。条件も終わり方も、別に組み立てられています。業務の停止を第75条だけの処分として読むと、基準に適合しなくなった場面が抜け落ちます。
根拠:薬機法第72条第1項・第75条第1項(法令確認日 2026-09-08、2026年5月21日施行版)
第72条・第75条の処分について、薬機法に手続の条文が無いことは、これらの処分に手続が要らないという意味ですか?
いいえ。薬機法が自分で手続を書いているのは、次の2か所です。課徴金納付命令(弁明の機会・弁明の方式・通知の方式を、第75条の5の6から第75条の5の8までが定める)と、更新を拒む場合(第76条)です。課徴金納付命令については、行政手続法第3章の適用除外が第75条の5の18に置かれています。ただし、その列挙は第75条の5の2から第75条の5の16までで、第72条・第75条は入っていません。薬機法に手続の条文が無いことは、薬機法が自前の手続を用意していない、という意味にとどまります(行政手続法が定める手続の内容は、このページでは扱っていません)。
根拠:薬機法第75条の5の6〜第75条の5の8・第75条の5の18・第76条(法令確認日 2026-09-08、2026年5月21日施行版)
2027年5月20日より後に、古い資料に書かれた「第72条の4」という番号だけを引くと、何に当たりますか?
同じ番号にある、別の規定に当たります。いま第72条の4にある業務運営の改善措置命令は、第72条の5へ移ります。空いた第72条の4には、医薬品の製造販売業者の報告義務違反に対する是正命令等が入ります。第6条系でも同じ入れ替えが起きます。いまの第6条の4(認定の基準)は第6条の5へ移り、第6条の4には健康増進支援薬局が入ります。繰り下がりで番号が空席になるわけではありません。そのため、番号だけを引き写すと、別の条文を読むことになります。
根拠:薬機法第72条の4・第72条の5、第6条の4・第6条の5(令和7年法律第37号による改正、2027年5月20日施行。法令確認日 2026-09-08)
次に読む
- 6-1 薬機法に
違反すると、 化粧品を扱うA社の広報担当が、社内研修で「薬機法に違反すると2年以下の罰則」と聞いたとします。どうなる? — 行政指導から 刑事罰までの 6つの ルート - 1-7 承認・
認証・ 化粧品を扱う会社の担当者が、医療機器も扱えないか調べ始めたとします。届出・ 許可は、 何が 違う? — どの 手続を 誰が 与えるかの 地図 - 6-4 製品の
回収や ニュースや取引先からの連絡で、「自主回収」という言葉を見かけることがあります。品質・ 安全管理の 決まりは、 どこに ある? — GQP・ GVP・ QMS省令 - 6-2 行政指導は、
どの 化粧品を扱うA社の広報担当者に、県の薬務主管課(薬事を担当する課)から、広告の表現を見直すよう求める電話があったとします。法律で 決まっている? — 従う 義務・ 書面・中止の 求めと、 都道府県の 指導
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第5条第3号、第12条の2、第14条第2項、第69条〜第76条の3、第80条の10 出典元(2026-09-08 確認。2026-05-21施行版)
- 薬機法 2027年5月20日施行版(版ID 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)第6条の4、第6条の5、第29条の5、第72条〜第72条の8、第75条、第75条の2 出典元(2026-09-08 確認)
- 行政手続法(平成5年法律第88号)(URL未確認・2026-09-08 時点。法令番号は薬機法第75条の5の18の引用による。同法の本文は取得しておらず、条文の内容は引いていない)
- 行政不服審査法(平成26年法律第68号)(URL未確認・2026-09-08 時点。法令番号は薬機法第13条の2第5項の引用による。同法の本文は取得しておらず、条文の内容は引いていない)