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行政指導 — 定義と任意性、書面の交付、中止の求めは、どの条文にあるか

薬機法の第十三章「監督」には、指導を定める条文がありません。「行政指導」という語を定義しているのは行政手続法第2条第6号で、従う義務の有無(第32条)、示すべき事項と書面の交付(第35条)、中止を求める申出(第36条の2)も同法にあります。ただし同法第3条第3項は、地方公共団体の機関がする行政指導について、第二章から第六章までの規定を適用しないと定めています。都道府県の指導は、この除外の側です。このページは、その条文の並びと、公表について条文と行政の資料が何を書いているかを確認します。

30秒でわかる要点

  • 「行政指導」を定義しているのは行政手続法第2条第6号。薬機法の第十三章「監督」に指導を定めた条文はなく、薬機法で行政機関の指導を定めているのは第68条の6、第68条の8、第68条の23という3か条だけで、対象は条文上「記録等の事務について」に限られる。
  • 行政手続法第32条第1項は、行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることへの留意を求め、第2項は従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁じている。趣旨・内容・責任者を示すこと(第35条第1項)、口頭のときの書面の交付(同条第3項)、中止の求め(第36条の2)も同法にある。
  • ただし、その第四章は都道府県の薬務主管課がする行政指導には適用されない。第3条第3項が、地方公共団体の機関がする行政指導について第二章から第六章までを適用しないと定めており、代わりに第46条が、同法の趣旨にのっとった措置を講ずる努力義務を地方公共団体に課している。

「行政指導」とは、どの法律の、どの条文が定めている言葉か

行政手続法第2条第6号が定めています。薬機法の第十三章「監督」には、指導を定める条文が置かれていません。

定義は「指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないもの」という書き方です。

薬機法の条文を端から端まで探しても、「行政指導」という語は出てきません。この語を定義しているのは行政手続法のほうです。同法第2条第6号は、行政機関が任務又は所掌事務の範囲内において、一定の行政目的のために特定の者に一定の作為又は不作為を求める行為のうち、処分に該当しないものを行政指導としています。

この定義は、5つの要素でできています。

  • 主体は「行政機関」。同条第5号がイ・ロで定義し、ロが「地方公共団体の機関(議会を除く。)」を掲げています
  • 範囲は「その任務又は所掌事務の範囲内」
  • 目的は、一定の行政目的の実現
  • 内容は、特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為
  • そこから「処分に該当するもの」が除かれます

最後の要素が効いています。行政指導は、処分ではないものとして定義されているからです。比べられる語も同じ条にあります。同条第2号は「処分」を「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定めています。

同条第4号は「不利益処分」を「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。」と定め、続くイからニまでで、除かれるものを4つ掲げています。

薬機法の側に「指導」の条文はあるか

第十三章「監督」(第69条から第76条の3の3まで)に、指導を定める条文はありません。ここに置かれているのは、報告徴収・立入検査、各種の命令・処分、課徴金納付命令の手続(第75条の5の2から第75条の5の19まで)、薬事監視員(第76条の3)、麻薬取締官及び麻薬取締員による職権の行使(第76条の3の2)、関係行政機関の連携協力(第76条の3の3)などです。薬機法が置いている命令・処分の一覧は薬機法に違反するとどうなるかにあります。

ほかの章には、「指導及び助言」という見出しの条文が3つあります。第68条の6(特定医療機器に関する指導及び助言)、第68条の8(再生医療等製品に関する指導及び助言)、第68条の23(生物由来製品に関する指導及び助言)です。いずれも厚生労働大臣又は都道府県知事が「記録等の事務について必要な指導及び助言を行うことができる」と定めるもので、薬機法の条文中で行政機関が指導を行うことを定めているのは、この3か条です。

ほかに「要指導医薬品」「薬学的知見に基づく指導」の語もありますが、これらは薬局開設者・薬剤師等の行為についての規定です。

行政の文書では「監視指導」という語が使われます。医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)は、医薬品等の広告について「都道府県等を中心として監視指導が行われているところです」と書いています。都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部(局)薬務主管課あてに出された平成30年8月8日 事務連絡「医薬品等広告に係る適正な監視指導について(Q&A)」は、回答の中で「指導対象とすべきと解する」「必要に応じて、指導すべきである」「指導対象とはならない」という書き方をしています。

行政指導には、従う義務があるのか

行政手続法第32条第1項は、行政指導の内容が相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならないと定めています。

同条第2項は、従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならないと定めています。

行政指導について定める行政手続法第四章は、第32条から始まります。見出しは「行政指導の一般原則」です。

第1項が留意を求めているのは2つです。当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと。そして、行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることです。

第2項は、相手方が行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁じています。

権限を示すことについて

第34条は、許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、その権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合にする行政指導について定めています。「当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない」というものです。

第33条は、申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導についての規定です。申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により、当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならないと定めています。

紛らわしいのは、第32条第2項の「不利益な取扱い」と、第2条第4号の「不利益処分」が別の語だという点です。前者は行政指導の相手方に対する取扱いについて書かれています。後者は「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。」と定義され、同号のイからニまでが、除かれるものを掲げています。

薬機法の罰則は、何を対象として掲げているか

薬機法第十八章「罰則」は第83条の6から第91条までで、条ごとに法定刑を定め、その多くが対象を号で列挙しています。号に掲げられているのは、次の3つの型です。

  • 条文の禁止・義務に直接違反した場合(第84条第1号は第4条第1項の違反、第85条第4号は第66条第1項又は第3項の違反、同条第5号は第68条の違反)
  • 条文に定められた命令・処分に違反した場合(第84条第26号は第69条の3の規定による命令の違反、第85条第6号は第72条の5第1項の命令の違反)
  • 第69条の報告徴収・立入検査等に応じなかった場合(第87条第13号は、報告をせず若しくは虚偽の報告をしたとき、立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき、質問に対して正当な理由なしに答弁せず若しくは虚偽の答弁をしたとき)

号を使わない条もあります。登録認証機関の役員又は職員の収賄(第83条の6)と指定薬物に係る違反(第83条の9)です。第90条は両罰規定、第91条は過料です。

第十八章のどの条にも、行政指導に従わなかったことを対象として掲げた規定はありません。薬機法の条文に「行政指導」の語が無いことは、前の節で見たとおりです。

条ごとの法定刑は薬機法の刑事罰で扱っています。命令・処分の条文は業許可への処分第72条の5 措置命令にあります。

なお、第85条第6号が引く第72条の5第1項は、令和7年法律第37号により2027年5月20日から第72条の6第1項へ繰り下がります。空いた第72条の5には、業務の運営の改善に必要な措置の命令(現行の第72条の4)が入ります。同日、第85条第6号の引用も「第七十二条の六第一項」に書き換わります。第72条の5第1項の条文は、公表について扱う節に条文カードとして掲げています。

都道府県の薬務主管課がする行政指導にも、行政手続法の第四章は適用されるのか

適用されません。行政手続法第3条第3項が、地方公共団体の機関がする行政指導について、第二章から第六章までの規定を適用しないと定めています。

第46条は、地方公共団体が同法の規定の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。

都道府県の薬務主管課がする行政指導に、行政手続法第四章は適用されません。外しているのは第3条第3項です。

括弧書きの位置に注意が要ります。「(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)」は「処分」の直後に置かれ、「及び行政指導」はその後に続いています。

「次章」がどこを指すかも、条文から辿れます。第3条は第一章「総則」(第1条から第4条まで)にあるので、「次章」は第二章です。行政指導について定める第四章(第32条から第36条の2まで)も、処分等の求めについて定める第四章の二(第36条の3)も、第二章から第六章までの範囲に入ります。

外したままにはなっていません。適用除外を受けた場合について、第七章「補則」の第46条が地方公共団体の努力義務を定めています。

地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

行政手続法(平成5年法律第88号)第46条(地方公共団体の措置)

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

行政指導を受けたときは、行政手続法第35条により趣旨・内容・責任者が示され、口頭のときは求めれば書面が交付される。都道府県の指導も同じ。

現行

行政手続法第3条第3項は、地方公共団体の機関がする行政指導について、第二章から第六章までの規定を適用しないと定めている。第35条は第四章にある。第46条は、地方公共団体が同法の規定の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めている。適用されないのは国の法律である行政手続法の第二章から第六章までであって、各地方公共団体が第46条を受けて定めている手続については、その本文を出典として確認していないため本ページでは扱っていない。

行政手続法(平成5年法律第88号)第3条第3項・第35条・第46条。e-Gov 法令検索の版ID 405AC0000000088_20260724_508AC0000000066(2026-07-24 施行)で確認。

薬機法の広告について「都道府県等を中心として監視指導が行われているところです」と書いているのは、平成29年9月29日 薬生発0929第4号です。都道府県が処理することとされている薬機法の事務のうち、どれが第一号法定受託事務とされているかは第81条の3が列挙しており、第72条の5 措置命令で扱っています。

第3条第3項が対象としているのは、地方公共団体の機関がする処分・行政指導・届出と、地方公共団体の機関が命令等を定める行為です。国の行政機関がするものについては、第3条第1項が各号で個別に掲げています。

行政指導に関係する号として、第13号が「公衆衛生、環境保全、防疫、保安その他の公益に関わる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導」を、第14号が「報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導」を掲げています。

行政指導をする側は、何を示さなければならないとされているか

趣旨、内容、責任者の3つです。行政手続法第35条第1項が、相手方に対して明確に示さなければならないと定めています。

口頭でされた場合は、相手方が求めれば、行政上特別の支障がない限り書面が交付されます(同条第3項)。

示すべきものは、趣旨、内容、責任者の3つです。定めているのは第35条第1項です。

第2項は、示すべき事項を追加しています。行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して次の3つを示さなければならない、というものです。

  1. 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
  2. 前号の条項に規定する要件
  3. 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由

第3項は、書面の交付についての規定です。行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から第1項・第2項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならないとしています。

第4項は、この書面の交付の規定を適用しないものを2つ掲げています。相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの(第1号)と、既に文書(第3項の書面を含む。)又は電磁的記録によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの(第2号)です。

複数の者を対象とするとき

ここで公表の対象になっているのは「行政指導指針」です。第2条第8号ニが定義しています。同一の行政目的のため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときに、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう、というものです。

同号は、行政指導指針を「命令等」の一つに掲げています。「命令等」を定めようとする場合の手続は、第六章「意見公募手続等」にあります。第39条第1項は、命令等制定機関が命令等を定めようとする場合に、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先及び意見提出期間を定めて広く一般の意見を求めなければならないと定めています。

ただし、ここにも適用除外があります。第3条第2項第6号は、「審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの」を定める行為について、第六章の規定を適用しないとしています。

第35条も第36条も第四章にあります。地方公共団体の機関がする行政指導には、第3条第3項によりこれらの規定は適用されません。

個別の行政指導は、公表されるのか

行政手続法が公表しなければならないとしているのは、行政指導指針です(第36条)。個別の行政指導の公表について定めた条文は、同法第四章にありません。

薬機法が「公示」を命ずることができる措置に掲げているのは、第72条の5第1項(2027年5月20日から第72条の6第1項)の措置命令です。

行政手続法が「公表しなければならない」としているのは、複数の者を対象とするときの行政指導指針です(第36条)。個別の行政指導の公表について定めた条文は、第四章にありません。これに対し薬機法の措置命令は、命ずることができる措置の中に「公示」が条文上入っています。

同じ「公表」という言葉でも、何を単位として公表しているかは資料ごとに違います。指針そのものを出すもの、命令の内容を出すもの、件数だけを出すもの、事例の類型を出すもの。目盛りの違う物差しが並んでいると思って読むと、資料どうしの食い違いに戸惑わずに済みます。

表1:公表について、条文と行政の資料が何を定め、何を載せているか
対象公表について書かれていること根拠
行政指導(複数の者を対象とするもの)行政機関は、あらかじめ行政指導指針を定め、行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければならない行政手続法 第36条
行政指導(個別のもの)公表について定めた条文は、行政指導について定める第四章(第32条〜第36条の2)に置かれていない行政手続法 第四章
薬機法の措置命令命ずることができる措置に「これらの実施に関連する公示その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置」が含まれる薬機法 第72条の5第1項(2027年5月20日から第72条の6第1項。空いた第72条の5には業務の運営の改善に必要な措置の命令が入る)
厚生労働省の報道発表家庭用医療機器の広告に関して第72条の5第1項(2027年5月20日から第72条の6第1項)の規定に基づく措置命令を行った旨が、事業者名・製品名とともに公表されている厚生労働省 報道発表資料「医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました」(2025年11月7日)
消費者庁のインターネット監視(健康増進法第65条第1項)改善指導を行った事業者数・商品数が四半期ごとに公表されている。令和8年4月〜6月は117事業者・126商品。事業者名の記載はない消費者庁「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について(令和8年4月〜6月)」(令和8年9月4日)
東京都のページ掲げられているのは、「不適表示・広告例又は解説(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器)」「医薬品等広告講習会 資料」などで、個別の事業者への指導の記録ではない東京都保健医療局「医薬品等の広告規制について(医薬品医療機器等法)」

消費者庁のインターネット監視の行は、健康増進法第65条第1項に基づくもので、薬機法の監視指導とは根拠法も所管も異なります。公表される単位(指針・命令・件数・事例の類型)が資料ごとに違うことを示すために並べています。

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の6 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の5 は業務の運営の改善に必要な措置の命令になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

「公示」は、この項が命ずることができる措置の一つとして条文に書かれているものです。行政手続法の側で「公表しなければならない」とされている行政指導指針とは、根拠も対象も別です。措置命令の内容は第72条の5 措置命令 — 中止・再発防止・公示で扱っています。

周知の方法について、東京都は広告規制のページで次のように書いています。

最近の健康志向の高まりの中、医薬品医療機器等法の認識不足等により、虚偽・誇大な広告・表示をしたものが見受けられます。本都においては監視指導や事前相談の充実により広告の適性化を図っているところです。しかしながら、不適正広告等を未然に防止するためには、広告主自身による自主的な確認や広告媒体業者等による審査体制の充実が必要となります。このことから、広くインターネットにより不適事例や考え方を周知することとしました。

東京都保健医療局「医薬品等の広告規制について(医薬品医療機器等法)」。表記は原文のまま(2026-09-08 確認)

周知されているのは不適事例と考え方であり、どの事業者にいつ指導したかではありません。他の自治体では運用が異なる場合があります。

要点

公表の単位は資料ごとに違います。行政指導指針は第36条により公表され、措置命令は「公示」が命ずることができる措置に入り、消費者庁の改善指導は件数が四半期ごとに公表されます。個別の行政指導の公表について定めた条文は、行政手続法第四章にありません。

行政指導に納得できないときの手続は、条文に置かれているか

置かれています。行政手続法第36条の2が、法令に違反する行為の是正を求める行政指導について、中止その他必要な措置を求める申出の手続を定めています。

対象は「その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る」と、括弧書きで限定されています。

置かれています。行政手続法第36条の2が「行政指導の中止等の求め」を定めています。ただし対象には、条文上の限定がかかっています。

この申出は、第2項により申出書を提出してすることとされています。記載事項は6つです。

  1. 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
  2. 当該行政指導の内容
  3. 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
  4. 前号の条項に規定する要件
  5. 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
  6. その他参考となる事項

第3項は、申出を受けた側の対応を定めています。申出があったときは当該行政機関が必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない、というものです。

先に触れた限定は、第1項の括弧書きです。対象を「その根拠となる規定が法律に置かれているもの」に限っています。第3号・第4号が申出書に「根拠とする法律の条項」と「その条項に規定する要件」を書かせているのも、この限定に対応しています。

同項ただし書は、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでないとしています。

もう一つの申出(第36条の3)

第四章の二「処分等の求め」の第36条の3第1項は、逆の向きの申出を定めています。行政指導を受けた側からの申出ではなく、されるべき処分又は行政指導がされていないと考えた者からの申出です。

条文は「何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる」というものです。申出書の記載事項は同条第2項が6つ掲げています。

第四章と第四章の二は、いずれも第3条第3項が適用除外とする「次章から第六章まで」の範囲に入ります。地方公共団体の機関がする行政指導について、これらの申出の規定は適用されません。

不利益処分の手続(第三章)は、行政指導の第四章とは別の章です。薬機法第75条の5の18は、厚生労働大臣が第75条の5の2から第75条の5の16までの規定によってする課徴金納付命令その他の処分について「行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章の規定は、適用しない」とし、ただし第75条の5の2の規定に係る同法第12条の適用については、この限りでないとしています。課徴金の手続は薬機法の課徴金で、業許可への処分の前後に置かれた手続は業許可への処分で扱っています。

指導を受ける前に行政へ相談する仕組みは、どこに示されているか

法律ではなく、各自治体の公表資料です。東京都は保健医療局のページで、医薬品等の広告・表示の相談を予約制で受け付けると書いています。

同ページは「他道府県に本店のある事業者の方は、それぞれの道府県の薬務主管課にお問い合わせください。」としています。

行政手続法が定めているのは、行政指導がされる場面と、その後の手続です。その前に行政へ相談する仕組みは、法律ではなく各自治体が公表しています。

東京都保健医療局の広告規制のページは、都の取組を「監視指導や事前相談の充実により広告の適性化を図っているところです」と書いています(表記は原文のまま)。相談の受け方は、同局の講習会資料のページに書かれています。窓口は業態で分かれています。

  • 製造販売業者:健康安全研究センター広域監視部。医薬品(体外診断用医薬品を除く)・医薬部外品・化粧品は薬事監視指導課、医療機器・体外診断用医薬品は医療機器監視課
  • その他の事業者(東京都内に本店のある広告代理店、放送事業者など):保健医療局健康安全部薬務課監視指導担当
  • 相談は予約制。電話で予約を取り、必要に応じて指定のアドレスへ資料を送付する
  • プログラムの医療機器該当性の相談は、令和3年4月1日から厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課で一元的に行うこととされている

他の道府県に本店がある場合について、同ページは「他道府県に本店のある事業者の方は、それぞれの道府県の薬務主管課にお問い合わせください。」と書いています。

ここに挙げたのは東京都の記載です。薬機法の広告の監視指導は都道府県等を中心として行われており(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)、窓口の置き方や受付の方法は各自治体が公表しています。他の自治体では運用が異なる場合があります。

本ページは、47都道府県の薬務主管課を網羅した公的な一覧を出典として確認していないため、東京都以外の窓口は挙げていません。相談先の使い分けはどこに相談するかで扱っています。

行政の部局名は変わります。ここに挙げた課名は、2026-09-08 時点で東京都保健医療局のページに載っているものです。古い資料の課名のままでは、現在の窓口に届きません。法令の側で古くなった記述の一覧は古い理解の一覧に置いています。

理解の確認

「行政指導に従わなかったこと」が薬機法第十八章の罰則の対象として号に掲げられていないのは、両法の作りのどこから説明できるか。

薬機法の条文には「行政指導」の語がなく、第十八章「罰則」(第83条の6〜第91条)が号で掲げている対象は、条文の禁止・義務への直接の違反、条文に定められた命令・処分への違反、第69条の報告徴収・立入検査等に応じなかった場合という3つの型に限られます。行政指導のほうは行政手続法第2条第6号が「処分に該当しないもの」として定義する行為で、第32条第1項はその内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることへの留意を求め、第2項は従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁じています。任意の協力を前提とする行為には、薬機法の側に罰則を結び付ける先が置かれていない、という関係です。

根拠:薬機法第十八章(第83条の6〜第91条。第84条第1号・第85条第4号・第87条第13号ほか)、行政手続法(平成5年法律第88号)第2条第6号・第32条(法令確認日 2026-09-08)

都道府県の薬務主管課がした行政指導について、行政手続法第35条第3項(口頭のときの書面の交付)を根拠にできないのはなぜか。

第35条は同法第四章にあり、第3条第3項が、地方公共団体の機関がする行政指導について第二章から第六章までの規定を適用しないと定めているためです。外れるのが章の単位なので、方式(第35条)だけでなく、複数の者を対象とするときの行政指導指針(第36条)も、中止等の求め(第36条の2)もまとめて適用されません。代わりに第七章の第46条が、同法の規定の趣旨にのっとり必要な措置を講ずる努力義務を地方公共団体に課しています(各地方公共団体が第46条を受けて定めている手続は、本ページでは扱っていません)。

根拠:行政手続法(平成5年法律第88号)第3条第3項・第35条・第46条(法令確認日 2026-09-08)

行政指導の中止等の求め(第36条の2第1項)に「その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る」という括弧書きが付いていることは、この手続の作りとどう対応しているか。

この申出は、当該行政指導が「当該法律に規定する要件に適合しない」と思料することを理由にするもので、第3項も、行政機関が必要な調査を行い要件に適合しないと認めるときに中止その他必要な措置をとるとしています。照らし合わせる要件が法律の側にあることが前提の手続なので、根拠となる規定が法律に置かれていない行政指導は括弧書きによって対象から外れます。第2項の申出書が、第3号に「当該行政指導がその根拠とする法律の条項」、第4号に「前号の条項に規定する要件」を書かせているのも、この限定に対応しています。

根拠:行政手続法(平成5年法律第88号)第36条の2第1項〜第3項(法令確認日 2026-09-08)

次に読む

  • 行政手続法(平成5年法律第88号)第2条・第3条・第32条〜第36条の3・第39条・第46条 e-Gov 法令検索(版ID 405AC0000000088_20260724_508AC0000000066、2026-07-24 施行。2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第68条の6・第68条の8・第68条の23・第69条・第69条の3・第72条の4・第72条の5・第75条の5の18・第81条の3・第83条の6・第83条の9・第84条・第85条・第87条・第90条・第91条 e-Gov 法令検索(2026-05-21 施行版。2026-09-08 確認)
  • 医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日 薬生発0929第4号、厚生労働省医薬・生活衛生局長)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 医薬品等広告に係る適正な監視指導について(Q&A)(平成30年8月8日 事務連絡、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました(2025年11月7日 報道発表資料、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について(令和8年4月〜6月)(令和8年9月4日、消費者庁表示対策課ヘルスケア表示指導室)消費者庁(2026-09-08 確認)
  • 医薬品等の広告規制について(医薬品医療機器等法)(東京都保健医療局健康安全部薬務課)東京都保健医療局(2026-09-08 確認)
  • 医薬品等広告講習会 資料(令和7年度。相談窓口の記載を含む。東京都保健医療局健康安全部薬務課)東京都保健医療局(2026-09-08 確認)