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薬機法の課徴金は、どう計算される? — 4.5%・225万円・減額と手続

化粧品を扱うA社の広告が、医薬品や化粧品などについて、うそや大げさな広告を禁じる第66条第1項に違反するとされた場面を考えます。このとき、厚生労働大臣から、お金を納めるよう命じられることがあります。これが課徴金です。額は、対価合計額に4.5%を掛けて出します。対価合計額は、厚生労働省の通知(国が法律の扱い方を示す文書)では売上高です。4.5%を掛けた額が225万円未満なら、納付を命じることはできません。このページでは、対象になる違反、額の計算と減額、報告の出し方、命令から納付までの流れを、例を交えて説明します。

30秒でわかる要点

  • 対象は第66条第1項の違反だけ:課徴金の対象は、医薬品等(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品)について、うそや大げさな広告などをすること(第66条第1項の違反)だけです。承認前(国の承認を受ける前)の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告を禁じる第68条の違反は、課徴金の対象に挙げられていません。第68条の違反は、措置命令(中止などを命じるもの)の側に挙げられています。
  • 額は対価合計額の4.5%:対価合計額は、厚生労働省の通知(国が法律の扱い方を示す文書)では売上高(消費税相当額を含む)です。4.5%を掛けた額が225万円未満なら、納付を命じることはできません。この下限は、減額の前の額で見ます。
  • 減額は2つ、報告は厚生労働省へ:景品表示法(不当な景品類や表示を規制する法律)で課徴金の命令など(同法第8条第1項の命令等)があれば、対価合計額の3%を減額します。事実を厚生労働大臣に報告すれば、計算した額の50%を減額します。厚生労働省は、都道府県に報告書を出しても報告としては認められないとしています。

1. 課徴金は、どんな違反に対して命じられるのですか?

医薬品・化粧品などの医薬品等について、うそや大げさな広告などを禁じる第66条第1項の違反だけです。第66条第3項と第68条の違反は、対象に挙げられていません。

条文は、この行為を「課徴金対象行為」、行為をした者を「課徴金対象行為者」と呼んでいます。

課徴金は、違反をした者が、厚生労働大臣から納めるよう命じられるお金です。命じることを「課徴金納付命令」といいます。額は、違反に関係する医薬品等の代金(対価)の合計をもとに計算します(2.の節)。

対象になる違反は、条文で限られています。第75条の5の2第1項は、対象を「第六十六条第一項の規定に違反する行為」と書いています。

第66条第1項は、医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能について、うそや大げさな(虚偽又は誇大な)記事を広告し、記述し、又は流布することを禁じる規定です。医薬品等とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品のことです。詳しくは『2-2 医薬品や化粧品などの広告で、事実と違う・大げさな表現は禁止ですか?』(第66条)で扱います。

第66条第2項は、医薬品等の効能・効果・性能について、医師などが保証したと誤解されるおそれのある記事の広告なども、第1項にあたるものとしています。

原文の言い回しを見る(第66条第2項)

第66条第2項は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布すること」を、前項に該当するものとすると定めています。

例

冒頭のA社が、化粧品の効果を大げさに書いた広告を出したとします。これが第66条第1項に違反するとされれば、課徴金の対象になり得ます。

課徴金の対象に挙げられていない違反

第75条の5の2第1項に挙げられていない違反は、次の2つです。

  • 第66条第3項の違反:堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書若しくは図画を用いることの禁止
  • 第68条の違反:承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

挙げられていないことは、薬機法では何もできないという意味ではありません。第68条の違反は、措置命令(違反した広告について、中止などを命じるもの)の側に挙げられています。根拠は第72条の5第1項で、2027年5月20日から第72条の6第1項に移ります(『6-5 違反広告の措置命令では、何を命じられる?』)。

条番号が動く理由は、「課徴金が、ほかの命令・処分や景品表示法の課徴金と重なるときは、どう調整されるのか」を扱う5.の節で説明します。

このページが扱うのは、額の計算、報告、命令の手続といった細目です。命令・処分・罰則の全体の中で課徴金がどこに置かれているかと、率・下限・減額の一覧は、『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』にまとめています。

2. 課徴金の額は、どんな順番で計算するのですか?

対価合計額に4.5%を掛けます。条件を満たせば、対価合計額の3%と、計算した額の50%を差し引き、1万円未満を切り捨てます。

4.5%を掛けた額が225万円未満なら、納付を命じることはできません(第75条の5の2第4項)。

計算の各段は、条文の別々の場所に置かれています。

  1. 対価合計額を出す

    課徴金対象期間(対価合計額を数える期間。4.の節)に取引をした、違反に係る医薬品等の対価の額を合計します(第75条の5の2第1項)。出し方は、厚生労働省の通知(2021年7月)が示しています(3.の節)。

  2. 4.5%を掛ける

    対価合計額に4.5%(条文では「百分の四・五」)を掛けた額が、第75条の5の2第1項の課徴金の額です。

  3. 景品表示法の命令等があれば、対価合計額の3%を引く

    景品表示法は、不当な景品類や表示を規制する別の法律です。同じ行為について、景品表示法の課徴金の命令(同法第8条第1項の命令)があるときに引きます。同法第11条により、景品表示法の側で課徴金の納付を命じないものとされるときも同じです(第75条の5の3)。

  4. 報告があれば、計算した額の50%を引く

    違反にあたる事実を、厚生労働省令(厚生労働省が定める細かい決まり)で定めるところにより厚生労働大臣に報告したときです(第75条の5の4)。調査があったことにより命令があるべきことを予知してした報告(調査が入ったことで、命令を受けると見込んでから出した報告)は、除かれます。

  5. 1万円未満を切り捨てる

    計算した額に1万円未満の端数があれば、切り捨てます(第75条の5の5第2項)。

直感的なポイント

計算は、階段を1段ずつ下りるように進みます。前の段で出た額が、次の段の出発点です。3%と50%の段は、条件を満たすときに通ります。

例

冒頭のA社の場面で、対価合計額を仮に「100」とします。4.5%を掛けると「4.5」です。この「4.5」にあたる額が225万円未満なら、納付を命じることはできません。

225万円以上で、同じ行為に景品表示法の命令等があれば、対価合計額の3%の「3」を引いて「1.5」になります。さらに報告による減額があれば、その半分を引いて「0.75」です。最後に、1万円未満の端数を切り捨てます。

225万円の下限は、減額の前の額で見る

下限は第75条の5の2第4項にあります。条文は「第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるときは、課徴金の納付を命ずることができない」と書いています。引いているのは同条第1項、つまり4.5%を掛けた段の額です。

一方、報告による50%の減額は、景品表示法との調整(第75条の5の3)が働くときは、3%を引いた後の額を基準にします。

原文の言い回しを見る(第75条の5の4の書き出し)

第75条の5の4は、「第七十五条の五の二第一項又は前条の場合において」と書き始めます。減額の基準は「同項又は同条の規定により計算した課徴金の額」です。

景品表示法の課徴金と比べると

景品表示法にも課徴金があります。基本の率は売上額の3%で、一定の場合は4.5%です。その額が150万円未満なら命じられません。報告による50%の減額は、両方の法律にあります。

景品表示法には、知らなかったことによる除外の定めがあります。行為の期間を通じて、表示が課徴金の対象になる表示にあたると知らず、そのことに相当の注意を怠った者でもないと認められるときです。薬機法の第75条の5の2第1項から第4項には、これに相当する定めは置かれていません。

どちらの法律も、違反行為をやめた日から5年を経過すると、命じることができなくなります。景品表示法の課徴金は『7-4 景品表示法の課徴金はどう決まり、確約手続はどう進む?』で扱います。

表1:薬機法と景品表示法の数値を比べる
表1:薬機法と景品表示法で、課徴金について条文が置いている数値
項目薬機法景品表示法
算定率対価合計額の百分の四・五(第75条の5の2第1項)売上額の百分の三(第8条第1項)。基準日から遡り10年以内に確定した課徴金納付命令を受けたことがあり、かつ、その命令の日以後において課徴金対象行為をしていた者は百分の四・五(第8条第5項)
命じない・命ずることができない下限第1項の規定により計算した額が225万円未満(第75条の5の2第4項)その額が150万円未満(第8条第1項ただし書)
報告による減額百分の五十。調査があったことにより命令があるべきことを予知してされた報告を除く(第75条の5の4)百分の五十。同じただし書がある(第9条)
認識に関する除外第75条の5の2第1項から第4項までに、これに相当する定めは置かれていない課徴金対象行為をした期間を通じて表示が各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき(第8条第1項ただし書)
命ずることができなくなる期間課徴金対象行為をやめた日から5年(第75条の5の5第7項)課徴金対象行為をやめた日から5年(第12条第7項)

両法の条文の文言を並べたもので、ある行為にどちらが適用されるかを示す表ではありません。数値は各法の現行の規定です(法令確認日 2026-09-08)。

3. 計算のもとになる「対価合計額」は、どう出すのですか?

通知は、対価合計額を売上高(消費税相当額を含む)とし、総対価額(差し引く前の対価の合計)から値引き・返品・割戻金(リベート)を差し引いて出すとしています。

条文は名前を決めているだけで、出し方は厚生労働省の通知(2021年7月)が示しています。

第75条の5の2第1項は、括弧書きで「対価合計額」という名前を決めています。対象期間に取引をした、違反に係る医薬品等の対価の額の合計、という意味です。ただ、条文には中身の出し方が書かれていません。

それを示しているのが、厚生労働省の通知(2021年7月)です。この通知は、2019年の改正法の一部が2021年8月1日に施行され、課徴金納付命令の規定ができることに伴って出されました。

基本は「売上高」

通知は、対価合計額を売上高としています。売上高は「事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の額」で、消費税相当額も含むとしています。

通知によれば、計算は2段です。まず「総対価額」(差し引く前の対価の合計)を出し、そこから控除項目(差し引く項目)の合計を引きます(同通知 第2)。

例

冒頭のA社が、対象期間に問題の化粧品を小売店へ納品し、代金を受け取っていたとします。通知の考え方では、消費税相当額を含む売上高がもとになります。期間中に返品があれば、返品された商品の対価の額を差し引くとされています。

通知の原文(第1・第2)

通知の日付と番号は、令和3年7月6日 薬生監麻発0706第1号です。令和元年法律第63号の一部が令和3年8月1日に施行されて課徴金納付命令が規定されることに伴い、算定の方法を示したものです。宛先は、都道府県・保健所設置市・特別区の薬務主管部(局)長です。

課徴金額算定の根拠となる、(中略)第75条の5の2第1項に規定する、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為(以下「課徴金対象行為」という。)に係る医薬品等の対価の額(以下「対価額」という。)の合計額(以下「対価合計額」という。)は、売上高(事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の額(消費税相当額を含む。)をいう。)とする。

課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法について(令和3年7月6日 薬生監麻発0706第1号、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長)第1

第2は「課徴金算定の基礎となる対価合計額は、『1 総対価額の算定方法』のとおり算定した総対価額から、『2 総対価額からの控除項目』の控除項目の合計額を控除して算定する」と書いています。総対価額の出し方が第2の1、控除項目が第2の2です。

総対価額を出す2つの方法

通知は、総対価額を原則として「引渡基準」で出すとしています。対象期間に引き渡した、違反に係る医薬品等(商品)の対価を合計する方法です。医療機器プログラム(医療機器として扱われるソフトウェア)の場合は、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することも、引き渡しに含みます。

例外が「契約基準」です。対象期間に結んだ契約で定められた、違反に係る医薬品等の対価の額を合計します。使うのは、対価が契約の締結の際に定められる場合で、2つの方法の合計額に著しい差異を生ずる事情があると認められるときです。

どちらを使うかについて、通知は、実際に両方で計算して比べるのではないとしています。著しい差異が生じる蓋然性(そうなる見込み)が、類型的又は定性的に(取引の型や性質から見て)認められるかで判断する、という考え方です。

原文で確かめる

なお、契約基準を用いるか否かについては、実際に両方の方法で額を計算し、その額に著しい差異が生じたか否かによってではなく、そのような著しい差異が生じる蓋然性が類型的又は定性的に認められるか否かによって判断する。

同通知 第2の1(2)

総対価額から差し引くもの

通知は、引渡基準のときに差し引く項目として、次の3つを挙げています。

  • ア 値引き:量目不足(表示より量が足りないこと)、品質不良、破損、役務(サービス)の不足や不良などを理由に、対象期間に代金の全部又は一部を差し引いた額
  • イ 返品:対象期間に返品された商品の対価の額
  • ウ 割戻金:引き渡しの実績に応じて割戻金(リベート)を払う、書面による契約がある場合の割戻金の額。細かい条件は表2にあります

通知は、アとイについて、期間中に引き渡した商品についての値引きや返品かどうかは、アやイにあたるかどうかとは関係がないとしています。一方、ウの割戻金は、期間中に引き渡した商品に対応する額に限られるとしています。

契約基準のときについて、通知は、値引きや返品は契約の修正という形で行われ、修正後の契約額が総売上額(差し引く前の売上の総額)になると書いています。

表2:差し引く項目(通知の原文)
表2:引渡基準で算定する場合に、総対価額から控除する項目
場面控除する額根拠
課徴金対象期間において医薬品等の量目不足、品質不良又は破損、役務の不足又は不良その他の事由により対価の額の全部又は一部を控除した場合控除した額同通知 第2の2(1)ア
課徴金対象期間において医薬品等が返品された場合返品された医薬品等の対価の額同通知 第2の2(1)イ
医薬品等の引渡しを行う者が引渡しの実績に応じて割戻金の支払を行うべき旨の書面による契約があった場合(一定の期間内の実績が一定の額又は数量に達しない場合に割戻しを行わない旨を定めるものを除く)課徴金対象期間におけるその実績について当該契約で定めるところにより算定した割戻金の額(一定の期間内の実績に応じて異なる割合又は額によって算定すべき場合は、それらのうち最も低い割合又は額により算定した額)同通知 第2の2(1)ウ

3行とも出典は令和3年7月6日 薬生監麻発0706第1号です(2026-09-08 確認)。契約基準で総対価額を算定する場合は、上のウを準用するとされています(同通知 第2の2(2))。

4. 「課徴金対象期間」は、いつからいつまでですか?

違反行為をした期間が基本です。やめた後6月(6か月)を経過する日までに取引があればその間の最後の取引の日まで加わり、上限は3年です。

6月を経過する日より前に、誤解が生じるおそれをなくす措置(厚生労働省令で定める措置)をとったときは、その日で区切ります。

対価合計額を数える期間を「課徴金対象期間」といいます。定めているのは第75条の5の2第2項です。

基本は、違反行為(課徴金対象行為)をした期間です。そこに、次の2つの調整が入ります。

  • やめた後の取引が加わる:やめた日から6月(6か月)を経過する日までの間に、違反に係る医薬品等の取引をしたときは、その間で最後に取引をした日までが加わります。
  • 上限は3年:こうして出した期間が3年を超えるときは、期間の末日から遡って3年間になります。

6月を経過する日より前に、行為をした者が、誤解が生じるおそれをなくすための措置をとったときは、区切りはその日になります。この措置を、条文は「厚生労働省令で定める措置」と呼んでいます。

中身は、薬機法施行規則(薬機法の細かい決まりを定めた省令)の第249条の2にあります。違反した記事が虚偽又は誇大な記事にあたることを、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法などで周知する措置です。周知の相手は、医薬関係者、一般の人、又はその双方です。

方法には、2つの条件が付いています。1つは、不当に顧客を誘引し、医薬品等の適正かつ合理的な選択を妨げるおそれを、解消するために相当であることです。もう1つは、違反に係る医薬品等に応じて必要と認められることです。

例

冒頭のA社が、問題の広告をやめた後も、同じ化粧品を売り続けたとします。やめた日から6月を経過する日までの間に売った分があれば、その間で最後に売った日までが期間に加わります。

その前に、施行規則が定める周知の措置(新聞への掲載など)をとっていれば、加わるのはその日までの取引です。

原文で確かめる(第75条の5の2第2項・施行規則第249条の2)

薬機法施行規則の正式な番号は、昭和36年厚生省令第1号です。

法第七十五条の五の二第二項に規定する厚生労働省令で定める措置は、課徴金対象行為に係る記事が法第六十六条第一項に規定する虚偽又は誇大な記事に該当することを時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法その他の不当に顧客を誘引し、医薬関係者及び医薬関係者以外の一般人による医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品(以下この条において「医薬品等」という。)の適正かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するために相当であり、課徴金対象行為に係る医薬品等に応じて必要と認められる方法により、医薬関係者若しくは医薬関係者以外の一般人又はその双方に周知する措置とする。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 第249条の2(法第75条の5の2第2項に規定する厚生労働省令で定める措置)

命令ができなくなるまでの期間(5年)

課徴金対象期間とは別に、命令ができる期間にも区切りがあります。第75条の5の5第7項は、違反行為をやめた日から5年を経過したときは、厚生労働大臣は課徴金の納付を命ずることができないと定めています。対象期間の上限の3年とは、別の期間です。

会社が合併などで消えたとき

行為をした法人が合併で消えたときは、合併後も残る法人、又は合併で新しくできた法人がした行為とみなされます(第75条の5の5第3項)。

第4項は、合併以外の理由で法人が消えた場合です。対象は、その法人が、調査開始日以後に、違反に係る事業の全部を子会社等に譲渡し、又は分割で承継させ、そのうえで合併以外の理由で消えた場合です。このときは、事業の全部又は一部を譲り受け、又は分割で承継した子会社等(特定事業承継子会社等)がした行為とみなされます。特定事業承継子会社等が2以上あるときは、ほかの特定事業承継子会社等と連帯して命令を受ける形に読み替えます。

「調査開始日」は、第69条第5項による報告の徴収、帳簿書類その他の物件の提出の命令、立入検査又は質問が最初に行われた日です。これらが行われなかったときは、第75条の5の8第1項の通知を受けた日になります。

5. 景品表示法の課徴金や、ほかの処分と重なるとどうなりますか?

景品表示法の課徴金の命令などがあれば、対価合計額の3%を減額します。薬機法のほかの命令・処分をする、条文が定める2つの場合は、納付を命じないことができます。

命令の後に景品表示法の課徴金の命令などがあったときの額の変更は、第75条の5の5第8項にあります。

同じ行為に、景品表示法の課徴金や、薬機法の別の命令・処分が重なることがあります。薬機法は、この重なりを条文の中で調整しています。調整は、減額・納付を命じないことができる場合・命令の後の額の変更の3つです。

同じ行為に景品表示法の課徴金の命令などがあるときは、対価合計額の3%を減額します(第75条の5の3)。

減額と、命じないことができる場合の一覧は、『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』にもあります。

例

冒頭のA社の同じ広告について、景品表示法の課徴金の命令が先に出ていた場面を考えます。このとき、薬機法の課徴金の額は、4.5%を掛けた額から対価合計額の3%を差し引いて計算します。

納付を命じないことができる2つの場合

第75条の5の2第3項は、次の2つの場合に、課徴金の納付を命じないことができるとしています。

  • 第1号:第72条の4第1項(業務の運営の改善を命じる規定)又は第72条の5第1項(違反広告に係る措置命令等の規定)の命令をする場合。ただし、保健衛生上の危害(健康への害)の発生又は拡大に与える影響が軽微である(小さい)と認められる場合に限ります。
  • 第2号:第75条第1項(許可の取消し等)又は第75条の2第1項(登録の取消し等)の処分をする場合

第2号の処分は、『6-3 業務停止や許可の取消しは、どの条文で決まる?』で扱います。

原文で確かめる(第75条の5の2第3項)
表3:額と命令の有無に関わる規定の一覧
表3:課徴金の額と命令の有無に関わる規定
場面条文が定める効果根拠
同じ課徴金対象行為について景品表示法第8条第1項の規定による命令があるとき、又は同法第11条の規定により課徴金の納付を命じないものとされるとき対価合計額に百分の三を乗じて得た額を減額する薬機法第75条の5の3
課徴金対象行為に該当する事実を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告したとき(調査があったことにより課徴金納付命令があるべきことを予知してされた報告を除く)計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を減額する薬機法第75条の5の4
第72条の4第1項又は第72条の5第1項の命令をする場合(保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合に限る)納付を命じないことができる薬機法第75条の5の2第3項第1号
第75条第1項又は第75条の2第1項の処分をする場合納付を命じないことができる薬機法第75条の5の2第3項第2号
第1項の規定により計算した課徴金の額が225万円未満であるとき納付を命ずることができない薬機法第75条の5の2第4項
課徴金納付命令を受けた者について、後に景品表示法第8条第1項の規定による命令があったとき、又は同法第11条の規定により課徴金の納付を命じないものとされたとき課徴金の額を、対価合計額の百分の三を控除した額(報告による減額を受けていた場合は、さらにその百分の五十を控除した額)に変更しなければならない。変更後の額の1万円未満の端数は切り捨てる薬機法第75条の5の5第8項

全行の根拠は薬機法の各条項です(法令確認日 2026-09-08)。

命令の後に景品表示法の命令等があったとき

順番が逆の場合です。第75条の5の5第8項は、課徴金納付命令を受けた者について、次のどちらかがあったときは、課徴金の額を変更しなければならないと定めています。

  • 同じ行為について、景品表示法第8条第1項の命令があったとき
  • 同法第11条により、課徴金の納付を命じないものとされたとき

変更の手続は、薬機法施行規則第249条の4にあります。変更の文書には、変更後の額、変更の理由、変更後の納付期限を書きます(第1項)。変更後の額を超えてすでに納められていれば、速やかに超えた分を還付する(返す)手続をとります(第2項)。

2027年5月20日に、引いている条番号が変わります

第3項第1号が引いている第72条の5(違反広告に係る措置命令等)は、2027年5月20日に第72条の6へ移ります。

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の6 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の5 は業務運営の改善命令になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

同じ日に、現行の第72条の4も第72条の5へ移ります。第72条の4は、第72条から前条までに規定するもののほか、業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる旨の規定です。

これに合わせて、2027年5月20日施行の条文では、第3項第1号も「第七十二条の五第一項又は第七十二条の六第一項の命令をする場合」に改められています。第75条の5の2という条番号そのものは動きません。

6. 50%減額のための報告は、どこへ、どう出すのですか?

様式第106の2(施行規則が定める報告書の書式)の報告書を、厚生労働大臣に出します。方法は、直接持参・書留郵便等・電磁的記録(電子データ)の送信のどれかです。

厚生労働省は、提出先は厚生労働省のみで、都道府県に出しても第75条の5の4の報告としては認められないとしています。

第75条の5の4の報告は、違反にあたる事実を、自分から厚生労働大臣に知らせるものです。報告をすると、計算した課徴金の額の50%が減額されます(2.の節)。ただし、調査が入ったことで命令を見込んでから出した報告は、除かれます。

条文は、報告を「厚生労働省令で定めるところにより」するとしています。これを受けて、薬機法施行規則第249条の3が出し方を決めています。同条第1項によれば、様式第106の2による報告書を、次の3つのどれかで厚生労働大臣に出します。

  • 直接持参する
  • 書留郵便や、引受けと配達が記録される信書便(民間の事業者が手紙や文書を届けるサービス)などで送る
  • 電磁的記録(電子データ)を、電子情報処理組織(オンラインのシステム)で送信する

報告書には、違反にあたる事実の内容を示す資料を付けます(第2項)。書留郵便等で出したときの提出日時の扱いは、第3項にあります。電子データで送ったときは、厚生労働省のコンピュータのファイルに記録された時に、提出されたものとみなされます(第4項)。

施行規則第249条の3第1項の3つの方法(原文)

様式第百六の二による報告書(当該報告書に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む)を、次のいずれかの方法により厚生労働大臣に提出しなければならないと定めています。

  1. 直接持参する方法
  2. 書留郵便、民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第9項に規定する特定信書便事業者による同条第2項に規定する信書便の役務であって当該事業者において引受け及び配達の記録を行うもの、又はこれらに準ずる方法により送付する方法
  3. 電磁的記録を電子情報処理組織を使用して送信する方法

厚生労働省の案内(2026年5月)

厚生労働省の担当課(医薬局監視指導・麻薬対策課)は、2026年5月に、この報告の出し方の案内を出しています。

案内の正式な題名

題名は「薬機法第75条の5の4に基づく、課徴金行為対象事実の報告方法について」で、日付は令和8年5月21日です。

案内は、出し方として、直接持参・書留郵便等による送付・メールによる送信の3つを挙げています。宛先はこの担当課です。直接持参するときは、まず電話で連絡するよう書かれています。

なお、いずれの方法も、提出先は厚生労働省のみであり、各都道府県に報告書を提出しても薬機法第75条の5の4に基づく事実の報告としては認められませんのでご注意ください。

薬機法第75条の5の4に基づく、課徴金行為対象事実の報告方法について(令和8年5月21日、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課)末尾

同じ案内は、普通郵便など、引受けと配達が記録されない方法で出した報告書も、第75条の5の4の報告としては認められないとしています。

メールには、受付専用のアドレスが示されています。このアドレスでは、ほかの法令に基づく申告書・申請書・届出書・情報提供は出せません。添付できるファイルの容量は、合計で5MBまでです。個別案件の相談等は、都道府県薬務主管課(都道府県で、医薬品等に関する事務を担当する課)に問い合わせるようにとも書かれています。

例

ある会社が、報告書を都道府県の薬務主管課に持って行ったとします。案内によれば、これは第75条の5の4の報告としては認められません。普通郵便で厚生労働省に送った場合も、同じです。

7. 命令はどんな流れで出され、納めないとどうなるのですか?

弁明の機会(言い分を述べる機会)を経て、文書で命じられます。期限までに納めないと督促(納めるよう求めること)があり、延滞金が徴収されることがあります。

納期限は、命令書の謄本(写し)を発する日から7月(7か月)を経過した日です。

手続は、調査から執行(強制的な取り立て)まで、段階ごとに条文があります。

  1. 調査

    厚生労働大臣は、命令のために必要があると認めるときは、調査をすることができます(第69条第5項)。相手は、違反した者や、違反に関係のある者です。報告をさせる、帳簿書類などの提出を命じる、職員が事務所などに立ち入って検査する、関係者に質問する、といった方法です。

  2. 弁明の機会の通知

    命令をしようとするときは、名宛人(命令を受けることになる者)に、弁明の機会(言い分を述べる機会)を与えなければなりません(第75条の5の6)。通知は書面で、弁明書の提出期限(口頭のときはその日時)まで相当な期間をおいて行います(第75条の5の8第1項)。書面には、課徴金の額、計算の基礎、対象の行為、弁明書の提出先と提出期限が書かれます。

  3. 弁明

    弁明は、弁明を書いた書面を出して行います。厚生労働大臣が口頭でよいと認めたときは、口頭でもできます。証拠書類や証拠物も出せます(第75条の5の7)。代理人を選ぶこともできます(第75条の5の9)。

  4. 命令

    命令は文書で行います。命令書には、課徴金の額、計算の基礎、対象の行為、納期限が書かれます。命令書の謄本(原本の内容をすべて写した書面)を名宛人に送達する(正式な手続で届ける)ことで、効力が生じます(第75条の5の10第1項・第2項)。

  5. 納期限

    納期限は、命令書の謄本を発する日から7月(7か月)を経過した日です(第75条の5の10第3項)。

  6. 督促と延滞金

    期限までに納めないと、督促状で期限を指定して督促(納めるよう求めること)が行われます(第75条の5の11第1項)。督促をしたときは、延滞金を徴収することができます。延滞金は、督促に係る課徴金の額に年14.5%の割合で、納期限の翌日から納めた日までの日数で計算します。延滞金の額が1000円未満のときは、この限りでない(延滞金は徴収しない)とされています(同条第2項)。100円未満の端数は切り捨てます(同条第3項)。

  7. 執行

    督促で指定された期限までに納めないときは、厚生労働大臣の命令で、課徴金納付命令を執行します。この命令は、執行力のある債務名義(強制執行の根拠になる文書)と同じ効力を持ちます。執行は、民事執行法などの強制執行の手続に従います(第75条の5の12第1項・第2項)。

例

冒頭のA社に、課徴金の命令が検討される場面で考えます。命令の前に、額や計算の基礎が書かれた、弁明の機会の通知が届きます。A社は、弁明書で言い分を述べられます。

命令書の謄本が発せられたら、その日から7月を経過した日が納期限です。期限を過ぎると督促があり、延滞金がかかることもあります。

延滞金と一緒に納めるとき、破産などのとき

延滞金と一緒に納めるときは、納めた額が課徴金の額に達するまで、まず課徴金に充てられたものとします(薬機法施行規則第249条の6)。

第75条の5の13は、破産法、民事再生法、会社更生法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の適用について定めています。課徴金と延滞金の請求権を、過料(刑罰ではない金銭の制裁)の請求権とみなす、という内容です。

送達(正式な手続で書類を届けること)について、第75条の5の14は、送達すべき書類を厚生労働省令に委ねています。第75条の5の15は、民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定を準用(必要な読み替えをして使うこと)しています。準用するのは、第100条第1項、第101条、第102条の2、第103条、第105条、第106条及び第108条です。第75条の5の16は、公示送達(掲示によって書類を届けたものとする方法)を定めています。

公示送達は、措置を開始した日から2週間を経過すると効力を生じます(同条第3項)。外国においてすべき送達についての公示送達では、この期間は6週間です(第4項)。第75条の5の19は、このほか必要な事項を厚生労働省令に委ねています。

課徴金の規定は、第十三章「監督」に置かれています。このうち次の4つの条は、2026年5月21日から現在の規定になっています。

  • 第75条の5の8(弁明の機会の付与の通知の方式)
  • 第75条の5の15(送達に関する民事訴訟法の準用)
  • 第75条の5の16(公示送達)
  • 第75条の5の17(電子情報処理組織の使用)

改正したのは、デジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律(令和5年法律第63号)です。計算に関する第75条の5の2から第75条の5の5までは、この日には変わっていません。

理解の確認

承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告(第68条の違反)は、課徴金の対象に挙げられていません。これは、薬機法では対応できないという意味ですか?

いいえ。第75条の5の2第1項が課徴金の対象としているのは、第66条第1項に違反する行為だけです。第66条第3項の違反行為と第68条の違反行為は、ここに挙げられていません。ただし、第68条の違反行為は措置命令の側、第72条の5第1項(2027年5月20日から第72条の6第1項へ移る予定)に挙げられています。列挙の有無が分けているのは、課徴金という手段を使えるかどうかです。薬機法が対応できるかどうかではありません。

根拠:薬機法第75条の5の2第1項、第72条の5第1項(法令確認日 2026-09-08)

225万円の下限は、3%や50%の減額をした後の額で見るのですか?

いいえ。第75条の5の2第4項は「第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるとき」と書いています。第4項が引いている規定は、同条第1項だけです。一方、減額は階段のように進みます。第75条の5の4は、減額の基準を「同項又は同条の規定により計算した課徴金の額」と書き、第75条の5の3が働くときは、その控除を経た額を引き継ぎます。条項ごとに基準の額が書き分けられているので、下限を見る額と、減額を計算する額は別のものになります。

根拠:薬機法第75条の5の2第1項・第4項、第75条の5の3、第75条の5の4(法令確認日 2026-09-08)

第75条の5の2第1項を読むだけでは、計算のもとになる対価合計額が決まらないのはなぜですか?

同項の括弧書きは、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額を、「対価合計額」と名付けているだけだからです。中身の出し方は書かれていません。売上高(事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の額で、消費税相当額を含む)を基準にすることは、厚生労働省の通知(2021年7月)が示しています。総対価額から、量目不足等による控除額・返品された医薬品等の対価の額・書面による契約に基づく割戻金の額を差し引くことも、同じ通知が示しています。この通知は、2019年の改正法の一部が2021年8月1日に施行され、課徴金納付命令が規定されることに伴い、都道府県等の薬務主管部(局)長あてに出されました。額のもとは、条文と通知を合わせて読まないと決まりません。

根拠:薬機法第75条の5の2第1項、課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法について(令和3年7月6日 薬生監麻発0706第1号)第1・第2(法令確認日 2026-09-08)

次に読む

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第66条・第69条第5項・第72条の4・第72条の5・第75条の5の2から第75条の5の19まで e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号。版ID 336M50000100001_20260619_508M60000100104、施行日 2026-06-19)第249条の2から第249条の7まで e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法について(令和3年7月6日 薬生監麻発0706第1号、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 薬機法第75条の5の4に基づく、課徴金行為対象事実の報告方法について(令和8年5月21日、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課。文書番号の記載なし)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第8条・第9条・第11条・第12条第7項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 薬機法 2027年5月20日施行版条文(e-Gov 版ID 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)第72条の4から第72条の7まで・第75条の5の2第3項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)