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薬機法に違反すると、どうなる? — 行政指導から刑事罰までの6つのルート

化粧品を扱うA社の広報担当が、社内研修で「薬機法に違反すると2年以下の罰則」と聞いたとします。この説明は、薬機法が違反に対して用意している対応のうち、刑事罰だけを取り出したものです。薬機法には、刑罰のほかに、行政が出す命令や処分も置かれています。このページでは、行政指導(役所が、法的な強制力なしに協力を求めて行う指導)から刑事罰までの6つのルートと、それぞれを誰が動かすかを説明します。課徴金(違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金)の計算と、2027年5月20日に条番号が動く箇所も、例を交えて示します。

30秒でわかる要点

  • 道は6つに分かれています:行政指導、業許可への処分、物に対する命令(廃棄・回収など)、違反広告に係る措置命令、課徴金納付命令、刑事罰です。業許可は製造や販売を仕事として行うための許可、措置命令は違反の中止などを命じる役所の命令です。「2年以下の罰則」は、6つのうち刑事罰だけを取り出した説明です。
  • 命じる者は条文ごとに違います:課徴金納付命令は厚生労働大臣だけです(第75条の5の2第1項)。違反広告に係る措置命令(第72条の5第1項)と、廃棄等の命令(第70条第1項)は、厚生労働大臣又は都道府県知事です。
  • 課徴金は4.5%、225万円未満なら命じられません:第66条第1項(うそや大げさな広告など)の違反について、対価合計額(対象の期間に取引をした、違反に係る製品の代金の合計)に4.5%を掛けた額です。225万円の下限は課徴金の決まりで、措置命令や刑事罰は別に動き得ます。

1. 薬機法に違反すると、問題になるのは罰則だけですか?

いいえ。罰則は、違反に対して用意されている対応の1つです。行政の命令・処分は第十三章「監督」に、刑罰と過料は第十八章「罰則」に置かれていて、両者は別に動きます。

行政の命令に従わないこと自体が、さらに刑事罰の対象として条文に掲げられている場合もあります。

薬機法は、違反があったときに働く決まりを、2つの章に分けて置いています。

  • 第十三章「監督」(第69条から第76条の3の3まで):行政が行う命令・処分です。広告の中止の命令や業務の停止などです。
  • 第十八章「罰則」(第83条の6から第91条まで):刑罰と過料です。

第十八章のうち、第83条の6から第90条までが刑罰(拘禁刑〈刑事施設に収容する刑〉・罰金)です。第91条だけは刑罰ではなく、「二十万円以下の過料に処する」と定めています。過料は、刑罰ではない金銭の制裁です。

行政の命令・処分と刑事罰は、別の系統です。同じ事実について、複数が動くことがあります。ただし、第75条の5の2第3項のように、条文がはっきりと重なりを調整している箇所もあります(4.の節)。

例

冒頭のA社の化粧品の広告が、うそや大げさな広告を禁じる第66条第1項に違反するとされた場面を考えます。

この場面では、広告の中止などを命じる措置命令、課徴金納付命令、刑事罰が、それぞれの条文の要件(どんなときに使えるかの条件)ごとに問題になり得ます。研修で聞いた「2年以下の罰則」は、このうち刑事罰の側の話です。

第十三章の命令・処分は、いずれも要件が別に書かれています。どれか1つが他を吸収する作りにはなっていません。

一覧:第十三章に並んでいる命令・処分
  • 報告徴収(報告を求めること)と立入検査(第69条)
  • 緊急命令(第69条の3)
  • 廃棄等(第70条)
  • 検査命令(第71条)
  • 改善命令等(第72条)
  • 体制整備の命令(第72条の2)
  • 措置が不十分な場合の命令(第72条の2の2)
  • 薬局の報告の是正命令(第72条の3)
  • 業務の運営の改善に必要な措置の命令(第72条の4)
  • 違反広告に係る措置命令(第72条の5)
  • 許可の取消し等(第75条)
  • 登録の取消し等(第75条の2)
  • 課徴金納付命令(第75条の5の2)

同章には、このほかにも規定が置かれています。

命令に従わないこと自体を罰する条文もある

2つの章はつながっています。第十三章の命令に従わないこと自体が、第十八章の各条の号(条文の中の箇条書き)に掲げられているためです。

例

A社が、第72条の5第1項の措置命令を受けたのに、広告をやめなかったとします。この場合、命令に違反したこと自体が、第85条第6号の罰則の対象になり得ます。

命令の条文と、その違反を受ける罰則の条文の対応
  • 第70条第1項・第2項の命令違反 — 第84条第27号
  • 第71条の命令違反 — 第87条第14号
  • 第72条第1項・第2項の業務の停止命令違反 — 第86条第1項第19号
  • 第72条第3項から第5項までの施設の使用禁止の処分違反 — 第86条第1項第20号
  • 第72条の4第1項・第2項の命令違反 — 第86条第1項第21号
  • 第72条の5第1項の命令違反 — 第85条第6号

2. 6つのルートは、どの条文に基づき、誰が動かすのですか?

動かす者は条文ごとに違います。課徴金納付命令は厚生労働大臣だけです。措置命令と第70条第1項の廃棄等の命令は、厚生労働大臣又は都道府県知事です。

6つのうち行政指導だけは、薬機法に根拠となる条文がありません。

  • 1 行政指導:監視の過程で行われる指導。第十三章の命令・処分にはあたらない
  • 2 業許可への処分:改善命令・業務の停止・許可の取消しなど、事業者の許可・登録に向けたもの
  • 3 物に対する命令:廃棄・回収や、検査を受けることなど、製品そのものに向けた命令
  • 4 違反広告に係る措置命令:広告の中止・再発防止・公示(広く知らせること)など(3.の節)
  • 5 課徴金納付命令:国にお金を納めるよう命じるもの(4.の節)
  • 6 刑事罰:拘禁刑・罰金。法人にも罰金刑を科す両罰規定(違反した人だけでなく、その人が属する会社も罰する決まり)がある(5.の節)
表1:薬機法違反に対して用意されている6つのルート
ルート内容根拠(薬機法の条文)命令・処分をする者(条文の文言)
1 行政指導監視の過程で行われる指導。第十三章が定める命令・処分にはあたらない薬機法に根拠規定は無い。第十三章(第69条〜第76条の3の3)に「指導」を定める条文は置かれていない薬機法は定めていない
2 業許可への処分品質管理・製造販売後安全管理の方法や構造設備の改善命令、業務の全部又は一部の停止、施設の使用禁止、業務の運営の改善に必要な措置の命令、許可・登録の取消し第72条から第72条の4まで、第75条第1項・第3項、第75条の2第1項厚生労働大臣(製造販売業者、医薬品〈体外診断用医薬品を除く〉・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の製造業者、医療機器の修理業者)/都道府県知事(薬局開設者、医薬品の販売業者、医療機器の販売業者・貸与業者、再生医療等製品の販売業者)
3 物に対する命令廃棄、回収その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置の命令。指定する者の検査を受けるべき旨の命令。第70条第3項は命令ではなく、命令に従わないとき等に当該職員が自ら行う処分の規定第70条第1項・第2項、第71条(第70条第3項は職員による処分)第70条第1項・第71条=厚生労働大臣又は都道府県知事/第70条第2項=厚生労働大臣
4 違反広告に係る措置命令第66条第1項・第68条の違反に対する、中止、再発を防止するために必要な事項、これらの実施に関連する公示その他の措置の命令第72条の5第1項(2027年5月20日から第72条の6第1項)厚生労働大臣又は都道府県知事
5 課徴金納付命令第66条第1項の違反行為について、対価合計額に4.5%を乗じた額の納付を命ずるもの第75条の5の2第1項厚生労働大臣
6 刑事罰拘禁刑・罰金。法人にも罰金刑を科す両罰規定(第90条)がある。同じ第十八章の第91条は刑罰ではなく過料第83条の6から第90条まで(当ページで挙げるのは第84条・第85条・第86条第1項・第87条・第88条・第90条)薬機法は科す主体を定めていない(条文は「…に処する」)。行政の命令・処分とは別の手続による

6つの区分は、薬機法第十三章「監督」および第十八章「罰則」の規定を当ページで整理したものです。条文がこの6つに分類しているわけではありません。条見出しは e-Gov 法令検索の表示によります。第十三章には、このほかに緊急命令(第69条の3)、医薬品等総括製造販売責任者等の変更命令(第73条)、承認の取消し等(第74条の2)なども置かれています。

誰が命令・処分をするか

課徴金納付命令の第75条の5の2第1項は、「厚生労働大臣は」とのみ定め、都道府県知事を含めていません。

これに対して、第72条の5第1項(措置命令)と第70条第1項(廃棄等の命令)は、どちらも「厚生労働大臣又は都道府県知事は」で始まります。

第75条第1項(許可の取消し等)は、名宛人(その条文で義務や禁止の対象になる人)の業態で分けています。

  • 厚生労働大臣:製造販売業者、医薬品(体外診断用医薬品を除く。)・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品の製造業者、医療機器の修理業者
  • 都道府県知事:薬局開設者・販売業者・貸与業者

言葉の意味は次のとおりです。

  • 製造販売業者:製品を市場に出す責任を負う事業者です。製品を作る「製造業者」とは別の業態です
  • 医薬部外品:医薬品よりも作用がおだやかな製品です(薬用化粧品など)
  • 再生医療等製品:人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです
  • 体外診断用医薬品:体の外で検体を調べ、診断に使う医薬品です

例

ある薬局の開設者に向けた処分の場面で考えます。第75条第1項の文言では、薬局開設者は「都道府県知事は」の側に書かれています。一方、製造販売業者は「厚生労働大臣は」の側に書かれています。

どの役所が許可の事務を行うかは、『1-7 承認・認証・届出・許可は、何が違う?』で扱っています。

登録を受けた製造業者は、第75条第1項ではなく、第75条の2第1項の側にあります。同項は、次のどちらかの登録の取消し・業務の停止を定めています。

  • 第13条の2の2第1項(保管のみを行う製造所に係る登録)
  • 第23条の2の3第1項(医療機器又は体外診断用医薬品の製造業の登録)

第70条第3項は「命令」ではない

第70条第3項が定めているのは、命令ではなく、当該職員(その役所の職員)が自ら行う処分です。この処分ができるのは、第1項・第2項の命令を受けた者がその命令に従わないとき、又は緊急の必要があるときです。

職員に処分をさせる側は、厚生労働大臣、都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長です。これらの者は、「当該職員に、前二項に規定する物を廃棄させ、若しくは回収させ、又はその他の必要な処分をさせることができる」とされています。保健所を設置する市の市長と特別区の区長が出てくるのは、この職員による処分の場面です。

行政指導だけは、薬機法に条文が無い

薬機法に条文が無いのは、第十三章に置かれているのが報告徴収(報告を求めること)・立入検査と各種の命令・処分で、「指導」を定める条文が同章に無いためです。

行政指導は、一般法(分野を限らず広く使われる法律)である行政手続法(平成5年法律第88号)の定めによります。

行政手続法は、薬機法では、課徴金納付命令などの手続に関する第75条の5の18が引用しています(4.の節)。当ページは同法の本文を出典として確認していないため、行政指導を定める同法の条番号は示していません。

6つのルートは、それぞれ個別のページで扱っています。『6-2 行政指導は、どの法律で決まっている?』、業許可への処分、『6-4 製品の回収や品質・安全管理の決まりは、どこにある?』、第72条の5 措置命令、『6-6 薬機法の課徴金は、どう計算される?』、薬機法の刑事罰。

3. 広告の違反には、どのルートが動くのですか?

第66条第1項(うそや大げさな広告など)又は第68条(承認前の広告)の違反には、措置命令が用意されています。厚生労働大臣又は都道府県知事が、違反した者に中止・再発防止・公示などを命じることができます。

第72条の5第1項は、違反行為が既になくなっている場合にも、合併後の法人、分割で事業を引き継いだ法人、事業を譲り受けた者に対して命令ができると定めています。

第4ルートの措置命令は、広告の違反に向けて置かれた命令です。根拠は第72条の5第1項です。なお、第66条第1項の違反では、課徴金納付命令(4.の節)も別に問題になり得ます。第66条第1項と第68条の違反は、どちらも刑事罰(5.の節)の条文(第85条)の号にも掲げられています。

措置命令の対象になる違反は、次の2つです。

  • 第66条第1項(誇大広告等):医薬品等(薬機法が扱う5つの製品:医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品)について、うそや大げさな広告などを禁じる規定
  • 第68条:承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止。承認は、製品ごとに国が審査して、製造販売を認めることです

例

冒頭のA社が、化粧品の効果を大げさに書いた広告を出していたとします。これが第66条第1項に違反するとされれば、A社が措置命令を受けることが問題になり得ます。

行政の運用として、厚生労働省は2025年11月7日付けの報道発表で、措置命令を行った旨を公表しています。家庭用医療機器の広告に関する、第72条の5第1項に基づく命令です。

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の6 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の5 は業務の運営の改善に必要な措置の命令(現行の第72条の4)になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

注意書きの施行日は、法律の決まりが効力を持ち始める日です。番号の動きは7.の節で説明します。

違反をやめた後でも、命令はできる

違反をやめた後の相手方として、号に掲げられているのは次の4つです。

  • 違反行為をした者
  • 合併後存続し若しくは合併により設立された法人
  • 分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
  • 事業の全部又は一部を譲り受けた者

例

A社が違反広告をやめた後、その事業を別の会社に譲り渡したとします。この場面では、事業を譲り受けた会社も、命令の相手方になり得ます。

第2項は、命令ではなく「要請」

第2項が扱うのは、違反広告がインターネットなどで発信されている場面です。条文の言葉では、第66条第1項又は第68条に違反する広告である特定電気通信による情報の送信があるとき、です。

このとき、厚生労働大臣又は都道府県知事は、特定電気通信役務提供者に対して、当該送信を防止する措置を講ずることを要請することができる、と書かれています。特定電気通信役務提供者は、インターネット上で他人の情報の発信を媒介する事業者などを指す、第2項が使う用語です。

第2項は、この広告を「特定違法広告」と呼んでいます(条文の文言は「次条において「特定違法広告」という。」)。次条の第72条の6(2027年5月20日から第72条の7)は、損害賠償責任の制限を定めています。要請を受けて送信を防止する措置を講じた特定電気通信役務提供者の、発信者に対する責任の制限です。

4. 課徴金の額は、どのように決まるのですか?

第66条第1項の違反について、対価合計額に4.5%を掛けた額です(第75条の5の2第1項)。対価合計額は、課徴金対象期間(違反をしていた期間など)に取引をした、違反に係る医薬品等の代金の合計です。

算定した額が225万円未満のときは、課徴金の納付を命ずることができません(同条第4項)。

第1項は、要件にあたれば納付を命じなければならない、という書き方です。

例

冒頭のA社の広告で課徴金が問題になる場面では、まず、課徴金対象期間に取引をした、その化粧品の代金を合計します。

次に、その合計(対価合計額)に4.5%を掛けます。

課徴金対象期間 — どの期間の取引を数えるか

第2項は、課徴金対象期間を「課徴金対象行為をした期間」と定めます。これに、行為をやめた後の取引の分が加わることがあります。やめた日から6月(半年)を経過する日までの間に、当該医薬品等の取引をしたときです。このとき加わるのは、やめてから最後に取引をした日までの期間です。

ただし、6月を経過する日の前に、厚生労働省令(厚生労働省が定める細かい決まり)で定める措置をとったときは、その日までになります。名称・製造方法・効能・効果又は性能に関して、誤解を生ずるおそれを解消するための措置です。期間が3年を超えるときは、期間の末日から遡って3年間になります。

例

A社が違反広告をやめた後も、半年以内に同じ化粧品を取引していた場面では、最後に取引をした日までの期間が、課徴金対象期間に加わることがあります。

減額と、命じないことができる場合

  • 景品表示法の側で命令等があるとき:景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法。不当な景品類や表示を規制する法律)第8条第1項の規定による命令があるときです。同法第11条の規定により課徴金の納付を命じないものとされるときも同じです。このときは、対価合計額に3%を掛けた額を減額します(第75条の5の3)。
  • 自ら報告したとき:厚生労働省令で定めるところにより、課徴金対象行為(第66条第1項の違反)にあたる事実を厚生労働大臣に報告したときです。このときは、算定した額に50%を掛けた額を減額します(第75条の5の4)。ただし、調査を受けて、命令が出そうだと察してからした報告は除かれます。条文の言葉では、調査があったことにより命令があるべきことを予知してされた報告です。
  • 他のルートが動くとき:次の2つの場合は、課徴金の納付を命じないことができます(第75条の5の2第3項)。
    • 第72条の4第1項又は第72条の5第1項の命令をする場合。ただし、保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合に限ります
    • 第75条第1項又は第75条の2第1項の処分をする場合
  • 下限額:算定した課徴金の額が225万円未満であるときは、納付を命ずることができません(同条第4項)。

第3項は、業許可への処分(表1の第2ルート)や措置命令(第4ルート)と課徴金(第5ルート)が同じ行為に向かうときの重なりを、条文で調整している箇所です。命じないという選択もできる、という書き方です。これに対して第4項は、命じられない、という書き方です。

手続

厚生労働大臣は、課徴金納付命令をしようとするときは、名宛人となるべき者に弁明の機会を与えなければなりません(第75条の5の6)。弁明の機会は、命令の前に言い分を述べる機会です。

この命令その他の処分については、行政手続法第3章の規定を適用しないと定められています(第75条の5の18本文)。ただし、第75条の5の2の規定に係る同法第12条の適用は、この限りでない(除外されない)とされています。課徴金の細目は『6-6 薬機法の課徴金は、どう計算される?』で扱います。

5. 罰則の条文には、いま何と書かれているのですか?

刑の重さ(法定刑)は、違反した条文ごとに分かれます。第85条は「二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金」と定め、刑の表記は2025年6月1日に「拘禁刑」へ変わりました。

第90条には法人にも罰金刑を科す両罰規定があり、第84条の一部の号については、法人への罰金刑が1億円以下と定められています。

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

第66条第1項に違反すると、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこれを併科。

現行

第85条は「二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定める。刑種の表記が「懲役」から「拘禁刑」に置き換わっている。

刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)による。薬機法への反映は2025年6月1日施行分(e-Gov 法令検索の施行日別の表示、版ID 335AC0000000145_20250601_504AC0000000068 で確認)。

各条の法定刑は次のとおりです。「併科」は、拘禁刑と罰金の両方を科すことです。

  • 第84条:3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(併科あり)
  • 第85条:2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金(併科あり)。広告の違反や措置命令への違反などが掲げられています
  • 第86条第1項:1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金(併科あり)
  • 第87条:50万円以下の罰金
  • 第88条:30万円以下の罰金

例

冒頭の研修で聞いた「2年以下の罰則」は、第85条の法定刑です。第85条には、第66条第1項の違反が第4号に掲げられています。

各条の号に掲げられている違反
  • 第84条 — 第4条第1項、第12条第1項、第14条第1項、第43条第1項・第2項、第55条第2項、第56条などの違反が号に並びます
  • 第85条 — 次の違反が号に掲げられています
    • 第4号:第66条第1項又は第3項の違反
    • 第5号:第68条の違反
    • 第6号:第72条の5第1項の命令違反
    • 第7号・第8号:第75条第1項・第3項および第75条の2第1項の業務の停止命令違反
  • 第87条 — 第13号に、次の場合が置かれています
    • 第69条の報告をせず若しくは虚偽の報告をしたとき
    • 立入検査を拒み妨げ忌避したとき
    • 質問に正当な理由なしに答弁せず若しくは虚偽の答弁をしたとき

両罰規定 — 行為をした個人と、法人の両方が対象になる

第90条は、会社などで働く人が、業務に関して違反をしたときの決まりです。条文は、違反行為をする人として、法人の代表者又は法人若しくは人(法人でない事業主)の代理人、使用人その他の従業者を挙げています。これらの人が、その法人又は人の業務に関して、各号に掲げる規定の違反行為をしたときに働きます。

このとき、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を科すと定めています。法人でない事業主に対しては、各本条の罰金刑(第85条など、その違反を罰するそれぞれの条に書かれた罰金刑)を科します。

  • 第1号(第83条の9と、第84条のうち一部の号):1億円以下の罰金刑
  • 第2号(第84条の残りの号、第85条、第86条第1項、第86条の3第1項、第87条、第88条):各本条の罰金刑

例

A社の従業員が、A社の業務に関して第66条第1項の違反をした場面では、従業員が罰せられ得るほか、第90条により、A社にも第85条の罰金刑が科され得ます。

6. 措置命令と課徴金は、いつの改正で入ったのですか?

令和元年法律第63号による改正で、課徴金納付命令が設けられ、措置命令の対象に第66条第1項が加わりました。施行はいずれも2021年8月1日です。

「2018年の改正」という説明は、改正法の番号とも施行日とも一致しません。

よく見かける説明と、国の法令データベース(e-Gov 法令検索)の沿革(改正の履歴)で確かめた内容を並べます。

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

2018年の薬機法改正で、違反広告に対する措置命令と課徴金制度が新設された。

現行

改正法は令和元年法律第63号。この改正で課徴金納付命令(第75条の5の2)が設けられ、第72条の5の措置命令には対象として第66条第1項が加わった。施行はいずれも2021年8月1日。

e-Gov 法令検索 の沿革(改正履歴)で、令和元年法律第63号による薬機法の改正が2019年12月4日・2020年4月1日・2020年9月1日・2021年8月1日・2022年12月1日の5段階で施行されたことを確認。第72条の5が同改正で新たに設けられた条文なのか、既にあった規定が改められたものなのかは、改正前の条文を出典として登録していないため、当ページでは書いていない。

例

冒頭のA社の研修資料に、2018年の改正で課徴金ができた、と書かれていたとします。資料を直すときは、改正法の番号と施行日を沿革で確かめることになります。

7. 2027年5月20日に、どの条番号が動くのですか?

違反広告に係る措置命令が第72条の5から第72条の6へ移り、空いた第72条の5には別の規定が入ります。課徴金納付命令の条番号は動きません。

措置命令の条番号を引いている罰則などの条文も、同じ日に書き換わります。

令和7年法律第37号による改正で、条番号そのものが動きます。2027年5月20日から、次の3つが同時に起こります。

  • 違反広告に係る措置命令等(現行の第72条の5)が、第72条の6に移る
  • 空いた第72条の5には、現行の第72条の4(業務の運営の改善に必要な措置の命令)と同じ内容の規定が入る
  • 損害賠償責任の制限(現行の第72条の6)が、第72条の7に移る

この3つは、いずれも規定の置き場所が1つずつずれるものです。

直感的なポイント

棚に振られた番号を、まとめて振り直すのに近い動きです。番号の札と棚の中身の組み合わせが変わるので、番号だけを覚えていると、別の棚を開けてしまいます。

ほかの条文が引く番号も、同じ日に書き換わる

これに伴う引用替え(ほかの条文が引いている番号の書き換え)も、同じ日です。

  • 第85条第6号:「第七十二条の五第一項の規定による命令に違反した」から「第七十二条の六第一項の規定による命令に違反した」に書き換わります。
  • 第75条の5の2第3項第1号:「第七十二条の四第一項又は第七十二条の五第一項の命令をする場合」から「第七十二条の五第一項又は第七十二条の六第一項の命令をする場合」に変わります。

課徴金納付命令の条番号(第75条の5の2)と、4.5%・225万円の数値は動きません。

例

2027年5月20日以降に、ある社内資料が、措置命令の根拠を第72条の5とだけ書いていたとします。その日以降の条文で第72条の5を開くと、業務の運営の改善に必要な措置の命令の規定に当たります。

違反広告に係る措置命令を指すなら、その日以降は第72条の6を見ることになります。

理解の確認

「薬機法に違反すると2年以下の罰則」という説明では、何が抜け落ちていますか?

この説明は、6つのルートのうち刑事罰だけを、しかもその中の第85条の法定刑だけを取り出したものです。薬機法は、行政の命令・処分を第十三章「監督」に、刑罰と過料を第十八章「罰則」に置いています。廃棄等の命令(第70条第1項)や課徴金納付命令(第75条の5の2第1項)は第十三章の側にあるので、罰則の話だけを見ていると視野に入りません。両者は別の系統で動き、同じ事実について複数が動くことがあります。法定刑そのものも、違反した条文ごとに分かれています。第84条は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、第87条は50万円以下の罰金です。

薬機法第十三章(第69条〜第76条の3の3)・第十八章(第83条の6〜第91条)、第70条第1項、第75条の5の2第1項、第84条・第85条・第87条(法令確認日 2026-09-08)

同じ第66条第1項の違反なのに、措置命令は都道府県知事もできて、課徴金納付命令はできません。この違いは、どこから来るのですか?

条文が、命令ごとに命じる者を書き分けているからです。第72条の5第1項は「厚生労働大臣又は都道府県知事は」で始まります。これに対し、第75条の5の2第1項は「厚生労働大臣は」とのみ定め、都道府県知事を含めていません。入口になる違反が同じでも、誰が動かせるかは、ルートごとに条文で確かめることになります。第75条第1項のように、名宛人の業態で命じる者を分けている規定もあります。製造販売業者等は厚生労働大臣、薬局開設者・販売業者等は都道府県知事です。

薬機法第72条の5第1項・第75条の5の2第1項・第75条第1項(法令確認日 2026-09-08)

2027年5月20日に第72条の5の中身が第72条の6へ移ると、条番号だけを手がかりにした引用はどうなりますか?

同じ「第72条の5」を引いても、その日を境に、指す規定が変わります。現行の違反広告に係る措置命令は第72条の6になり、第72条の5には現行の第72条の4(業務の運営の改善に必要な措置の命令)と同じ内容の規定が入るためです。条番号は規定の置き場所を指すもので、内容そのものではありません。そのため法の側も同じ日に引用替えを行います。第85条第6号は「第七十二条の六第一項」へ、第75条の5の2第3項第1号は「第七十二条の五第一項又は第七十二条の六第一項」へ書き換わります。課徴金納付命令の第75条の5の2という位置と、4.5%・225万円の数値は動きません。

令和7年法律第37号による改正(2027年5月20日施行)、薬機法第72条の4・第72条の5・第72条の6、第85条第6号、第75条の5の2第3項第1号(法令確認日 2026-09-08)

次に読む

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第69条〜第76条の3の3(第十三章 監督)、第83条の6〜第91条(第十八章 罰則)e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 薬機法 2027年5月20日施行版条文(版ID 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)第72条の4〜第72条の8、第75条の5の2、第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)による薬機法の改正と、その5段階の施行日 e-Gov 法令検索(沿革)(2026-09-08 確認)
  • 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)による薬機法の罰則の改正(薬機法への反映は2025年6月1日施行分)e-Gov 法令検索(沿革)(2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました(2025年11月7日 報道発表資料。薬機法第72条の5第1項に基づく措置命令)厚生労働省(2026-09-08 確認)