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景品表示法の課徴金はどう決まり、確約手続はどう進む? — 令和5年改正の要点

健康食品を扱うA社の広告に、景品表示法(不当な景品類や、広告などの表示を規制する法律)に違反する疑いが持たれたとします。違反と認められると、表示の中止などを命じる措置命令や、お金を納めさせる課徴金納付命令を受けることがあります。令和5年改正で、国から書面の通知を受けた事業者が、自ら是正する計画を出して認定を受ける「確約手続」も加わりました。このページでは、課徴金の計算の順序、再違反のときの加算、確約手続の流れ、命令を出す行政機関の違いを、例を交えて説明します。

30秒でわかる要点

  • 令和5年改正で加わった主な3つ:確約手続(事業者が自ら是正の計画を出し、国の認定を受ける手続)、10年以内の再違反に対する課徴金の加算、直罰です。直罰は、品質や価格などを実際より著しく良く・有利に見せる表示をしたこと自体への罰則です。施行日(決まりが効力を持ち始める日)は、消費者庁の資料では2024年10月1日です。
  • 課徴金は売上額の3%から順に計算:課徴金(違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金)は、対象期間の売上額の3%が出発点です。条件を満たすときの減額と控除を順に通し、1万円未満を切り捨てます。基準日(報告の求めなど3つの手続のうち、最初のものが行われた日)から遡り10年以内に、課徴金納付命令(確定し、もう争えないものに限る)を受けていたとします。その命令の日以後にも対象の行為をしていたときは、3%が4.5%になります。
  • 確約の認定は、違反の有無を決めるものではない:通知から60日以内に計画を出し、認定を受けたとします。疑いの理由となった行為には、措置命令と課徴金納付命令の条文(第7条第1項・第8条第1項)が適用されなくなります。この効果は手続上のもので、認定が取り消されれば失われます。運用基準(消費者庁長官の決定)も、認定の公表時に、違反を認定したものではないと付記するとしています。

1. 令和5年改正で、景品表示法に何が加わったのですか?

主なものは3つです。確約手続(第26条〜第33条)、10年以内の再違反に対する課徴金の加算(第8条第5項・第6項)、直罰(第48条)です。

消費者庁の資料は、改正法の施行日を2024年10月1日と記載しています。

景品表示法(正式名は、不当景品類及び不当表示防止法)は、不当な景品類(おまけや懸賞の賞品など)や広告などの表示を規制する法律です。令和5年改正の全体は、消費者庁 表示対策課の資料「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(令和5年改正景品表示法)」に整理されています。以下、消費者庁の概要資料と呼びます。

消費者庁がとれる選択肢に、確約手続が加わった

消費者庁の概要資料によると、改正前は、違反の疑いがある行為(違反被疑行為)に対して消費者庁がとれる選択肢は2つでした。

  • 調査をして、違反を認定できるときは、措置命令(違反の中止などを命じる行政の命令)や課徴金納付命令(課徴金を納めるよう命じること)を出す
  • 違反のおそれがあるときは、行政指導(役所が、法的な強制力なしに協力を求めて行う指導)をする

改正で、ここに確約手続が加わりました。確約手続は、書面の通知を受けた事業者が、自ら是正の計画を作って申請し、認定を受ける手続です。流れは4.の節で説明します。

例

冒頭のA社の広告に、違反の疑いが持たれた場面で考えます。いまは、A社が確約手続の通知を受ければ、自ら是正の計画を作り、認定を申請する道もあります。

原文で確かめる(概要資料と条文)

改正前景品表示法では、不当表示等に当たる疑いがある行為(違反被疑行為)に対し、消費者庁のとりうる選択肢は、事件調査を行い、①違反を認定できる場合に措置命令・課徴金納付命令を行うか、②違反のおそれがある場合に行政指導を行うか、の二つしかなかった。

【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(消費者庁 表示対策課)「確約手続の導入 【改正の背景】」

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

景品表示法の処理は、行政指導か、措置命令・課徴金納付命令かのどちらかである。

現行

これに加えて確約手続がある。認定を受けた確約計画に係る疑いの理由となった行為については、第7条第1項および第8条第1項は適用されない(第28条・第32条)。

根拠:不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第26条〜第33条。新設は不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(令和5年法律第29号)。改正前の状況は消費者庁 表示対策課「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要」の記載による。

古い理解と現行の対照は『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』にもまとめています。

改正の3つの柱と、加わった規定

概要資料は、改正の趣旨を「事業者の自主的な取組の促進、違反行為に対する抑止力の強化等を講ずることで、一般消費者の利益の一層の保護を図る」と書き、主な改正事項を3つの柱に分けています。

表1は、新設・改正された規定を柱ごとに並べたものです。このページでは、再違反の加算(3.の節)、確約手続(4.の節・5.の節)、返金の方法と売上額の推計(6.の節)を扱い、「法執行の整備」の2行は扱いません。

表1:令和5年改正で新設・改正された規定
柱内容条項
自主的な取組の促進確約手続の新設第26条〜第33条
自主的な取組の促進返金措置の方法に第三者型前払式支払手段を許容第10条
抑止力の強化売上額の推計規定の整備第8条第4項
抑止力の強化10年以内の再違反に対する課徴金の加算(1.5倍)第8条第5項・第6項
抑止力の強化優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰(100万円以下の罰金)第48条
法執行の整備送達制度の整備・拡充、外国執行当局への情報提供制度の創設第41条〜第44条
法執行の整備適格消費者団体による資料の開示要請第35条

出典:【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(令和5年改正景品表示法)(消費者庁 表示対策課)「主な改正事項」。条項の表記と各行の施行日は同資料の記載による。e-Gov 法令検索の版は 2023-05-17 / 2024-10-01 / 2026-05-15 の3つに分かれており、2026年5月15日施行分の内容は未確認。

直罰:表示をしたことそのものへの罰則

抑止力の強化として、罰則の側にも規定が加わりました。第48条は、優良誤認表示・有利誤認表示に相当する表示をしたときに、100万円以下の罰金を定めています。2つの表示のおおまかな意味は次のとおりです。

  • 優良誤認表示:商品やサービスの品質などを、実際のものなどよりも著しく良いと見せる表示(第5条第1号)
  • 有利誤認表示:価格などの取引条件を、実際のものなどよりも著しく有利だと誤解させる表示(第5条第2号)

概要資料は、第48条を直罰規定の新設としています。直罰とは、表示をしたことそのものに対する罰則のことです。第48条の条文と両罰規定(違反した人だけでなく、その人が属する会社も罰する決まり。第49条)は、『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。

改正法の公布日・施行日と条文の版

概要資料は、施行日について「令和5年改正景品表示法は、令和6年10月1日から施行」と記載しています。

改正法(令和5年法律第29号)の公布(成立した法律を国民に知らせること)は、2023年5月17日です。版の番号は、e-Gov 法令検索のものです。改正が施行された時点の版は 337AC0000000134_20241001_505AC0000000029(施行日 2024年10月1日)です。このページが参照している現行版は 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048(施行日 2026年5月21日)です。

2. 課徴金の額は、どんな順番で計算するのですか?

売上額の3%(再違反にあたるときは4.5%)が出発点です。条件を満たせば5割の減額と返金額の控除を通し、最後に1万円未満を切り捨てます。

第8条第1項で計算した額が150万円未満のときは、納付を命ずることができません(同項ただし書:条文のうち「ただし」で始まる、例外を定めた部分)。

課徴金の定めは第8条にありますが、額は1つの条文だけでは決まりません。第8条第1項が出した額を、後ろの条文が順に受け取ります。

直感的なポイント

計算は、上流から下流へ一方向に流れる水路のようなものです。途中に「減額」と「控除」の水門が並び、条件を満たすときだけ、流れる額が減ります。

  1. 売上額に3%を掛ける(第8条第1項)

    課徴金対象期間(下で説明します)に取引した、その商品やサービスの売上額に3%(条文では「百分の三」)を掛けます。売上額は、政令(法律の細かな点を内閣が定める決まり)で定める方法で出します。報告がないときに売上額を推計できる場合(第8条第4項)は、6.の節で扱います。

  2. 再違反にあたるときは、3%を4.5%に読み替える(第8条第5項)

    どんなときにあたるかは、3.の節で扱います。

  3. 自ら報告したときは、5割を減額する(第9条)

    課徴金の対象になる行為にあたる事実を、内閣府令(法律の細かな点を内閣府が定める決まり)で定めるところにより報告したとします。このときは、計算した額の5割(条文では「百分の五十」)が減額されます。ただし、調査を受けて、命令が出そうだと察してからした報告は除かれます。同条ただし書が除いているのは、調査があったことにより課徴金納付命令があるべきことを予知してされた報告です。

  4. 返金したときは、返金した額を差し引く(第11条第2項)

    前提は、これから行う返金の計画(実施予定返金措置計画。6.の節)について認定を受けていることです。その計画どおりに返金したと認められるときは、返金した額が減額されます。額は、内閣府令で定めるところにより計算します。減額した額がゼロを下回るときはゼロとされ、計算した額が1万円未満となったときは納付を命じないものとされています(第11条第3項)。

  5. 1万円未満を切り捨てる(第12条第2項)

    第8条第1項・第4項、第9条、第11条第2項のどれで計算した額でも、1万円未満の端数は切り捨てられます。

例

冒頭のA社の場面で考えます。売上額に3%を掛けた額が150万円未満なら、納付を命ずることはできません。150万円以上なら、条件に合うときに第9条の5割減額と返金額の控除を通し、1万円未満を切り捨てます。

この150万円の定めは課徴金についてのもので、措置命令や第48条の罰則とは別です。この定めと、対象になる表示の中身(第5条第1号・第2号)は、優良誤認と有利誤認で詳しく扱っています。

課徴金対象期間は、行為をやめた後まで伸びることがある

3%を掛けるのは、「課徴金対象期間」の売上額です。この期間は、行為をしていた期間と同じとは限りません。第8条第2項の中身を分けると、次のとおりです。

  • 基本は、課徴金の対象になる行為(課徴金対象行為)をしていた期間です。
  • 行為をやめた日から6か月たつまでの間に、同じ商品やサービスを取引していれば、その間で最後に取引した日までが加わります。
  • 6か月たつ前に、表示が消費者の選択をゆがめるおそれを解消するための措置(内閣府令で定める措置)をとったときは、6か月ではなく、その日までの間の取引で見ます。
  • 合わせて3年を超えるときは、期間の末日から遡って3年間です。
原文で確かめる(第8条第2項)

公表された命令でも、2つの期間は別々に書かれています。消費者庁が2025年12月2日に公表した課徴金納付命令(7.の節)では、課徴金対象行為をした期間が2022年7月2日から同年11月21日までです。課徴金対象期間は、2022年7月2日から2023年5月3日までと記載されています。対象期間のほうが、行為をやめた日より後まで続いています。

公表資料の日付(和暦の表記)

公表資料の日付は和暦で書かれています。課徴金対象行為をした期間は令和4年7月2日から同年11月21日まで、課徴金対象期間は令和4年7月2日から令和5年5月3日までです。

例

冒頭のA社が、問題の広告をやめた後の数か月も、同じ商品を売っていた場面で考えます。6か月たつ前に上の措置をとっていなければ、やめた日から6か月たつまでの間で、最後に売った日までが課徴金対象期間に加わり得ます。

命じられる期限もあります。課徴金対象行為をやめた日から5年を経過したときは、納付を命ずることができません(第12条第7項)。

どの表示の違反が、課徴金の対象になるのか

対象は第5条第1号(優良誤認表示)と第2号(有利誤認表示)の表示に係る違反で、第5条第3号の表示や、第4条(景品類の制限・禁止)の違反は含まれません。

表2:第8条第1項が「課徴金対象行為」としている範囲
対象扱い根拠
第5条第1号に該当する表示に係る違反行為 課徴金対象行為 景品表示法 第8条第1項
第5条第2号に該当する表示に係る違反行為 課徴金対象行為 景品表示法 第8条第1項
第5条第3号に該当する表示に係る違反行為 定義から除かれる 同項の括弧書き「同条第三号に該当する表示に係るものを除く」
第4条の規定による制限若しくは禁止に違反する行為(景品類) 定めがない 第8条第1項は「第五条の規定に違反する行為」を課徴金対象行為としている

措置命令(第7条第1項)と確約手続(第26条・第30条)は、第4条の規定による制限若しくは禁止に違反する行為にも及びます。措置命令の側は『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。

例

冒頭のA社の広告が、商品の品質を実際よりも著しく良く見せるものだとされた場面では、第5条第1号が問題になり得ます。違反とされれば、課徴金の対象にもなり得ます。

一方、A社の景品の出し方が第4条の制限に違反するとされた場面では、課徴金の定めはありません。ただし、表2の注のとおり、措置命令と確約手続は及びます。

薬機法(医薬品や化粧品などを規制する法律)の課徴金は、別の条文に置かれています。対価合計額(違反に係る製品の対価の合計)に4.5%を掛けるという、別の計算式です。両方が重なるときの調整も含め、『6-6 薬機法の課徴金は、どう計算される?』で扱っています。

3. 「10年以内の再違反で1.5倍」は、何を数えるのですか?

違反の回数ではなく、確定した(もう争えなくなった)課徴金納付命令です。基準日から遡り10年以内にこれを受け、その命令の日以後も対象の行為をしていれば、3%が4.5%に読み替えられます。

「1.5倍」は消費者庁の資料の言い方で、条文は算定率(売上額に掛ける率で、ここでは3%)を読み替える形で書かれています。

第8条第5項は、次の2つを満たす事業者について、算定率を読み替えます。

  • 基準日から遡り10年以内に、課徴金納付命令を受けたことがある(確定している場合に限る)
  • その課徴金納付命令の日以後にも、課徴金対象行為をしていた

両方を満たすと、第8条第1項の「百分の三」が「百分の四・五」に読み替えられます。つまり、3%が4.5%になります。

10年は、どこから数えるのか

起点になる「基準日」は、第8条第6項が決めています。その事案で、次の3つの手続が行われた日のうち、最も早い日です。

  • 報告徴収等:第25条第1項による報告の求め、帳簿書類などの提出命令、立入検査、質問
  • 第8条第3項による資料の提出の求め
  • 第15条第1項による、弁明の機会の付与に関する通知(課徴金納付命令の前に、相手方に言い分を述べる機会を与えるもの)

このうち第8条第3項の資料の提出の求めは、表示の裏付けとなる資料を求める仕組みです。資料が提出されないときは、その表示が第5条第1号に該当すると推定されます。詳しくは『7-3 広告に書いた効果・性能の根拠を示せないと、どうなる?』で扱っています。

原文で確かめる(第8条第5項・第6項)

例

A社が以前、別の広告について課徴金納付命令を受け、その命令が確定していたとします。その命令の日より後に、A社が新しい広告で課徴金対象行為をしていて、その事案で報告の求め(報告徴収)を受けたとします。

報告の求めが3つの手続のうち最初なら、その日が基準日です。確定した命令がこの基準日から遡って10年以内にあれば、新しい事案の課徴金は、3%が4.5%に読み替えられて計算されることになり得ます。

「1.5倍」は、条文の言葉ではない

消費者庁の概要資料は、この読替えを「違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対し、課徴金の額を加算(1.5倍)する規定の新設」と説明しています。この説明では、10年の起点が「違反行為から」になっています。一方、条文(第5項)の文言は「基準日から遡り十年以内」です。

原文の言い回しを見る(概要資料の2つの頁)

概要資料は、概要の頁で「違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者」、要件の頁で「基準日から遡り10年以内に、課徴金納付命令を受けたことがあること(確定している場合に限る。)」と書いています。

4. 確約手続は、どこから始まり、どこで終わるのですか?

書面の通知(第26条・第30条)で始まります。60日以内に計画を申請して認定されると、疑いの理由となった行為に措置命令と課徴金納付命令の条文が適用されません。

認定後は事業者が計画を実施し、認定が取り消されたときは、この効果は失われます(第28条ただし書・第32条ただし書)。

大まかな流れは、通知、計画の申請、認定、計画の実施です。

条文は2組に分かれている

違反の疑いがある行為が続いている場合は、第26条〜第29条です。疑うに足りる事実が既になくなっている場合は、第30条〜第33条です。前者で作る計画を是正措置計画、後者で作る計画を影響是正措置計画といいます。

2組は、手続の段の数も並び順も同じです。違うのは、入口(行為が続いているか、既に終わっているか)と、計画の名前と、是正の対象の書き方です。通知から取消しまでの順序は、次のとおりです。

  1. 通知を受ける(第26条・第30条)

    条文上、通知をするのは内閣総理大臣です(権限の委ね方は7.の節)。第4条(景品類の制限・禁止)または第5条(不当な表示の禁止)に違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合に、書面で通知することができます。一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択(消費者が自分で納得して選ぶこと)を確保するうえで、必要があると認めるときです。通知に書くのは、①行為の概要、②違反する疑いのある法令の条項、③認定の申請ができること、の3つです。ただし、弁明の機会の付与の通知(措置命令に係る行政手続法第30条の通知、または第15条第1項の通知)をした後は、この通知はできません。消費者庁の概要資料も、手続の流れの図に同じことを記しています。

  2. 計画を作って申請する(第27条第1項・第31条第1項)

    通知を受けた事業者は、是正に必要な措置を自ら策定し、実施しようとするときに、計画を作って認定を申請することができます。期限は、通知を受けた日から60日以内です。計画には、措置の内容と実施期限、そのほか内閣府令で定める事項を書かなければなりません(第27条第2項・第31条第2項)。

    是正の対象は、2組で書き分けられています。第27条第1項は「疑いの理由となつた行為及びその影響を是正するために必要な措置」です。第31条第1項は「疑いの理由となつた行為による影響を是正するために必要な措置」です。

  3. 認定か、却下か(第27条第3項・第6項)

    計画が2つの要件(5.の節)のどちらにも合うと認めるときは、認定されます。どちらかに合わないと認めるときは、却下されます。認定は文書で行い、名宛人(認定の相手方)に認定書の謄本(写し)を送達する(決められた手続で書類を届ける)ことで効力を生じます(同条第4項・第5項)。

  4. 認定の効果(第28条・第32条)

    認定に係る、疑いの理由となった行為には、第7条第1項(措置命令)と第8条第1項(課徴金納付命令)が適用されません。ただし、認定が取り消された場合は、この限りではありません。

  5. 取消し(第29条・第33条)

    認定を受けた計画に従って措置が実施されていないと認めるとき、または、虚偽や不正の事実に基づいて認定を受けたことがわかったときは、認定が取り消されます。

    取消しが、第12条第7項の期間(行為をやめた日から5年)が満了する日の2年前の日以後にあったときの定めもあります。この場合、同項の規定にかかわらず、取消しの日から2年間は課徴金納付命令をすることができます(第29条第3項・第33条第3項)。

例

冒頭のA社が、広告を続けている間に確約手続の通知を受けた場面で考えます。A社は、通知を受けた日から60日以内に、是正措置計画を作って認定を申請できます。

認定されれば、疑いの理由となった広告の行為には、措置命令と課徴金納付命令の条文が適用されません。ただ、計画に従って措置を実施していないと認められれば、認定は取り消されます。

原文で確かめる(第28条)

通知の相手方は、行為をした者だけではありません。既に終わった行為についての第30条の通知は、ほかの者にも行うことができるとされています(同条第1号イからニまで)。挙がっているのは、行為をした法人が合併で消滅したときの、合併後に存続する法人や合併で設立された法人です。分割でその事業(行為に係る事業)の全部または一部を承継した法人や、その事業の全部または一部を譲り受けた者も挙がっています。

5. 確約計画は、何を満たすと認定されるのですか?

条文の要件は2つです。措置が是正に十分であること(措置内容の十分性)と、確実に実施されると見込まれること(措置実施の確実性)です。

中身の考え方と、確約手続の対象外となる2つの場合は、運用基準(確約手続をどう運用するかの考え方を、消費者庁長官が定めた文書)に置かれています。

第27条第3項が置いている要件は、次の2つです。

  • 第1号:是正措置が、疑いの理由となった行為とその影響を是正するために、十分なものであること
  • 第2号:是正措置が、確実に実施されると見込まれるものであること

消費者庁の概要資料は、この2つを「措置内容の十分性」「措置実施の確実性」と呼んでいます。影響是正措置計画(行為が既に終わっている場合の計画)の要件も、同じ形の2つです。

原文の言い回しを見る(影響是正措置計画の要件)

第31条第3項第1号は「影響是正措置が疑いの理由となつた行為による影響を是正するために十分なものであること」と書き、第2号が確実に実施されると見込まれるものであることを置いています。概要資料は、十分性の要件に「(※) 影響是正措置計画においては、違反被疑行為による影響」と注記しています。

十分性と確実性の中身は、運用基準にある

十分性と確実性の中身は、条文には書かれておらず、確約手続に関する運用基準(以下、運用基準)に置かれています。申請の様式や添付資料は、確約手続に関する内閣府令に定められています。

文書の正式名と日付

運用基準は、確約手続に関する運用基準(令和6年4月18日 消費者庁長官決定)です。内閣府令は、不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく確約手続に関する内閣府令(令和6年内閣府令第55号)です。

以下は、消費者庁 表示対策課の概要資料が、運用基準の項番号とともに記載している内容です。

運用基準が「必要な措置」として挙げているもの

  • 違反被疑行為(違反の疑いがある行為)を取りやめること(運用基準6(3)イ(ア))
  • 違反被疑行為の内容について、一般消費者へ周知徹底すること(同イ(イ))
  • 違反被疑行為および同種の行為の再発防止のための措置を行い、役員・従業員に周知徹底すること(同イ(ウ))
  • 履行状況を、事業者自ら、または履行状況の監視等を委託した独立した第三者(消費者庁が認める者に限る)により、消費者庁に対して報告すること(同イ(エ))

概要資料は、これらを「措置命令がされる場合に事業者に命じられることが多い内容と同等のもの」としています。申請の時点で既に実施している場合を除いて、計画に定めることが必要だとも書いています。

このほか、概要資料は、有益な措置として3つを挙げています。一般消費者への被害回復(同イ(オ))は「有益な措置(重要な事情として考慮)」です。契約変更(同イ(カ))と取引条件の変更(同イ(キ))は「有益な措置」です。資料は、典型例はあくまでも例示だとしています。違反被疑行為とその影響を是正するために十分なものであれば、例示されていない措置であっても評価されるとしています。

確約手続の対象外とされる場合

入口の側にも線が引かれています。概要資料によると、運用基準5(3)は、確約手続の対象外となるものを2つ挙げています。

  • 過去10年間に措置命令・課徴金納付命令を受けている場合(確定している場合に限る)
  • 表示に根拠がないことを認識しながら、あえて表示を行っているなど、悪質・重大な違反被疑行為の場合

資料は、これらについて「その他の事情にかかわらず確約手続通知を行わない(要件①不充足)」と書いています。

例

A社が数年前に措置命令を受け、その命令が確定していたとします。この場面は、運用基準5(3)が挙げる1つ目の場合にあたり得ます。概要資料によれば、この場合は、その他の事情にかかわらず確約手続通知を行わないとされています。

3.の節の読替えが数えるのは、確定した課徴金納付命令でした。運用基準5(3)は、措置命令も挙げています。

確約計画の認定件数は『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。

認定の公表は、違反の認定とは別

認定の公表について、概要資料は運用基準9を引いています。公表するのは、認定した確約計画の概要、その認定に係る違反被疑行為の概要、認定を受けた事業者名、その他必要な事項です。そのうえで「公表に当たっては、景品表示法の規定に違反することを認定したものではないことを付記する」と書かれています。

6. 返金措置と売上額の推計は、どこが変わったのですか?

返金の方法に、第三者型前払式支払手段(発行した事業者以外の店などでも使える、プリペイドカードのようなもの)が加わりました(第10条第1項)。報告がないときに売上額を推計できる規定も置かれました(第8条第4項)。

どちらも、細かな基準と方法は施行規則(景品表示法の内閣府令)に置かれたと、消費者庁の資料は記載しています。

返金の方法

返金措置は、2.の節の4段目で見た、消費者に返金した額を課徴金の額から減額する仕組みです。この仕組みは、平成26年11月改正で導入されました。

消費者庁の概要資料は、令和5年改正の背景として「これまでの利用件数は4件にとどまっており、活発に利用されているとはいい難い状況にある」と書いています。令和5年改正は、返金の方法を金銭に限らないことにしました。

第10条第1項は、交付する「金銭」に、一定の前払式支払手段を含めています。この方法で返金できるのは、次のすべてに合う場合に限られます。

  • 第三者型発行者が発行する前払式支払手段などであること。正確には、資金決済に関する法律第3条第7項に規定する第三者型発行者が発行する、同条第1項第1号の前払式支払手段その他内閣府令で定めるものです。
  • 金銭と同様に通常使用することができるものとして、内閣府令で定める基準に適合するものであること
  • 交付を承諾した者に対して行うものであること

概要資料は、要件を3つに整理し、「内閣府令で定める基準」は施行規則第10条の2に具体化されたと記載しています。

例

冒頭のA社が、認定を受けた返金の計画に基づいて、商品を買った消費者に返金する場面で考えます。金銭の代わりに、前払式支払手段で返す方法もあります。ただし、使えるのは、第10条第1項が定めるもの(第三者型発行者が発行するものなど)のうち、基準に合うものに限られます。また、受け取る人が交付を承諾した場合に限られます。

売上額の推計

第8条第4項は、売上額を推計して課徴金を命ずることができる場合を定めています。事業者が、課徴金の計算の基礎となるべき事実について第25条第1項の報告を求められたのに、報告しないときです。このとき、その事実を把握することができない期間の売上額を推計できます。推計は、他の事業者から入手した資料その他の資料を用いて、内閣府令で定める合理的な方法によります。

その合理的な方法は施行規則第8条の2に置かれたと、概要資料は記載しています。同資料によれば、「課徴金対象期間のうち課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握した期間における売上額の日割平均額に、課徴金対象期間のうち当該事実を把握することができない期間の日数を乗じて算出する」方法です。

例

冒頭のA社が、課徴金の計算の基礎となる事実について報告を求められたのに、報告しなかった場面で考えます。売上額がわかる期間の1日あたりの平均額が仮に「10」、わからない期間の日数が「30」だとします。推計されるときは、上の方法で、わからない期間の売上額は「10」×「30」で「300」となります。

返金措置は、実際に使われているか

消費者庁が公表している運用状況によると、実施予定返金措置計画に係る処分は、2023年度・2024年度・2025年度のいずれも、認定0件、不認定0件です。返金の方法を広げた改正の施行日(2024年10月1日)を含む2024年度と2025年度も、0件のままです。

7. 措置命令を出す機関と、課徴金を命じる機関は同じですか?

同じとは限りません。措置命令は消費者庁のほか都道府県知事も出せますが、知事に委任された範囲に、課徴金納付命令と確約手続は挙げられていません。

委任の根拠として、第38条第11項と景品表示法施行令(景品表示法の政令)第23条が挙げられています(消費者庁の運用状況の資料)。

景品表示法の権限は、段階を追って委ねられています。委任とは、権限をほかの機関に任せて行わせることです。

  • 第38条第1項:内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く)を、消費者庁長官に委任すると定めています。
  • 同条第11項:消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部を、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができると定めています。

都道府県知事が行う範囲について、消費者庁が公表した運用状況の資料(2026年5月)は、次のように書いています。

都道府県知事には、景品表示法第38条第11項及び景品表示法施行令第23条の規定に基づき、措置命令権限と調査権限が委任されており、都道府県知事は、自らの判断と責任によって景品表示法を運用することができる。

令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の2

同じ運用状況の資料によると、措置命令の件数は次のとおりです。

  • 2023年度:消費者庁44件、都道府県知事3件(埼玉県1件、東京都2件)
  • 2024年度:消費者庁26件、都道府県知事4件(埼玉県1件、東京都2件、京都府1件)
  • 2025年度:消費者庁13件、都道府県知事3件(東京都2件、三重県1件)

都道府県の措置命令の後に、国の課徴金納付命令が出た例

消費者庁は2025年12月2日に、ある医薬部外品(医薬品よりも作用がおだやかな製品)の表示について、課徴金納付命令を公表しています。この事業者には、2023年3月28日に東京都が、景品表示法第7条第1項の規定に基づく措置命令を出していました。消費者庁の公表資料は、これを踏まえて第8条第1項の規定に基づく課徴金納付命令を発出したと書いています。課徴金の額は588万円です。2025年度の運用状況の資料の別紙1にも、この事件が第5条第1号(第8条第3項適用)として、同じ額で載っています。

日付の和暦の表記

公表日は令和7年12月2日、東京都の措置命令の日は令和5年3月28日です。

公表資料によると、第8条第3項に基づき、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を期間を定めて求めたところ、期間内に提出されませんでした。

第8条第1項ただし書は、課徴金の納付を命ずることができない場合を定めています(条文は優良誤認と有利誤認)。その1つは、行為の期間を通じて、表示が優良誤認表示などにあたると知らなかった場合です。知らないことに相当の注意を怠っていなかった(払うべき注意は払っていた)と認められることも必要です。公表資料は、このただし書に該当しない理由を挙げています。表示内容の決定を委ねた者(表示の中身を任せた相手)が作った表示を、十分に確認しないまま課徴金対象行為をしていたことです。

例

冒頭のA社の広告について、ある県の知事が措置命令を出した場面で考えます。

課徴金納付命令は、知事に委任された範囲に挙げられていません。このため、同じ広告で課徴金が問題になるときは、知事とは別に、消費者庁の側で手続が進むことになり得ます。

1つの表示に複数の法律と複数の行政機関が関わることについては、『7-10 1つの広告や表示に、どの法律がかかり得る?』で扱っています。

理解の確認

「10年以内に2回違反すれば課徴金が1.5倍になる」という説明は、第8条第5項の書き方とどこが違いますか?

数えるものが違います。第8条第5項が数えているのは、違反の回数ではなく、確定した課徴金納付命令です。条件は、基準日から遡り10年以内にその命令を受けたことがあり、かつ、その命令の日以後にも課徴金対象行為をしていた者であることです。このとき、第8条第1項の「百分の三」が「百分の四・五」に読み替えられます。10年の起点も、違反の日ではありません。第8条第6項の基準日、つまり、報告徴収等・第8条第3項による資料の提出の求め・第15条第1項の通知が行われた日のうち、最も早い日です。条文に「1.5倍」という語はなく、読替えの結果を消費者庁の資料がそう説明しています。

根拠:不当景品類及び不当表示防止法第8条第5項・第6項(法令確認日 2026-09-08)/【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(消費者庁 表示対策課)

確約計画の認定を受けたことは、その表示が景品表示法に違反していなかったという意味になりますか?

違反の有無の認定とは別のものです。認定の効果は、手続上のものにとどまります。疑いの理由となった行為について、第7条第1項(措置命令)と第8条第1項(課徴金納付命令)を適用しない、という効果です(第28条・第32条)。消費者庁の運用基準9は、認定を公表する際に、景品表示法の規定に違反することを認定したものではない旨を付記するとしています。その効果も確定的ではありません。計画に従って措置が実施されていない等で認定が取り消されれば、効果は失われます(第29条・第33条)。取消しが、行為をやめた日から5年の期限(第12条第7項)が切れる日の2年前以後にあったときは、取消しの日から2年間は課徴金納付命令をすることができます。

根拠:不当景品類及び不当表示防止法第28条・第32条、第29条第3項・第33条第3項、第12条第7項(法令確認日 2026-09-08)/確約手続に関する運用基準9(令和6年4月18日 消費者庁長官決定。引用は消費者庁 表示対策課「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要」の記載による)

同じ事案で、措置命令は都道府県知事が行い、課徴金納付命令は消費者庁が行う、という分かれ方が起きるのはなぜですか?

委任されている権限の範囲が違うからです。第38条第1項は、この法律による権限(政令で定めるものを除く)を消費者庁長官に委任しています。同条第11項と景品表示法施行令第23条によって都道府県知事に降りているのは、措置命令権限と調査権限です。確約手続と課徴金納付命令は、その範囲として挙げられていません。消費者庁が2025年12月2日に公表した課徴金納付命令の事案でも、先に出ていた措置命令は、2023年3月28日に東京都が行ったものでした。

根拠:不当景品類及び不当表示防止法第38条第1項・第11項、景品表示法施行令第23条(法令確認日 2026-09-08)/令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の2

次に読む

  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第7条・第8条・第9条から第12条まで・第15条・第25条から第33条まで・第35条・第38条・第41条から第44条まで・第48条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)。参照した版は 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048(施行日 2026年5月21日)
  • 【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(令和5年改正景品表示法)(消費者庁 表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)
  • 令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)
  • 不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく確約手続に関する内閣府令(令和6年内閣府令第55号)/確約手続に関する運用基準(令和6年4月18日 消費者庁長官決定)原文URL未取得。本ページの運用基準に関する記載は、消費者庁 表示対策課「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要」が項番号を挙げて引用している内容により確認(2026-09-08 確認)
  • 令和7年12月2日 消費者庁 News Release(都道府県の措置命令を踏まえた景品表示法第8条第1項の課徴金納付命令。原文URL未取得)本ページは同資料の全文と、令和7年度における景品表示法等の運用状況(令和8年5月28日)別紙1の記載により確認(2026-09-08 確認)