30秒でわかる要点
- 根拠は景品表示法第7条第2項。消費者庁長官が期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、事業者が提出しないときは、その表示を第5条第1号に該当する表示とみなす、と条文に書かれています。課徴金の側は第8条第3項で、効果は「推定する」です。
- 「合理的な根拠」の中身は条文になく、運用指針が2つの要件で示している。①提出資料が客観的に実証された内容のものであること、②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。両方が要ります。
- 期間は、文書を交付した日から十五日を経過する日まで。不当景品類及び不当表示防止法施行規則第7条第2項が定めています。正当な事由があれば延長の余地がありますが、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるという理由は正当な事由と認められない、と指針は書いています。
「不実証広告規制」は、条文のどこに置かれた仕組みか
景品表示法第7条第2項です。措置命令に関し、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、提出されないときは不当表示とみなす規定です。
課徴金納付命令については第8条第3項に同じ仕組みがあり、資料を提出しないときの効果は「推定する」と書かれています。
「不実証広告規制」が置かれているのは、景品表示法第7条第2項です。景品表示法は第5条で不当な表示を禁止し、第7条第1項で措置命令を定めています。その次の項が、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める規定です。消費者庁がこの通称で呼んでいるのは、この第7条第2項と、課徴金の側の第8条第3項の仕組みです。
条文は2つに分かれています。前段が、必要があると認めるときに期間を定めて資料の提出を求めることができるという定め。後段が、事業者が資料を提出しないときは、当該表示を第5条第1号に該当する表示とみなすという定めです。
同じ書き出しの規定が、課徴金の側にもあります。第8条第3項は、課徴金納付命令に関し、表示が第5条第1号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときに資料の提出を求めることができるとしています。
書き分けられているのは、資料を提出しないときの効果です。第7条第2項は「みなす」、第8条第3項は「推定する」と書いています。この2つの条文の対比は優良誤認と有利誤認 — 景品表示法第5条第1号と第2号は、条文のどこが違うのかで扱っています。
「合理的な根拠」の基準を示しているのは何か
どのような資料であれば表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものにあたるのか。それは条文には書かれていません。示しているのは「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針」です。平成15年10月28日に公正取引委員会が定め、平成28年4月1日に消費者庁が一部改正しています。
ただし指針は、これがあらゆる場面を網羅したものではないと冒頭で断っています。適用の対象となるか、提出された資料が合理的な根拠を示すものと認められるかは、指針に例示されていないものを含め、個別事案ごとに判断されるとしています。
本指針は、消費者庁の景品表示法第7条第2項の運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するため、同項の運用について一定の指針を示すことを目的としている。
なお、本指針は、景品表示法第7条第2項の適用がなされる場合のあらゆる場面を網羅しているわけではなく、事業者が行った表示が同項の適用の対象となるのか、また、事業者から提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められるかどうかについては、本指針において例示されていないものを含め、個別事案ごとに判断されることに留意する必要がある。
不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会、平成28年4月1日 消費者庁一部改正)はじめになお、条文の主語は内閣総理大臣ですが、指針の本文は「消費者庁長官は」と書いています。景品表示法第38条第1項が、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任しているためです。
資料の提出を求められるのは、どの表示か
第5条第1号に該当するか否かの判断のためです。指針は適用対象を同号が適用される商品・サービスの内容に関する表示とし、うち効果、性能の表示を扱っています。
原材料、成分、容量、原産地等の事項に関する表示は、取引上の書類や商品そのもの等の情報を確認することで実際のものと異なるか判断できると指針は書いています(第2の1(1))。
条文が資料の提出を求める場面は、第5条第1号に該当するか否かの判断に限られています。これを受けて指針第2の1(1)は、第7条第2項の適用対象となる表示を、第5条第1号が適用される商品・サービスの内容に関する表示と置いています。
そのうえで指針は、その中のどこに立証上の問題があるのかを(1)と(2)に分けて説明しています。分かれ目は、確かめる手段があるかどうかです。原材料や原産地のような事項は書類や商品そのものの確認で判断できるが、痩身効果や空気清浄機能のような効果、性能はそれだけでは客観的に判断することが困難だ、という説明です。
景品表示法第7条第2項の適用対象となる表示とは、景品表示法第5条第1号が適用される商品・サービスの内容に関する表示である。
商品・サービスの内容に関する表示のうち、例えば、原材料、成分、容量、原産地、等級、住宅等の交通の便、周辺環境のような事項に関する表示については、通常、契約書等の取引上の書類や商品そのもの等の情報を確認することによって、当該表示が実際のものとは異なるものであるか否かを判断できる。
他方、商品・サービスの内容に関する表示の中でも、痩身効果、空気清浄機能等のような効果、性能に関する表示については、契約書等の取引上の書類や商品そのもの等の情報を確認することだけでは、実際に表示されたとおりの効果、性能があるか否かを客観的に判断することは困難である。
同指針 第2の1(1)(2)この立証上の問題を踏まえて、指針は自らの記述範囲を絞っています。第2の1(3)は「本運用指針においては、商品・サービスの効果、性能に関する表示に対する同項の適用についての考え方を示すこととする」と書いています。適用対象そのものを効果、性能に限定した文ではなく、指針が考え方を示す範囲を述べた文です。条文が及ぶ範囲と、指針が説明する範囲は同心円の関係にあり、指針が書いているのは内側の円についてだ、と読むことになります。
神秘的内容・主観的内容・抽象的内容の表示
「開運」「気分爽快」「健康になる」といった表示の扱いを、指針は前段と後段に分けて書いています。
また、商品・サービスの効果、性能に関する表示であって、神秘的内容(「開運」、「金運」等)、主観的内容(「気分爽快」等)、抽象的内容(「健康になる」等)に関する表示であっても、当該表示が一般消費者にとって、当該商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていると考えられ、さらに、これらの表示内容に加えて具体的かつ著しい便益が主張されている(暗示されている場合も含む。)など、当該商品・サービスの内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良との認識を与えるようなものであれば、景品表示法第5条第1号に該当するおそれがあり、そのような場合には、景品表示法第7条第2項に基づき表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象となり得る。
他方、上記のような内容の表示のみであって、通常、当該表示から、直ちに、表示された効果、性能について、一般消費者が著しい優良性を認識しないと考えられるものは、景品表示法第5条第1号に該当するおそれはないと考えられるため、景品表示法第7条第2項に基づき表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象とはならない。
同指針 第2の2(2)前段が挙げているのは、次の2つが重なる場合です。
- その表示が一般消費者にとって、当該商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていると考えられること
- これらの表示内容に加えて具体的かつ著しい便益が主張されている(暗示されている場合も含む。)など、実際のものよりも著しく優良との認識を与えるようなものであること
この2つが重なるものは、第5条第1号に該当するおそれがあり、資料の提出を求める対象となり得るとされています。
後段が挙げているのは、そのような内容の表示のみであって、通常、当該表示から直ちに一般消費者が著しい優良性を認識しないと考えられるものです。これは、資料の提出を求める対象とはならないとされています。
| 対象 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 痩身効果、空気清浄機能等のような、商品・サービスの効果、性能に関する表示 | 求める対象 | 同指針 第2の1(2)・第2の2(1) |
| 原材料、成分、容量、原産地、等級、住宅等の交通の便、周辺環境のような事項に関する表示 | 書類等で判断 | 同指針 第2の1(1) |
| 神秘的内容・主観的内容・抽象的内容の表示であって、商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていると考えられ、かつ具体的かつ著しい便益の主張(暗示を含む)が加わるなど、実際のものよりも著しく優良との認識を与えるようなもの | 求める対象となり得る | 同指針 第2の2(2)前段 |
| 神秘的内容・主観的内容・抽象的内容の表示のみであって、通常、当該表示から直ちに一般消費者が著しい優良性を認識しないと考えられるもの | 求める対象とならない | 同指針 第2の2(2)後段 |
| 景品表示法第5条第2号に関する表示 | 同項の定めなし | 景品表示法第7条第2項・第8条第3項(いずれも「第五条第一号に該当するか否かを判断するため」と書かれている) |
「求める対象」とは、消費者庁長官が第7条第2項に基づき表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象かどうかを指します。2行目は、指針が「対象から外れる」と書いているものではなく、書類や商品そのもの等の確認で表示が実際のものと異なるか判断できると指針が説明しているものです。指針は「本指針において例示されていないものを含め、個別事案ごとに判断される」と書いています(同指針 はじめに)。
ここまでは第5条第1号の話です。第5条第2号に該当する表示について規制が置かれていないという意味ではありません。第7条第1項の措置命令は、第4条の規定による制限若しくは禁止又は第5条の規定に違反する行為に対して定められ、第8条第1項の課徴金納付命令も、第5条第3号に該当する表示に係るものを除く違反行為を対象としています。第1号と第2号の条文上の違いは優良誤認と有利誤認 — 景品表示法第5条第1号と第2号は、条文のどこが違うのかで扱っています。
指針第2の2(1)は、資料の提出を求めることとなる効果、性能の表示の例を表の形で挙げています。指針は、これが過去の排除命令(景品表示法が消費者庁に移管された平成21年9月1日以降は措置命令)の事例から取りまとめたものであるとしたうえで、「ここに示されていないものを含め、具体的な商品・サービスの効果、性能に関する表示が景品表示法第7条第2項の規定に基づき、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象となるか否かは、個別事案ごとに判断することとなる」と付記しています(同指針 第2の2(1))。食品として販売される物の表示については、薬機法と健康増進法も重なります。その重なりはサプリメントの表現はどこまで書けるか — 薬機法と健康増進法の重なりで扱っています。
「合理的な根拠」と認められるには、何が必要とされているか
2つです。提出資料が客観的に実証された内容のものであることと、表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることです。
指針第3の1が、この2つの要件を満たす必要があるとしています。
指針第3の1が、提出された資料が合理的な根拠を示すものと認められるための要件を、2つ挙げています。
① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
同指針 第3の12つは順に進む工程ではなく、両方を満たす必要があるものとして書かれています。別々の物差しだと考えると分かりやすく、片方の目盛りがどれだけ細かくても、もう片方の代わりにはなりません。①の中身は第3の2に、②の中身は第3の3に置かれています。
この2要件には前置きがあります。指針は、効果、性能の著しい優良性を示す表示は一般消費者に対して強い訴求力を有し、顧客誘引効果が高いとしています。そのうえで、そのような表示を行う事業者は「当該表示内容を裏付ける合理的な根拠をあらかじめ有しているべきである」と書いています(同指針 第3の1)。
販売業者が自ら試験・調査を行うことが常に求められるとは書かれていない
製造業者から得た情報をもとに販売業者が自ら表示を行う場合について、指針第3の1になお書きがあります。
なお、商品の効果、性能に関する表示は、当該商品の製造業者から得た、商品について効果、性能があるとの情報を基に販売カタログや店舗内表示などにより、販売業者が自ら行うこともある。この場合、販売業者が自ら実証試験・調査等を行うことが常に求められるものではなく、製造業者等が行った実証試験・調査等に係るデータ等が存在するかどうか及びその試験方法・結果の客観性等の確認を販売業者が自ら行ったことを示す書面等を当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である。
同指針 第3の1このなお書きの結びは「提出することも可能である」です。指針がここで提出可能なものとして挙げているのは、データ等が存在するかどうかと、その試験方法・結果の客観性等の確認を、販売業者が自ら行ったことを示す書面等です。
第7条第2項の名宛人は表示をした事業者であり、資料の提出を求められるのも、その表示をした事業者です。
「客観的に実証された内容」として、指針は何を挙げているか
試験・調査によって得られた結果と、専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献の2つが挙げられています。
①は試験・調査の方法について、②は見解・学術文献そのものについて、それぞれ基準が置かれています。
指針は、「客観的に実証された内容」を2つに分けています。試験・調査によって得られた結果か、専門家等の見解又は学術文献かです。「次のいずれかに該当するもの」という書き方で、両方をそろえることは求められていません。
提出資料は、表示された具体的な効果、性能が事実であることを説明できるものでなければならず、そのためには、客観的に実証された内容のものである必要がある。
客観的に実証された内容のものとは、次のいずれかに該当するものである。
① 試験・調査によって得られた結果
② 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
同指針 第3の2① 試験・調査によって得られた結果
ここで基準が置かれているのは、方法です。表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法、または関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要があるとされています。そのような方法が存在しない場合には、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるとされています(同指針 第3の2(1)ア・イ)。
指針は、前者の例を3つ挙げています。
・日用雑貨品の抗菌効果試験について、JIS(日本工業規格)に規定する試験方法によって実施したもの。
・自動車の燃費効率試験の実施方法について、10・15モード法によって実施したもの。
・繊維製品の防炎性能試験について、消防法に基づき指定を受けた検査機関によって実施したもの。
同指針 第3の2(1)ア<例>後者、つまり社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法については、判断の材料が挙げられています。表示の内容、商品・サービスの特性、関連分野の専門家が妥当と判断するか否か等を総合的に勘案して判断する、と書かれています(同指針 第3の2(1)イ)。
なお、消費者庁が制度ページからリンクしている指針PDFは平成28年4月1日一部改正のもので、例に出てくる規格や試験方法の名称もその時点のものです。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
表示の裏付けとなる資料は、その事業者と関係のない第三者の機関が実施した試験でなければ認められない。自社で行った試験は根拠にならない。
現行
指針第3の2(1)ウは、事業者とは関係のない第三者(例えば、国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査、研究を行う民間機関等)が行った試験・調査は一般的に客観的なものであると考えられるとしたうえで、「上記ア又はイの方法で実施されている限り、当該事業者(その関係機関を含む。)が行った試験・調査であっても、当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である」と書いている。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会、平成28年4月1日 消費者庁一部改正)第3の2(1)ウ。
現行の条文や指針と食い違う説明の一覧は古い理解の一覧 — 現行の条文と食い違う記述を更新するにまとめています。
消費者の体験談やモニターの意見等
体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を、表示の裏付けとなる根拠として提出する場合について、指針はなお書きを置いています。
なお、一部の商品・サービスの効果、性能に関する表示には、消費者の体験談やモニターの意見等を表示の裏付けとなる根拠にしているとみられるものもあるが、これら消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある。
同指針 第3の2(1)エ求められているのは、統計的な客観性です。指針は続けて、客観的に実証されたものとは認められないとする例を3つ挙げています。
- 自社の従業員又はその家族等、販売する商品・サービスに利害関係を有するものの体験談を収集して行う調査
- 体験談を送付しなかった利用者の意見を調査することなく、一部の利用者から寄せられた体験談のみをサンプル母体とする調査
- 広い地域で販売する商品につき、一部の地域において少数のモニターを選定して行った統計調査
サンプル数については、個別事案ごとに判断するとされています。商品・サービス又は表示された効果、性能の特性、表示の影響の範囲及び程度によって異なるためです。そのうえで指針は、「少なくとも、学問上又は表示された効果、性能に関連する専門分野において、客観的な実証に耐える程度のものである必要がある」と書いています(同指針 第3の2(1)エ)。
ここで指針が扱っているのは、体験談を集めた調査結果を資料として提出する場面です。体験談や口コミが誰の表示になるかという名宛人の問題は、体験談・口コミは誰の表示か — 2023年10月に加わったステルスマーケティング告示で扱っています。
② 専門家等の見解又は学術文献
こちらの基準は、見解や文献そのものに置かれています。指針が挙げているのは次の2つです。
① 専門家等が、専門的知見に基づいて当該商品・サービスの表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの
② 専門家等が、当該商品・サービスとは関わりなく、表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの
同指針 第3の2(2)ア①と②に共通しているのは、「当該専門分野において一般的に認められているもの」という条件です。関連する専門分野において一般的には認められていない場合には、その見解又は学術文献は客観的に実証されたものとは認められないとされています。指針がその例として挙げているのは、特定の専門家等による特異な見解である場合や、画期的な効果、性能等で新しい分野であって専門家等が存在しない場合等です。この場合は、試験・調査によって客観的に実証する必要があるとされています(同指針 第3の2(2)イ)。
生薬の効果など、古来からの言い伝え等の経験則を根拠として提出する場合についても、専門家等の見解又は学術文献によってその存在が確認されている必要があるとされています(同指針 第3の2(2)ウ)。
「適切に対応している」とは、どういうことか
提出資料自体が客観的に実証された内容であっても、表示された効果、性能と実証された内容がずれていれば、合理的な根拠を示すものとは認められないということです。
表示された効果、性能は、表示全体から一般消費者が認識するものとされています。
指針第3の3は、①を満たしていても②を満たさなければ合理的な根拠を示すものとは認められないとしています。そのうえで、「表示された効果、性能」の読み方に注記を置いています。
なお、ここで表示された効果、性能とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能であることに留意する必要がある。
同指針 第3の3照らし合わせる相手は、広告の中の特定の一文や数値ではありません。表示全体から一般消費者が認識する効果、性能です。
指針は、この対応関係について4つの例を挙げています。うち3つを、表示・提出資料・指針の記載の順に並べます。
| 表示 | 提出された資料 | 指針の記載 |
|---|---|---|
| 家屋内の害虫を有効に駆除すると表示する家庭用害虫駆除器 | 公的機関が実施した試験結果 | 試験用のアクリルケース内において、当該機器によって発生した電磁波が、害虫に対して一時的に回避行動を取らせることを確認したものにすぎず、人の通常の居住環境における実用的な害虫駆除効果があることを実証するものではなかった(<例1>) |
| あらゆる種類のエンジンオイルに対して10%の燃費向上が期待できると表示する自動車エンジンオイル添加剤 | 民間の研究機関が実施した試験結果 | 特定の高性能エンジンオイルについて燃費が10%向上することを確認したものにすぎず、一般的な品質のエンジンオイルについて同様の効果が得られることを実証するものではなかった(<例2>) |
| 99%の紫外線をカットすると表示する紫外線遮断素材を使用した衣料 | 当該化学繊維の紫外線遮断効果についての学術文献 | 当該紫外線遮断素材が紫外線を50%遮断することを確認したものにすぎず、紫外線を99%遮断することまで実証するものではなかった(<例3>) |
出典:同指針 第3の3<例1>〜<例3>。指針にはこのほか<例4>があります。いずれの例も、提出資料そのものの出所ではなく、実証された内容と表示された内容の対応を理由に挙げています。
要点
指針は、提出資料を2段で見ることを示しています。第1に、その資料自体が客観的に実証された内容か(第3の2)。第2に、実証された内容が、表示された効果、性能に対応しているか(第3の3)。表2の3例は、いずれも第1段ではなく第2段を理由に挙げたものです。
資料の提出は、どんな手続で求められ、期限は何日か
文書の交付によって求められます。期間は、その文書を交付した日から十五日を経過する日までと施行規則第7条第2項が定めています。
同項のただし書は、期間内に資料を提出しないことについて正当な事由があると認められる場合は、この限りでないとしています。
求め方を定めているのは、法律ではなく内閣府令です。不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条が、文書の交付と記載事項、そして期間を定めています。
この省令の第7条は、法第7条第2項と第8条第3項の両方について、同じ手続と同じ期間を定めています。指針第4も、第7条第2項の運用に係る手続の透明性を確保する観点から、資料の提出に係る手続を書いています。手続は3つの部分に分かれます。
文書による資料提出の要請
省令第7条第1項は、消費者庁長官が資料の提出を求める場合は、事業者の氏名又は名称、資料の提出を求める表示、資料を提出すべき期限及び場所を記載した文書を交付して行うものとしています。指針第4の1は、その文書に、当該事業者がした当該表示内容と、資料の提出先及び提出期限を、具体的かつ明確に記載するとしています。
期間は文書を交付した日から15日を経過する日まで
省令第7条第2項が、法第7条第2項および第8条第3項に規定する期間を、文書を交付した日から十五日を経過する日までの期間としています。同項のただし書は、事業者が当該期間内に資料を提出しないことについて正当な事由があると認められる場合は、この限りでないとしています。指針第4の2(1)は、この省令の規定を挙げて、提出期限を「原則として15日後」と書いています。
書面による延長の申出
事業者から書面により提出期限の延長の申出があり、正当な事由があると認めた場合には、消費者庁長官は提出期限を延長することができるとされています(同指針 第4の2(2))。
(1) 表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出期限は、消費者庁長官が、前記1の文書により当該資料の提出を求めた日から、原則として15日後である(不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条第2項)。
(2) 消費者庁長官は、事業者から書面により提出期限の延長の申出があり、正当な事由があると認めた場合には、その提出期限を延長することができる。
なお、具体的にどのような理由であれば、正当な事由と認められるかは、個別の事案ごとに判断されることになるが、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は、正当な事由とは認められない。
同指針 第4の2よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
資料の提出期限は15日で、延長の余地はない。15日を過ぎればその時点で不当表示とみなされる。
現行
不当景品類及び不当表示防止法施行規則第7条第2項は、期間を「前項の文書を交付した日から十五日を経過する日までの期間」としたうえで、ただし書で「事業者が当該期間内に資料を提出しないことについて正当な事由があると認められる場合は、この限りでない」と書いている。指針第4の2(1)も15日を「原則として」と書き、同(2)は、書面による延長の申出があり正当な事由があると認めた場合には提出期限を延長することができるとしている。あわせて、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は正当な事由とは認められない、とも書いている。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条第2項(版ID 428M60000002006_20260701_508M60000002058、施行日 2026年7月1日)。不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会、平成28年4月1日 消費者庁一部改正)第4の2(1)(2)。
第7条第2項が「みなす」という効果を発生させるのは、事業者が、あらかじめ設定された期間内に資料を提出しないときです(同指針 第4の柱書き)。提出された資料が合理的な根拠を示すものと認められない場合の扱いについて、消費者庁は制度の解説で、資料を期間内に提出しない場合と並べて説明しています。
事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(第8条第3項)。
消費者庁「不実証広告規制」(表示対策課)合理的な根拠を示す資料を求めるのは、消費者庁長官だけか
第7条第2項に基づいて求めるのは消費者庁長官です。ほかに、適格消費者団体が第35条に基づき資料の開示を要請できる規定があります。
第35条の要請に対しては、事業者は正当な理由がある場合を除き、応じるよう努める義務を負うとされています。
第7条第2項の主語は内閣総理大臣で、第38条第1項により、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)は消費者庁長官に委任されています。指針の本文も「消費者庁長官は」と書いています。
これとは別に、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請できる規定が、令和5年の改正で置かれました。要請できるのは適格消費者団体です。
この規定は令和5年改正景品表示法で新設され、令和6年10月1日から施行されています。消費者庁の改正概要は、新設の背景を次のように書いています。
適格消費者団体は、事業者が行う表示が優良誤認表示であるとして差止請求(法第34条第1項)を行う場合には、当該表示どおりの効果、性能がないことの立証責任を負う。しかし、表示と実際が異なること、特に、効果、性能表示の場合に、表示どおりの効果、性能がないことを立証するためには専門機関による分析、調査が必要であるなど多大な負担を要する。
【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(消費者庁表示対策課)「適格消費者団体による開示要請規定の導入」【改正の背景】2つの規定は、書かれている効果が違います。第7条第2項は資料を提出しないときに「みなす」という効果を条文で定めています。第35条は要請に応じる努力義務を定めるにとどまり、資料が開示されないときの効果は同条には書かれていません。
要請の方法と記載事項を定めているのは内閣府令
第35条第1項は「内閣府令で定めるところにより」と書いており、その内閣府令が不当景品類及び不当表示防止法施行規則第21条の2です。消費者庁の改正概要は、同条が令和5年改正に伴って新設されたものであるとしています。同条は、要請を、次に掲げる事項を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供して行うものとしています。
- 名称及び所在地並びに代表者の氏名
- 電話番号、電子メールアドレス及びファクシミリの番号(消費者契約法第13条第1項に規定する差止請求関係業務においてファクシミリ装置を用いて送受信しようとする場合に限る。)
- 当該事業者の氏名又は名称
- 法第35条第1項の規定による要請である旨
- 要請の理由
- 合理的な根拠を示す資料の開示を要請する表示
- 希望する開示の実施の方法
出典:不当景品類及び不当表示防止法施行規則第21条の2(版ID 428M60000002006_20260701_508M60000002058、施行日 2026年7月1日)。新設の経緯は【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(消費者庁表示対策課)。
令和5年改正景品表示法には、このほかに確約手続(第26条から第33条まで)の創設、課徴金額の加算、罰則規定の拡充が含まれています。これらの内容は別ページで扱います。薬機法の側の課徴金は計算も手続も別の条文に置かれており、薬機法の課徴金 — 第75条の5の2が定める計算と手続で扱っています。
理解の確認
提出した資料そのものは客観的に実証された内容であるのに、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない、ということが起こるのはなぜか。
指針第3の1が挙げる2つの要件は、順に進む工程ではなく、両方を満たすことを求めるものだからです。①提出資料が客観的に実証された内容のものであること(第3の2)を満たしていても、②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること(第3の3)を欠けば、合理的な根拠を示すものとは認められません。指針が第3の3で挙げる例は、いずれも提出資料の出所ではなく、実証された内容と表示された内容のずれを理由に挙げたものです。照らし合わせる相手は広告の中の特定の一文や数値ではなく、表示全体から一般消費者が認識する効果、性能である、と指針は注記しています。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会、平成28年4月1日 消費者庁一部改正)第3の1・第3の3
「自社で行った試験・調査は表示の裏付けにならない」という説明は、指針のどこと食い違うか。
指針が基準を置いているのは、誰が実施したかではなく、どの方法で実施したかです。第3の2(1)ア・イは、表示された効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法等によって実施する必要があるとしています。そのうえで同ウは、事業者とは関係のない第三者が行った試験・調査は一般的に客観的なものであると考えられるとしつつ、ア又はイの方法で実施されている限り、当該事業者(その関係機関を含む。)が行った試験・調査であっても表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である、と書いています。実施主体が外部であることは、方法の要件の代わりになるものではありません。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会、平成28年4月1日 消費者庁一部改正)第3の2(1)ア・イ・ウ
提出期限の延長について、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるという理由が正当な事由と認められないのは、指針が事業者に何を求めているからか。
指針第3の1は、効果、性能の著しい優良性を示す表示は一般消費者に対して強い訴求力を有し顧客誘引効果が高いとしたうえで、そのような表示を行う事業者は当該表示内容を裏付ける合理的な根拠をあらかじめ有しているべきである、と書いています。施行規則第7条第2項が定める、文書を交付した日から十五日を経過する日までという期間は、この考え方のもとで、すでに手元にある資料を出すための期間という位置づけになります。だから指針第4の2は、書面による延長の申出があり正当な事由があると認めた場合には期限を延長できるとしながら、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は正当な事由とは認められない、と書いています。表示を行った後から根拠を作ることを織り込んだ期間ではない、ということです。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条第2項(法令確認日 2026-09-08)/不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針 第3の1・第4の2
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- 7-1 優良誤認と有利誤認 — 景品表示法第5条第1号と第2号は、条文のどこが違うのか 景品表示法で「優良誤認」と呼ばれるのは第5条第1号、「有利誤認」と呼ばれるのは第2号です。
- 7-4 景品表示法の課徴金と確約手続 — 令和5年改正で増えたルート 景品表示法の課徴金は第8条に、確約手続は第26条から第33条までに置かれています。
- 3-2 サプリメントの表現はどこまで書けるか — 薬機法と健康増進法の重なり 食品として販売する物の表示・広告は、健康増進法第65条第1項が正面から規制します。
- 7-10 どの法律で見るか — 薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法の重なり 広告や表示についての規定は、薬機法だけにあるのではありません。
- 不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 — 不実証広告規制に関する指針(平成15年10月28日 公正取引委員会、平成28年4月1日 消費者庁一部改正)はじめに・第2・第3・第4 消費者庁(指針PDF)(2026-09-08 確認。消費者庁「不実証広告規制」のページからリンクされている指針本文のPDF)
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条・第7条・第8条・第34条・第35条・第38条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版ID 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048、施行日 2026年5月21日)
- 不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)第7条・第21条の2 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版ID 428M60000002006_20260701_508M60000002058、施行日 2026年7月1日)
- 【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(令和5年改正景品表示法、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)