30秒でわかる要点
- 第1号は中身、第2号は取引条件:優良誤認は第5条第1号で、品質、規格その他の内容についての表示です。有利誤認は第5条第2号で、価格その他の取引条件についての表示です。条文そのものに、この2つの呼び名は書かれていません。
- 裏付け資料の提出は第1号だけ:表示が第1号にあたるかを判断するため必要があると認められるときは、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められることがあります。出さないと、措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)との関係では、不当表示と「みなされ」ます(第7条第2項)。そうであるものとして扱うと決める、という意味です。課徴金納付命令(違反で得た売上などをもとに、国がお金を納めさせる命令)との関係では、「推定され」ます(第8条第3項)。反対の事実が示されない限り、そうであるものとして扱う、という意味です。
- 違反には、措置命令・課徴金・罰則などの定めがある:措置命令、課徴金納付命令、確約手続、罰則が定められています。確約手続は、違反の疑いがあるときの手続です。自ら改める計画の認定を受けると、疑いの理由となった行為に、措置命令と課徴金納付命令の規定が適用されなくなります。令和7年度に消費者庁が出した措置命令13件は、優良誤認3件、有利誤認8件、原産国告示2件でした。原産国告示は、第5条第3号の表示を指定する告示(国が決めた事項を公に知らせる文書)の1つです。
1. 「優良誤認」「有利誤認」は、法律のどこに書かれているのですか?
景品表示法の第5条(不当な表示の禁止)です。第1号が優良誤認、第2号が有利誤認と呼ばれています。条文の中に、この2つの語は書かれていません。
第3号は、内閣総理大臣が告示(国が決めた事項を公に知らせる文書)で指定するものについての号です。
景品表示法の正式な名前は、不当景品類及び不当表示防止法です。この法律で不当な表示を禁じているのは、第5条です。
第5条の中には、番号の付いた項目(号)が3つ並んでいます。第1号が「優良誤認」、第2号が「有利誤認」と呼ばれています。
ただし、条文の中にこの2つの呼び名は書かれていません。呼び名は、行政の側の用語です。消費者庁が公表する運用状況の資料は、「第5条第1号(優良誤認)」「第5条第2号(有利誤認)」のように、号に括弧書きで添えています。
例
冒頭のA社の広報担当が、社内の研修で「優良誤認」という語を聞いたとします。第5条を開いても、この語は見つかりません。「品質、規格その他の内容」について定めた第1号が、そう呼ばれているからです。
第5条の見出しは「不当な表示の禁止」です。第1号と第2号は、何についての表示かを名指ししています。第3号は、それ以外の表示を受け止める受け皿です。
条文の置き場所を見ると、景品と表示の関係がわかります。第2章第1節の表題は「景品類の制限及び禁止並びに不当な表示の禁止」です。景品類の側が第4条、表示の側が第5条に置かれています。
第3号は、告示で中身が決まる
第3号の対象は、第1号・第2号のほかの表示のうち、内閣総理大臣が指定するものです。指定の手続は、第6条が定めています。
指定をするときや、変えたり廃止したりするときは、次の2つをしなければなりません(第6条第1項)。1つは、公聴会(広く意見を聞く会)を開いて、関係事業者と一般の意見を求めることです。もう1つは、消費者委員会の意見を聴くことです。この手続は、内閣府令(内閣府が定める命令)で定めるところによります。第4条の景品類の制限・禁止を決めたり変えたり廃止したりするときも、同じ手続です。これらは、告示によって行われます(同条第2項)。
紛らわしいのが、第2条第3項・第4項の規定による指定です。こちらは第6条ではなく、第3条が同じ形の手続を別に定めています。
消費者庁の令和7年度の運用状況の資料には、第3号に基づくものとして「原産国告示」と「ステルスマーケティング告示」の名前が出てきます。各告示の内容は、別ページで扱います。
なお、医薬品等(薬機法が扱う5つの製品。医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品)の広告については、景品表示法とは別に、薬機法にも定めがあります。薬機法第66条が、うそや大げさな(虚偽又は誇大な)記事の広告等を禁じています(『2-2 医薬品や化粧品などの広告で、事実と違う・大げさな表現は禁止ですか?』)。健康食品の広告も含めて、どの法律のどの条文で見るかの整理は、『7-10 1つの広告や表示に、どの法律がかかり得る?』にまとめています。
2. 第1号と第2号は、条文のどこが違うのですか?
違いは対象にあります。第1号は「品質、規格その他の内容」、第2号は「価格その他の取引条件」を扱います。末尾に置かれた要件の文言は、両号で同じです。
どちらの号の話になるかは、何についての表示かで分かれます。
第1号は、商品やサービス(条文では「役務」)の中身についての号です。品質や規格などについて、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良だと示す表示を扱います。事実と違って、同じ種類や似た商品・サービスを扱う他の事業者のもの(他社のもの)よりも著しく優良だと示す表示も扱います。
第2号は、取引条件についての号です。価格などについて、取引の相手方(お客の側)に著しく有利だと一般消費者に誤認される表示を扱います。比べる相手は、実際のものか、他社のものです。
どちらの号も、末尾に同じ要件が付いています。「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」です。お客を不当に引き寄せ、消費者が自分の判断で合理的に選ぶことを妨げるおそれがある、と認められるもの、という意味です。
例
冒頭のA社のチラシで考えます。成分の量は、商品の「内容」についての表示です。問題になるとすれば、第1号の側です。値引きの案内は、「価格その他の取引条件」についての表示です。問題になるとすれば、第2号の側です。
ただし、号にあたるかどうかには、「著しく」優良・有利といえるかや末尾の要件など、条文のほかの要素もかかわります。
表1は、第5条第1号と第2号の語を、要素ごとに分けて並べたものです。横に読むと、違いは「対象となる事項」などの行にあることがわかります。
| 条文の要素 | 第1号 | 第2号 |
|---|---|---|
| 対象と | 商品又は | 商品又は |
| 比較の | 実際の | 実際の |
| 程度と | 一般消費者に | 取引の |
| 末尾の要件 | 不当に | 不当に |
出典は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条第1号・第2号の条文です。e-Gov 法令検索の、施行日2026年5月21日の版によります(法令確認日 2026-09-08)。表は条文の語を分けて並べたもので、ある表示が第1号や第2号にあたるかどうかを決める基準を示すものではありません。
直感的なポイント
2つの号は、同じ型紙から作った文のようなものです。型紙のうち入れ替えてあるのは、対象となる事項、比較の相手方の書き方、程度と方向を示す語の3か所です。末尾の要件は、一字も違いません。
対象のほかに、2か所の違いがある
1つは「事実に相違して」の有無です。「事実と違って」という意味の語です。第1号は、他の事業者のものと比べる部分に、この語を置いています。第2号の条文に、この語はありません。
もう1つは動詞です。第1号は「著しく優良であると示す表示」、第2号は「著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」と書かれています。
どちらの号も、末尾の要件までで1つの文です。
同じ法律の中でも、他の条文は別の語を使っています。第34条第1項(適格消費者団体の差止請求権。その団体が、表示をやめさせるよう求める権利)は、各号の末尾を別の語で書いています。第1号は「著しく優良であると誤認される表示をすること」です。第2号は「取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること」です。
第48条(罰則)も、同じ位置を別の語で書いています。第1号は「著しく優良であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき」です。第2号は「取引の相手方に著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき」です。
消費者庁の報告に載っている事件名で見る
消費者庁の令和7年度の運用状況の報告は、事件に名前を付けています(表5)。事件名を並べると、号ごとの違いがよく見えます。
有利誤認とされたものには、次の事件名が挙げられています。
- 「おせち料理の提供価格に関する不当表示」
- 「英会話教室の入会金に関する不当表示」
- 「エステティックサロンで提供する施術サービスの料金に関する不当表示」
優良誤認とされたものには、次の事件名が挙げられています。
- 「風呂用防カビ剤の効果に関する不当表示」
- 「スマートフォン等向けコーティング剤の効果に関する不当表示」
価格・入会金・料金は取引条件の側、効果は中身の側の話だとわかります。
3. 誰の、どんな表示が規制されるのですか?
第5条の名宛人(禁止の対象になる人)は「事業者」です。対象は、事業者が自分の供給する商品やサービス(役務)の取引についてする表示です。
「事業者」と「表示」の意味は、第2条が定めています。
第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」と書き出します。規制の対象は、このうち「自己の供給する商品又は役務の取引について」する表示です。
「事業者」は、商業、工業、金融業その他の事業を行う者です(第2条第1項)。
「表示」の定義(第2条第4項)には、2つの絞り込みが入っています。1つは、「顧客を誘引するための手段として」という目的の限定です。お客を引き寄せるための表示、ということです。もう1つは、「自己の供給する商品又は役務」という範囲の限定です。自分が供給する商品やサービスについての表示、ということです。
定義の末尾には「内閣総理大臣が指定するもの」とあります。この指定は、第3条により告示で行われます。
例
冒頭のA社が、自社の健康食品をチラシで紹介する場面で考えます。A社は、事業を行う者です。チラシは、A社が自分で供給する商品の取引について、お客を引き寄せるために作るものです。第5条が見る「表示」になり得るのは、こうしたものです。
自分では表示をしていない事業者は?
この点には、管理措置指針が触れています。第22条第1項が事業者に求める措置について定めた、国の指針です(7.の節で説明します)。
指針は、自分の商品について一般消費者に表示をしていない事業者(広告媒体事業者等)にも触れています。指針によれば、こうした事業者でも、例えば、商品を一般消費者に供給している他の事業者と共同して供給していると認められる場合は、景品表示法の適用を受けます。そのような場合には、第22条第1項に基づく必要な措置を講じることが求められる、としています(第2の1)。
原文で確かめる(管理措置指針 第2の1)
なお、自己の供給する商品又は役務について一般消費者に対する表示を行っていない事業者(広告媒体事業者等)であっても、例えば、当該事業者が、商品又は役務を一般消費者に供給している他の事業者と共同して商品又は役務を一般消費者に供給していると認められる場合は、景品表示法の適用を受けることから、このような場合には、景品表示法第22条第1項の規定に基づき必要な措置を講じることが求められることに留意しなければならない。
事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、最終改正 令和6年4月18日内閣府告示第92号)第2の1同じ指針は、表示等の作成を他の事業者に任せる場合にも触れています。任せた側に、周知・啓発、情報の共有、事後的な確認のための措置を求めています(第4の1・4・6)。
アフィリエイトプログラム(第三者が商品を紹介し、成果に応じて報酬を受ける仕組み)を利用した広告を行う業態について、指針には次のように書かれています。「当該広告を利用する事業者がアフィリエイター等の作成する表示等を確認することが必要となる場合があることに留意する必要がある」(第4の3)。
表示にかかわった人のうち誰が名宛人になるかは、別ページで扱います。薬機法・健康増進法・医療法との重なりは、『7-10 1つの広告や表示に、どの法律がかかり得る?』にまとめています。
4. 裏付け資料を出すよう求められるのは、どちらの号ですか?
第1号(優良誤認)についてだけです。措置命令との関係では第7条第2項が、課徴金納付命令との関係では第8条第3項が定めています。
資料を出さないときの効果は、第7条第2項が「みなす」、第8条第3項が「推定する」と書き分けています。
ある事業者が、商品の中身について、実際のものや、同じ種類や似た商品を扱う他社のものより著しく優良だと示す表示をしたとします。この表示が第1号にあたるかを判断するため必要があると認めるとき、内閣総理大臣は、表示をした事業者に資料の提出を求めることができます。求めるのは、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料です。提出の期間も定めます。
消費者庁は、措置命令の条文(第7条)と課徴金の条文(第8条)にあるこの仕組みを、「不実証広告規制」という名前で解説しています。その解説では、求める側を「消費者庁長官」と書いています。
第8条第3項も、同じ書き出しです。課徴金納付命令に関し、表示が第5条第1号にあたるかを判断するため必要があると認めるとき、資料の提出を求めることができるとしています。
出さないときは「みなす」と「推定する」
法令の用語で、「みなす」(第7条第2項)は、そうであるものとして扱うと決める書き方です。「推定する」(第8条第3項)は、反対の事実が示されない限り、そうであるものとして扱う書き方です。
消費者庁の制度解説は、この2つを並べて説明しています。期間内に資料を出さない場合だけでなく、出した資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合も、同じ扱いになるとしています。
原文で確かめる(消費者庁「不実証広告規制」)
優良誤認表示を効果的に規制するため、消費者庁長官は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(第8条第3項)。
消費者庁「不実証広告規制」(表示対策課)例
冒頭のA社のチラシで考えます。成分の量の表示が問題になるとすれば、第1号の側です。第1号にあたるかを判断するため必要があると認められれば、A社は裏付けの資料を求められることがあり得ます。期間内に出さなければ、措置命令との関係では、第1号の表示とみなされます。
値引きの案内が問題になるとすれば、第2号の側です。第7条第2項と第8条第3項は、第2号については定められていません。ただし、第2号にあたる表示も、第5条で禁じられています。表示の根拠となる情報を確認する措置は、7.の節で扱います。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
不実証広告規制の根拠は景品表示法の旧第4条第2項であり、優良誤認表示と有利誤認表示の双方が対象になる。
現行
根拠は第7条第2項(措置命令との関係)と第8条第3項(課徴金納付命令との関係)で、いずれも「第五条第一号に該当するか否かを判断するため」と書かれている。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第7条第2項・第8条第3項(e-Gov 法令検索、施行日2026年5月21日の版、法令確認日 2026-09-08)。消費者庁の制度解説も「第7条第2項」「第8条第3項」と表記している。
現行の条文と食い違う説明の一覧は、『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』にまとめています。
「合理的な根拠」といえるための2つの要件
どんな資料なら「合理的な根拠」を示すものといえるのか。これについては、第7条第2項の運用指針(不実証広告ガイドライン)が定められています。消費者庁は、そのポイントとして次の2つの要件を挙げています。
- 提出資料が、客観的に実証された内容のものであること
- 表示された効果、性能と、提出資料によって実証された内容が、適切に対応していること
原文で確かめる(不実証広告ガイドラインのポイント)
提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。/提出資料が客観的に実証された内容のものであること。/表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。
消費者庁「不実証広告規制」(不実証広告ガイドラインのポイント)。「/」は改行箇所運用指針の中身は、『7-3 広告に書いた効果・性能の根拠を示せないと、どうなる?』で扱っています。
5. 第5条に違反すると、どんな手続や罰則があるのですか?
措置命令(第7条第1項)、課徴金納付命令(第8条第1項)、確約手続(第26条以下)、罰則(第46条から第49条まで)の4つが定められています。
消費者庁の資料は、確約手続を令和5年改正による新設とし、その改正を令和6年10月1日施行(効力を持ち始めること)としています。
第5条の違反から動く手続と罰則は、条文の4か所に分かれて置かれています。
- 措置命令(第7条第1項):違反の中止などを命じる役所の命令
- 課徴金納付命令(第8条第1項):違反で得た売上などをもとに、国がお金を納めさせる命令
- 確約手続(第26条から第33条まで):違反の疑いがあるとき、自ら改める計画の認定を受けると、疑いの理由となった行為に措置命令と課徴金納付命令の規定が適用されなくなる手続
- 罰則(第46条から第49条まで):拘禁刑や罰金などの刑罰
措置命令(第7条第1項)
第4条の景品類の制限・禁止か、第5条に違反する行為があるとき、内閣総理大臣は、その事業者に命令を出すことができます。命じる内容は、次のとおりです。
- その行為の差止め(やめさせること)
- その行為が再び行われることを防止するために必要な事項
- これらの実施に関連する公示(広く知らせること)その他必要な事項
書き出しが示すとおり、措置命令は表示規制だけの手続ではありません。第4条に基づく景品類の制限・禁止に違反する行為にも及びます(景品規制の内容は、『7-2 景品の上限額は、景品表示法のどこに書いてある?』で扱っています)。
条文は、その命令は「当該違反行為が既になくなつている場合においても」、次の者にすることができる、と書いています(同項各号)。違反行為がすでに終わっていても、次の者に命令を出せる、ということです。
- 違反行為をした事業者
- 合併後に存続する法人か、合併で設立された法人
- 分割でその事業を承継した法人
- その事業を譲り受けた事業者
措置命令は、措置命令書の謄本(写し)を送り届けて行われます(同条第3項)。
例
冒頭のA社のチラシが、第5条に違反するとされた場面で考えます。A社がすでにチラシの配布をやめていても、措置命令の対象になり得ます。
課徴金納付命令(第8条第1項)
課徴金の対象になる行為は、第5条に違反する行為のうち、同条第3号に該当する表示に係るものを除いたものと定義されています(第8条第1項の括弧書。条文の中の括弧でくくった部分)。つまり、第1号・第2号の表示に係る違反が対象です。
課徴金の額は、違反とされた表示に係るその商品やサービスについて、課徴金対象期間に取引をした売上額に、100分の3を掛けて出します。売上額は「政令で定める方法により算定した売上額」で、掛ける割合を条文は「百分の三」と書いています。
ただし、次の2つの場合は、納付を命じることができません。
- 次の2つが、どちらも認められるとき。①事業者が、課徴金の対象となる行為をした期間を通じて、表示が課徴金の対象となる表示にあたると知らなかったこと。②知らないことについて、相当の注意を怠った者でないこと。
- 額が「百五十万円未満」のとき
例
計算の形だけを見ます。算定した売上額を仮に「100」とすると、課徴金の額はその100分の3で「3」です。計算した課徴金の額が百五十万円未満なら、納付は命じられません。
次の細かい決まりは、『7-4 景品表示法の課徴金はどう決まり、確約手続はどう進む?』で扱っています。
- 課徴金対象期間の計算(同条第2項)
- 過去に課徴金納付命令を受けた者についての「百分の四・五」への読替え(掛ける割合を置き換えること。同条第5項)
- 自ら報告した場合の減額(第9条)
- 課徴金対象行為をやめた日からの期間の制限(第12条第7項)
確約手続(第26条から第33条まで)
確約手続の流れは、次のとおりです。
- 内閣総理大臣は、違反の疑いのある行為をしている者に、書面で通知することができる(第26条)
- 通知を受けた者は、自ら改める内容をまとめた計画(是正措置計画)について、認定を申請できる
- 認定を受けると、その疑いの理由となった行為について、第7条第1項(措置命令)と第8条第1項(課徴金納付命令)は適用されません(第28条)
通知ができるのは、2つの要件を満たすときです。1つは、第4条の制限・禁止か第5条に違反する行為があると疑うに足りる事実(疑う理由として十分な事実)があることです。もう1つは、その疑いの理由となった行為について、一般消費者が自主的かつ合理的に商品やサービスを選べるようにする上で、必要があると認めることです。
書面に記載されるのは、行為の概要、違反する疑いのある法令の条項、認定の申請ができる旨の3つです(第26条各号)。ただし、措置命令に係る行政手続法第30条の規定による通知又は第15条第1項の規定による通知をした後は、この限りでない、というただし書き(但書)が置かれています。その後は、この書面の通知の定めは使われない、という意味です。
既になくなっている違反被疑行為についても、同じ仕組みが第30条から第33条までに置かれています。
罰則(第46条から第49条まで)
- 措置命令に違反したとき:違反行為をした者は、2年以下の拘禁刑(刑事施設に収容する刑)又は300万円以下の罰金です(第46条第1項)。情状により、両方を科すこともできます。
- 第25条第1項の報告・物件の提出や立入検査に関する違反:1年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です(第47条)。
- 第5条第1号・第2号に相当する表示:100万円以下の罰金です(第48条)。
第46条が措置命令への違反を罰するのに対し、第48条は、第5条第1号・第2号に相当する表示について、罰金を直接定めています。消費者庁の資料は、第48条を令和5年改正による「直罰(100万円以下の罰金)の新設」として挙げています。
原文で確かめる(第48条)
法人には、両罰規定(違反した人だけでなく、その人が属する会社も罰する決まり)があります(第49条第1項)。代表者や代理人、使用人その他の従業者が、業務又は財産に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑が科されます。第46条第1項の違反行為は3億円以下の罰金刑、第47条・第48条の違反行為は、それぞれの条(各本条)に定める罰金刑です。
例
冒頭のA社の広報担当が、A社の業務として、第48条の各号にあたる表示をしたとされた場面で考えます。第49条第1項により、行為をした人を罰するほか、A社にも罰金刑が科され得ます。
6. 実際に、どちらの号で何件の処分が出ているのですか?
令和7年度に消費者庁が出した措置命令は13件です。内訳は、優良誤認3件、有利誤認8件、原産国告示(第5条第3号の告示の1つ)2件です。
確約計画(自ら改める計画)の認定8件では、違反の疑いのある行為の内訳が、優良誤認1件、有利誤認5件、ステルスマーケティング告示4件と記載されています。
消費者庁は、年度ごとの運用状況を公表しています。令和7年度(令和7年4月1日から令和8年3月31日まで)の分は、令和8年5月28日に公表されました。
この年度に消費者庁が行ったものは、次のとおりです。
- 措置命令:13名の事業者に対する13件
- 確約計画(5.の節の確約手続で認定を受ける、自ら改める計画)の認定:8名の事業者に対する8件
- 課徴金納付命令:10名の事業者に対する10件(課徴金の額は合計3億3940万円)
- 指導(法的な強制力のない行政指導):388件
確約計画の認定の内訳を足すと、認定件数の8件より多くなります。同報告は、確約計画の認定について「関係法条が2以上にわたる事件があるため、認定件数と一致しない」と注記しています。1つの事件に、2つ以上の条項がかかわる場合がある、ということです。
号ごとの件数
号ごとに、指導まで含めた件数は表2のとおりです。行が号、列が措置の種類です。「合計」は、措置命令・確約計画の認定と指導を足した数です。「うち第7条第2項適用」の行は、第1号の件数のうち、第7条第2項(裏付け資料の仕組み。4.の節)が適用されたものです。
| 関係法条 | 措置命令・ | 指導 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 第5条第1号 | 4 | 315 | 319 |
| うち第7条第2項適用 | 2 | 0 | 2 |
| 第5条第2号 | 13 | 61 | 74 |
| 第5条第3号 | 6 | 13 | 19 |
単位は件。出典は、令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)表6。関係法条が2以上にわたる事件があるため、合計は事件数と一致しません。
例
表2では、第1号は指導の件数が多く、措置命令・確約計画の認定では第2号が多くなっています。合計は、第1号が319件、第2号が74件、第3号が19件です。
年度をまたぐと、件数は動いている
令和5年度から令和7年度までの件数を並べると、次のとおりです。措置命令は減り、指導は増えています。
- 令和5年度:措置命令44件、指導85件、課徴金納付命令12件(20億4419万円)
- 令和6年度:措置命令26件、指導339件、課徴金納付命令7件(19億2696万円)、確約計画の認定1件
- 令和7年度:措置命令13件、指導388件、課徴金納付命令10件(3億3940万円)、確約計画の認定8件
確約計画の認定は、制度が施行された令和6年度からの件数です。
措置命令の件数を決まった数のように書いた説明を見かけたら、公表されている年度ごとの数値で確かめられます(『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』)。
措置命令を行うのは、消費者庁だけではない
都道府県知事にも、措置命令の権限と調査の権限が委任されています。同報告は、都道府県知事が自らの判断と責任によって景品表示法を運用することができる、としています(第1の2)。
原文で確かめる(運用状況の報告 第1の2)
都道府県知事には、景品表示法第38条第11項及び景品表示法施行令第23条の規定に基づき、措置命令権限と調査権限が委任されており、都道府県知事は、自らの判断と責任によって景品表示法を運用することができる。
令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の2令和7年度に都道府県知事が行った措置命令は、2都県で3件です(令和5年度3件、令和6年度4件)。このうち2件で、第7条第2項の適用が併記されています。
同報告の別紙2によると、1件では、都道府県知事が期間を定めて資料の提出を求めました。別紙2は、その結果を「提出された資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められないものであった」と記載しています。もう1件については、同じく提出を求めたところ「当該期間に資料を提出しなかった」と記載しています。
消費者庁の制度解説が並べている2つの場合(4.の節)が、どちらも現れている形です。
同報告は、原産国告示とステルスマーケティング告示の名前を、表5(表示事件の一覧)では違反行為の欄に、表6では関係法条の欄に置いています。別紙2の違反法条の欄だけは、「第5条第3号(ステルスマーケティング告示)」と号を冠した形で書かれています。
別紙2の違反法条の欄は、3件のいずれについても第5条第1号を挙げていますが、第1号だけを挙げているのは1件です。残る2件のうち、1件は第5条第3号(ステルスマーケティング告示)を、もう1件は第5条第2号と第5条第3号(同告示)を併せて記載しています。
このほか、同報告は、インターネット上の広告に特化した監視業務について324件の指導を記載しています。健康増進法第65条第1項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある表示についても、589件の指導を記載しています。健康増進法の側は、『7-5 食品の広告で健康効果の誇張はどこまで禁じられる?』(第65条)で扱っています。
7. 表示を管理する体制も、求められているのですか?
求められています。第22条第1項により、事業者は、表示に関する事項を適正に管理するため、必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければなりません。
その内容は、同条第2項に基づく管理措置指針が定めています。
第5条は、表示そのものを禁じる規定です。これとは別に、表示を管理する体制についての規定が、第2章第4節に置かれています。
同条第2項に基づいて定められているのが、管理措置指針です。2014年11月に内閣府の告示として定められ、その後、次の告示で改正されています。
告示の番号と改正の経過
制定は、平成26年11月14日内閣府告示第276号です。改正は、平成28年4月1日内閣府告示第125号、令和4年6月29日内閣府告示第74号、令和6年4月18日内閣府告示第92号によるものです。
指針が挙げる7つの措置
指針の第4は、事業者が講ずべき表示等の管理上の措置の内容として、次の7つを挙げています。
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令遵守の方針等の明確化
- 表示等に関する情報の確認
- 表示等に関する情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
指針は、これらを「その規模や業態、取り扱う商品又は役務の内容、取引の態様等に応じ、必要かつ適切な範囲で」講ずる必要があるとしています。会社の規模や扱う商品などに合わせて、必要で適切な範囲で行う、ということです。
3の「確認」がなされたといえるかについて、指針は、「表示等の内容、その検証の容易性、当該事業者が払った注意の内容・方法等によって個別具体的に判断されることとなる」と書いています。表示の中身や確かめやすさ、払った注意などによって判断される、ということです。
6は、資料の保管などの措置をとることです。確認した情報を、あとで確かめられるようにするためです。確かめられるようにしておく期間を、指針は「表示等の対象となる商品又は役務が一般消費者に供給され得ると合理的に考えられる期間」としています。
措置が講じられていないときの手続
第22条第1項の措置については、次の手続が定められています。
- 指導及び助言(第23条)
- 勧告(こうするよう役所が正式にすすめること。第24条第1項)
- 勧告に従わないときの公表(同条第2項)
令和7年度の執行状況は、指導及び助言34件、勧告0件、公表0件です。令和5年度は45件、令和6年度は22件で、いずれも勧告・公表は0件でした。
消費者庁の令和7年度の報告は、この年度に指導が行われた事例を挙げています。有利誤認表示について、ポスターにおいて表示の根拠となる情報を確認していなかった事例です。
例
冒頭のA社が、値引きを案内するチラシを作る場面で考えます。上の事例と同じく、取引条件についての表示の場面です。指針の3は表示等に関する情報の確認、6は資料の保管などの措置です。どこまで行うかは、A社の規模や業態などに応じて、必要かつ適切な範囲で考えることになります。
まとめると、第5条は表示そのものを禁じ、第22条第1項は表示を管理する体制を求めています。第5条に違反した場合の手続は第7条以下に、第22条第1項の措置を講じていない場合の手続は第23条・第24条に、それぞれ別に置かれています。
理解の確認
第5条第1号と第2号は、末尾に置かれた要件の文言が同じです。それなのに号を分けているのは、何を分けているからですか?
分けているのは、誤認の対象となる事項です。第1号は「品質、規格その他の内容」、第2号は「価格その他の取引条件」を扱います。末尾の「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」は、両号で共通です。号の違いは、禁じる理由の違いではありません。何について実際と違う印象を与えたかの違いです。このほか、第1号だけに「事実に相違して」が置かれています。動詞も、第1号が「著しく優良であると示す」、第2号が「著しく有利であると一般消費者に誤認される」と書き分けられています。それでも、末尾の要件は一字も違いません。
根拠:景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法、昭和37年法律第134号)第5条第1号・第2号(e-Gov 法令検索、施行日2026年5月21日の版、法令確認日 2026-09-08)
不実証広告規制は優良誤認表示と有利誤認表示の両方に及ぶ、という説明があります。この説明は、今の条文のどこと食い違いますか?
資料の提出を求める規定は、第7条第2項(措置命令との関係)と第8条第3項(課徴金納付命令との関係)に置かれています。どちらも「第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるとき」と書かれています。対象は第1号だけで、第2号は入りません。この説明は、根拠を旧第4条第2項に置く古い理解です。条番号と対象の範囲の両方が、今の条文とずれています。令和7年度の運用状況でも、第7条第2項の適用は、第5条第1号の欄にだけ2件計上されています。
根拠:景品表示法第7条第2項・第8条第3項(e-Gov 法令検索、法令確認日 2026-09-08)/令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)表6
第5条第3号にあたる表示は、措置命令の対象にはなるのに、課徴金納付命令の対象からは外れます。条文のどの書き方によるものですか?
措置命令を定める第7条第1項は、「第5条の規定に違反する行為」と書き、号を限定していません。一方、第8条第1項は、課徴金対象行為を定めるところで、括弧書により「同条第3号に該当する表示に係るもの」を除いています。号を絞っているのは課徴金の側だけです。そのため、原産国告示やステルスマーケティング告示に基づく事件は、措置命令の対象になっても、課徴金の対象からは外れます。令和7年度の措置命令13件のうち、2件は原産国告示によるものです。
根拠:景品表示法第7条第1項・第8条第1項(e-Gov 法令検索、法令確認日 2026-09-08)/令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の1(1)
次に読む
- 7-3 広告に
書いた A社が、自社商品の広告に効果や性能を書いたとします。効果・性能の 根拠を 示せないと、 どうなる? — 不実証 広告規制と 「合理的な根拠」 - 7-2 景品の
上限額は、 健康食品を扱うA社の担当者が、商品を買った人にプレゼントを付ける企画を考えているとします。景品表示法の どこに 書いてある? — 条文と 告示の 役割分担 - 7-10 1つの
広告や 健康食品の会社で、新しい商品の広告を作るとします。表示に、 どの 法律が かかり得る? — 薬機法・ 景品表示法・ 健康増進法・ 医療法の 重なり - 3-4 食品の
広告、 健康食品の会社が、サプリメントの広告を出すとします。責任を 負うのは 誰? — 3つの 法律の 重なりと 担当の役所
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条・第3条・第5条・第6条・第7条・第8条・第9条・第12条・第22条〜第24条・第26条〜第33条・第34条・第38条・第46条〜第49条 e-Gov 法令検索(版 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048、施行日2026年5月21日)(2026-09-08 確認)
- 令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の1・第1の2、表5・表6、別紙2 消費者庁(2026-09-08 確認)
- 不実証広告規制(消費者庁 表示対策課の制度解説ページ。不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針=不実証広告ガイドラインの要点を掲載)消費者庁(2026-09-08 確認)。指針本体のPDFの直URL、および制定・改正の年月日は未確認
- 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、改正 平成28年4月1日内閣府告示第125号/令和4年6月29日内閣府告示第74号/令和6年4月18日内閣府告示第92号)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(令和5年改正景品表示法、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)