30秒でわかる要点
- 優良誤認は第5条第1号(品質、規格その他の内容)、有利誤認は第5条第2号(価格その他の取引条件)。条文にこの2語は書かれていない
- 表示の裏付けとなる資料の提出を求められるのは第1号だけ。提出しないと、措置命令との関係では不当表示と「みなす」(第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では「推定する」(第8条第3項)
- 令和7年度の措置命令13件は、優良誤認3件・有利誤認8件・原産国告示2件。指導まで含めた合計は第1号319件、第2号74件、第3号19件
「優良誤認」「有利誤認」は、景品表示法のどこに書かれているか
「不当な表示の禁止」を定める第5条です。第1号が優良誤認、第2号が有利誤認と呼ばれ、条文自体にその語はありません。
第3号は、内閣総理大臣が告示で指定するものについての号です。
景品表示法が不当な表示を禁じているのは、第5条です。3つの号が並び、第1号が「優良誤認」、第2号が「有利誤認」と呼ばれています。ただし、条文の中にこの2語は書かれていません。
呼び名の出どころは、行政の側の用語法です。消費者庁が公表する運用状況の資料は、号を示すときに「第5条第1号(優良誤認)」「第5条第2号(有利誤認)」と括弧書きを併記しています。
条文の置き場所も押さえておくと、景品と表示の関係が見えます。第2章第1節の表題は「景品類の制限及び禁止並びに不当な表示の禁止」で、景品類の側が第4条、表示の側が第5条です。3つの号のうち、第1号と第2号が対象を名指しし、第3号がそれ以外を受け止める受け皿になっています。
第3号は、告示で中身が決まる
第3号は、第1号・第2号以外の表示について、内閣総理大臣が指定するものを対象としています。その手続を定めているのが第6条です。
内閣総理大臣が第4条の規定による制限若しくは禁止又は第5条第3号の規定による指定をし、又はこれらの変更若しくは廃止をしようとするときは、内閣府令で定めるところにより、公聴会を開き、関係事業者及び一般の意見を求めるとともに、消費者委員会の意見を聴かなければなりません(第6条第1項)。これらの制限及び禁止並びに指定並びにその変更及び廃止は、告示によって行われます(同条第2項)。
紛らわしいのが、第2条第3項・第4項の規定による指定です。こちらは第6条ではなく、第3条が同じ形の手続を別に定めています。
令和7年度の運用状況の資料には、第3号に基づくものとして「原産国告示」「ステルスマーケティング告示」の名称が現れます。表5(表示事件の一覧)では違反行為の欄に、表6(表示事件の内訳)では関係法条の欄に、これらの名称が置かれています。別紙2(都道府県知事による措置命令)の違反法条の欄だけは、「第5条第3号(ステルスマーケティング告示)」と号を冠した形で書かれています。各告示の内容は、別ページで扱います。
なお、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の広告については、薬機法第66条が別に虚偽又は誇大な記事の広告等を禁じています(第66条 — 虚偽・誇大広告の禁止)。どの法律のどの条文で見るかの整理は、どの法律で見るか — 薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法の重なりにまとめています。
第1号と第2号は、条文の文言としてどこが違うのか
対象が「品質、規格その他の内容」か「価格その他の取引条件」かです。末尾に置かれた要件の文言は、両号で同じです。
第1号は「著しく優良であると示す表示」、第2号は「著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」と書き分けられています。
違いは対象にあります。第1号は「品質、規格その他の内容」、第2号は「価格その他の取引条件」を扱います。末尾に置かれた要件の文言は、両号でまったく同じです。
条文を要素ごとに分けて並べると、どこが同じでどこが違うかが見えます。次の表は、第5条第1号と第2号の語をそのまま分けたものです。
| 条文の要素 | 第1号(優良誤認) | 第2号(有利誤認) |
|---|---|---|
| 対象となる事項 | 商品又は役務の品質、規格その他の内容 | 商品又は役務の価格その他の取引条件 |
| 比較の相手方 | 実際のもの/事実に相違して、当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るもの | 実際のもの/当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るもの |
| 程度と方向を示す語 | 一般消費者に対し、著しく優良であると示す | 取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される |
| 末尾の要件 | 不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの | 不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(第1号と同じ文言) |
出典は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条第1号・第2号の条文(e-Gov 法令検索、施行日2026年5月21日の版、法令確認日 2026-09-08)。表は条文の語を分けて並べたもので、当てはめの基準を示すものではありません。
条文の形
2つの号は、同じ型紙から作られた文です。入れ替わっているのは、対象となる事項、比較の相手方の書き方、そして程度と方向を示す語の3か所で、末尾の要件は一字も違いません。
対象のほかに、2か所の差がある
1つは「事実に相違して」の有無です。第1号は、他の事業者に係るものとの比較についてこの語を置いています。第2号の条文に、この語はありません。
もう1つは動詞です。第1号は「著しく優良であると示す表示」、第2号は「著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」と書かれています。
いずれの号も、末尾の「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」までで、1つの号の文です。
同じ法律の中でも、他の条文は別の語を使っています。第34条第1項(適格消費者団体の差止請求権)は、各号の末尾を、第1号「著しく優良であると誤認される表示をすること」、第2号「取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること」と書いています。
第48条(罰則)は、同じ位置を、第1号「著しく優良であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき」、第2号「取引の相手方に著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき」と書いています。
いずれも各号の末尾の部分で、その前には対象となる事項と比較の相手方を示す語が置かれています。
誰が、どの表示について規制を受けるのか
第5条の名宛人は「事業者」で、規制の対象は「自己の供給する商品又は役務の取引について」する表示です。
「事業者」と「表示」の意味は、第2条が定義しています。
第5条の名宛人は「事業者」、規制の対象は「自己の供給する商品又は役務の取引について」する表示です。条文は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」と書き出します。
ここに現れる「事業者」と「表示」は、いずれも第2条に定義があります。
第2条第4項の定義には、2つの限定が入っています。「顧客を誘引するための手段として」という目的の限定と、「自己の供給する商品又は役務」という範囲の限定です。末尾の「内閣総理大臣が指定するもの」の指定は、第3条により告示で行われます。
自ら表示をしていない事業者の扱い
この範囲について、景品表示法第22条第1項に基づく管理措置指針は、第2の1で次のように述べています。
なお、自己の供給する商品又は役務について一般消費者に対する表示を行っていない事業者(広告媒体事業者等)であっても、例えば、当該事業者が、商品又は役務を一般消費者に供給している他の事業者と共同して商品又は役務を一般消費者に供給していると認められる場合は、景品表示法の適用を受けることから、このような場合には、景品表示法第22条第1項の規定に基づき必要な措置を講じることが求められることに留意しなければならない。
事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、最終改正 令和6年4月18日内閣府告示第92号)第2の1同じ指針は、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合について、委ねた側に周知・啓発、情報の共有、事後的な確認のための措置を求めています(第4の1・4・6)。
アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う業態については、「当該広告を利用する事業者がアフィリエイター等の作成する表示等を確認することが必要となる場合があることに留意する必要がある」と書かれています(第4の3)。
表示に関与した者のうち誰が名宛人になるかは、別ページで扱います。薬機法・健康増進法・医療法との重なりは、どの法律で見るか — 薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法の重なりにまとめています。
表示の裏付けとなる資料の提出は、どちらの号について定められているのか
第1号(優良誤認)についてだけです。第7条第2項が措置命令との関係で、第8条第3項が課徴金納付命令との関係で定めています。
資料が提出されないときの効果は、第7条第2項が「みなす」、第8条第3項が「推定する」と書き分けられています。
資料の提出を求められるのは、第5条第1号(優良誤認)についてだけです。同じ仕組みが、措置命令の節(第7条)と課徴金の節(第8条)の両方に置かれています。
第8条第3項も同じ書き出しで、課徴金納付命令に関し、表示が第5条第1号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときに、資料の提出を求めることができるとしています。
ただし、資料を提出しないときの効果は書き分けられています。第7条第2項が「みなす」、第8条第3項が「推定する」です。消費者庁は、この2つを次のように並べて説明しています。
優良誤認表示を効果的に規制するため、消費者庁長官は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(第8条第3項)。
消費者庁「不実証広告規制」(表示対策課)「合理的な根拠」といえるための2要件
どのような資料であれば「合理的な根拠」を示すものに当たるかについては、第7条第2項の運用指針(不実証広告ガイドライン)が定められています。消費者庁は、そのポイントとして2つの要件を挙げています。
提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。/提出資料が客観的に実証された内容のものであること。/表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。
消費者庁「不実証広告規制」(不実証広告ガイドラインのポイント)。「/」は改行箇所よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
不実証広告規制の根拠は景品表示法の旧第4条第2項であり、優良誤認表示と有利誤認表示の双方が対象になる。
現行
根拠は第7条第2項(措置命令との関係)と第8条第3項(課徴金納付命令との関係)で、いずれも「第五条第一号に該当するか否かを判断するため」と書かれている。
根拠:不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第7条第2項・第8条第3項(e-Gov 法令検索、施行日2026年5月21日の版、法令確認日 2026-09-08)。消費者庁の制度解説も「第7条第2項」「第8条第3項」と表記している。
現行の条文と食い違う説明の一覧は古い理解の一覧 — 現行の条文と食い違う記述を更新するにまとめています。運用指針の中身は、不実証広告規制 — 景品表示法第7条第2項の運用指針が示す「合理的な根拠」の基準で扱っています。
第5条に違反したときは、どの手続と罰則が定められているか
第7条第1項の措置命令、第8条第1項の課徴金納付命令、第26条以下の確約手続、第46条から第49条までの罰則です。
確約手続は令和5年改正で新設され、同改正は令和6年10月1日から施行されています。
第5条の違反から動く手続と罰則は、4つに分かれて置かれています。措置命令(第7条第1項)、課徴金納付命令(第8条第1項)、確約手続(第26条から第33条まで)、そして罰則(第46条から第49条まで)です。以下、条文の位置を順に示します。
措置命令(第7条第1項)
内閣総理大臣は、第4条の規定による制限若しくは禁止又は第5条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができます。
書き出しが示すとおり、措置命令は表示規制だけの手続ではありません。第4条に基づく景品類の制限・禁止に違反する行為にも及びます(景品規制の内容は、景品類の上限は、条文ではなくどこに置かれているかで扱っています)。
条文は続けて、その命令は「当該違反行為が既になくなつている場合においても」することができるとしています。名宛人として挙げられているのは、違反行為をした事業者、合併後存続し又は合併により設立された法人、分割により当該事業を承継した法人、当該事業を譲り受けた事業者の4つです(同項各号)。措置命令は、措置命令書の謄本を送達して行われます(同条第3項)。
課徴金納付命令(第8条第1項)
課徴金対象行為は、第5条の規定に違反する行為のうち、同条第3号に該当する表示に係るものを除いたものと定義されています(第8条第1項の括弧書)。
課徴金の額は、課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該商品又は役務の「政令で定める方法により算定した売上額」に「百分の三」を乗じて得た額です。
ただし、納付を命ずることができない場合が2つ置かれています。当該事業者が課徴金対象行為をした期間を通じて表示が同項各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるときと、その額が「百五十万円未満」であるときです。
課徴金対象期間の計算(同条第2項)、過去に課徴金納付命令を受けた者についての「百分の四・五」への読替え(同条第5項)、自ら報告した場合の減額(第9条)、課徴金対象行為をやめた日からの期間の制限(第12条第7項)は、景品表示法の課徴金と確約手続 — 令和5年改正で増えたルートで扱っています。
確約手続(第26条から第33条まで)
第26条は、内閣総理大臣が、違反の疑いのある行為をしている者に対し、書面により通知することができるとしています。通知の要件は2つです。第4条の規定による制限若しくは禁止又は第5条の規定に違反する行為があると疑うに足りる事実があること、そして、その疑いの理由となった行為について、一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めることです。
書面に記載されるのは、行為の概要、違反する疑いのある法令の条項、認定の申請ができる旨の3つです(同条各号)。ただし、措置命令に係る行政手続法第30条の規定による通知又は第15条第1項の規定による通知をした後は、この限りでないという但書が置かれています。
通知を受けた者が是正措置計画の認定を受けたときは、当該認定に係る疑いの理由となった行為について、第7条第1項および第8条第1項は適用されません(第28条)。既になくなっている違反被疑行為についても、同じ仕組みが第30条から第33条までに置かれています。
消費者庁の資料は、確約手続に関する規定(第26条〜第33条)を令和5年改正による新設とし、同改正を令和6年10月1日から施行としています。
罰則(第46条から第49条まで)
措置命令に違反したときは、当該違反行為をした者は、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられます(第46条第1項。情状により併科できます)。第25条第1項の報告・物件の提出や立入検査に関する違反は、1年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です(第47条)。
第48条は、第5条第1号・第2号に相当する表示について、罰金を直接定めています。
法人については、その代表者又は代理人、使用人その他の従業者が業務又は財産に関して違反行為をしたときに、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。第46条第1項の違反行為は3億円以下の罰金刑、第47条・第48条の違反行為は各本条の罰金刑です(第49条第1項)。
消費者庁の資料は、第48条を令和5年改正による「直罰(100万円以下の罰金)の新設」として挙げています。
行政は実際に、どちらの号で何件の処分をしているのか
令和7年度の措置命令13件の内訳は、優良誤認3件、有利誤認8件、原産国告示2件です。
確約計画の認定8件の違反被疑行為の内訳は、優良誤認1件、有利誤認5件、ステルスマーケティング告示4件と記載されています。
消費者庁は、年度ごとの運用状況を公表しています。令和7年度(令和7年4月1日から令和8年3月31日まで)の分は、令和8年5月28日に公表されました。
同年度に消費者庁が行った措置命令は13名の事業者に対する13件、確約計画の認定は8名の事業者に対する8件、課徴金納付命令は10名の事業者に対する10件で、課徴金の額は合計3億3940万円です。このほか388件の指導が行われています。
同報告は、確約計画の認定について「関係法条が2以上にわたる事件があるため、認定件数と一致しない」と注記しています。
号ごとの件数
号ごとに、指導まで含めた件数は次のとおりです。
| 関係法条 | 措置命令・確約計画の認定 | 指導 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 第5条第1号(優良誤認) | 4 | 315 | 319 |
| うち第7条第2項適用 | 2 | 0 | 2 |
| 第5条第2号(有利誤認) | 13 | 61 | 74 |
| 第5条第3号 | 6 | 13 | 19 |
単位は件。出典は、令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)表6。関係法条が2以上にわたる事件があるため、合計は事件数と一致しません。
年度をまたぐと、件数は動いている
措置命令は令和5年度44件、令和6年度26件、令和7年度13件、指導は同じ順に85件、339件、388件です。課徴金納付命令は12件(20億4419万円)、7件(19億2696万円)、10件(3億3940万円)でした。確約計画の認定は、制度が施行された令和6年度が1件、令和7年度が8件です。
措置命令の件数を一定の数として述べる説明は、公表されている年度別の数値と照らして確認できます(古い理解の一覧)。
措置命令を行うのは、消費者庁だけではない
都道府県知事には、景品表示法第38条第11項及び景品表示法施行令第23条の規定に基づき、措置命令権限と調査権限が委任されており、都道府県知事は、自らの判断と責任によって景品表示法を運用することができる。
令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の2令和7年度に都道府県知事が行った措置命令は、2都県で3件です(令和5年度3件、令和6年度4件)。別紙2の違反法条の欄は、3件のいずれについても第5条第1号を挙げていますが、第1号だけを挙げているのは1件です。残る2件のうち、1件は第5条第3号(ステルスマーケティング告示)を、もう1件は第5条第2号と第5条第3号(同告示)を併せて記載しています。
第7条第2項の適用が併記されているのは、この3件のうち2件です。同報告は、1件について、都道府県知事が期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ「提出された資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められないものであった」と記載し、もう1件について、同じく提出を求めたところ「当該期間に資料を提出しなかった」と記載しています(同報告 別紙2)。
前の節に引いた消費者庁の制度解説が並べている2つの場合が、いずれも記載されている形です。
事件名に現れる号ごとの違い
同報告が事件に付けている名称は、号ごとの違いをそのまま示しています。有利誤認とされたものには「おせち料理の提供価格に関する不当表示」「英会話教室の入会金に関する不当表示」「エステティックサロンで提供する施術サービスの料金に関する不当表示」、優良誤認とされたものには「風呂用防カビ剤の効果に関する不当表示」「スマートフォン等向けコーティング剤の効果に関する不当表示」が挙げられています(同報告 表5)。
同報告は、インターネット上の広告に特化した監視業務について324件の指導、健康増進法第65条第1項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある表示について589件の指導も記載しています。健康増進法の側は、健康増進法第65条 — 誇大表示の禁止と勧告・命令で扱っています。
事業者には、表示を管理するための措置が求められているのか
第22条第1項が、表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないとしています。
その内容は、同条第2項に基づく管理措置指針が定めています。
第5条は、表示そのものを禁じる規定です。これとは別に、表示を管理する体制についての規定が第2章第4節に置かれています。
同条第2項に基づいて定められているのが管理措置指針です。平成26年11月14日内閣府告示第276号として制定され、平成28年4月1日内閣府告示第125号、令和4年6月29日内閣府告示第74号、令和6年4月18日内閣府告示第92号により改正されています。
指針が挙げる7つの措置
指針の第4は、事業者が講ずべき表示等の管理上の措置の内容として、次の7つを挙げています。
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令遵守の方針等の明確化
- 表示等に関する情報の確認
- 表示等に関する情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
指針は、これらを「その規模や業態、取り扱う商品又は役務の内容、取引の態様等に応じ、必要かつ適切な範囲で」講ずる必要があるとしています。
3の「確認」がなされたといえるかどうかは、「表示等の内容、その検証の容易性、当該事業者が払った注意の内容・方法等によって個別具体的に判断されることとなる」と書かれています。
6については、確認した情報を「表示等の対象となる商品又は役務が一般消費者に供給され得ると合理的に考えられる期間」、事後的に確認するために、資料の保管等の措置をとることが挙げられています。
措置が講じられていないときの手続
第22条第1項の措置については、第23条が指導及び助言を、第24条第1項が勧告を、同条第2項が勧告に従わないときの公表を定めています。
令和7年度の執行状況は、指導及び助言34件、勧告0件、公表0件です(令和5年度は45件、令和6年度は22件で、いずれも勧告・公表は0件)。同報告は、令和7年度に指導が行われた事例として、有利誤認表示について、ポスターにおいて表示の根拠となる情報を確認していなかった事例を挙げています。
要点
第5条は表示そのものを禁じ、第22条第1項は表示を管理する体制を求めています。前者に違反した場合の手続は第7条以下に、後者の措置を講じていない場合の手続は第23条・第24条に、それぞれ別に置かれています。
理解の確認
第5条第1号と第2号は末尾に置かれた要件の文言が同じなのに、号を分けているのは何を分けているからか。
分けているのは、誤認の対象となる事項です。第1号は「品質、規格その他の内容」、第2号は「価格その他の取引条件」を扱い、末尾の「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」は両号で共通です。号の違いは、禁じる理由の違いではなく、何について実際と違う印象を与えたかの違いにあります。このほか第1号だけに「事実に相違して」が置かれ、動詞も第1号が「著しく優良であると示す」、第2号が「著しく有利であると一般消費者に誤認される」と書き分けられていますが、末尾の要件は一字も違いません。
根拠:景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法、昭和37年法律第134号)第5条第1号・第2号(e-Gov 法令検索、施行日2026年5月21日の版、法令確認日 2026-09-08)
不実証広告規制は優良誤認表示と有利誤認表示の双方に及ぶ、という説明は、現行の条文のどこと食い違うか。
資料の提出を求める規定は第7条第2項(措置命令との関係)と第8条第3項(課徴金納付命令との関係)に置かれ、いずれも「第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるとき」と書かれています。対象は第1号だけで、第2号は入りません。この説明は根拠を旧第4条第2項に置く古い理解で、条番号と対象の範囲の両方が現行とずれています。令和7年度の運用状況でも、第7条第2項の適用は第5条第1号の欄にだけ2件計上されています。
根拠:景品表示法第7条第2項・第8条第3項(e-Gov 法令検索、法令確認日 2026-09-08)/令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)表6
第5条第3号に該当する表示が、措置命令の対象になりながら課徴金納付命令の対象からは外れるのは、条文のどの書き方によるか。
措置命令を定める第7条第1項は「第5条の規定に違反する行為」と書き、号を限定していません。一方、第8条第1項は課徴金対象行為を定めるにあたり、括弧書で「同条第3号に該当する表示に係るもの」を除いています。号を絞っているのは課徴金の側だけなので、原産国告示やステルスマーケティング告示に基づく事件は、措置命令の対象になっても課徴金の対象からは外れます。令和7年度の措置命令13件のうち、2件は原産国告示によるものです。
根拠:景品表示法第7条第1項・第8条第1項(e-Gov 法令検索、法令確認日 2026-09-08)/令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の1(1)
次に読む
- 7-3 不実証広告規制 — 景品表示法第7条第2項の運用指針が示す「合理的な根拠」の基準 表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を出せないなら、その表示は不当表示として扱う。
- 7-2 景品類の上限は、条文ではなくどこに置かれているか — 景品表示法の委任構造 景品表示法の条文をいくら読んでも、景品類の上限額は出てきません。
- 7-10 どの法律で見るか — 薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法の重なり 広告や表示についての規定は、薬機法だけにあるのではありません。
- 3-4 食品広告は誰が責任を負うか — 3法の重なりと所管 食品の広告その他の表示にかかるのは、健康増進法と景品表示法です。
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条・第3条・第5条・第6条・第7条・第8条・第9条・第12条・第22条〜第24条・第26条〜第33条・第34条・第38条・第46条〜第49条 e-Gov 法令検索(版 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048、施行日2026年5月21日)(2026-09-08 確認)
- 令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日 消費者庁表示対策課)第1の1・第1の2、表5・表6、別紙2 消費者庁(2026-09-08 確認)
- 不実証広告規制(消費者庁 表示対策課の制度解説ページ。不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針=不実証広告ガイドラインの要点を掲載)消費者庁(2026-09-08 確認)。指針本体のPDFの直URL、および制定・改正の年月日は未確認
- 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、改正 平成28年4月1日内閣府告示第125号/令和4年6月29日内閣府告示第74号/令和6年4月18日内閣府告示第92号)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要(令和5年改正景品表示法、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)