30秒でわかる要点
- 禁じているのは、著しく事実に相違する表示と、著しく人を誤認させる表示。対象は食品として販売に供する物の広告その他の表示で、名宛人は「何人も」です。製造業者・販売業者に限られず、広告媒体事業者や広告の仲介・取次ぎをする広告代理店も対象となり得るとされています(健康増進法第65条第1項)。
- 「著しく」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていること。判断の基準は、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識です。効果に触れた一文があるかどうかではなく、名称・キャッチフレーズ・成分の説明・起源・引用まで含めた広告等の全体から何を認識し得るかを見ます(指針 第2の3)。
- 罰則が向いているのは、第65条第1項の違反そのものではなく、第66条第2項の命令への違反。手前の勧告(第66条第1項)も、「重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」にすることができる規定で、違反があれば当然に進むものではありません。命令に違反した者は六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金です(第71条)。
健康増進法第65条第1項は、誰に、何を禁じているのか
「何人も」に対し、食品として販売に供する物の広告その他の表示で、健康保持増進効果等について著しく事実に相違し、又は著しく人を誤認させる表示を禁じています。
名宛人は食品等の製造業者、販売業者等に限定されていません(指針 第2の1)。
第65条第1項が禁じているのは、食品として販売に供する物について、健康保持増進効果等を著しく事実に相違して表示すること、又は著しく人を誤認させるように表示することです。名宛人は「何人も」で、食品等の製造業者や販売業者には限られていません。
この条は、健康増進法の第七章「特別用途表示等」の中に置かれています。同じ章にある第43条第1項が特別用途表示の許可という手続の規定であるのに対し、第65条は表示の内容そのものを、名宛人を限定せずに禁じる規定です。
「何人も」はどこまで及ぶか
指針は、同項が対象とする者は食品等の製造業者、販売業者等に何ら限定されるものではない、としています。新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者等も対象となり得る、という書き方です。
ただし、規制が及ぶ順序も併せて書かれています。第一義的に規制の対象となるのは製造業者・販売業者であり、広告媒体事業者等に及ぶのは特別な事情がある場合だ、という段構えです。
もっとも、虚偽誇大広告について第一義的に規制の対象となるのは健康食品の製造業者、販売業者であるから、直ちに、広告媒体事業者等に対して健康増進法を適用することはない。しかしながら、当該表示の内容が虚偽誇大なものであることを予見し、又は容易に予見し得た場合等特別な事情がある場合には、同法の適用があり得る。
食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)(令和2年4月1日一部改正 消表対第431号、消費者庁表示対策課)第2の1令和6年7月作成のQ&Aは、この範囲に広告の取次ぎを行う事業者を加えて書いています。
したがって、例えば、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者のみならず、これら広告媒体事業者に対して広告の仲介・取次ぎをする広告代理店、サービスプロバイダーも同項の規制の対象となり得ます。
健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成、消費者庁)Q6「食品として販売に供する物」はどこまでか
Q&Aは、薬機法上の「医薬品」を除く全ての飲食物だと書いています。錠剤やカプセル形状のものだけでなく、野菜や果物のように外観から明らかに一般の食品と認識される物も入ります。
健康増進法第65条第1項の対象となる「食品」は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年8月10日法律第145号)上の「医薬品」を除く全ての飲食物であって、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含め、食品として販売に供する物が対象となっています。
同Q&A Q3薬機法の適用を受けるものが、これで外れるわけではありません。指針は、専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)を含むこと等により無承認無許可医薬品として薬機法の適用を受けるものであっても、食品であることを明示して販売されていたり、医薬品であることを表示せずに飲食物として販売に供されている等のものについては、併せて第65条第1項の適用を受ける、と書いています(指針 第2の2(1))。
この場合、薬機法の主管課室に加えて、健康増進法の主管課室と食品衛生法の主管課室が、それぞれ監視指導を行い得ることになる、と続きます。
「健康保持増進効果等」には、どこまでが含まれるのか
健康の保持増進の効果の4類型と、内閣府令が定める4項目です。広告等全体から間接的に表示していると一般消費者が認識し得るものも含まれます。
「内閣府令で定める事項」について、令和2年の指針は特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成21年内閣府令第57号)第19条としています(指針 第2の2(3)②)。
条文の「健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項」の全体を、条文自身が「健康保持増進効果等」と呼んでいます。前段と後段で中身が分かれます。
令和2年の指針は、前段の「健康の保持増進の効果」を健康状態の改善又は健康状態の維持の効果と説明したうえで、4つの類型を挙げています。後段の「内閣府令で定める事項」については、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成21年内閣府令第57号)第19条が4項目を定めることとしている、と書いています。
次の表に並べた8項目は、この指針の記載によるものです。
| 区分 | 指針が挙げている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 健康の保持増進の効果 ア | 疾病の治療又は予防を目的とする効果 | 指針 第2の2(3)① |
| 同 イ | 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果 | 指針 第2の2(3)① |
| 同 ウ | 特定の保健の用途に適する旨の効果 | 指針 第2の2(3)① |
| 同 エ | 栄養成分の効果 | 指針 第2の2(3)① |
| 内閣府令で定める事項 ア | 含有する食品又は成分の量 | 指針 第2の2(3)② |
| 同 イ | 特定の食品又は成分を含有する旨 | 指針 第2の2(3)② |
| 同 ウ | 熱量 | 指針 第2の2(3)② |
| 同 エ | 人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果 | 指針 第2の2(3)② |
表中の「内閣府令で定める事項」の4項目は、令和2年の指針が平成21年内閣府令第57号第19条の定めとして挙げているものです(本ページは当該内閣府令の原文を参照していません)。指針は、健康の保持増進の効果のうちアとイについて「医薬品的な効能効果に相当するもの」と書いています。また内閣府令で定める事項については、「健康の保持増進の効果とともに、国民の健康の増進を図るための措置を講じ、国民保健の向上を図ることに関係する場合において規制対象となる」という条件を付けています(指針 第2の2(3)①・②)。
明示していなくても含まれる
指針は、上の効果を明示的又は直接的に表示しているものだけを見るのではない、としています。広告等全体でみた場合に、間接的に健康保持増進効果等を表示していると一般消費者が認識し得るものも含まれる、という書き方です。指針が挙げる類型は5つです。
ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
イ 含有成分の表示及び説明により表示するもの
ウ 起源、由来等の説明により表示するもの
エ 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談などを引用又は掲載することにより表示するもの
オ 医療・薬事・栄養等、国民の健康の増進に関連する事務を所掌する行政機関(外国政府機関を含む。)や研究機関等により、効果等に関して認められている旨を表示するもの
指針 第2の2(3)③Q&A Q4(3)は同じ枠を6つで示しており、指針の5類型に次の1つが加わっています。
エ 身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの
健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成)Q4(3)エ要点
第65条第1項が見ているのは、効果に触れた一文があるかどうかではなく、広告等の全体から一般消費者が何を認識し得るかです。名称、キャッチフレーズ、成分の説明、起源・由来、引用、行政機関や研究機関の名前の使い方が、いずれもこの枠に入っています。
「広告その他の表示」は、どこまでを指すのか
顧客を誘引するための手段として行う広告その他の表示です。チラシやCMといった形態だけでなく、その内容や表示方法にも着目して判断されます。
媒体の具体例は、留意事項 第2の1が5つ挙げています。
指針は「広告その他の表示」を、顧客を誘引するための手段として行う広告その他の表示と定義しています。個々の表示が該当するかどうかは、チラシやCMといった形態のみならず、その内容や表示方法にも着目する必要がある、としています(指針 第2の2(2))。
該当性を見る3つの基準
留意事項 第2の2は、次の3つに該当すると消費者が認識できるものを、広告その他の表示に該当するものとして判断するよう示しています。
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確にあること。
- 特定食品の商品名等が明らかにされていること。
- 一般人が認知できる状態であること。
薬機法の広告該当性も3つの要件で判断されるとされていますが、根拠となる文書は別のものです。薬機法側はそもそも「広告」とは — 薬機法における広告該当性の3要件で扱っています。
媒体の具体例
留意事項 第2の1は、その具体例として次の5つを挙げています。
⑴ 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示
⑵ 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
⑶ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーンその他これらに類似する物による広告その他の表示及び陳列物又は実演による広告その他の表示
⑷ 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告その他の表示
⑸ 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)
同指針に係る留意事項(令和2年4月1日一部改正 消表対第433号、消費者庁表示対策課)第2の1形態を変えた場合の取扱い
留意事項は、この3つに該当することを回避した表示が行われている現状を挙げています。そのうえで、商品名の一部を伏せ字にする場合や、書籍・冊子・ホームページの形態をとる場合であっても、実質的に3つを満たすものとして広告等に該当するものとして取り扱う、と書いています。
第三者を介在させた場合についても、記載があります。
また、例えば、特定の食品又は成分の健康保持増進効果等に関する書籍等に「当該食品に関するお問い合わせは、○○相談室へ」等と記載されている上記⑶の事例に関して、連絡先に掲げられた「○○相談室」が当該食品を直接販売等していない場合、(中略)広告等規制の対象となることを回避しようとするものがある。この場合にあっても、「表現の自由」は最大限尊重されるべきであるが、その「○○相談室」が特定の販売業者をあっせん等していることが認められる場合等であって、当該販売業者が別の個人又は団体を介在させることにより、広告等規制の対象となることを回避しながら当該書籍等を広告等として活用していると判断できるなど、実質的に上記の①〜③に該当する場合には、当該書籍等を広告等として取り扱う。
同留意事項 第2の2さらに、記事や学術論文等の形態をとっている上記⑶の事例に関して、(中略)書籍、冊子、ホームページに特定の食品又は成分に係る学術的解説を掲載する場合であっても、その解説の付近から特定食品の販売ページに容易にアクセスが可能である場合や、販売業者の連絡先が掲載されている等、実質的に上記の①〜③に該当する場合には、営利的言論としての広告等に該当するものとして、規制対象となる場合があり得る。
同留意事項 第2の2商品名の明示については、Q&Aにも記載があります。
なお、広告その他の表示において、具体的な商品名が明示されていない場合であっても、そのことをもって直ちに健康増進法上の「表示」に該当しないと判断されるものではありません。また、商品名を広告等において表示しない場合であっても、広告等における説明などによって特定の商品に誘引するような事情が認められるときは、健康増進法上の「広告その他の表示」に該当します。
健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成)Q2「著しく」事実に相違する、又は人を誤認させる、とはどう説明されているか
誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指します。判断は、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準とされています。
誤認については、現実に一般消費者が誤認したという結果までは必要としないと書かれています(指針 第2の3(3))。
「著しく」の説明は指針にあります。誇張・誇大の程度が、社会一般に許容されている程度を超えていることです。何が該当するかは、個々の広告その他の表示に即して判断されるとされています。
具体的に何が「著しく」に該当するかの判断は、個々の広告その他の表示に即してなされるべきであるが、ここにいう「著しく」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指しているものであり、誇張・誇大が社会一般に許容される程度を超えるものであるかどうかは、当該広告その他の表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され、その誤認がなければ顧客が誘引されることは通常ないであろうと認められる程度に達する広告その他の表示が該当する。
指針 第2の3(1)Q&Aは、この「著しく」が置かれている理由も書いています。広告は通常ある程度の誇張を含むものであり、一般消費者もある程度の誇張が行われることを通常想定している、というのが出発点です。そのため、社会一般に許容される程度の誇張であれば取締りの対象とせず、「著しく」人を誤認させるような表示を禁止する趣旨である、と説明されています(Q&A Q5(3))。
「事実に相違する」と「人を誤認させる」は別々に定義されている
前者は、広告その他の表示に表示されている健康保持増進効果等と、実際の健康保持増進効果等が異なることを指します。
後者は、表示から認識することとなる健康保持増進効果等の「印象」や「期待感」と、健康の保持増進の実際の効果等に相違があることを指します。指針は後者について、現実に一般消費者が誤認したという結果まで必要としない、と書いています(指針 第2の3(2)・(3))。
いずれについても、判断の基準は表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識だと示されています(指針 第2の3)。
判断の順序
留意事項 第4は、該当性の判断を3段階に分けて示しています。
表示内容のみで判断できるもの
事実に相違すること又は人を誤認させることが明らかであると判断できる表示。速やかに広告その他の表示の取下げ、内容の修正等の必要な指導を行い、その結果等を域内の地方厚生局へ報告するよう示されています(留意事項 第4の1)。
証拠・根拠を確認して判断するもの
一見しただけでは判別できない表示について、必要に応じ、法第66条第3項において準用する法第61条の規定に基づく立入検査及び食品の収去等を行い、表示内容の証拠又は根拠等を確認したうえで判断するとされています(留意事項 第4の2)。
成分の分析により判断するもの
表示されている有用な成分が実際には十分に含まれておらず、効果が得られない場合があり得るため、必要に応じ収去を行い、任意に有用成分を分析するか、域内の地方厚生局へ通報するよう示されています(留意事項 第4の3)。
Q&Aが加えている場面
Q&A Q5は、指針の記載に加えて、機能性表示食品の届出に関する2つの場面を「事実に相違する表示」の例に挙げています。届出を行っていない商品であるのに届出済みの商品であるかのように誤認させる表示をしている場合と、届出表示の一部を省略することにより、商品自体に機能性があるかのように表示している場合です。
「人を誤認させる表示」の例には、2つが加えられています。一部の都合の良い体験談のみを引用する場合と、完全栄養等と称して健康維持に必要な栄養成分を全て不足なく含んでいるかのように誤認させる表示をしている場合です。
表示原稿の出所についても、Q&Aに記載があります。
なお、仕入れ元(製造元)から提供された表示原稿をそのまま掲載した場合であっても、その内容が、著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させるような表示に当たるものであれば、健康増進法第65条第1項に違反することになります。
健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成)Q5(3)第65条第1項に違反すると、どの手続が動くのか
指導・勧告・命令の3つです。第66条第1項の勧告は、重大な影響を与えるおそれがあると認めるときにすることができる、と要件が付された規定です。
勧告・命令の主体は内閣総理大臣又は都道府県知事で、命令に違反した者には第71条により六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が定められています。
置かれているのは、指導・勧告・命令の3つです。そして第71条の罰則が向いているのは、第65条第1項の違反そのものではなく、第66条第2項の命令への違反です。罰則は入口ではなく、いちばん奥に置かれています。
その手前にあるのが勧告です。勧告も、違反して表示をした者があれば当然に行われるものとしては書かれていません。条文は、その場合において「国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」に勧告を「することができる」としています(第66条第1項)。
勧告と罰則の間にあるのが命令です。第66条第1項の勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときに置かれています(同条第2項)。
指導は、勧告・命令とは別に置かれている
留意事項 第4の1 は、表示内容のみで、明らかに事実と相違する又は人を誤認させると判断できるものについては、速やかに広告その他の表示の取下げ、内容の修正等の必要な指導を行うよう示しています。Q&A Q7 が指導の相手として書いているのは、第65条第1項の規定に違反するおそれのある表示をした者です。
勧告と命令を行うのは誰か
条文では、内閣総理大臣又は都道府県知事です。「都道府県知事」には、保健所を設置する市又は特別区にあっては市長又は区長が含まれます(第10条第3項)。
内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任するとされています(第69条第3項)。都道府県知事が第66条第1項又は第2項の権限を行使したときは、その旨を内閣総理大臣に通知するものとされています(第66条第4項)。なお、都道府県において健康増進法を主管する課の名称は、自治体により異なります。
公表と、勧告の中身
勧告を行った際はその内容を公表することとなっていることが、Q&A Q7 に書かれています。
勧告の内容について、指針は、広告その他の表示の掲載の差止め等の措置とともに、当該措置の実施に関する合理的な範囲内での期限と、当該措置を実施したことの報告等が併せて勧告される場合もある、としています(指針 第3の1)。命令についても同様の記載があります(指針 第3の2)。
「重大な影響を与えるおそれ」の説明
ここでいう「国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」とは、例えば、表示されている健康保持増進効果等に関する苦情等が関係機関に数多く寄せられている場合や、当該食品を摂取した者が健康を害したとする苦情等が関係機関に相当数寄せられている場合、「血糖値を緩やかに下げる」「血圧を下げる」等の健康保持増進効果等に係る虚偽誇大表示がなされることにより、診療を要する疾患等を抱える者が適切な診療機会を逸してしまうおそれがある場合は、これに当たるものといえます。
健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成)Q7指針 第3の1 は、第66条第1項の要件を「国民の健康の保持増進に重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」と書いています。現行条文はこの部分を「国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」としています(2026-09-08 時点、e-Gov 法令検索)。Q&A Q7 は現行条文と同じ文言で書いています。
立入検査と収去
第66条第3項は、食品として販売に供する物であって健康保持増進効果等についての表示がされたものについて、第61条を準用しています。指針は、食品衛生監視員が必要があると認めるときは、その製造施設、貯蔵施設又は販売施設に立ち入り、検査し、試験の用に供するのに必要な限度において収去することができる、と書いています(指針 第3の3)。
第61条第1項の権限を行使する職員は、第61条第3項により食品衛生監視員とされています。第61条第4項は、この権限が犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないと定めています。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
誇大表示に対する勧告・命令は厚生労働大臣が行う。命令に違反したときの罰則は「6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金」である。
現行
勧告・命令の主体は内閣総理大臣又は都道府県知事で、内閣総理大臣の権限は消費者庁長官に委任されている(第66条第1項・第2項、第69条第3項)。第71条の刑名は「六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」。
健康増進法(平成14年法律第103号)第66条・第69条・第71条。e-Gov 法令検索の現行版(版番号 414AC0000000103_20251212_507AC0000000087、2025年12月12日施行)で確認(2026-09-08)。指針(令和2年)およびQ&A(令和6年7月)の本文は「懲役」と表記していますが、現行条文の刑名は「拘禁刑」です。
特別用途表示の許可(第43条第1項)は、第65条とどう違う規定なのか
第43条第1項は特別用途表示をしようとする者に内閣総理大臣の許可を求める手続の規定、第65条は何人もに向けた内容の禁止規定です。名宛人も手続も別です。
外国において特別用途表示をしようとする場合の承認は、第63条第1項です。
違いは、片方が手続の規定、もう片方が内容の規定だという点です。第43条第1項は、特別用途表示をしようとする者に内閣総理大臣の許可を求めます。第65条は、許可の有無を問わず、名宛人を「何人も」として表示の内容そのものを規律します。
許可の側に置かれている手続
第43条は、許可を受けようとする者に申請書の提出を求め(第2項)、内閣総理大臣が研究所又は登録試験機関に許可試験を行わせる仕組みを置いています(第3項)。許可を受けて特別用途表示をする者に対しては、当該許可に係る食品(=特別用途食品)につき内閣府令で定める事項の表示を義務づけています(第6項)。
第62条は、許可の取消しを定めています。第43条第6項に違反したとき、当該許可に係る食品につき虚偽の表示をしたとき、または許可を受けた日以降における科学的知見の充実により当該特別用途表示をすることが適切でないことが判明するに至ったときに、内閣総理大臣が許可を取り消すことができるという内容です。第43条第1項の規定に違反した者には、第72条第2号により五十万円以下の罰金が定められています。
本邦において販売に供する食品につき、外国において特別用途表示をしようとする者は、内閣総理大臣の承認を受けることができます(第63条第1項)。許可又は承認を受けずに特別用途表示がされたものを輸入しようとする者は、第43条第1項に規定する特別用途表示をしようとする者とみなされます(第64条)。
準用の対象から外れているもの
第66条第3項が第61条を準用する対象からは、特別用途食品と、第63条第1項の承認を受けた食品が除かれています。
指針 第3の3 は、第66条第3項が準用の対象から除くものを「特別用途食品、健康増進法第63条第1項の承認を受けた食品及び販売に供する食品であって栄養表示がされたものを除く。」と書いています。現行条文の括弧書きは「特別用途食品及び第六十三条第一項の承認を受けた食品を除く。」です(2026-09-08 時点、e-Gov 法令検索)。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
特別用途表示(特定保健用食品を含む)の許可の根拠は、健康増進法第26条である。
現行
特別用途表示の許可は第43条第1項、外国において特別用途表示をしようとする場合の承認は第63条第1項に置かれている。現行の第26条は第六章「受動喫煙防止」第一節(総則)の中にあり、望まない受動喫煙が生じないよう関係者が相互に連携を図りながら協力するよう努める旨を定めた規定である。
健康増進法(平成14年法律第103号)第26条・第43条・第63条。e-Gov 法令検索の現行版(版番号 414AC0000000103_20251212_507AC0000000087、2025年12月12日施行)で確認(2026-09-08)。
薬機法や景品表示法とは、どう重なるのか
指針は、第65条第1項の規制が関連他法令の広告等規制と重畳的に適用され得るものだとしています。同じ表示に複数の法律が同時に及ぶ構造です。
指針 第4の2は、健康増進法・食品衛生法・薬機法・景品表示法・食品表示法の主管課室が緊密に連携することを求めています。
同じ一つの表示に、複数の法律が同時に及びます。指針は冒頭で、食品の表示・広告を対象とする規定をもつ法律として、健康増進法のほかに食品衛生法、薬機法、景品表示法、特定商取引に関する法律、食品表示法を挙げています。
そのうえで、第65条第1項に違反し、又は違反が疑われる広告等は、これら広告等を規制する他法令の規定に違反し、又は違反している可能性が十分にあり得る、と書いています(指針 第1の3)。
| 法律 | 指針が書いている関係 | 出典 |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法 | 食品として販売される無承認無許可医薬品に対しては、薬機法の主管課室に加え、健康増進法の主管課室及び食品衛生法の主管課室がそれぞれ監視指導を行い得る | 指針 第2の2(1) |
| 景品表示法(第5条第1号) | 第65条第1項違反となる表示をした食品は、それが取引に供され、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる場合、同時に景品表示法に違反する可能性が非常に強い | 指針 第4の2(3) |
| 特定商取引に関する法律 | 通信販売業者等が食品として販売に供する物について行う広告その他の表示については、特商法の規定も重畳的に適用され得る | 指針 第4の2(3) |
| 食品衛生法・食品表示法 | 食品の表示・広告を対象とする規定をもつ法律として挙げられ、主管課室間の緊密な連携を確保することが必要とされている | 指針 第1の3、第4の2(1) |
表2は指針の記載を並べたものです。どの法律がどの範囲まで及ぶかは、それぞれの法律の条文によります。
すなわち、健康増進法第65条第1項違反となる表示をした食品は、それが取引に供され、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる場合、同時に景品表示法に違反する可能性が非常に強いものであり、健康増進法及び景品表示法が有機的に活用されることが重要である。
指針 第4の2(3)所管どうしの連携
指針は、この重なりを前提に、法主管課室どうしの連携を求めています。保健所は地域保健法(昭和22年法律第101号)第6条の規定により「栄養の改善及び食品衛生に関する事項」及び「薬事に関する事項」につき、企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行うこととされている、という位置づけも書かれています(指針 第4の2(1))。
都道府県、保健所設置市及び特別区における勧告等の施行事務については、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(平成26年法律第51号)の施行により、平成28年4月1日以降は都道府県並びに保健所設置市及び特別区においても行うこととなった、と書かれています(指針 第4の2(2))。
薬機法側は別のページで扱っている
薬機法側の広告規制は、次の3ページで扱っています。広告該当性は薬機法における広告該当性の3要件、虚偽・誇大広告の禁止は薬機法第66条 — 虚偽・誇大広告の禁止、承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止は薬機法第68条にあります。
なお、本ページで法令名を付けずに書いている条番号は、すべて健康増進法のものです。
理解の確認
第65条第1項の名宛人が「何人も」であることと、指針が広告媒体事業者等に直ちに健康増進法を適用することはないとしていることは、どう両立するのか。
「何人も」は条文が定める名宛人の範囲で、食品等の製造業者、販売業者等には限定されない。だから新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者や、これらに対して広告の仲介・取次ぎをする広告代理店、サービスプロバイダーも規制の対象となり得る。指針が書いているのは、そのうえでの適用の順序である。第一義的に規制の対象となるのは製造業者・販売業者で、媒体事業者等には表示の内容が虚偽誇大なものであることを予見し、又は容易に予見し得た場合等の特別な事情があるときに適用があり得る、という段構えであり、規制の範囲に入っていることと、直ちに適用されることは別の話になる。
根拠:健康増進法第65条第1項(法令確認日 2026-09-08)/食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(令和2年4月1日一部改正 消表対第431号)第2の1/健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成)Q6
広告等の中に効果を直接うたった一文が無ければ「健康保持増進効果等」の表示には当たらない、という理解は、指針のどこと食い違うか。
指針は、健康保持増進効果等を明示的又は直接的に表示するものだけでなく、広告等全体でみた場合に間接的に表示していると一般消費者が認識し得るものも含まれる、としている。挙げられている類型は、名称又はキャッチフレーズ、含有成分の表示及び説明、起源・由来等の説明、新聞・雑誌等の記事や医師、学者等の談話・学説・体験談の引用又は掲載、行政機関や研究機関等により効果等が認められている旨の表示の5つで、Q&Aはこれに身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するものを加えている。判断の基準は表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識に置かれているので、効果に触れた一文の有無を数えても答えは出ない。
根拠:健康増進法第65条第1項(法令確認日 2026-09-08)/指針(令和2年4月1日一部改正 消表対第431号)第2の2(3)③・第2の3/健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成)Q4(3)
第65条第1項に違反する表示をしたこと自体には罰則が向いていないのは、第66条と第71条がどう組み立てられているからか。
第71条の罰則は、第66条第2項の命令に違反した者に向けられている。その命令は、第66条第1項の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときに置かれる。勧告自体も、違反して表示をした者があれば当然に行われるのではなく、「国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」に「することができる」と、要件と裁量を付して書かれている。さらに手前には留意事項が示す表示の取下げ・内容の修正等の指導があり、罰則は入口ではなく、指導・勧告・命令と段を踏んだいちばん奥に置かれている。
根拠:健康増進法第66条第1項・第2項、第71条(法令確認日 2026-09-08)/同指針に係る留意事項(令和2年4月1日一部改正 消表対第433号)第4の1
次に読む
- 3-2 サプリメントの表現はどこまで書けるか — 薬機法と健康増進法の重なり 食品として販売する物の表示・広告は、健康増進法第65条第1項が正面から規制します。
- 7-1 優良誤認と有利誤認 — 景品表示法第5条第1号と第2号は、条文のどこが違うのか 景品表示法で「優良誤認」と呼ばれるのは第5条第1号、「有利誤認」と呼ばれるのは第2号です。
- 3-4 食品広告は誰が責任を負うか — 3法の重なりと所管 食品の広告その他の表示にかかるのは、健康増進法と景品表示法です。
- 7-10 どの法律で見るか — 薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法の重なり 広告や表示についての規定は、薬機法だけにあるのではありません。
- 健康増進法(平成14年法律第103号)第10条・第43条・第61条・第62条・第63条・第64条・第65条・第66条・第69条・第71条・第72条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版番号 414AC0000000103_20251212_507AC0000000087、2025年12月12日施行)
- 食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)(令和2年4月1日一部改正 消表対第431号、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 同指針に係る留意事項(令和2年4月1日一部改正 消表対第433号、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A(令和6年7月作成、消費者庁)消費者庁(2026-09-08 確認。作成年月は「令和6年7月」の表示によるもので、文書番号および正確な作成日は確認できていません)