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1つの広告や表示に、どの法律がかかり得る? — 薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法の重なり

健康食品の会社で、新しい商品の広告を作るとします。確かめる法律は、薬機法だけでよいのでしょうか。広告や表示についての決まりは、景品表示法・健康増進法・医療法にもあります。4つの法律は、それぞれ別々に決まりを置いています。そのため、1つの広告が、2つ以上の法律に同時に当てはまることがあります。このページでは、4つの法律が、誰に向けて、何の表示について、何を禁じ、どの役所が動くと定めているかを、条文をもとに並べて比べます。重なったときのために条文に置かれている調整の決まりも紹介します。

30秒でわかる要点

  • 1つの広告や表示に、複数の法律がかかり得る:4つの法律は、誰に向けて・何について・何を禁じるかを、別々に自分の条文に書いています。そのため「どの法律で見るか」は、法律ごとに1本ずつ確かめる作業です。薬機法第75条の5の3は、薬機法の課徴金(違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金)を減額する決まりです。同じ行為に、景品表示法の課徴金納付命令があるときなどに働きます。一方が適用されれば他方が退く関係ではないことが、ここから読み取れます。
  • 対象になる人の書き方が違う:薬機法第66条第1項、健康増進法第65条第1項、医療法第6条の5第1項は、「何人も」(だれであっても)で始まります。景品表示法第5条だけが「事業者は」で始まり、「自己の供給する商品又は役務の取引について」(自分が供給する商品やサービスの取引について)という限定も重なります。
  • 禁じ方の言葉も違う:薬機法第66条第1項は、「虚偽又は誇大」(うそや大げさ)な記事を広告などすることを禁じます。健康増進法第65条第1項と景品表示法第5条第1号・第2号には「著しく」が入ります。医療法第6条の5は、第1項で「虚偽」の広告を禁じ、第3項で広告してよい事項を第1号から第16号まで並べます。並べた事項以外は、厚生労働省令(厚生労働省が定める細かい決まり)で定める場合を除き、広告できません(限定列挙)。

1. 1つの広告や表示に、複数の法律がかかることがあるのはなぜですか?

4つの法律が、誰に・何について・何を禁じるかを、別々に自分の条文に書いているためです。書き方が違うので、1つの表示が複数の条文に当てはまることがあります。

薬機法第75条の5の3は、景品表示法の課徴金納付命令があるときなどに薬機法の課徴金を減額すると定め、同じ行為に2つの法律が及ぶ場面を想定しています。

薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法は、それぞれ独立した法律です。どれも、広告や表示についての決まりを、自分の条文の中に置いています。

  • 薬機法:医薬品等(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の5つ)について定めた法律です。医薬部外品は、医薬品よりも作用がおだやかな製品(薬用化粧品など)です。再生医療等製品は、人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。
  • 景品表示法:商品やサービスの表示と、景品について定めた法律です。
  • 健康増進法:国民の健康の増進について定めた法律で、食品の広告や表示の決まりもあります。
  • 医療法:病院や診療所などについて定めた法律で、医療の広告の決まりもあります。

ある表示がその法律の対象になるかどうかは、条文の書き方で決まります。見るのは次の3点です。

  • 主語:誰に向けた決まりか。この「誰」を、名宛人(その条文で義務や禁止の対象になる人)といいます。
  • 客体:何についての表示か。
  • 行為:何をしてはならないか。

この3点の書き方が、法律ごとに違います。そのため、1つの表示物が、複数の法律の条文の文言に同時に当てはまることがあります。

例

冒頭の健康食品の会社(A社)が、自社の商品の健康への効果に触れる広告を出す場面で考えます。健康増進法第65条第1項は、食品として販売する物の広告などで、健康への効果などについての表示を対象にしています。景品表示法第5条は、事業者が自分で供給する商品の取引についての表示を対象にしています。

A社の広告は、この2つの法律の条文に同時に当てはまり得るということです。

補足で挙げた減額の条件と計算は、6.の節で見ます。

要点

「どの法律で見るか」は、主語・客体・禁止行為・措置を行う者(違反やそのおそれがあるときに動く役所)の4点を、法律ごとに1本ずつ確かめる作業です。以下では、この4点で4つの法律を並べます。

2. それぞれの法律は、誰に向けた決まりなのですか?

薬機法第66条第1項・健康増進法第65条第1項・医療法第6条の5第1項は「何人も」(だれであっても)に、景品表示法第5条は「事業者」に向けた書き方です。

景品表示法第5条は、主語に加えて「自己の供給する商品又は役務の取引について」(自分が供給する商品やサービスの取引について)という限定を重ねています。

条文の書き出しを見ると、その決まりが誰に向いているかがわかります。4つのうち3つは、主語を「何人も」(だれであっても)と書いています。

  • 薬機法第66条第1項:「何人も」
  • 健康増進法第65条第1項:「何人も」
  • 医療法第6条の5第1項:「何人も」
  • 景品表示法第5条:「事業者は」

「何人も」で始まる条文は、表示をした人が誰であるかを問わない書き方です。薬機法の名宛人の範囲は規制されるのは誰か、医療法の名宛人は『7-6 医療広告は、なぜ「書いてよいこと」を並べる形なのか?』にあります。

例

あるクリニックの広告を、広告会社が作ったとします。医療法第6条の5第1項は「何人も」で始まるので、条文の書き方の上では、広告会社もこの条文の対象になり得ます。ただし、書き出しだけで、誰がどう扱われるかまで決まるわけではありません。

景品表示法だけは「事業者は」で始まる

主語が違うのは、景品表示法だけです。同法第5条は「事業者は」で始まり、そこに「自己の供給する商品又は役務の取引について」という限定を重ねています。自分が供給する商品やサービス(役務)の取引について、という意味です。

「事業者」の意味は、同法第2条第1項が定めています。商業、工業、金融業その他の事業を行う者のことです。定義の中身は『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。

同じ項は、事業者の利益のために行動する役員、従業員、代理人などを、その事業者とみなす(同じものとして扱う)とも定めています。ただし、このみなし規定には「次項及び第三十六条の規定の適用については」(次の項と第36条の規定を使う場面については)という限定が付いています。どの規定の場面でも事業者とみなす、という決まりではありません。

原文で確かめる(4つの条文の書き出し)

医療法には条見出し(条の内容を示す短い題)が置かれていません。上のカードに付けた見出しは、条文の末尾の「虚偽の広告をしてはならない」から取ったもので、e-Gov 法令検索の条見出しではありません。この条が置かれているのは、医療法第2章の「第二節 医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」です。

「何人も」で始まる条文は、ほかにもある

薬機法第68条も「何人も」で始まります。承認又は認証を受けていない医薬品、医療機器又は再生医療等製品について、名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告を禁じる条文です。承認は、製品ごとに国が審査して、製造販売を認めることです。認証は、国に登録された機関が、基準に合っているかを確かめて認めることです。

医療法では、第6条の7第1項(助産師の業務又は助産所)と第6条の7の2(オンライン診療受診施設)も、「何人も」で始まります。

3. 「広告」や「表示」の意味は、どの法律でも同じですか?

同じではありません。医療法はかっこ書き(かっこ内の文)、景品表示法は第2条第4項に定義があり、薬機法は広告かどうかの基準が通知(国が運用を示す文書)にあります。

健康増進法第65条第1項は「広告その他の表示」と書いており、その範囲は健康増進法第65条のページで扱っています。

4つの法律は、どれも広告や表示を規制しています。ただ、その言葉の意味をどこに書いているかが、法律ごとに違います。同じ「広告」という言葉でも、辞書の置き場所が法律ごとに違う、と考えるとつかみやすくなります。

医療法 — 条文の中に定義がある

医療法第6条の5第1項は、対象を「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」と書いています。広告など、医療を受ける人を呼び込むための手段としての表示、という意味です。

この言葉には「(以下この節において単に「広告」という。)」というかっこ書きが付いています。定義が条文そのものの中にあり、使われる範囲も「この節」に限られている形です。同じ節には、第6条の6から第6条の8までが置かれています。

景品表示法 — 別の条に定義がある

景品表示法は、「表示」の定義を第2条第4項に置いています。中身は次の3つにまとめられます。

  • 顧客を誘引する(買う気を起こさせる)ための手段であること
  • 事業者が、自分が供給する商品やサービスの内容や取引条件などについて行う、広告その他の表示であること
  • 内閣総理大臣が指定するものであること

定義の中に、主語(事業者)と範囲(自分が供給する商品やサービス)が組み込まれています。

原文で確かめる(景品表示法 第2条第4項)

「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

薬機法 — 基準は通知に示されている

薬機法第66条と第68条は「広告」という言葉を使いますが、どの表示が広告にあたるかの基準は、条文ではなく通知に示されています。通知は、国の役所が、法律の運用のしかたを自治体などに示す文書です。

通知が示しているのは、顧客誘引性(買わせる意図が明確)、特定性(商品名が明らかにされている)、一般認知性(広告を出す本人以外の人が見られる)の3つの要件です。要件の中身と、通知の日付・番号は『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』で扱っています。

健康増進法 — 「広告その他の表示」

健康増進法第65条第1項は「広告その他の表示」と書いています。何についての表示かを示す「健康保持増進効果等」は、「その他内閣府令で定める事項」を含む形で書かれています。中身の一部が、内閣府令(内閣府が定める細かい決まり)に任されているということです。この範囲は『7-5 食品の広告で健康効果の誇張はどこまで禁じられる?』で扱っています。

例

A社が、自社の健康食品を紹介するウェブページを作ったとします。景品表示法の面から見るときは、第2条第4項の「表示」の定義が手がかりです。健康増進法の面から見るときは、第65条第1項の「広告その他の表示」の範囲が手がかりです。同じ1ページでも、手がかりにする定義の置き場所が違うということです。

4. どの商品やサービスの表示が、それぞれの法律の対象になるのですか?

薬機法は医薬品等の5つの製品、健康増進法は食品として販売する物、医療法は医業・歯科医業や病院・診療所など、景品表示法は事業者が自分で供給する商品やサービスです。

景品表示法だけが、物の種類ではなく、「自己の供給する」という関係で範囲を書いています。

何についての表示が対象になるか(客体)の書き方も、法律ごとにかなり違います。薬機法と健康増進法は物の種類を挙げ、医療法は業(医業など)と施設(病院・診療所など)を挙げています。景品表示法は「自分が供給する」という関係で書いています。

表1は、e-Gov 法令検索(法令の条文を調べられる国のサイト)の条文の言葉を、そのまま並べたものです。同じ法律が2行以上あるのは、条ごとに対象が違うためです。

表1:4つの法律が客体としているもの(条文の語)
法律客体として書かれているもの根拠となる条
薬機法医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能薬機法第66条第1項
薬機法承認又は認証を受けていない医薬品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能薬機法第68条
景品表示法事業者が自己の供給する商品又は役務の品質、規格その他の内容(第1号)、価格その他の取引条件(第2号)景品表示法第5条第1号・第2号
健康増進法食品として販売に供する物に関する、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項健康増進法第65条第1項
医療法医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所医療法第6条の5第1項
医療法助産師の業務又は助産所医療法第6条の7第1項
医療法オンライン診療受診施設医療法第6条の7の2

表1は各法律の条文の語を写したものです。出典はいずれも e-Gov 法令検索(法令確認日 2026-09-08。版と施行日(法律の決まりが効力を持ち始める日)は表3および末尾の出典欄に記載)。

たとえば薬機法の2行を比べると、第66条第1項は5つの製品すべてを挙げていますが、第68条には医薬部外品と化粧品が入っていません。

例

あるクリニックが、自院のウェブサイトで診療の内容を紹介するとします。これは、表1の医療法の行(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所)に関わる広告になり得ます。

同じページで、ある医薬品の名称や効能に触れていれば、その部分は、表1の薬機法第66条第1項の行にも関わり得ます。クリニックの表示だから医療法だけを見ればよい、とは限らないということです。

薬機法の5つの製品の区分は同法第2条が定めていて、中身は『1-1 薬機法は、何のために何を扱う法律?』で扱っています。食品として販売する物の表示に、薬機法と健康増進法がどう並ぶかは『3-2 サプリメントの表現は、どこまで書ける?』にあります。

5. 禁じられている表示は、法律ごとにどう違うのですか?

禁じ方の言葉が違います。薬機法は「虚偽又は誇大」、健康増進法は「著しく事実に相違」など、景品表示法は「著しく優良」など、医療法は「虚偽」の禁止と限定列挙です。

薬機法第68条は、承認や認証を受けていないものについて、名称・製造方法・効能、効果又は性能に関する広告そのものを禁じています。

同じ「広告の規制」でも、条文が禁じている行為の書き方は同じではありません。法律ごとに見ていきます。

薬機法 — うそや大げさな記事と、承認前の広告

薬機法第66条第1項は、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能について、うそや大げさな記事を禁じています。はっきり書いたか、ほのめかしたか(明示的か暗示的か)は問いません。禁じられているのは、その記事を広告すること、記述すること、流布する(広める)ことです。

同条第2項は、医師その他の者が効能、効果又は性能を保証したと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することも、第1項にあたるものとしています。同条第3項は、堕胎を暗示したり、わいせつにわたったりする文書や図画を用いてはならないとしています。条文の中身は『2-2 医薬品や化粧品などの広告で、事実と違う・大げさな表現は禁止ですか?』にあります。

第68条は、書き方が違います。承認や認証を受けていないものについて、名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない、という条文です。その記事がうそか大げさかを問う言葉は、条文に置かれていません。この違いは『2-3 承認前の医薬品・医療機器などは、広告できますか?』で扱っています。

例

ある会社が、開発中でまだ承認を受けていない医薬品について、効能を紹介する広告を出したとします。第68条には、うそか大げさかを問う言葉がありません。そのため、書いた内容が事実どおりかどうかとは別に、この広告は第68条の対象になり得ます。

健康増進法と景品表示法 — 「著しく」が入る

健康増進法第65条第1項が禁じているのは、「著しく事実に相違する表示」と「著しく人を誤認させるような表示」です。事実と著しく違う表示と、人に著しい思い違いをさせるような表示のことです。

景品表示法第5条第1号は、商品やサービスの内容(品質、規格など)についての表示を対象にしています。条文が挙げているのは、次の2つです。

  • 実際のものよりも、著しく優良である(優れている)と示す表示
  • 事実に反して、同じ種類や似た商品・サービスを供給しているほかの事業者のものよりも、著しく優良であると示す表示

どちらにも、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」という限定が重なっています。不当に客を呼び込み、消費者が自分で考えて合理的に選ぶことを妨げるおそれがあると認められるもの、という意味です。

第2号は、価格などの取引条件について、著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を、同じ組み立てで書いています。第3号は、この2つのほかに、一般消費者に誤認されるおそれがある表示で、内閣総理大臣が指定するものです。

第1号と第2号の言葉の違いは優良誤認と有利誤認、健康増進法の「著しく」の意味は『7-5 食品の広告で健康効果の誇張はどこまで禁じられる?』で扱っています。

医療法 — うその禁止、基準、書いてよい事項の列挙

医療法第6条の5は、3段構えです。第1項が虚偽の広告の禁止、第2項が広告の内容と方法が合っていなければならない基準、第3項が広告してよい事項の列挙です。第2項が挙げている基準は、次のとおりです。

  • ほかの病院や診療所と比べて優良である、という広告をしないこと
  • 誇大な(大げさな)広告をしないこと
  • 公の秩序又は善良の風俗(社会の秩序や一般的な道徳)に反する内容の広告をしないこと
  • そのほか、厚生労働省令(厚生労働省が定める細かい決まり)で定める基準

第3項は「次に掲げる事項以外の広告をしてはならない」と書き、第1号から第16号までを挙げています。そのうえで、厚生労働省令で定める場合を例外として置いています。書いてよい事項の側から範囲を区切るこの書き方を、限定列挙といいます。

この仕組みは医療広告規制はなぜ限定列挙なのか、省令で定める場合の要件は『7-7 医療広告の「限定解除」、要件はいくつある?』で扱っています。

例

あるクリニックが、事実どおりの内容を広告に書いたとします。内容が事実どおりであっても、第3項は別の点を問います。書いた事項が、第1号から第16号までに入っているかどうかです(厚生労働省令で定める場合を除く)。事実かどうかと、書いてよい事項かどうかは、別の事柄として見られます。

6. 違反やそのおそれがあるとき、措置をとるのはどの役所ですか?

措置を行う者は、薬機法が厚生労働大臣又は都道府県知事、健康増進法が内閣総理大臣又は都道府県知事、景品表示法が内閣総理大臣、医療法が都道府県知事等です。

景品表示法第38条第11項では、消費者庁長官に委任された(任された)権限の事務の一部を、政令(内閣の決まり)で定めるところにより都道府県知事が行う形にできます。

違反やそのおそれがあるとき、どの役所が何をできるかも、それぞれの法律の条文に書かれています。まず全体を短くまとめます。

  • 薬機法:厚生労働大臣又は都道府県知事が、措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)をすることができます(第72条の5第1項)。課徴金の納付を命じるのは、厚生労働大臣です。
  • 景品表示法:内閣総理大臣が、行為の差止めなどを命じることができます(第7条第1項)。課徴金の納付を命じるのも、内閣総理大臣です。
  • 健康増進法:内閣総理大臣又は都道府県知事が、勧告(必要な措置をとるよう求めること)をすることができます(第66条第1項)。勧告は、第65条第1項に違反して表示をした者がある場合のものです。勧告ができるのは、国民の健康の保持増進と、国民への正確な情報の伝達に、重大な影響を与えるおそれがあると認めるときです。続く措置として、勧告に係る措置をとるべきことを命じる規定があります(同条第2項)。
  • 医療法:都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長が動きます。広告が第6条の5第1項から第3項までなどに違反しているおそれがあると認めるときは、報告を命じたり、立入検査をしたりできます(第6条の8第1項)。第6条の5第2項・第3項などに違反していると認める場合は、期限を定めて、広告の中止や内容の是正を命じることができます(同条第2項)。
原文で確かめる(表2:措置の内容と、措置を行う者)
表2:行政上の措置と、それを行う者
法律措置の内容措置を行う者根拠となる条
薬機法第66条第1項又は第68条の規定に違反した者に対して、その行為の中止、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことを命ずる厚生労働大臣又は都道府県知事薬機法第72条の5第1項
薬機法課徴金の納付を命ずる(対価合計額に100分の4.5を乗じた額。計算した額が225万円未満のときは命ずることができない)厚生労働大臣薬機法第75条の5の2第1項・第4項
景品表示法行為の差止め、再び行われることを防止するために必要な事項、これらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずる内閣総理大臣景品表示法第7条第1項
景品表示法課徴金の納付を命ずる(売上額に100分の3を乗じた額。第8条第5項は、事業者が基準日から遡り10年以内に確定した課徴金納付命令を受けたことがあり、かつその命令の日以後において課徴金対象行為をしていた者であるときは、第1項の「百分の三」を「百分の四・五」とすると定める)。同条第1項ただし書は、事業者が課徴金対象行為をした期間を通じて表示が同項各号のいずれかに該当することを知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が150万円未満であるときを、納付を命ずることができない場合として置いている内閣総理大臣景品表示法第8条第1項・第5項
健康増進法第65条第1項の規定に違反して表示をした者がある場合において、国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときに、当該表示に関し必要な措置をとるべき旨を勧告する内閣総理大臣又は都道府県知事健康増進法第66条第1項
健康増進法勧告に係る措置をとるべきことを命ずる内閣総理大臣又は都道府県知事健康増進法第66条第2項
医療法広告が第6条の5第1項から第3項まで又は第6条の7・第6条の7の2の規定に違反しているおそれがあると認めるときに、必要な報告を命じ、又は職員に事務所へ立ち入り、広告に関する文書その他の物件を検査させる都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長医療法第6条の8第1項
医療法広告が第6条の5第2項若しくは第3項、第6条の7第2項若しくは第3項又は第6条の7の2の規定に違反していると認める場合に、期限を定めて、当該広告を中止し、又はその内容を是正すべき旨を命ずる都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長医療法第6条の8第2項

表2は各法律の条文の内容を写したものです。出典はいずれも e-Gov 法令検索(法令確認日 2026-09-08。版と施行日は表3および末尾の出典欄に記載)。医療法第6条の8は、第1項と第2項とで、条文が挙げている違反の対象条項が異なります。第1項は、第6条の5第1項から第3項まで及び第6条の7・第6条の7の2です。第2項は、第6条の5第2項・第3項、第6条の7第2項・第3項及び第6条の7の2です。健康増進法第66条第4項は、都道府県知事が第1項又は第2項の権限を行使したときは、その旨を内閣総理大臣に通知するものとしています。

措置命令そのものは『6-5 違反広告の措置命令では、何を命じられる?』で扱っています。この条番号は2027年5月20日から変わります(7.の節で見ます)。

景品表示法の措置は、条文の上では内閣総理大臣が行う形で書かれていますが、権限の委任(ほかの機関に任せること)の規定があります。第38条第1項は、内閣総理大臣が、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任するとしています。上の補足で見た同条第11項は、この第1項で委任された権限の事務の一部についての定めです。

罰則の条文

罰則は、各法律の罰則の章に置かれています。条文が定めている刑は、次のとおりです。拘禁刑は刑事施設に収容する刑、併科は拘禁刑と罰金の両方を科すことです。

  • 薬機法第85条:2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその併科。対象は、第66条第1項又は第3項に違反した者(第4号)、第68条に違反した者(第5号)、第72条の5第1項の命令に違反した者(第6号)です。
  • 景品表示法第46条第1項:措置命令に違反したときは、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金。同条第2項が併科を定めています。
  • 景品表示法第48条:100万円以下の罰金。第1号は、自分が供給する商品やサービスの内容について、著しく優良であると一般消費者を誤認させるような表示をしたときです。第2号は、取引条件について、著しく有利であると誤認させるような表示をしたときです。
  • 健康増進法第71条:第66条第2項の命令に違反した者は、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。
  • 医療法第87条:6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金。対象は、第6条の5第1項に違反したとき(第1号)と、第6条の8第2項の命令又は処分に違反したとき(第3号)です。

罰則には、表示をしたこと自体に向くもの(景品表示法第48条など)と、役所の命令に違反したことに向くもの(健康増進法第71条など)があります。薬機法の罰則の条ごとの中身は薬機法の刑事罰、役所の措置から刑事罰までの流れは『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』にあります。

課徴金が重なるときの調整

課徴金の率は、2つの法律で、もともと別の数字です。薬機法第75条の5の2第1項は、対価合計額(課徴金の対象になる期間に取引をした、対象の行為に係る医薬品等の代金の合計)の100分の4.5です。景品表示法第8条第1項は、売上額の100分の3です。

景品表示法の率は、同条第5項により、100分の4.5に上がることがあります。上がるのは、次の両方にあたる者の場合です。

  • 基準日(10年を数える起点になる日)からさかのぼって10年以内に確定した、課徴金納付命令を受けたことがある
  • その命令の日以後にも、課徴金の対象になる行為をしていた

基準日の決め方は『7-4 景品表示法の課徴金はどう決まり、確約手続はどう進む?』で扱っています。

そのうえで、薬機法第75条の5の3が調整を置いています。減額が働くのは、同じ課徴金対象行為(課徴金の対象になる違反の行為)について、次のどちらかにあたるときです。

このとき、対価合計額に100分の3を掛けた額を、薬機法の課徴金の額から減額するものとされています。

この100分の3は、景品表示法の売上額に掛ける率ではありません。薬機法の側の対価合計額に掛ける率として、第75条の5の3に書かれた数字です。

例

ある会社の、医薬品等の1つの広告について、薬機法と景品表示法の両方で、課徴金が問題になったとします。同じ行為について、その会社に景品表示法第8条第1項の課徴金納付命令があれば、薬機法の課徴金から、対価合計額の100分の3にあたる額が減額されます。

一方が適用されれば他方が退く、という仕組みではないということです。

薬機法の課徴金の計算と手続は薬機法の課徴金、景品表示法の課徴金の加重・減額は『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。

7. 条文を確かめるとき、条番号のほかに何で特定すればよいのですか?

法令番号(「昭和35年法律第145号」のような、法律ごとの番号)と、e-Gov 法令検索(法令の条文を調べられる国のサイト)の版で特定します。4つの法律は別々に改正されるので、条番号だけでは時点が決まりません。

このページが確認した版と施行日は、表3のとおりです。

e-Gov 法令検索は、法令ごとに「版」を持っています。版は「法令ID+施行日+その施行の根拠となる改正法令のID」という形で示されます。法令IDは、法令ごとに付けられた記号です。同じ条番号でも、版が違えば、中身が違うことがあります。

条番号だけを控えるのは、本の書名とページ番号だけを控えて、何版かを書き忘れるのに似ています。刷り直されれば、同じページに別の文章が載ることがあります。

実際に、薬機法の措置命令を定める第72条の5は、2027年5月20日から第72条の6に移ります。空いた第72条の5には、別の規定(いまの第72条の4の改善命令等)が入ります。

番号の移動は、この条を引くほかの条文にも及びます。2027年5月20日に施行される(効力を持ち始める)版では、薬機法第85条第6号が「第七十二条の六第一項の規定による命令に違反したとき」となっています。

原文で確かめる(第72条の5第1項と、条番号の変更の注記)

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の6 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の5 は改善命令等(現行の第72条の4)になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

第85条第6号の記載は、e-Gov 法令検索の同日施行の版で確認したものです。版は 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037 です。

例

A社の担当者が、2026年に社内の資料に、条番号として薬機法第72条の5とだけ書き残したとします。2027年5月20日以降に資料を見た人が、条番号だけで条文を引くと、別の規定(改善命令等)に当たります。

このページが条文を写した版は、次のとおりです。右の列には、それぞれの法律を詳しく扱っているページを並べています。

表3:本ページが確認した版と、詳しく扱っている公開済みページ
法律法令番号確認した版と施行日詳しく扱っているページ
薬機法昭和35年法律第145号335AC0000000145_20260521_505AC0000000063(2026年5月21日施行)薬機法とは何を規制する法律か/第66条/第68条
景品表示法昭和37年法律第134号337AC0000000134_20260521_504AC0000000048(2026年5月21日施行)優良誤認と有利誤認
健康増進法平成14年法律第103号414AC0000000103_20251212_507AC0000000087(2025年12月12日施行)健康増進法第65条/サプリメントの表現はどこまで書けるか
医療法昭和23年法律第205号323AC0000000205_20260605_508AC0000000031(2026年6月5日施行)医療広告規制はなぜ限定列挙なのか/限定解除の4要件

表3の版はいずれも e-Gov 法令検索で 2026-09-08 に確認したものです。

施行日ごとに変わる条文は改正の時間軸、古い条番号のまま説明されている記述の更新は『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』で扱っています。

要点

条番号だけでは、どの法律のどの版かが決まりません。法令名・条番号・版(または施行日)の3点をそろえて記録すると、後から同じ条文に戻れます。

理解の確認

景品表示法第5条とほかの3つの法律とでは、同じ表示物でも、名宛人(対象になる人)の範囲が違ってきます。条文の書き出しが、どう違うからですか。

薬機法第66条第1項、健康増進法第65条第1項、医療法第6条の5第1項は「何人も」で始まり、表示をした者が誰であるかを問わない書き方です。景品表示法第5条だけは「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」と書いています。名宛人を事業者に限ったうえで、自分が供給する商品やサービスの取引という範囲を重ねています。限定が2つ重なっている分、条文の文言が及ぶ範囲は、ほかの3つより狭くなります。

根拠:薬機法第66条第1項、健康増進法第65条第1項、医療法第6条の5第1項、景品表示法第5条(法令確認日 2026-09-08)

医療法第6条の5は、第1項で虚偽の広告を禁じるだけでなく、第3項で広告してよい事項を並べています。ほかの法律と、規制のかけ方がどう違うのですか。

薬機法第66条第1項の「虚偽又は誇大」や、健康増進法第65条第1項の「著しく事実に相違する表示」は、してはならない表示の側から線を引いています。医療法第6条の5第3項は「次に掲げる事項以外の広告をしてはならない」と書いて第1号から第16号までを挙げ、書いてよい事項の側から範囲を区切っています。線の引き方が逆向きなので、書いた内容が事実かどうかと、第3項が求めていることとは、別の事柄になります。なお第3項には、厚生労働省令で定める場合が例外として置かれています。

根拠:医療法第6条の5第1項・第3項、薬機法第66条第1項、健康増進法第65条第1項(法令確認日 2026-09-08)

薬機法の課徴金の条文に、景品表示法第8条第1項の命令や、同法第11条で課徴金の納付を命じないとされる場面が書き込まれているのはなぜですか。

4つの法律はそれぞれ独立していて、主語・客体・禁止行為を自分の条文に置いています。そのため1つの表示が複数の法律の文言に同時に当てはまることがあり、薬機法と景品表示法の課徴金が同じ行為に及ぶ場面が生じます。薬機法第75条の5の3は、その場面で、対価合計額に100分の3を乗じて得た額を課徴金の額から減額するものとしています。重なりが起きる前提で、調整を置いた規定です。一方が適用されれば他方が退く、という関係ではないことが、条文の側から読み取れます。

根拠:薬機法第75条の5の3、景品表示法第8条第1項・第11条(法令確認日 2026-09-08)

次に読む

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条・第66条・第68条・第72条の4・第72条の5・第75条の5の2・第75条の5の3・第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063、施行日 2026年5月21日。2027年5月20日施行分は版 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037 で確認)
  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条・第5条・第7条・第8条・第11条・第38条・第46条・第48条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048、施行日 2026年5月21日)
  • 健康増進法(平成14年法律第103号)第65条・第66条・第71条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版 414AC0000000103_20251212_507AC0000000087、施行日 2025年12月12日)
  • 医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5・第6条の6・第6条の7・第6条の7の2・第6条の8・第87条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版 323AC0000000205_20260605_508AC0000000031、施行日 2026年6月5日)