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規制されるのは誰? — 薬機法の「何人も」と、代理店・媒体・個人

化粧品メーカーの広告を広告代理店が作り、ウェブメディアが載せる。個人もSNSで紹介する。薬機法の広告の決まりは、だれに向けられているのでしょうか。広告を禁じる第66条第1項と第68条は「何人も」(だれであっても)で始まります。業の許可(製造や販売を仕事として行うために、国や都道府県から受ける許可)や届出の有無は、要件に入っていません。届出は、決められた事項を行政に知らせる手続で、審査して認めるものではありません。一方、景品表示法(表示や景品についての法律)の不当な表示の禁止は、相手を「事業者」に限っています。このページは、条文の宛先、命令・罰則・課徴金の相手、ほかの法律との違いを説明します。

30秒でわかる要点

  • 薬機法の広告の禁止は「何人も」が相手:第66条第1項と第68条は「何人も」で始まり、業の許可や届出の有無を要件にしていません。広告の章に、広告主・代理店・媒体という区分の規定もありません。代理店・媒体・個人も、名宛人(その条文で義務や禁止の対象になる人)になり得ます。
  • 命令・罰則・課徴金も、業態で区切られていない:措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)の相手は「第66条第1項又は第68条の規定に違反した者」です。罰則は、違反行為をした者に向きます。両罰規定(違反した人だけでなく、その人が属する会社なども罰する決まり)で、その法人又は人(会社などの法人や、個人の事業主)も罰金刑の対象になります。課徴金(違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金)の相手は、第66条第1項に違反する行為をした者(課徴金対象行為者)です。
  • 景品表示法は、相手を「事業者」に限る:第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」と書いています。ステルスマーケティング告示は、事業者が自分の商品やサービスについて行う表示なのに、一般の消費者がそれと見分けにくい表示を、不当な表示とした告示です。告示は、国の機関が決めた事項を公に知らせる形式の文書です。その運用基準(告示の運用の考え方を消費者庁長官が示したもの)も、「事業者でない者が行う行為については、何ら告示の対象となるものではない」としています。名宛人の範囲は法律ごとに違うため、一方の法律の対象に入らないことは、もう一方の規制の外にあることを意味しません。

1. 薬機法の広告の決まりは、だれに向けられていますか?

だれであっても、です。第66条第1項と第68条は「何人も」で始まり、業の許可や届出の有無は、条文の要件に入っていません。

同じ薬機法の中に、名宛人を許可を受けた者に限る規定もあります。

条文の書き出しは、その決まりの宛名にあたります。宛名にあたる人を、名宛人(その条文で義務や禁止の対象になる人)と呼びます。

医薬品等は、薬機法が扱う5つの製品(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品)です。医薬部外品は医薬品よりも作用がおだやかな製品(薬用化粧品など)、再生医療等製品は人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。

承認は、製品ごとに国が審査して、製造販売(製造や輸入をした製品を、市場に出すこと)を認めることです。認証は、国に登録された機関が、基準に合っているかを確かめて認めることです。

薬機法の広告の章(第十章 医薬品等の広告)には、広告を禁じる規定が2つあります。

  • 第66条第1項:うそや大げさな広告の禁止です。医薬品等の名称や効能などについて、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布する(広める)ことを禁じています。
  • 第68条:承認前の広告の禁止です。承認又は認証をまだ受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、名称や効能などの広告を禁じています。

2つの規定は、どちらも「何人も」(なんぴとも)で始まります。だれであっても、という意味です。行為をする人の業態や資格は、書かれていません。

例

化粧品メーカーのA社が、広告代理店のB社に、ウェブ広告を作ってもらったとします。第66条第1項には、広告主でない、許可がない、という理由でB社を外す言葉はありません。その広告が第66条第1項に触れるかが問われる場面では、B社も名宛人になり得ます。触れるかどうかは、別に判断されます。

禁止の中身そのものは、『2-2 医薬品や化粧品などの広告で、事実と違う・大げさな表現は禁止ですか?』と2-3 承認前の医薬品・医療機器などは、広告できますか?で扱います。

原文で確かめる(第68条)

同じ法律にある、もう一つの書き方

薬機法には、名宛人を許可を受けた者に限る規定もあります。形は「〜でなければ〜してはならない」です。

  • 第12条第1項:医薬品、医薬部外品又は化粧品の種類に応じた厚生労働大臣の許可を受けた者でなければ、業として(仕事として)製造販売をしてはならない、としています。
  • 第24条第1項:販売の側も同じ形です。薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として医薬品を販売してはならない、などとしています(ただし書きの例外があります)。

こちらは、許可の有無を要件そのものに組み込んでいます。第66条第1項と第68条は、この形をとっていません。

直感的なポイント

2つの書き方の違いは、張り紙にたとえられます。「どなたも、ここにごみを捨てないでください」は、だれにでも向きます。「係員以外は、ここに立ち入らないでください」は、係員かどうかで扱いが分かれます。第66条第1項と第68条は前者、第12条第1項や第24条第1項は後者の書き方です。

原文で確かめる(第24条第1項)

2. 行政の命令は、だれに出せると書かれていますか?

措置命令の相手は「第66条第1項又は第68条の規定に違反した者」です(第72条の5第1項)。業の許可の有無は、要件に入っていません。

違反行為がすでになくなっている場合の相手も、同じ項の各号に挙げられています。

違反広告への措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)は、第72条の5第1項にあります。命令を出せるのは、厚生労働大臣又は都道府県知事です。命じる中身は、行為の中止や再発防止に必要な事項、その公示(広く知らせること)などです。

条文上の相手方は「第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反した者」です。業の許可の有無も、業態による区切りも、書かれていません。

違反行為がすでになくなっていても、命令はできます。その場合の相手として、同項の各号は次の者を挙げています。

  1. その違反行為をした者
  2. 違反した法人が合併で消えたときの、合併後に残る法人や、合併で新しくできた法人
  3. 違反した法人から、分割でその事業の全部又は一部を引き継いだ法人
  4. 違反した者から、その事業の全部又は一部を譲り受けた者

例

C社が化粧品の違反広告を出したあと、D社に吸収合併されて消えたとします。違反行為は、すでになくなっています。それでも条文は、合併後に残るD社に対して命令をすることができる、としています。

この第72条の5の番号は、2027年5月20日に施行(法律の決まりが効力を持ち始めること)される改正で変わります(下の注意書き)。

原文で確かめる(第72条の5第1項)

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の6 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の5 は業務の運営の改善に必要な措置の命令(現行の第72条の4)になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

情報を流している側について書かれていること

第72条の5第2項は、第66条第1項又は第68条に違反する広告が、特定電気通信(ネット上の、不特定の人に向けた送信など)で送られているときの定めです。相手は、特定電気通信役務提供者です。サイトやSNSの運営者などが、これに当たり得ます。

違反広告がこの形で送信されているとき、厚生労働大臣又は都道府県知事は、役務提供者に、送信を防止する措置を講ずることを要請することができるとされています。第1項の「命令」とは別の項に、「要請」という別の語で置かれています。

第72条の6は、要請を受けるなどして、この違反広告(条文では「特定違法広告」)の送信を防止する措置を講じた役務提供者について定めています。その措置が不特定の者への送信を防ぐのに必要な限度で行われたものなら、発信者に生じた損害の賠償の責めに任じない(賠償する責任を負わない)、とされています。この第72条の6も、2027年5月20日に第72条の7へ移ります。

第72条の5第2項の括弧書き(条文中のかっこの部分)は、この広告について「次条において「特定違法広告」という。」と書いており、定義が働く先は次条(第72条の6)です。

例

ある掲示板サイトに、第68条に違反する広告が書き込まれていたとします。条文の上では、厚生労働大臣や都道府県知事は、サイトの運営者に、送信を止める措置を「要請」できます。

第1項の「命令」ではなく第2項の「要請」なのは、第2項が、役務提供者を違反した者としてではなく、情報を送信している側として書いているためです。

行政指導(役所が、法的な強制力なしに協力を求めて行う指導)から刑事罰までのルート全体は、『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』で扱います。

3. 罰則と課徴金は、行為をした人と法人のどちらに向きますか?

第85条の罰則は、違反行為をした者に向きます。第90条の両罰規定は、加えてその法人又は人(会社などの法人や、個人の事業主)を罰金刑の対象にしています。課徴金の相手は、第66条第1項に違反する行為をした者(課徴金対象行為者)です。

課徴金の額の計算のしかたと、減額される場合は、下の本文で説明します。

罰則と両罰規定

第85条は罰則です。第66条第1項又は第3項の規定に違反した者と、第68条の規定に違反した者を挙げています。刑は、2年以下の拘禁刑(刑事施設に収容する刑)若しくは200万円以下の罰金、又はその両方です。

第90条は両罰規定です。法人の代表者や、法人若しくは人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をしたときに働きます。このとき、行為者を罰するほか、その法人又は人にも罰金刑を科する、と書かれています。

第90条は、対象になる規定を号ごとに挙げていて、第85条は同条第2号に掲げられています。そこで法人に科されるのは「各本条の罰金刑」、つまり違反した本条(ここでは第85条)の罰金刑です。

例

A社の広報担当者が、仕事として、化粧品のうそや大げさな広告を出したとします。担当者は、第85条の対象になり得ます。そして第90条により、A社も罰金刑の対象になり得ます。

原文で確かめる(第85条)

課徴金の相手と金額

課徴金納付命令は、第75条の5の2にあります。第1項は、第66条第1項の規定に違反する行為を「課徴金対象行為」、これをした者を「課徴金対象行為者」と呼んでいます。

額は、課徴金対象期間(条文が定める期間)に取引をした、その行為に係る医薬品等の対価(代金)の合計額に、4.5%(百分の四・五)をかけた額です。厚生労働大臣は、課徴金対象行為者に、この額を国庫(国の財布)に納めるよう命じなければならない、とされています。ただし第4項により、計算した額が225万円(二百二十五万円)未満のときは、納付を命ずることができません。

第75条の5の3は、減額を定めています。同じ課徴金対象行為について、次のどちらかにあたるときです。

  • 景品表示法第8条第1項の規定による命令(景品表示法の課徴金の納付命令)があるとき
  • 同法第11条の規定により、課徴金の納付を命じないものとされるとき

この場合、対価の合計額に3%(百分の三)をかけた額を、課徴金の額から減額するものとする、としています。

第85条第6号は、措置命令の規定(第72条の5第1項)を引いています。2027年5月20日からは、引く先が第72条の6第1項になります。同じ日に第85条の柱書(各号の前の書き出し)も改められ、各号の語尾も「〜したとき。」になります。

改正後の柱書を原文で確かめる

次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

薬機法 第85条 柱書(令和7年法律第37号による改正後。2027年5月20日施行)

業の許可に対する処分の側は『6-3 業務停止や許可の取消しは、どの条文で決まる?』で扱います。

4. 販売代理店や紹介サイトが載せた表示は、どう扱われると書かれていますか?

販売代理店や紹介サイトの運営者も、広告主と同じく第66条第1項・第68条の名宛人になり得ます。条文が「何人も」で始まり、広告の章に、広告主・代理店・媒体を分ける規定もないためです。

紹介サイトが医薬品等の広告にあたるかは個別具体的に判断される、と厚生労働省のQ&A(2014年5月)は答えています。

例

冒頭の場面で考えます。化粧品メーカーの広告を代理店が作り、ウェブメディアが載せ、個人もSNSで紹介しました。広告の章には、代理店や媒体を外す区分の規定がありません。どの立場の人も、第66条第1項の名宛人になり得ます。

ただし、それぞれの表示が薬機法上の「広告」にあたるかは、別に判断されます。その基準は、条文ではなく通知(国の役所が、法律の運用のしかたを自治体などに示す文書)にあります。1998年に当時の厚生省が出した通知が、3つの条件(3要件)を示しています。中身と、ネット上の表示での考え方は、『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』で扱います。

紹介サイトについての、厚生労働省のQ&A

ほかの事業者のサイトへ誘導する「紹介サイト」については、このQ&Aが答えています。Q&Aは、質問と答えの形で、行政が運用の考え方を示した文書です。リンク先に、医薬品などの販売や輸入代行をする事業者がいる場面です。答えの要点は3つです。

  • 紹介サイトが医薬品等の広告にあたるかどうかは、個別具体的に判断される。
  • 紹介サイトが、リンク先で販売や輸入代行をする事業者と同じ場合や、同じとみなせるような場合などには、医薬品等の広告にあたる可能性がある。
  • リンク先のサイトだけが違反の場合もあるので、注意するように。

例

医薬品を販売するサイトへのリンクを並べた紹介サイトがあり、その運営者が、リンク先で販売している事業者そのものだったとします。上の2点目が扱っているのは、このような場面です。

同じQ&Aは、A1からA4で、サイト内の検索結果や会員限定のページなど、ほかの場面も扱っています。その内容は、『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』で扱います。

原文で確かめる(Q&AのA5と、通知の番号)

原文の法律名は、発出当時のものです(現行の表記との対応は『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』)。

当該紹介サイトが医薬品等の広告に該当するかどうかについては、個別具体的に判断されることとなるが、当該紹介サイトが、リンク先の販売又は輸入代行行為を行う主体となる事業者と同一である場合や、同一とみなせるような場合等には、医薬品等の広告に該当する可能性がある。なお、リンク先のサイトのみが薬事法違反の場合もあるので、留意されたい。

インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)(平成26年5月22日 薬食監麻発0522第9号)A5。法律名は発出当時の表記

3つの条件を示した通知の日付と番号は、平成10年9月29日 医薬監第148号です。

5. 景品表示法では、名宛人がどう違いますか?

「事業者」に限られます。第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」と書き、商品やサービスを供給する側に名宛人を置いています。

ステルスマーケティング告示の運用基準も、事業者でない者が行う行為については何ら告示の対象となるものではない、と書いています。

景品表示法は、商品やサービスの表示や景品などについて定める法律です。

役務は、サービスのことです。名宛人は、商品やサービスを供給する事業者に置かれています。ここが、薬機法の「何人も」と違います。

「事業者」の意味は第2条第1項にあり、「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」とされています。

同じ項には、事業者の利益のために行動する役員・従業員・代理人などを、事業者とみなす決まりもあります。ただし、このみなしが働く範囲は、条文上、次項(事業者団体の定義)と第36条の適用に限られています。

第2条第1項の言葉で確かめる

同項は続けて、「当該事業を行う者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項及び第三十六条の規定の適用については、これを当該事業者とみなす」と書いています。

ステルスマーケティング告示の書き方

2023年10月から、ステルスマーケティング告示(以下、ステマ告示)が施行されています。景品表示法第5条第3号に基づく指定です。事業者が自分の商品やサービスについて行う表示なのに、一般の消費者には事業者の表示だと見分けにくいものを、不当な表示としています。

告示の原文で確かめる

この告示は、景品表示法第5条第3号の規定に基づく指定で、令和5年10月1日から施行されています。

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)

この告示がだれの表示に及ぶかは、消費者庁長官が定めた運用基準(2023年3月)が、第1の(注)で書いています。

告示の対象となるのは、景品表示法第2条第1項に規定する「事業者」が行う同条第4項に規定する「表示」である。したがって、事業者でない者が行う行為については、何ら告示の対象となるものではない。

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)

例

冒頭の場面で、事業者ではない一般の個人が、自分で買った化粧品の感想を、自分の意思でSNSに書いたとします。運用基準は、事業者でない者が行う行為は何ら告示の対象とならない、と書いています。

一方、薬機法第66条第1項は「何人も」で始まり、事業者かどうかを要件にしていません。投稿が薬機法上の「広告」にあたるかは、3つの条件で別に判断されます。

命令と課徴金の書き方

命令の側も、同じ書き方です。第7条第1項の措置命令は「当該事業者に対し」と書いています。違反行為がすでになくなっている場合の相手は、違反した事業者と、合併や分割でその事業を引き継いだ法人、その事業を譲り受けた事業者です。

課徴金は第8条第1項にあり、額は売上額に3%(百分の三)をかけた額です。第5条第3号に該当する表示に係るものは、課徴金の対象となる行為から除かれています。ステマ告示の表示も、第3号に基づいて指定された表示なので、この除外に当たります。同項ただし書(「ただし」で始まる例外の部分)は、額が150万円(百五十万円)未満のときは、納付を命ずることができないとしています。

よく見かける説明と、条文の書き方を並べると、次のとおりです。

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

広告や投稿の表示に責任を負うのは、商品・役務を供給する広告主である。

現行

景品表示法第5条とステルスマーケティング告示は、名宛人を「事業者」(自己の供給する商品又は役務の取引について表示を行う者)と書いている。これに対し薬機法第66条第1項・第68条は「何人も」と書き、名宛人を限定していない。名宛人の範囲は法律ごとに違う。

根拠:景品表示法第5条・第2条第1項(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)/令和5年3月28日 内閣府告示第19号および同運用基準 第1の(注)/薬機法第66条第1項・第68条(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)。いずれも 2026-09-08 に原文で確認

景品表示法の表示規制の内容は隣接法令のカテゴリで扱います。

6. 第三者の投稿が「事業者の表示」とされるのは、どんな場合ですか?

事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合です。客観的な状況から、第三者が自分の意思で決めた中身とは認められない場合だ、と運用基準は書いています。

はっきりした依頼や指示がない場合に、何を見て判断するかも、運用基準に挙げられています。

この節は、景品表示法のステマ告示の話です。SNSの投稿や口コミは、見た目は第三者の表示です。それでも事業者の表示とされる場合がある、と運用基準は第2で示しています。

原文で確かめる(運用基準 第2)

外形上第三者の表示のように見えるものが、事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合である。

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第2

はっきり頼んでいなくても、事業者の表示とされる場合

運用基準の第2の1(2)イは、事業者が第三者に、ある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合を扱っています。次の2つがあれば、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となる、としています。

  • 事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性が、両者の間にある
  • 客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性が、両者の間にある

「関係性がある」かどうかは、次の実態も踏まえて総合的に考慮し判断する、としています。

  • 具体的なやり取りの形や中身(メール、口頭、送付状などの内容)
  • 事業者が第三者の表示に対して提供する対価の中身
  • 対価を提供する主な理由(宣伝する目的かどうか、など)
  • 事業者と第三者の関係の状況(例えば、これまで対価を提供してきた関係がある場合に、その関係がどのくらい続いていたか、今後どのくらい続くか)

例

A社が、これまで何度も謝礼を払って投稿してもらってきた人に、新しい化粧品を送ったとします。投稿の中身について、はっきりした依頼や指示はしていません。

運用基準によれば、この場合も、上の実態を踏まえて総合的に考慮し、事業者の表示かどうかが判断されます。

ここでいう対価は、お金や物に限りません。同イの(注)は、イベントへの招待などのもてなしを含め、対価性を有する一切のものが含まれる、としています。

(注)の原文で確かめる

事業者が第三者の表示に対して支払う対価については、金銭又は物品に限らず、その他の経済上の利益(例えば、イベント招待等のきょう応)など、対価性を有する一切のものが含まれる

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第2の1(2)イ(注)

事業者の表示にあたらない場合

運用基準の第2の2は、事業者の表示にあたらない場合を書いています。事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められれば、事業者の表示にはあたらない、としています。

例

第2の2(1)ウが挙げている例です。アフィリエイター(自分のサイトなどで商品を紹介し、成果に応じて報酬を受ける人)の表示でも、事業者の表示にあたらない場合があります。アフィリエイトプログラム(その報酬の仕組み)を利用した広告主による広告とは認められない実態にある表示です。事業者との間で、その表示に係る情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていない場合などが、その例に挙げられています。

これはステマ告示でいう「事業者の表示」かどうかの話です。「何人も」で始まる薬機法第66条第1項の名宛人かどうかとは、別の問題です。

検討会の報告書が「何人も」に触れている箇所

消費者庁のアフィリエイト広告等に関する検討会が2022年2月にまとめた報告書は、「何人も」の書き方に触れています。不当な表示を繰り返すASP(広告主とアフィリエイターを仲介する事業者)やアフィリエイターへの措置を、視野に入れた箇所です。そこでは、健康増進法第65条や薬機法第66条を柔軟に活用して、虚偽・誇大表示の執行(取り締まり)を強化すべきであると考えられる、としています。健康増進法は、食品の広告・表示についての決まりも置く法律です。

報告書の原文で確かめる(50ページ)

Ⅲの2(2)「健康増進法及び薬機法との連携」の箇所です。

不当な表示を繰り返すASPやアフィリエイターに対する措置を視野に入れ、「何人も」と規制対象を限定していない健康増進法第 65 条や薬機法第 66 条を柔軟に活用して虚偽・誇大表示の執行を強化すべきであると考えられる。

アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書(令和4年2月15日)Ⅲの2(2)健康増進法及び薬機法との連携(50ページ)

Ⅲの2(1)「特定商取引法との連携」は、景品表示法と特定商取引法(通信販売などのルールを定める法律)とで、規制対象が異なることに触れています。

景品表示法は、主にその広告主を規制対象とする一方、特定商取引法は、個人を規制対象とすることもできるため、問題のある表示の実態を踏まえた上で、両法律による適切かつ有効な法執行が必要である

アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書(令和4年2月15日)Ⅲの2(1)特定商取引法との連携(50ページ)

7. 同じ「何人も」の書き方は、ほかの法律にもありますか?

あります。医療法第6条の5第1項と健康増進法第65条第1項も「何人も」で始まります。いずれも表示・広告の禁止規定で、薬機法の2つの規定と共通する書き方です。

下の表1は、各規定の書き出しの語を、条文のまま並べたものです。

医療法第6条の5第1項は、医業・歯科医業や病院・診療所に関する広告で、虚偽の広告をすることを禁じています。書き出しは「何人も」です。

健康増進法第65条第1項も、「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは」と書き出しています。

例

あるクリニックが、自院の診療についての広告を、外部の広告会社に作ってもらったとします。医療法第6条の5第1項は「何人も」で始まります。広告会社であることを理由に名宛人から外す言葉は、この条文にありません。

原文で確かめる(医療法第6条の5第1項)

医療広告の枠組みは『7-6 医療広告は、なぜ「書いてよいこと」を並べる形なのか?』と限定解除の4要件で扱います。医療機関の側のルールは『5-5 エクソソームなどを使う自由診療で、医療機関が守るルールは?』で扱います。

表1の読み方

表1は、このページで見た規定を並べ、条文に書かれた名宛人を抜き出したものです。真ん中の列を見ます。

  • 「何人も」とある規定は、宛先に限定がありません。
  • 「事業者」とある規定は、宛先が事業者に置かれています。
  • 「〜でなければ」とある規定は、許可の有無が要件に組み込まれています。
表1:規定ごとの、条文上の名宛人
規定条文上の名宛人出典
薬機法 第66条第1項(誇大広告等)何人も薬機法第66条第1項(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
薬機法 第68条(承認前の広告の禁止)何人も薬機法第68条(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
薬機法 第24条第1項(医薬品の販売業の許可)薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ薬機法第24条第1項(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
薬機法 第72条の5第1項(違反広告に係る措置命令等)第66条第1項又は第68条の規定に違反した者(同項各号の承継法人・譲受人を含む)薬機法第72条の5第1項(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行。2027年5月20日から第72条の6第1項)
薬機法 第75条の5の2第1項(課徴金納付命令)第66条第1項の規定に違反する行為をした者(課徴金対象行為者)薬機法第75条の5の2第1項(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
薬機法 第90条(両罰規定)行為者を罰するほか、その法人又は人薬機法第90条(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
景品表示法 第5条(不当な表示の禁止)事業者(自己の供給する商品又は役務の取引について)景品表示法第5条(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
令和5年3月28日 内閣府告示第19号(ステルスマーケティング告示)事業者(自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示)同告示本文および同運用基準 第1の(注)
景品表示法 第7条第1項(措置命令)当該事業者(同項各号の承継法人・譲受事業者を含む)景品表示法第7条第1項(e-Gov 法令検索、2026-05-21施行)
医療法 第6条の5第1項(虚偽広告の禁止)何人も医療法第6条の5第1項(e-Gov 法令検索、2026-06-05施行)
健康増進法 第65条第1項(誇大表示の禁止)何人も健康増進法第65条第1項(e-Gov 法令検索、2025-12-12施行)

各規定の書き出しの語を、条文のまま並べたものです。確認した版の施行日は法律ごとに異なるため、出典欄に規定ごとに記載しています。行為の内容・対象物・要件も規定ごとに異なるため、名宛人の欄だけを取り出して規定どうしを置き換えることはできません。

例

化粧品の広告について調べるときは、表の「薬機法 第66条第1項」と「景品表示法 第5条」の行を見比べます。同じ広告でも、薬機法第66条第1項の宛先は「何人も」、景品表示法第5条の宛先は「事業者」です。

理解の確認

薬機法の広告の章が名宛人を「何人も」と書き、第12条第1項や第24条第1項のように許可の有無を要件に組み込んでいないと、規制の及ぶ範囲はどうなりますか?

条文の書き出しは、その規定の宛名にあたります。第66条第1項と第68条の宛名の欄には、業態も資格も書き込まれていません。そのため、業の許可や届出を持つかどうかは、違反の要件に入っていません。広告主だけでなく、販売代理店・媒体・個人も、同じ規定の名宛人になり得ます。これに対し第12条第1項(製造販売業)や第24条第1項(販売業)は「〜でなければ〜してはならない」と書き、許可の有無そのものを要件に組み込んでいます。同じ法律の中に2つの書き方があり、宛名の書き方が、そのまま規制の及ぶ範囲を決めています。

根拠:薬機法第66条第1項・第68条・第12条第1項・第24条第1項(法令確認日 2026-09-08)

同じ表示について、景品表示法の名宛人にはあたらない人が、薬機法の名宛人にはあたり得るのはなぜですか?

景品表示法第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」と書き、名宛人を、供給する側の事業者に置いています。ステマ告示の運用基準も、第1の(注)で「事業者でない者が行う行為については、何ら告示の対象となるものではない」としています。一方、薬機法第66条第1項と第68条は「何人も」で始まり、供給者かどうかを要件にしていません。名宛人の範囲は法律ごとに違うため、一方の法律で対象に入らないことは、もう一方の規制の外にあることを意味しません。

根拠:景品表示法第5条・第2条第1項、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)、薬機法第66条第1項・第68条(法令確認日 2026-09-08)

第72条の5で、違反した者には第1項の「命令」が向くのに、情報を流している役務提供者には第2項の「要請」が置かれているのは、両者の何が違うからですか?

第1項の命令の相手方は「第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反した者」で、違反行為をした者そのものに向いています。特定電気通信役務提供者は、違反広告である情報を送信している側で、違反した者としては書かれていません。そのため、厚生労働大臣又は都道府県知事が、送信を防止する措置を講ずることを要請することができる、という別の項・別の語になっています。あわせて第72条の6は、措置を講じた役務提供者について定めています。その措置が不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものであれば、発信者に生じた損害の賠償の責めに任じない、としています。

根拠:薬機法第72条の5第1項・第2項、第72条の6(法令確認日 2026-09-08。いずれも2027年5月20日に第72条の6・第72条の7へ移る予定)

次に読む

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第12条第1項・第24条第1項・第66条・第68条・第72条の5・第72条の6・第75条の5の2・第75条の5の3・第85条・第90条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 薬機法 2027年5月20日施行版条文(令和7年法律第37号による改正後)第72条の5・第72条の6・第72条の7・第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号、厚生省医薬安全局監視指導課長)厚生労働省 法令等データベース(2026-09-08 確認)
  • インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について(平成26年5月22日 薬食監麻発0522第9号)A1〜A5 厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条第1項・第5条・第7条第1項・第8条第1項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)消費者庁(2026-09-08 確認)
  • 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)・第2・第2の1(2)イ・第2の2(1)ウ 消費者庁(2026-09-08 確認)
  • アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書(令和4年2月15日)Ⅲの2(1)(2)(50ページ)消費者庁(2026-09-08 確認)
  • 医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5第1項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 健康増進法(平成14年法律第103号)第65条第1項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)