30秒でわかる要点
- 事業者が内容の決定に関わったと認められる投稿は「事業者の表示」:消費者庁の運用基準(判断の考え方を示した文書)によると、見た目が第三者の口コミでも、事業者の表示になる場合があります。事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合です。はっきりした依頼がなくても、対価(表示の見返りとして渡すもの)の中身や関係の実態から、関与が認められる場合があります。
- 告示の対象は「事業者」、薬機法第66条と医療法の広告規制は「何人も」:2023年の告示(国が決めたことを広く知らせる文書)の対象は、景品表示法の「事業者」が行う表示に限られます。薬機法第66条第1項と医療法第6条の5第1項は、主語が「何人も」(だれでも)で、投稿した第三者も対象になり得ます。
- 「PR」や「個人の感想です」の一言ではなく、表示の全体で見られる:運用基準は、「PR」などの文言を使っていても、表示の内容全体から、事業者の表示であることが明瞭と認められない場合もあるとしています。健康食品の表示の注意点は、消費者庁の「留意事項」という文書にあります。留意事項は、「個人の感想です」などと書いても、虚偽誇大表示等(うそや大げさな表示など)にあたるかどうかの判断に影響しないとしています。
1. 2023年10月に、体験談や口コミについて何が変わったのですか?
事業者が行う表示のうち、事業者の表示だと一般消費者が見分けにくいものが、景品表示法の不当表示に加わりました。2023年10月1日からです。
根拠は内閣府の告示(2023年3月)で、同じ日付の運用基準(告示の運用のしかたを消費者庁が示した文書)が、判断の考え方を書いています。
2023年に加わったのは、新しい条文ではありません。変わったのは、景品表示法第5条第3号にもとづく「指定」が1つ増えたことです。
第5条は、事業者が、自分の供給する商品やサービスの取引について、不当な表示をすることを禁じています。第1号は優良誤認表示(品質などの中身についての不当な表示)、第2号は有利誤認表示(価格などの取引条件についての不当な表示)です。この2つは、禁じる表示の中身を条文自体が書いています。2つの違いは『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。第3号だけは形が違い、内閣総理大臣が指定したものを、あとから禁止の対象に取り込む枠になっています。
直感的なポイント
第3号は、中身が空のまま用意された引き出しのようなものです。告示(国が決めたことを広く知らせる文書)が、そこに中身を入れます。
2023年にこの引き出しへ入ったのが、ステルスマーケティング告示です(消費者庁の資料での呼び名)。本文は短く、指定する表示を一文で定めています。施行(決まりが効力を持ち始めること)は2023年10月1日です。
原文で確かめる(告示の全文)
告示の施行日:令和5年10月1日。
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)全文この指定が置かれた理由
運用基準は、指定の理由を、一般消費者の受け取り方の差に置いています。事業者の表示だとわかれば、一般消費者は、ある程度の誇張や誇大が含まれることはあり得ると考えます。そして、商品を選ぶときにそのことを考えに入れます。第三者の表示だと思い込むと、そうは考えません。この差が、指定の理由として書かれています。
例
テレビCMは、会社の宣伝だとわかる形で流れます。見る人は、多少の誇張があり得ると考えながら見ます。同じ内容が個人の感想の形で届くと、そう考えずに受け取るおそれがあります。
指定は告示で行うと、景品表示法第6条第2項が定めています。指定しようとするときは、公聴会を開いて関係する事業者や一般の意見を求め、消費者委員会の意見も聴かなければなりません(同条第1項)。第5条第3号にもとづく指定の告示は、これ1つではありません。消費者庁の2025年度の運用状況の表6「表示事件の内訳」は、第5条第3号の内訳として7つの告示を並べています。原産国告示やおとり広告告示などで、ステルスマーケティング告示もその1つです。
2. この告示は誰に向けたもので、違反するとどうなるのですか?
名宛人(義務や禁止の対象になる人)は、景品表示法の「事業者」です。運用基準によれば、事業者でない人の行為は対象になりませんが、第三者の表示にも事実上の制約が及びます。
違反があると、措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)などが行われることがあります。課徴金(違反で得た売上などをもとに国が納めさせるお金)の対象からは外れています。
告示は第5条第3号にもとづく指定なので、名宛人は第5条と同じ「事業者」になります。運用基準も、第1の(注)でこの点をはっきり書いています。
ただし、名宛人でないことと、事実上の制約を受けないこととは別のことです。事業者の表示なのに第三者の表示だと誤解されないよう、事業者は、第三者の表示の中で、事業者の表示であることを明瞭にしなければなりません。その結果として、第三者の表示にも、一定の制約が事実上かかります。同じ(注)は、この制約は景品表示法の目的のためのもので、第三者の自由な表現活動を不当に制約しようとするものではない、とも書いています。
例
化粧品のA社が、Bさんに頼んで商品の投稿をしてもらう場面で考えます。この投稿がA社の表示とされる場合、告示が向けられているのはA社です。Bさんが事業者でなければ、Bさんの行為は告示の対象ではありません。ただ、A社が事業者の表示であることを明瞭にする必要があるため、Bさんの投稿にも事実上の制約がかかります。なお、薬機法第66条は主語が「何人も」なので、Bさんも名宛人になり得ます(次の見出し)。
原文で確かめる(運用基準 第1の(注))
告示は、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第5条第3号の規定に基づくものであり、告示においても景品表示法に規定される定義が前提となる。告示の対象となるのは、景品表示法第2条第1項に規定する「事業者」が行う同条第4項に規定する「表示」である。したがって、事業者でない者が行う行為については、何ら告示の対象となるものではない。
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)なお、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないようにするためには、事業者が第三者の表示において、事業者の表示であることを明瞭にしなければならないことの結果として、第三者の表示に対しても一定の制約が事実上課せられることとなるが、かかる制約は、一般消費者の商品選択における自主的かつ合理的な選択を確保するという景品表示法の目的達成の観点から行われるものであり、第三者の自由な表現活動を不当に制約しようとするものではない。
同運用基準 第1の(注)薬機法の側は、主語が違う
薬機法第66条第1項(虚偽・誇大な広告の禁止)の主語は「何人も」(だれでも)です。事業者に限られていないため、投稿した第三者も名宛人になり得ます。同じ投稿でも、景品表示法の告示と薬機法第66条とでは、誰に向けた規定かが違います。
第66条が禁じる内容は『2-2 医薬品や化粧品などの広告で、事実と違う・大げさな表現は禁止ですか?』で、薬機法でどの表示が広告にあたるかは『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』で扱っています。
違反したときの手続
第5条に違反する行為があるときは、第7条第1項により、その事業者に措置命令が出されることがあります。行為の差止め(やめさせること)や、再発を防ぐために必要なことなどを命じるものです。
原文で確かめる(景品表示法 第7条第1項)
課徴金の納付を命じる決まりは、第8条第1項にあります。ただし、第5条第3号にあたる表示に係るものは、課徴金の対象となる行為から除かれています。
原文の言い回しを見る(第8条第1項の書き出し)
条文は「事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは」と書き出しています。
措置命令のほかに、是正措置計画の認定という手続もあります。景品表示法第二章第六節「是正措置計画の認定等」が、次の3段で置いています。
- 第26条:違反を疑うに足りる事実があるとき、内閣総理大臣は、その行為をしている者に、行為の概要や認定を申請できることなどを書面で知らせることができます。
- 第27条:知らせを受けた者は、是正措置計画(疑いのある行為を正すための計画)を作り、60日以内に認定を申請できます。
- 第28条:認定されると、その疑いの理由となった行為には、措置命令(第7条第1項)と課徴金納付命令(第8条第1項)の規定が適用されません。
消費者庁の公表資料は、この手続を「確約手続」、認定を「確約計画の認定」と呼んでいます。同じ資料は、確約手続が2024年10月1日施行の改正景品表示法で新しく設けられたと注記しています。
詳しく見る(施行日)
改正景品表示法の施行日:令和6年10月1日。
実際にどれだけ使われているか
処理の状況は、消費者庁が毎年公表しています。2026年5月28日に公表された2025年度の運用状況から、主な数字を拾います。
- 措置命令は13件で、内訳は優良誤認3件、有利誤認8件、原産国告示(第5条第3号にもとづく別の指定)2件です。
- 確約計画の認定は8件で、違反の疑いのある行為の内訳に、ステルスマーケティング告示4件が挙げられています。関係する条文が2つ以上にわたる事件があるため、内訳は認定件数と一致しない、と同資料は注記しています。
- 表6「表示事件の内訳」では、ステルスマーケティング告示に係るものは、措置命令・確約計画の認定4件、指導7件、合計11件です。
詳しく見る(公表日)
令和7年度の運用状況の公表日:令和8年5月28日。
同じ資料は、2025年度に指導を行った主な事件として、第5条第3号に係る3件の概要を、事業者名を伏せて載せています。購入者に、販売ページへの星5の評価とレビューの投稿を条件に、ギフトカードを渡した事例。モニター募集サイトを見た人に、対価を条件に投稿を頼んだ事例。口コミサイトの中の自社の営業所のページに、事業者自身が役務(サービス)の評価を投稿していた事例です。3件とも、その表示は、表示の内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められなかった、と書かれています。
3. 第三者の投稿が「事業者の表示」とされるのは、どんな場合ですか?
事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合です。つまり、客観的な状況から、第三者が自分の意思で決めた内容とは認められない場合です。
運用基準は、はっきりした依頼や指示がなくても、対価の提供や関係の実態から、関与が認められる場合があるとしています。
告示が働く前提は、見た目は第三者の表示でも、それが「事業者の表示」にあたることです。運用基準第2は、その判断の基準を最初に置いています。見られるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められるかどうか、という1点です。
原文で確かめる(運用基準 第2)
告示の対象となるのは、外形上第三者の表示のように見えるものが事業者の表示に該当することが前提となる。(中略)外形上第三者の表示のように見えるものが、事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合である。
同運用基準 第2社員などが書く場合(事業者が自ら行う表示)
運用基準は、事業者が自ら行う表示に、事業者と一体と認められる従業員などの表示も含まれるとしています。事業者と一定の関係があり、事業者と一体と認められる従業員や、子会社などの従業員が、事業者の商品やサービスについて行う表示です。
運用基準は、従業員の地位・立場・権限・担当業務・表示の目的などの実態を踏まえ、事業者が表示内容の決定に関与したかを総合的に考えて判断するとしています。例は次の2つです。
- 事業者の表示にあたる例:販売を促進する必要がある地位や立場の人(販売や開発の役員、管理職、担当チームの一員など)が、販売を促進するための表示をする場合。ほかの人に指示して表示させる場合を含みます。
- 事業者の表示にあたらない例:販売を促進する必要がある地位や立場にない人が、一般消費者でも知り得る情報を使うなどして、販売促進が目的ではない表示をする場合
例
健康食品のA社で、ある商品の開発チームの社員が、個人のSNSでその商品の購入をすすめる投稿をする場面で考えます。運用基準は、担当チームの一員などが販売促進のための表示をする場合を、事業者の表示にあたる例に挙げています。こうした投稿は、A社の表示とされ得ます。
ほかの人に書かせる場合(事業者が第三者をして行わせる表示)
運用基準は、事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合として、次の4つを挙げています。
- 事業者が第三者に、その人のSNSや口コミサイトなどで、自社の商品やサービスについて表示させる場合
- ECサイト(ネット通販のサイト)に出店する事業者が、人に頼んで、買った商品についてのレビューを、そのECサイトに表示させる場合。頼む相手は、いわゆるブローカー(SNSなどでレビューを募集する者)や自社商品の購入者です。
- 事業者がアフィリエイトプログラム(成果に応じて紹介者に報酬を払う広告の仕組み)を使って、アフィリエイターに委託し、自社の商品やサービスについて表示させる場合
- 事業者がほかの事業者に頼んで、プラットフォームの口コミ投稿を通じて、競合する事業者の商品やサービスに、自社のものと比べた低い評価を表示させる場合
例
冒頭の化粧品の会社が、新商品を渡して投稿を頼むだけでなく、書く内容まで指示する場面で考えます。運用基準は、事業者が第三者にSNSなどで自社商品の表示をさせる場合を、関与の例の1つ目に挙げています。こうした投稿は、その会社の表示とされ得ます。頼んでも、客観的な状況から本人が自分の意思で内容を決めたと認められる場合は、次の節で見ます。
はっきりした依頼や指示がない場合
依頼や指示がはっきりしていない場合も、同じ考え方で見られます。運用基準によれば、次の2つがそろう場合は、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示になります。
- 事業者と第三者の間に、事業者が第三者の表示内容を決められるくらいの関係がある
- 客観的な状況から、第三者の表示内容について、第三者が自分の意思で決めた内容とは認められない関係がある
運用基準は、判断にあたって、次のような実態を総合的に考えるとしています。
- 事業者と第三者のやり取りのしかたと中身(例えば、メール、口頭、送付状などの内容)
- 事業者が提供する対価の中身と、主な提供理由(例えば、宣伝する目的かどうか)
- 関係の状況(過去に対価を提供していた関係がどのくらい続いたか、今後どのくらい続くか)
対価(表示の見返りとして渡すもの)は、お金や物に限りません。運用基準の(注)は、イベントへの招待などのもてなし(きょう応)など、対価にあたるものはすべて含まれるとしています。
例
B社が、以前から何度も商品を無償で送ってきた人に、今回は何も頼まずに新商品を送り、その人が新商品について投稿したとします。依頼の文面がないことだけでは、判断は決まりません。運用基準の考え方では、関係がどのくらい続いてきたか、送った理由は何かといった実態が見られます。
原文で確かめる(運用基準 第2の1⑵イとその(注))
事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となる。
同運用基準 第2の1⑵イ事業者が第三者の表示に対して支払う対価については、金銭又は物品に限らず、その他の経済上の利益(例えば、イベント招待等のきょう応)など、対価性を有する一切のものが含まれる。
同運用基準 第2の1⑵イの(注)4. 事業者の表示にならないと運用基準が挙げているのは、どんな場合ですか?
事業者が第三者の表示に関わっていても、客観的な状況から、第三者が自分の意思で決めた内容と認められる場合です。
運用基準第2の2が、SNSの投稿・ECサイトのレビュー・試供品の配布など10の場合と、媒体事業者(記事や番組などを作って届ける事業者)の場合を並べています。
運用基準は、判断にあたって、次のような点を見るとしています。
- 表示の内容について、第三者と事業者の間で、直接にも間接にも、やり取りが一切行われていないか
- 事業者から第三者へ、表示の内容についての依頼や指示があるか
- 表示の前後に対価が提供されているか、今後提供することが決まっているか
表1の読み方
表1は、運用基準第2の2が「例えば」として挙げている場合を並べたものです。中央の列の記号は、表示の内容の良し悪しではありません。その表示が「事業者の表示」とされるかどうかについての、運用基準の記載を示しています。
| 場面 | 事業者の | 根拠 |
|---|---|---|
| 第三者が |
ならない | 同運用基準 第2の |
| 事業者が |
ならない | 同運用基準 第2の |
| アフィリエイターの |
ならない | 同運用基準 第2の |
| ECサイトに |
ならない | 同運用基準 第2の |
| レビュー機能に |
ならない | 同運用基準 第2の |
| 事業者が |
ならない |
同運用基準 第2の |
| 事業者が |
ならない | 同運用基準 第2の |
| 媒体事業者が |
ならない | 同運用基準 第2の |
| 媒体事業者の |
なる | 同運用基準 第2の |
⑴と⑵の冒頭の文(柱書)には、どちらも限定が付いています。⑴の柱書は「事業者の表示とならない場合としては、例えば、以下のような場合が考えられる」、⑵の柱書は「通常、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから、事業者の表示とはならない」です。⑴には、このほかに次の3つもあります。
- カ:SNS上のキャンペーンや懸賞への応募のための表示
- ケ:会員制の場合の、会員への試供品などの配布
- コ:表示内容を決定できる程度の関係性にない第三者への、単なるプレゼント
例
冒頭の化粧品の会社の場面に戻ります。表1の2行目は、商品を無償で渡して投稿を頼んでも、受け取った人が自分の意思で内容を決めて投稿する場合を、事業者の表示とならない例に挙げています。ただし運用基準によれば、内容をはっきり指示していなくても、対価や関係の実態から、客観的に見て本人の意思で決めた内容と認められなければ、事業者の表示とされ得ます。
自社サイトに第三者の投稿を引用する場合
表1の6行目には、運用基準自身が注を付けています。サイトの一部が事業者の表示とされないことと、サイト全体の扱いとは、別のことです。引用した部分が事業者の表示とされなくても、それを含むサイト全体が事業者の表示とされることは当然あり得る、という注です。
6行目の条件にある「恣意的に抽出すること」(都合よく選び出すこと)の説明として、運用基準は括弧書きで次の場合を挙げています。第三者のSNSの投稿から、事業者の評判を良くする意見だけを抜き出しているのに、そのことを一般消費者に見分けにくい方法で表示する場合です。
例
A社が、SNSで見つけた購入者の感想を自社サイトに載せる場面で考えます。表1の6行目が例に挙げるのは、都合よく選び出さず(恣意的に抽出せず)、手も加えずにそのまま引用する場合です。ただし注のとおり、サイト全体はA社の表示とされることが当然あり得ます。良い感想だけを選び、そのことを見分けにくい形で載せれば、恣意的な抽出が問題になり得ます。
原文で確かめる(運用基準 第2の2⑴キの(注))
ただし、上記キについては、客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、当該ウェブサイトの一部のみをもって当該事業者の表示とされないことを示すものであって、当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。
同運用基準 第2の2⑴キの(注)景品表示法第22条第1項は、事業者に、表示を適正に管理するための体制づくりなど、必要な措置をとることを求めています。そのための指針は、内閣府の告示(2014年11月、最終改正 2024年4月)です。指針は、アフィリエイトプログラムを使った広告を行うような業態について、留意を求めています。広告を使う事業者が、アフィリエイターなどの作る表示を確かめることが必要となる場合がある、というものです。
詳しく見る(指針の正式な名前)
指針:事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、最終改正 令和6年4月18日内閣府告示第92号)。
5. 「事業者の表示であることが明瞭」とは、どんな状態ですか?
一般消費者にとって、表示の内容全体から、事業者の表示だとわかりやすくなっている状態です。1つ1つの言葉ではなく、全体で見ます。
運用基準第3の1は、明瞭になっていないものを「記載されていないもの」と「不明瞭な方法で記載されているもの」の2つに分けています。
運用基準第3は、第三者の表示だと一般消費者に誤解されないかどうかを、表示の内容全体から判断するとしています。
原文で確かめる(運用基準 第3)
告示は、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認される場合を規制するものであることから、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」かどうかに当たっては、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断することになる。
同運用基準 第3事業者の表示だと書いていないもの
運用基準は、次の2つを挙げています。
- 事業者の表示であることが、まったく書かれていない場合
- アフィリエイトプログラムを使った表示で、アフィリエイトサイトに事業者の表示であることを書いていない場合
2つ目には注があります。いくつもの商品やサービスを比べるアフィリエイトサイトでは、サイト自体が明瞭になっている限り、載せている商品やサービスごとに書く必要はない、というものです。
書いてはあるが、わかりにくいもの
運用基準は、書いてはあるが明瞭になっていないものとして、次の8つを挙げています。位置・大きさ・色・時間の長さに触れているのは、この部分です。
- 事業者の表示である旨を、一部にしか示していない場合
- 文章の冒頭と途中とで、事業者の表示かどうかがわかりにくくなる書き方をしている場合
- 動画で、一般消費者が気づけないほど短い時間だけ示す場合(長い動画で冒頭以外にだけ示すなど、気づきにくい箇所だけに示す場合を含む)
- 一般消費者が、事業者の表示だとわからない言葉を使う場合
- 一般消費者が見えにくい、表示の末尾の位置に示す場合
- 事業者の表示である旨を周りの文字より小さく示した結果、一般消費者が気づきにくくなった場合
- 文章で示してはいるが、長い文章、周りより小さい文字、ほかの文字より薄い色のために、一般消費者が気づきにくい場合
- ほかの情報にまぎれ込ませる場合(SNSの投稿で、大量のハッシュタグを付けた文章の中に、事業者の表示である旨を埋もれさせる場合)
例
A社が依頼したSNSの投稿で、並んだ大量のハッシュタグの中に、事業者の表示である旨を1つだけ混ぜる場面で考えます。運用基準が最後に挙げている、ほかの情報にまぎれ込ませる場合と重なります。こうした示し方では、明瞭になっていると認められるかどうかが問題になり得ます。
6. 明瞭になっている例として、運用基準は何を挙げていますか?
運用基準第3の2は、文言や文章による表示のほか、放送のCM、事業者自身のウェブサイトやSNSアカウントでの表示などを、例として挙げています。
どれも「例えば」で始まる書き出しの下に置かれた例で、文言を使えば足りるという書き方はされていません。
運用基準第3の2⑴は、明瞭と認められるためには、表示の内容全体から、一般消費者にとって事業者の表示だとわかりやすい表示になっている必要がある、としています。そのうえで「例えば、以下の場合が考えられる」として、アに文言による表示、イに文章による表示を挙げています。
アは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示です。ただしアの注は、これらの文言を使っていても、表示の内容全体から明瞭と認められない場合もある、としています。
例
A社が依頼した長い紹介動画で、「PR」の文字が最後の数秒だけ小さく出る場面で考えます。文言は入っていても、前の節の「短い時間」「冒頭以外にだけ」「小さく示す」の例と重なります。アの注のとおり、明瞭と認められるかどうかが問題になり得ます。
原文で確かめる(運用基準 第3の2⑴アとその(注))
「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合。
(注) ただし、これらの文言を使用していたとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もある。
同運用基準 第3の2⑴アおよびその(注)社会通念上、明らかなもの
運用基準第3の2⑵は、事業者の表示であることが、一般消費者にとって明瞭であるか、社会通念上(世の中の常識から見て)明らかなものを挙げています。書き出しは「例えば、以下のような場合が考えられる」です。
- 放送のCMのように、広告と番組が切り離されている表示
- 番組や映画などで、エンドロールなどを通じて事業者の名前などを示す場合
- 新聞の広告欄のように、「広告」などと書かれている表示
- 商品やサービスの紹介そのものが目的の出版物での表示
- 事業者自身のウェブサイトでの表示
- 事業者自身のSNSアカウントを通じた表示
- 観光大使などのように、事業者の依頼を受けて表示していることが社会通念上明らかな人を通じた表示
このうち事業者自身のウェブサイトには、ただし書きがあります。自社サイトでも、あるページが事業者の表示ではないと一般消費者に誤解されるおそれがあれば、第三者の表示に、事業者の表示であることを明瞭に示さなければなりません。運用基準は括弧書きで、第三者の客観的な意見に見えて実は事業者が依頼・指示して特定の内容を表示させた場合や、そもそも事業者が作った場合を例に挙げています。
例
A社の自社サイトに、専門家の意見として紹介するページがあり、実はA社が専門家に頼んで特定の内容を書いてもらったものだとします。ただし書きが例に挙げている場面です。運用基準によれば、自社サイトの中でも、このページではA社の表示であることを明瞭に示さなければなりません。
原文で確かめる(運用基準 第3の2⑵オ(ア))
ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。
同運用基準 第3の2⑵オ(ア)運用基準第4は、デジタル分野の表示は、技術の進歩などで変化が速いとしています。今は想定しきれない手法も将来出てくると考えられるため、運用基準の明確化を図っていくとしています。
7. 「個人の感想です」と書き添えれば、評価は変わるのですか?
消費者庁の健康食品についての留意事項は、そうした表示をしても、虚偽誇大表示等(うそや大げさな表示など)にあたるかどうかの判断に影響しない、としています。
この記載は健康食品の広告などについて書かれたもので、景品表示法と健康増進法(国民の健康づくりについて定める法律)の両方を対象にしています。
留意事項の正式な名前は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」です。その第4に「景品表示法及び健康増進法上問題となる表示例」があり、2⑸が体験談を扱っています。
2⑸は、体験談を広告などに使うこと自体が、すぐに虚偽誇大表示等にあたるわけではない、としています。ただし、不適切に使って一般消費者に誤解される表示をすれば、あたるおそれがある、と続けます。
そのうえで、「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」「軽い運動を併用した結果です」などと書いても、虚偽誇大表示等にあたるかどうかの判断に影響しない、としています。見られるのは、成分の効果を強調する表示や、体験談を含む表示の内容全体です。一般消費者が、そこから商品に健康保持増進効果等(健康の保持や増進の効果など)があると受け取る場合があります。実際にはその効果がないのにそう受け取られるなら、その表示は虚偽誇大表示等にあたる、という書き方です。
例
健康食品のA社が、体験談の下に「個人の感想です」と書き添えた広告を作る場面で考えます。この一文を足しても、虚偽誇大表示等にあたるかどうかの判断に影響しない、というのが留意事項の書き方です。
原文で確かめる(留意事項 第4の2⑸)
留意事項:制定 平成25年12月24日、全部改定 平成28年6月30日、一部改定 令和4年12月5日(消費者庁)。
実際に商品を摂取した者の体験談を広告等において使用することが、直ちに虚偽誇大表示等に当たるものではない。しかし、体験談を不適切に使用することにより、一般消費者に誤認される表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。
また、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」、「軽い運動を併用した結果です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではなく、本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たる。
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4の2⑸同じ留意事項は、トクホ(特定保健用食品)のアンケートやモニター調査などの結果の使い方(第4の1⑴ウ)にも、同じ趣旨の記載を置いています。
不適切な使い方として挙げられている5つの例
2⑸は、体験談の使い方が不適切な表示として、次の5つを挙げています。
- 体験者がいないのに、体験者やそのコメントをでっち上げる(ねつ造する)場合
- 有償・無償を問わず、肯定するよう特に頼んだ体験談なのに、一般の利用者の体験談のように示す場合
- 実際には食事療法や薬物療法を併用しているのに、それを明瞭に示さず、健康食品をとるだけで効果が得られたような体験談を示す場合
- 都合のよい体験談やコメントだけを引用するなどして、誰でも簡単に同じような効果を見込めるように示す場合
- 良い点を言い切って示しているのに、悪い点を示していないか、気づきにくい方法で示している場合。悪い点とは、効果が出ない人が実際にいることや、一定の条件でないと効果が得にくいことなどです。
2つ目の例(肯定するよう特に頼んだ体験談を、一般の利用者のものに見せる)は、2023年の告示が置かれる前から、消費者庁の資料に書かれていたものです。
原文で確かめる(留意事項 第4の2⑸の5つの例)
例:実際には、体験者が存在しないにもかかわらず、体験者の存在をねつ造したり、体験者のコメントをねつ造する場合
例:有償、無償を問わず、肯定するよう特に依頼した体験談であるにもかかわらず、一般の利用者の体験談であるかのように表示する場合
例:実際には、食事療法や薬物療法を併用しているにもかかわらず、その旨を明瞭に表示せずに、健康食品を摂取するだけで効果が得られたかのような体験談を表示する場合
例:一部の都合の良い体験談のみや体験者の都合の良いコメントのみを引用するなどして、誰でも容易に同様の効果が期待できるかのような表示がされている場合
例:メリットとなる情報を断定的に表示しているにもかかわらず、デメリットとなる情報(効果が現れない者が実際にいること、一定の条件下でなければ効果が得られにくいこと等)が示されていない、又は一般消費者が認識し難い方法で表示されている場合
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4の2⑸一部の言葉ではなく、全体で見る
留意事項の第4の冒頭(柱書)は、虚偽誇大表示等についての2つの法律の規定を、どちらも特定の用語や文言などの使用を一律に禁止するものではない、と書いています。一般消費者が表示から受ける認識・印象・期待は、表示された一部の用語や文言だけで判断されるものではない、とも続けています。告示の運用基準(第3)もこの留意事項も、判断は表示の内容全体から行うという書き方で一致しています。
8. 同じ体験談を、薬機法と医療広告のルールはどう扱っているのですか?
薬機法側の国の基準は、経験談などの引用・掲載を、医薬品のような効き目(医薬品的な効能効果)をほのめかす型の1つに挙げています。
医療広告の指針(医療広告等ガイドライン)は、医療機関が自らのウェブサイトなどに載せる、治療などの内容や効果に関する体験談を、広告として禁じています。
体験談は、景品表示法の告示だけで見るものではありません。薬機法の側では、国の通知(国の役所が、法律の運用のしかたを自治体などに示す文書)が体験談にふれています。医療法(病院や診療所について定める法律)の広告規制の側では、省令(法律を補うために大臣が定める決まり)とガイドラインがふれています。どちらも景品表示法の告示とは要件(あてはまるための条件)が違うので、別々に見ます。
薬機法の側:経験談で効き目をほのめかす表示
「医薬品の範囲に関する基準」は、国の通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙です(1971年6月、最終改正 2020年3月)。無承認無許可医薬品とは、必要な承認や許可を受けずに作られたり売られたりしている医薬品のことです。
基準のⅠの2「医薬品的な効能効果の解釈」は、医薬品のような効き目をうたうこと(医薬品的な効能効果の標ぼう)にあたるものを並べています。その(三)は「医薬品的な効能効果の暗示」(直接は言わずにほのめかすもの)です。その中の(e)が、新聞・雑誌などの記事、医師・学者などの談話、学説、経験談などを引用・掲載してほのめかす型です。健康食品などが医薬品にあたるかどうかの考え方は『3-1 健康食品が医薬品とみなされるのはどんなとき?』で扱っています。
例
A社が、健康食品のチラシに、病気の症状が軽くなったという購入者の経験談を載せる場面で考えます。商品の説明そのものに効き目が書かれていなくても、経験談を通じて医薬品的な効能効果をほのめかすものとして、この基準の(e)の型が問題になり得ます。
原文で確かめる(医薬品の範囲に関する基準 Ⅰの2(三)(e))
通知:無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号)別紙。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号。
(e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
医薬品の範囲に関する基準(昭和46年6月1日 薬発第476号 別紙)Ⅰの2(三)(e)監視指導の側のマニュアルも、体験談を名指ししています。国の通知(1987年9月、最終改正 2015年4月)の別添「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」です。そのⅣの2⑴は、標ぼうとして行われる表示や説明を11項目挙げており、その⑧が「使用経験者の感謝文、体験談集」です。
同じⅣの2⑵は、⑴の④から⑩までによる標ぼう(⑧の体験談集も含みます)について、特定の商品名を示していない場合の扱いを定めています。資料を商品の説明を求める人に渡す、商品と同じ売場に置く、購入申込書と一緒に送るなどして、特定の商品を説明している場合があります。そのときは、その商品について医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす、というものです。
例
あるお店が、病気の症状が軽くなったという体験談を集めた冊子(商品名は入っていない)を、特定の商品と同じ売場に置く場面で考えます。マニュアルのⅣの2⑵によれば、その商品を説明するものとして置かれていれば、その商品について医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなされ得ます。
原文で確かめる(無承認無許可医薬品監視指導マニュアル Ⅳの2⑵)
通知:無承認無許可医薬品の監視指導について(昭和62年9月22日 薬監第88号)別添。最終改正 平成27年4月1日 薬食監麻発0401第3号。
⑴の④ないし⑩により行われる標ぼうについては、特定商品名を示していない場合であっても、特定商品の説明を求める者に提供したり、特定商品を説明するものとして商品と同一売場に置いたり、特定商品の購入申込書とともに送付する等により特定商品の説明を行っているときは、当該特定商品について医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす。
無承認無許可医薬品監視指導マニュアル Ⅳの2⑵承認などを受けた医薬品等(薬機法が扱う5つの製品)の広告には、医薬品等適正広告基準が働きます。厚生労働省の通知(2017年9月)の別紙です。承認は、製品ごとに国が審査して、製造販売を認めることです。基準の目的は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(医薬品等)の広告がうそや大げさにならないようにし、適正を図ることです(第1)。医薬部外品は、医薬品よりも作用がおだやかな製品(薬用化粧品など)です。再生医療等製品は、人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。基準の対象は、新聞・テレビ・ウェブサイト・SNSなど、すべての媒体の広告です(第2)。
詳しく見る(基準の正式な名前)
通知:医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)別紙。
体験談に関係するのは、第4の3⑸(効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止)と、第4の10(医薬関係者等の推せん)です。各項の内容は『2-8 使用前後の写真・推せん・受賞歴は、どこで扱われますか?』で扱っています。供給する側から見た線の引き方は『5-6 供給者の説明は、どこから「広告」になる?』で扱っています。
医療広告の側
医療法第6条の5第1項の主語も「何人も」です。医療広告等ガイドライン(2026年3月最終改正)第2の6⑴は、この項について次のように書いています。医師・歯科医師や医療機関だけでなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者や一般人など、何人も広告規制の対象とされる、というものです。
詳しく見る(改正日)
最終改正日:令和8年3月30日。
患者などが自分で載せる体験談や手記は、同ガイドライン第2の5⑶によれば、広告とは見なされません。個人が病院をすすめたにすぎず、誘引性(患者の受診などを誘う性質)の要件を満たさないためです。ただし、病院から頼まれて書いた手記や、病院から金銭などのお礼を受けている、またはその約束がある場合は、誘引性があるものとして扱うのが適当、と続けています。
医療機関自身が載せる場合は、扱いが分かれます。病院などが自らのウェブサイトなどに載せる、治療などの内容や効果に関する体験談は、広告にあたり、そのうえで禁止される、とガイドライン第2の1−1は書いています。
ただし、当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当すること(その上で省令第1条の9第1号の規定に基づき禁止されること)。
医療広告等ガイドライン 第2の1−1原文の「省令」は、医療法施行規則のことです。禁止の根拠は、その第1条の9第1号です。患者その他の者の主観や伝聞にもとづく、治療などの内容や効果に関する体験談の広告をしてはならない、と定めています。ガイドライン第3−1の1⑹は、これについて、体験談の中身が広告できる範囲のものであっても、広告は認められない、と書いています。
同じ項は続けて、医療機関の外にある媒体への掲載を書き分けています。個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ、第三者が運営するいわゆる口コミサイトなどへの掲載です。医療機関が広告料などの費用負担などの便宜を図って掲載を頼んでいるなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない、としています。
例
あるクリニックの受付担当が、治療の内容や効果についての患者さんの体験談を、自院のウェブサイトに載せたいと考える場面です。ガイドライン第2の1−1は、病院などが自らのウェブサイトなどに載せるこうした体験談を、広告にあたり禁止されるものとしています。
医療広告のほかの決まりは、次のページで扱っています。
- 広告してよい事項を並べる形(限定列挙)をとる理由:『7-6 医療広告は、なぜ「書いてよいこと」を並べる形なのか?』
- ウェブサイトなどでの限定解除(要件を満たすと広告できる事項が広がる仕組み)の要件:『7-7 医療広告の「限定解除」、要件はいくつある?』
- 医療機関の側に及ぶ規律の全体:『5-5 エクソソームなどを使う自由診療で、医療機関が守るルールは?』
3つのルールを並べると
1つの体験談に、景品表示法の告示、薬機法第66条、医療法の広告規制が同時に及び得ます。名宛人で範囲が限られるのは、3つのうち景品表示法の告示だけです。薬機法第66条第1項も医療法第6条の5第1項も、主語は「何人も」です。
そのほかの違いは、要件の側にあります。自分の供給する商品やサービスについての表示であること、誘引性・特定性(どの病院などのことかがわかること)、広告できる事項の限定といった要件です。どれか1つの要件を満たさないことは、ほかの要件を満たさないことを意味しません。
例
冒頭の化粧品の会社の場面で考えます。発信した人が自分の意思で内容を決めた投稿は、会社の表示とされず、告示の対象にならないことがあり得ます。それでも、その投稿が薬機法第66条の問題になり得るかは、告示とは別に考えます。
理解の確認
同じ1つの体験談について、ステルスマーケティング告示は名宛人を「事業者」に限るのに、薬機法第66条第1項と医療法第6条の5第1項は、投稿した第三者にも及び得ます。この違いは、どこから来るのでしょうか。
告示は景品表示法第5条第3号にもとづく指定なので、名宛人は第5条と同じく、同法第2条第1項の「事業者」になります。運用基準第1の(注)も、事業者でない者が行う行為は、何ら告示の対象となるものではないと書いています。一方、薬機法第66条第1項と医療法第6条の5第1項は、主語が「何人も」で、行為をする人の立場による限定を置いていません。違いは、行為の悪質さの差ではなく、それぞれの条文が誰を主語に置いたかから来ます。ただし運用基準の同じ(注)は、事業者が事業者の表示であることを明瞭にしなければならない結果として、第三者の表示にも一定の制約が事実上かかる、とも書いています。
根拠:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)/景品表示法第5条第3号・第2条第1項/薬機法第66条第1項/医療法第6条の5第1項(法令確認日 2026-09-08)
明示的な依頼や指示が無ければ、ステルスマーケティング告示の対象にならない。この理解は、運用基準の書き方とどこで食い違うでしょうか。
運用基準第2の1⑵イは、明示的に依頼・指示していない場合でも、事業者の表示になる場合があるとしています。事業者が第三者の表示内容を決められるくらいの関係があり、客観的な状況から、第三者が自分の意思で決めた内容とは認められない関係がある場合です。見られているのは、依頼状や契約書の有無ではなく実態です。やり取りのしかたや中身、対価の中身と主な提供理由、関係がどのくらい続いてきたかなどです。運用基準の(注)によれば、対価も、お金や物に限られず、イベントへの招待などのもてなし(きょう応)など、対価にあたるものすべてが含まれます。
根拠:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第2および第2の1⑵イとその(注)(法令確認日 2026-09-08)
体験談に「個人の感想です」と書き添えれば評価が変わる。この理解は、判断の単位について何を取り違えているでしょうか。
消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」第4の2⑸は、「個人の感想です」などの表示について書いています。そうした表示をしても、虚偽誇大表示等にあたるかどうかの判断に影響しない、というものです。判断は、1つの文言ではなく、表示の内容全体から一般消費者がどう受け取るかで行われます。打ち消しの一文を足しても、全体から受ける印象が変わらなければ、結論は動きません。同じ留意事項の第4の柱書も、特定の用語や文言などの使用を一律に禁止するものではない、と書いています。一般消費者が表示から受ける認識は、表示された一部の用語や文言だけで判断されるものではない、とも続けています。告示の運用基準第3も、明瞭かどうかは表示の内容全体から判断するとしており、単位の置き方は一致しています。
根拠:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4の柱書および第4の2⑸/「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第3(法令確認日 2026-09-08)
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- 2-6 SNSの
投稿は 化粧品の会社が、SNSで発信している人に商品を送り、投稿を頼むことがあります。だれの 広告? — 景品表示法と 薬機法で、 対象に なる 人が違う - 2-8 使用前後の
写真・推せん・ 化粧品会社の広報担当者が、商品ページに、使う前と使った後の肌の写真を並べたいと考えたとします。受賞歴は、 どこで 扱われますか? — 医薬品等適正 広告基準 - 7-1 優良誤認と
有利誤認は、 健康食品を扱うA社の広報担当が、新しいチラシを作るとします。どこが 違う? — 景品表示法第5条に ある 2つの 号と 違反した ときの手続 - 2-4 医薬品等適正
広告基準とは 化粧品の会社で広告の案を確かめていると、行政の資料で「医薬品等適正広告基準第4の3(5)」のような書き方に出会うことがあります。何ですか? — 基準の 構成と、 解説通知の 位置づけ
- 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条・第5条・第6条・第7条・第8条・第22条・第26条〜第28条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、最終改正 令和6年4月18日内閣府告示第92号)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(制定 平成25年12月24日、全部改定 平成28年6月30日、一部改定 令和4年12月5日、消費者庁)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」/最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号 厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品の監視指導について(昭和62年9月22日 薬監第88号、最終改正 平成27年4月1日 薬食監麻発0401第3号)別添「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)別紙「医薬品等適正広告基準」厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン。令和8年3月30日最終改正)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第1条の9第1号 — 医療法(抜粋)・医療法施行令・医療法施行規則(抜粋)等 厚生労働省(2026-09-08 確認)