30秒でわかる要点
- 変わったのは条文ではなく、指定が1つ増えたこと。景品表示法第5条第3号に基づく告示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)が2023年10月1日から施行され、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示が、不当表示として指定されました。
- 外形が第三者の投稿でも、事業者が表示内容の決定に関与したと認められれば「事業者の表示」。明示の依頼・指示がなくても、対価の内容や関係性の実態から認められるとされています。対価には、金銭又は物品に限らず、イベント招待等のきょう応など対価性を有する一切のものが含まれます。
- 「個人の感想です」の付記は、判断を変えません。判断は表示内容全体から行われます。名宛人が「事業者」に限られるのは景品表示法の告示だけで、薬機法第66条第1項も医療法第6条の5第1項も主語は「何人も」です。
2023年10月に、体験談や口コミについて何が加わったのか
景品表示法第5条第3号に基づく告示が令和5年10月1日から施行され、事業者の表示であることを判別することが困難である表示が、不当表示として指定されました。
告示は令和5年3月28日 内閣府告示第19号、その運用基準は同じ日付の消費者庁長官決定です。
2023年に加わったのは、新しい条文ではありません。景品表示法第5条第3号に基づく指定が1つ増えた、というのが起きたことのすべてです。
第5条は、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について、各号のいずれかに該当する表示をしてはならないと定めています。第1号(優良誤認表示)と第2号(有利誤認表示)は、禁止される表示の内容を条文自体が書いています。第3号だけは形が違い、内閣総理大臣が指定したものをあとから禁止の対象に取り込む枠になっています。中身が空のまま用意された引き出しが1つあり、告示がそこに中身を入れる、という構造です。
2023年にこの引き出しへ入ったのが、次の告示です。本文は短く、指定される表示を一文で定めています。
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)全文指定を告示によって行うことは、景品表示法第6条第2項が定めています。同条第1項は、指定をしようとするときに、公聴会を開き、関係事業者及び一般の意見を求めるとともに、消費者委員会の意見を聴かなければならないとしています。
この指定が置かれた理由
運用基準は、指定の趣旨を、一般消費者の受け取り方の差に置いています。事業者の表示であると認識すれば、一般消費者は表示内容にある程度の誇張・誇大が含まれることはあり得ると考え、商品選択の上でそのことを考慮に入れる。第三者の表示であると誤認する場合には、そのようには考えないことになる。この差が、指定の理由として書かれています。
第5条第3号に基づく指定告示は、これ1つではありません。消費者庁が公表した令和7年度の運用状況の表6「表示事件の内訳」は、第5条第3号の内訳として、無果汁告示、原産国告示、消費者信用告示、不動産おとり広告告示、おとり広告告示、有料老人ホーム告示、ステルスマーケティング告示の7つを並べています。
この告示の名宛人は誰で、違反とされたときに何が行われるのか
名宛人は景品表示法第2条第1項の「事業者」です。第5条違反には第7条第1項の措置命令と第26条以下の是正措置計画の認定があり、第3号は課徴金の対象から外れます。
運用基準は、告示の対象を景品表示法第2条第1項の「事業者」が行う表示に限る一方、第三者の表示にも事実上の制約が及ぶと書いています。
名宛人は、景品表示法第2条第1項の「事業者」です。告示は第5条第3号に基づく指定なので、名宛人は第5条と同じになります。運用基準は、この点を第1の(注)で明記しています。
告示は、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第5条第3号の規定に基づくものであり、告示においても景品表示法に規定される定義が前提となる。告示の対象となるのは、景品表示法第2条第1項に規定する「事業者」が行う同条第4項に規定する「表示」である。したがって、事業者でない者が行う行為については、何ら告示の対象となるものではない。
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)ただし、名宛人でないことと、事実上の制約を受けないこととは別のことです。同じ(注)は、続けて次のように書いています。
なお、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないようにするためには、事業者が第三者の表示において、事業者の表示であることを明瞭にしなければならないことの結果として、第三者の表示に対しても一定の制約が事実上課せられることとなるが、かかる制約は、一般消費者の商品選択における自主的かつ合理的な選択を確保するという景品表示法の目的達成の観点から行われるものであり、第三者の自由な表現活動を不当に制約しようとするものではない。
同運用基準 第1の(注)薬機法の側は主語が違う
薬機法第66条第1項の主語は「何人も」です。事業者に限られていないため、投稿した第三者も名宛人になり得ます。同じ投稿を見ても、景品表示法の告示と薬機法第66条とでは、誰に向けられた規定かが違います。第66条が禁じる内容は第66条 — 虚偽・誇大広告の禁止、薬機法上どの表示が広告にあたるかはそもそも「広告」とはで扱っています。
景品表示法の側で行われること
第5条に違反する行為があるときの措置命令は、第7条第1項が定めています。
課徴金納付命令は第8条第1項が定めています。ただし第5条第3号に該当する表示に係るものは、課徴金の対象となる行為の定義から除かれています。
条文は「事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは」と書き出しています。
措置命令のほかに、是正措置計画の認定の手続があります。景品表示法第二章第六節「是正措置計画の認定等」が、次の3段で置いています。
- 第26条(通知) — 第5条の規定に違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合に、内閣総理大臣が、疑いの理由となった行為をしている者に対し、その行為の概要、違反する疑いのある法令の条項、認定の申請をすることができる旨を書面により通知することができる。
- 第27条(申請) — 通知を受けた者が是正措置計画を作成し、60日以内に認定を申請することができる。
- 第28条(認定の効果) — 認定をした場合、その認定に係る疑いの理由となった行為については、第7条第1項および第8条第1項の規定を適用しない。
消費者庁の公表資料は、この手続を「確約手続」、認定を「確約計画の認定」と呼んでいます。同資料は、確約手続が令和6年10月1日施行の改正景品表示法により新設されたものであると注記しています。
実際にどれだけ動いているか
処理状況は、消費者庁が毎年公表しています。令和8年5月28日公表の令和7年度の運用状況によると、同年度の措置命令13件の内訳として挙げられているのは、優良誤認3件、有利誤認8件、原産国告示2件です。
確約計画の認定は8件で、違反被疑行為の内訳としてステルスマーケティング告示4件が挙げられています(同資料は、関係法条が2以上にわたる事件があるため認定件数と一致しない旨を注記しています)。表6「表示事件の内訳」では、ステルスマーケティング告示に係るものは、措置命令・確約計画の認定4件、指導7件、合計11件です。
同じ資料は、令和7年度に指導を行った主な事件として、第5条第3号に係る3件の概要を、事業者名を伏せた形で載せています。購入者に販売ページへの星5の評価とレビューの投稿を条件にギフトカードを付与した事例、モニター募集サイトの閲覧者に対価を条件に投稿を依頼した事例、口コミサイト内の自社の営業所のページに事業者自らが役務の評価を投稿していた事例です。3件はいずれも、当該表示は表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているとは認められなかった、と書かれています。
外形上は第三者の投稿でも、「事業者の表示」とされるのはどういう場合か
事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合です。つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合を指します。
明示的な依頼・指示がなくても、対価の提供や取引の関係性から認められる場合があるとされています。
見られているのは1点だけです。事業者が表示内容の決定に関与したと認められるかどうか。告示が働く前提として、外形上は第三者の表示に見えるものが「事業者の表示」に当たることが必要で、運用基準第2はその判断の基準を最初に置いています。
告示の対象となるのは、外形上第三者の表示のように見えるものが事業者の表示に該当することが前提となる。(中略)外形上第三者の表示のように見えるものが、事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合である。
同運用基準 第2事業者が自ら行う表示
運用基準第2の1⑴アは、事業者が自ら行う表示に、事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示も含まれるとしています。
同⑴イは、これが事業者の表示に該当するかについて、従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務、表示目的等の実態を踏まえ、事業者が表示内容の決定に関与したかについて総合的に考慮して判断するとしています。挙げられている例は、次の2つです。
- 該当するものとして — 商品又は役務の販売を促進することが必要とされる地位や立場にある者(例えば、販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員等)が、その販売を促進するための表示を行う場合(他の者に指示をして表示を行わせる場合を含む)
- 該当しないものとして — 販売を促進することが必要とされる地位や立場にはない者が、一般消費者でも知り得る情報を使うなどし、販売を促進する目的ではない表示を行う場合
事業者が第三者をして行わせる表示
運用基準第2の1⑵アは、事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合として、次の4つを挙げています。
- 事業者が第三者に対して、当該第三者のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合
- ECサイトに出店する事業者が、いわゆるブローカー(レビュー等をSNS等において募集する者)や自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合
- 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合
- 事業者が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合
明示的な依頼・指示がない場合
依頼や指示が明示されていない場合も、同じ枠組みで扱われます。
事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となる。
同運用基準 第2の1⑵イその判断で総合的に考慮するとされているのは、次のような実態です。事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容(例えば、メール、口頭、送付状等の内容)。事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容と、その主な提供理由(例えば、宣伝する目的であるかどうか)。事業者と第三者の関係性の状況(過去に対価を提供していた関係性がどの程度続いていたのか、今後どの程度続くのか)。
対価の範囲についても、注が置かれています。
事業者が第三者の表示に対して支払う対価については、金銭又は物品に限らず、その他の経済上の利益(例えば、イベント招待等のきょう応)など、対価性を有する一切のものが含まれる。
同運用基準 第2の1⑵イの(注)要点
運用基準が見ているのは、依頼状や契約書の有無ではなく、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるかどうかという実態です。
事業者の表示とならないと運用基準が挙げているのは、どういう場合か
事業者が第三者の表示に関与していても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合です。
運用基準第2の2が、SNSの投稿・ECサイトのレビュー・試供品の配布など10の場合と、媒体事業者の場合を並べています。
関与があっても、第三者の自主的な意思による表示内容と認められれば、事業者の表示にはなりません。運用基準第2の2は、そうした場合を具体的に列挙しています。
判断に当たって見るとされているのは、次のような点です。
- 第三者と事業者との間で表示内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないか
- 事業者から第三者に対し表示内容に関する依頼や指示があるか
- 表示の前後に対価が提供されているか、今後提供することが決まっているか
| 場面 | 事業者の表示となるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 第三者が事業者の商品又は役務について、SNS等に当該第三者の自主的な意思に基づく内容として表示(複数回の表示も含む)を行う場合 | ならない | 同運用基準 第2の2⑴ア |
| 事業者が第三者に商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合 | ならない | 同運用基準 第2の2⑴イ |
| アフィリエイターの表示であっても、事業者との間で当該表示に係る情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないなど、広告主による広告とは認められない実態にある表示を行う場合 | ならない | 同運用基準 第2の2⑴ウ |
| ECサイトに出店する事業者の商品を購入する第三者が、自主的な意思に基づく内容として当該ECサイトのレビュー機能を通じて表示を行う場合 | ならない | 同運用基準 第2の2⑴エ |
| レビュー機能による投稿への謝礼として次回割引クーポン等を配布する場合であっても、事業者(委託を受けた仲介事業者を含む)と購入者との間で投稿内容の情報のやり取りが一切行われていない場合 | ならない | 同運用基準 第2の2⑴オ |
| 事業者が自社のウェブサイトの一部で第三者が行う表示を利用する場合であっても、恣意的に抽出することなく、表示内容に変更を加えることなく、そのまま引用する場合 | ならない(注あり) | 同運用基準 第2の2⑴キおよびその(注) |
| 事業者が不特定の第三者に試供品等の配布を行った結果、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合 | ならない | 同運用基準 第2の2⑴ク |
| 媒体事業者が自主的な意思で企画、編集、制作した表示(正常な商慣習における取材活動に基づく記事の配信、書評の掲載、番組放送等) | ならない | 同運用基準 第2の2⑵ア |
| 媒体事業者の表示であっても、事業者が表示内容の決定に関与したとされる場合 | なる | 同運用基準 第2の2⑵イ |
運用基準はこれらを例示として挙げており、⑴の柱書は「事業者の表示とならない場合としては、例えば、以下のような場合が考えられる」、⑵の柱書は「通常、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから、事業者の表示とはならない」という限定を置いています。この表の記号は、表示の内容の適否ではなく、その表示が「事業者の表示」とされるかどうかについての運用基準の記載を示しています。運用基準第2の2⑴には、このほかにカ(SNS上のキャンペーンや懸賞への応募のための表示)、ケ(会員制を設けている場合の会員への試供品等の配布)、コ(表示内容を決定できる程度の関係性にない第三者への単なるプレゼント)が挙げられています。
表の6行目には、運用基準自身が注を付けています。ページの一部が事業者の表示とされないことと、ページ全体の扱いとは、別のことです。
ただし、上記キについては、客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、当該ウェブサイトの一部のみをもって当該事業者の表示とされないことを示すものであって、当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。
同運用基準 第2の2⑴キの(注)なお「恣意的に抽出すること」の説明として運用基準が括弧書きで挙げているのは、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示することです。
景品表示法第22条第1項は、事業者に対し、表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じることを求めています。その指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、最終改正 令和6年4月18日内閣府告示第92号)は、アフィリエイトプログラムを利用した広告を行うような業態では、当該広告を利用する事業者がアフィリエイター等の作成する表示等を確認することが必要となる場合があることに留意する必要がある、としています。
「事業者の表示であることが明瞭」とは、どういう状態を指すのか
一般消費者にとって、表示内容全体から、事業者の表示であることが分かりやすい表示となっている状態です。個々の語句ではなく全体で見ます。
運用基準第3の1は、明瞭となっていないものを「記載されていないもの」と「不明瞭な方法で記載されているもの」に分けています。
判断の単位は、個々の語句ではなく表示内容全体です。運用基準第3は、そのことを最初に示しています。
告示は、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認される場合を規制するものであることから、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」かどうかに当たっては、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断することになる。
同運用基準 第3記載されていないもの
運用基準第3の1⑴が挙げているのは2つです。事業者の表示であることが全く記載されていない場合と、事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際にアフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していない場合です。
後者には注が付いています。複数の商品又は役務を比較するアフィリエイトサイトについては、サイト自体が明瞭となっている限り、掲載されている全ての商品又は役務についてそれぞれ記載する必要はない、というものです。
不明瞭な方法で記載されているもの
運用基準第3の1⑵は、記載はあるが明瞭となっていないものとして、次の8つを挙げています。位置・大きさ・色・時間の長さに触れているのは、この部分です。
- 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合
- 文章の冒頭と文中とで、事業者の表示であるかどうかが分かりにくくなる書き方をしている場合
- 動画において、一般消費者が認識できないほど短い時間において事業者の表示であることを示す場合(長時間の動画において、冒頭以外にのみ表示するなど、一般消費者が認識しにくい箇所のみに表示を行う場合を含む)
- 一般消費者が事業者の表示であることを認識できない文言を使用する場合
- 事業者の表示であることを、一般消費者が視認しにくい表示の末尾の位置に表示する場合
- 事業者の表示である旨を周囲の文字と比較して小さく表示した結果、一般消費者が認識しにくい表示となった場合
- 事業者の表示である旨を文章で表示しているものの、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色の使用により、一般消費者が認識しにくい表示となる場合
- 事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる場合(SNSの投稿において、大量のハッシュタグを付した文章の記載の中に当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合)
明瞭となっているものとして、運用基準は何を挙げているか
運用基準第3の2は、文言・文章による表示のほか、放送のCM、事業者自身のウェブサイトやSNSのアカウントを通じた表示などを、例示として挙げています。
いずれも「例えば、以下の場合が考えられる」という柱書の下に置かれた例示で、文言を使えば足りるという書き方はされていません。
運用基準第3の2⑴は、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められるためには、一般消費者にとって、表示内容全体から、事業者の表示であることが分かりやすい表示となっている必要があるとしています。そのうえで「例えば、以下の場合が考えられる」として、アに文言による表示、イに文章による表示を挙げています。
アの原文は次のとおりです。文言を使えば足りる、という書き方にはなっていません。
「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合。
(注) ただし、これらの文言を使用していたとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もある。
同運用基準 第3の2⑴アおよびその(注)運用基準第3の2⑵は、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である又は社会通念上明らかであるものについて、同じく「例えば、以下のような場合が考えられる」として、次を挙げています。
- 放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示
- 番組放送や映画等でエンドロール等を通じて事業者の名称等を表示する場合
- 新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示
- 商品又は役務の紹介自体が目的である出版物における表示
- 事業者自身のウェブサイトにおける表示
- 事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示
- 観光大使等のように事業者の依頼を受けて表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じた表示
このうち事業者自身のウェブサイトには、ただし書きが付いています。
ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。
同運用基準 第3の2⑵オ(ア)運用基準第4は、デジタル領域における表示は技術の進歩等の変化が速く、現時点では想定しきれない新たな手法が将来的には生じることが考えられるため、運用基準の明確化を図っていくこととする、と述べています。
「個人の感想です」と付記すれば、体験談の評価は変わるのか
消費者庁の健康食品についての留意事項は、そのような表示をしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではない、としています。
この記載は健康食品の広告等について書かれたもので、景品表示法と健康増進法の両方を対象にしています。
付記を足しても、当たるか否かの判断は変わりません。「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(消費者庁。制定 平成25年12月24日、全部改定 平成28年6月30日、一部改定 令和4年12月5日)は、第4に「景品表示法及び健康増進法上問題となる表示例」を置いており、その2⑸が体験談を扱っています。
実際に商品を摂取した者の体験談を広告等において使用することが、直ちに虚偽誇大表示等に当たるものではない。しかし、体験談を不適切に使用することにより、一般消費者に誤認される表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。
また、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」、「軽い運動を併用した結果です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではなく、本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たる。
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4の2⑸同じ留意事項は、特定保健用食品についてのアンケートやモニター調査等の結果の使用(第4の1⑴ウ)にも、同趣旨の記載を置いています。「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではない、という書き方です。
不適切な使用として挙げられている5つの例
第4の2⑸は、体験談の使用方法が不適切な表示として、5つの例を挙げています。要件が落ちないよう、原文のとおり引きます。
例:実際には、体験者が存在しないにもかかわらず、体験者の存在をねつ造したり、体験者のコメントをねつ造する場合
例:有償、無償を問わず、肯定するよう特に依頼した体験談であるにもかかわらず、一般の利用者の体験談であるかのように表示する場合
例:実際には、食事療法や薬物療法を併用しているにもかかわらず、その旨を明瞭に表示せずに、健康食品を摂取するだけで効果が得られたかのような体験談を表示する場合
例:一部の都合の良い体験談のみや体験者の都合の良いコメントのみを引用するなどして、誰でも容易に同様の効果が期待できるかのような表示がされている場合
例:メリットとなる情報を断定的に表示しているにもかかわらず、デメリットとなる情報(効果が現れない者が実際にいること、一定の条件下でなければ効果が得られにくいこと等)が示されていない、又は一般消費者が認識し難い方法で表示されている場合
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4の2⑸2つ目の例は、2023年の告示が置かれる前から消費者庁の資料に書かれていたものです。
留意事項の冒頭(第4の柱書)は、虚偽誇大表示等に関する景品表示法及び健康増進法の規定について、いずれも特定の用語、文言等の使用を一律に禁止するものではない、と書いています。
一般消費者が表示から受ける認識、印象、期待は、表示された一部の用語や文言のみで判断されるものではない、とも続けています。
要点
付記の有無は、判断の単位を変えません。運用基準も留意事項も、判断は表示内容全体から行うという書き方で一致しています。
同じ体験談を、薬機法と医療広告の指針はどう扱っているのか
薬機法側の通知は経験談等の引用・掲載を医薬品的な効能効果の暗示に挙げ、医療広告の指針は医療機関が掲載する体験談を広告として禁じています。
どちらも景品表示法の告示とは別の要件で、同じ表示に同時に及び得ます。
体験談は、景品表示法の告示だけで見るものではありません。薬機法の側では通知が経験談等の引用・掲載を医薬品的な効能効果の暗示に挙げ、医療広告の側では指針が医療機関の掲載する体験談を広告として扱っています。要件が違うので、別々に見ることになります。
薬機法の側
「医薬品の範囲に関する基準」(昭和46年6月1日 薬発第476号 別紙。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)は、Ⅰの2「医薬品的な効能効果の解釈」で、医薬品的な効能効果の標ぼうに当たるものを列挙しています。(三)「医薬品的な効能効果の暗示」の中に、次の類型が置かれています。
(e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
医薬品の範囲に関する基準(昭和46年6月1日 薬発第476号 別紙)Ⅰの2(三)(e)監視指導の側も、体験談を名指ししています。「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」(昭和62年9月22日 薬監第88号 別添。最終改正 平成27年4月1日 薬食監麻発0401第3号)のⅣの2⑴は、標ぼうとして行われる表示説明を11項目挙げており、その⑧が「使用経験者の感謝文、体験談集」です。
同じⅣの2⑵は、商品名がない場合の扱いを定めています。
⑴の④ないし⑩により行われる標ぼうについては、特定商品名を示していない場合であっても、特定商品の説明を求める者に提供したり、特定商品を説明するものとして商品と同一売場に置いたり、特定商品の購入申込書とともに送付する等により特定商品の説明を行っているときは、当該特定商品について医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす。
無承認無許可医薬品監視指導マニュアル Ⅳの2⑵承認等を受けた医薬品等の広告については、医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日 薬生発0929第4号 別紙)が働きます。第1(目的)は、この基準が、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(医薬品等)の広告が虚偽、誇大にわたらないようにするとともにその適正を図ることを目的とすると定めています。第2(対象となる広告)は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告を対象とすると定めています。
体験談に関係するのは、第4の3⑸(効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止)と第4の10(医薬関係者等の推せん)です。各項の内容は別ページで扱います。供給する側から見た線の引き方は供給者はどこまで言えるかで扱っています。
医療広告の側
医療法第6条の5第1項の主語も「何人も」です。医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)第2の6⑴は、同項について、医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象とされるものである、と書いています。
患者等が自ら掲載する体験談、手記等については、同ガイドライン第2の5⑶が、個人が病院を推薦したにすぎず誘引性の要件を満たさないため広告とは見なさない、としています。ただし、病院からの依頼に基づく手記であったり、病院から金銭等の謝礼を受けている又はその約束がある場合には、誘引性を有するものとして取り扱うことが適当である、と続けています。
医療機関自身が掲載する場合は、扱いが分かれます。
ただし、当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当すること(その上で省令第1条の9第1号の規定に基づき禁止されること)。
医療広告等ガイドライン 第2の1−1医療法施行規則第1条の9第1号は、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないことを定めています。ガイドライン第3−1の1⑹は、これについて、患者等の体験談の記述内容が広告が可能な範囲であっても広告は認められない、と書いています。
同項は続けて、医療機関の外にある媒体への掲載を書き分けています。個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない、としています。
医療広告の規制がなぜ限定列挙の形をとっているかは医療広告規制はなぜ限定列挙なのか、ウェブサイト等での限定解除の要件は限定解除の4要件と、未承認医薬品等を用いる場合の追加記載、医療機関側に及ぶ規律の全体は医療機関側のルールで扱っています。
要点
1つの体験談に、景品表示法の告示、薬機法第66条、医療法の広告規制が同時に及び得ます。名宛人で切れるのは景品表示法だけで、告示の対象は同法第2条第1項の「事業者」が行う表示に限られます。薬機法第66条第1項も医療法第6条の5第1項も、主語は「何人も」です。3つを分けているのは名宛人ではなく、自己の供給する商品又は役務についての表示であること、誘引性・特定性、広告可能事項の限定といった要件の側です。どれか1つの要件を満たさないことは、他の要件を満たさないことを意味しません。
理解の確認
同じ1つの体験談について、景品表示法のステルスマーケティング告示は名宛人を「事業者」に限るのに、薬機法第66条第1項と医療法第6条の5第1項は投稿した第三者にも及び得るのは、どこから来る違いか。
告示は景品表示法第5条第3号に基づく指定なので、名宛人は第5条と同じく同法第2条第1項の「事業者」になり、運用基準第1の(注)も、事業者でない者が行う行為については何ら告示の対象となるものではないと書いています。薬機法第66条第1項と医療法第6条の5第1項は主語が「何人も」で、行為者の属性による限定を置いていません。違いは行為の悪質さの差ではなく、それぞれの条文が誰を主語に置いたかから来ます。ただし運用基準の同じ(注)は、事業者が明瞭にしなければならないことの結果として、第三者の表示にも一定の制約が事実上課せられることになる、とも書いています。
根拠:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第1の(注)/景品表示法第5条第3号・第2条第1項/薬機法第66条第1項/医療法第6条の5第1項(法令確認日 2026-09-08)
明示的な依頼や指示が無ければステルスマーケティング告示の対象にならない、という理解は、運用基準の書き方とどこで食い違うか。
運用基準第2の1⑵イは、明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性があるときは、事業者の表示となるとしています。見られているのは依頼状や契約書の有無ではなく、やり取りの態様や内容、対価の内容と主な提供理由、関係性がどの程度続いてきたかという実態です。対価も金銭又は物品に限られず、イベント招待等のきょう応など対価性を有する一切のものが含まれるとされています。
根拠:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第2および第2の1⑵イとその(注)(法令確認日 2026-09-08)
体験談に「個人の感想です」と付記すれば評価が変わるという理解は、判断の単位について何を取り違えているか。
消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」第4の2⑸は、「個人の感想です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではない、としています。判断は一つの文言ではなく表示内容全体から一般消費者がどう認識するかで行われるため、打消しの一文を足しても全体から受ける認識が変わらなければ結論は動きません。同じ留意事項の第4の柱書も、特定の用語、文言等の使用を一律に禁止するものではなく、一般消費者が表示から受ける認識は表示された一部の用語や文言のみで判断されるものではない、と書いています。告示の運用基準第3も、明瞭かどうかは表示内容全体から判断するとしており、単位の置き方は一致しています。
根拠:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4の柱書および第4の2⑸/「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)第3(法令確認日 2026-09-08)
次に読む
- 2-6 SNSの投稿は誰の広告か — 薬機法と景品表示法で名宛人が違う SNSの投稿がどの法律の名宛人になるかは、条文の主語で決まります。
- 2-8 使用前後の写真・推せん・受賞歴 — 医薬品等適正広告基準はどの項で扱っているか 使用前後の写真や推せんを名指しで扱っているのは、薬機法の条文ではなく医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日 薬生発0929第4号 別紙)です。
- 7-1 優良誤認と有利誤認 — 景品表示法第5条第1号と第2号は、条文のどこが違うのか 景品表示法で「優良誤認」と呼ばれるのは第5条第1号、「有利誤認」と呼ばれるのは第2号です。
- 2-4 医薬品等適正広告基準 — 本体(薬生発0929第4号)の構成と、解説通知の位置づけ 医薬品等適正広告基準は、法律でも政省令でもありません。
- 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年3月28日 内閣府告示第19号)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条・第5条・第6条・第7条・第8条・第22条・第26条〜第28条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組(令和8年5月28日、消費者庁表示対策課)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示第276号、最終改正 令和6年4月18日内閣府告示第92号)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(制定 平成25年12月24日、全部改定 平成28年6月30日、一部改定 令和4年12月5日、消費者庁)消費者庁(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」/最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号 厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品の監視指導について(昭和62年9月22日 薬監第88号、最終改正 平成27年4月1日 薬食監麻発0401第3号)別添「無承認無許可医薬品監視指導マニュアル」厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)別紙「医薬品等適正広告基準」厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン。令和8年3月30日最終改正)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第1条の9第1号 — 医療法(抜粋)・医療法施行令・医療法施行規則(抜粋)等 厚生労働省(2026-09-08 確認)