30秒でわかる要点
- 指導及び取締りの対象は、記1が並べる6類型((1)から(6))。並んでいるのは製品そのものの性質ではなく、その製品について何が示され、どう販売されているか
- 事務連絡が対象にしているのは、そもそも「試薬と称した製剤」。記1(6)は、治療等以外の目的で使用するものであることが明らかでないものと、試薬の用途とは異なる方法で販売するものを挙げている
- 記2は、現時点でエクソソーム等と称する製品に薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しないと留意を求める。記3は、同じ指導の方針がエクソソーム等を称さない製品にも同様であるとする
この事務連絡は、誰が誰に何を求めた文書か
厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課が、都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部(局)あてに、エクソソーム試薬への指導及び取締りの徹底を求めた文書です。
発出日は令和6年7月31日です。事務連絡には、通知に付されるような文書番号はありません。
事務連絡は冒頭で、指導を求める背景を述べています。ヒトの幹細胞の培養上清液及び当該上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞等の細胞の分泌物を、疾病の治療又は予防の目的に用いるものではなく、試薬と称した製剤として医療機関向けに広告・販売する事例が見受けられる、というものです。
そのうえで、そうした製剤のうち医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示するものについて、無承認無許可医薬品として、管下の販売業者等に対する指導及び取締りの徹底を求めています。
エクソソーム試薬については、疾病の治療等に用いることを目的としていないことから、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「薬機法」という。)に基づく承認を受けておらず、疾病の治療等に用いた場合の品質、有効性及び安全性が確認されたものではありません。エクソソーム試薬のうち医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示するものについては、下記のとおり、無承認無許可医薬品として貴管下販売業者等に対する薬機法に基づく指導及び取締りの徹底をお願いいたします。
エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡)前文前文が置いている3つの定義
- エクソソーム等/ヒトの幹細胞の培養上清液及び当該上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞等の細胞の分泌物
- 治療等/疾病の治療又は予防
- エクソソーム試薬/エクソソーム等を、治療等の目的に用いるものではなく、試薬と称した製剤
3つは横に並ぶ用語ではなく、外から内へ組み上がっています。物を指すのが「エクソソーム等」で、その物を「治療等」の目的には用いないと称して製剤にしたものが「エクソソーム試薬」です。記1から記3までは、この定義の上に書かれています。
培養上清液やセクレトームと呼ばれるものが法令上どの区分に置かれるかは、培養上清液・セクレトームの法的位置で扱います。
要点
「記」の直前に、なお書きが置かれています。事務連絡は、下記の内容が現時点で想定される製品の例を含むものであり、今後の状況を踏まえて見直しを行う可能性があることを申し添える、と書いています。記1の6類型は、このなお書きの下にあります。
指導の対象になるのは、どのような製品か
エクソソーム試薬のうち、記1に並ぶ(1)から(6)までのいずれかに当たる製品です。挙がっているのは製品の性質ではなく、何が示され、どう販売されているかです。
6つのうち(3)(4)(5)は「誤認させるもの」、(1)は「明示又は暗示されているもの」、(2)は「説明されているもの」という述語をとります。
記1は、指導を行う対象を(1)から(6)までの6つに分けています。並んでいるのは製品そのものの性質ではありません。その製品について何が示され、どう販売されているかです。
(1)から(5)は、表示や説明の内容を挙げています。(6)は、「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかかどうかと、販売の方法を挙げています。
1.エクソソーム試薬のうち以下の(1)から(6)までのいずれかに該当する製品については、指導を行うこと。
(1) 疾病の治療等の目的に使用できる旨が明示又は暗示されているもの
(2) 諸外国において、医薬品として承認等されている旨が説明されているもの
(3) 薬機法に基づく承認を受けた医薬品との比較等を用い、あたかも疾病の治療等が可能であるかのように誤認させるもの
(4) エクソソーム等を用いた疾病の治療等の研究が盛んであるなどの説明により、あたかも疾病の治療等が可能であるかのように誤認させるもの
(5) 製品の品質が医薬品と同等であるなどの表現により、医薬品と同様の目的で使用可能であるかのように誤認させるもの
(6) 以上のほか、試薬としての使用目的が明示されていないなど、「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかでないものや、試薬と称しながらも次のように試薬の用途とは異なる方法で販売するもの
・ 医療機関に対し、疾病の治療等の目的のために使用できる旨説明して販売するもの
・ インターネットサイト等において、使用者の口コミとして、疾病の治療等の目的で使用できる旨の口コミを掲載しているもの
同事務連絡 記1(全文)| 号 | 何について書かれているか | 号がとる述語 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| (1) | 治療等の目的に使用できる旨 | 明示又は暗示されているもの | 記1(1) |
| (2) | 諸外国での医薬品としての承認等 | 説明されているもの | 記1(2) |
| (3) | 承認を受けた医薬品との比較等 | 誤認させるもの | 記1(3) |
| (4) | 研究の状況についての説明 | 誤認させるもの | 記1(4) |
| (5) | 製品の品質についての表現 | 誤認させるもの | 記1(5) |
| (6) | 「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかかどうか、および販売の方法 | 明らかでないもの/販売するもの | 記1(6) |
事務連絡に表はありません。各号の全文は上の引用のとおりで、表は号ごとの主語と述語を取り出したものです(行の根拠は記1の各号)。
「試薬」と称していれば、記1の対象から外れるのか
称し方では決まりません。前文の定義がそもそも「試薬と称した製剤」であり、記1(6)は治療等以外の目的で使用するものであることが明らかでないものを挙げています。
同(6)は、試薬と称しながら試薬の用途とは異なる方法で販売するものも挙げ、その例として医療機関への説明と、インターネットサイト等での口コミの掲載を書いています。
前文が定義する「エクソソーム試薬」は、そもそも「試薬と称した製剤」です。つまり事務連絡は、試薬と称されている製剤を対象として書かれています。
記1(6)が見ているのは、称し方ではありません。「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかかどうかと、どのような方法で販売されているかです。使用目的が明示されていないことは、同号が「など」を付けて挙げている例です。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
研究用の試薬として売る限り、薬機法に基づく指導や取締りの対象にはならない。
現行
令和6年7月31日事務連絡は、試薬と称した製剤のうち医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示するものについて、無承認無許可医薬品として指導及び取締りの徹底を求めている。記1(6)は、試薬としての使用目的が明示されていないなど「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかでないものと、試薬と称しながら試薬の用途とは異なる方法で販売するものを、指導を行う類型に挙げている。
根拠:エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)前文および記1(6)。厚生労働省法令等データベースで全文を確認(2026-09-08)。
「研究用」という表示そのものが何を意味し、何を意味しないかは、「研究用」表示は何を意味するかで扱います。
「承認を受けた医薬品は存在しない」と書かれているのは、何を指しているのか
エクソソーム試薬を含む、エクソソーム等と称する製品の全体です。記2は、そこに薬機法に基づく承認を受けた医薬品は現時点で存在しない、と留意を求めています。
同じ日に医政局研究開発政策課が出した事務連絡も、諸外国を含め有効性・安全性が示され薬事承認を得て製造販売されている医薬品はない、と書いています。
なお、現時点において、エクソソーム試薬を含め、エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しないことに留意すること。
同事務連絡 記2(後段)この一文は、製品の良し悪しではなく、承認という手続を経た品目が現時点で存在しないという状態を述べたものです。
事務連絡自身は、指導及び取締りの根拠となる条番号を挙げていません。以下は、薬機法がどの条文で何を定めているかです。
次に挙げる条文は、いずれもその物が薬機法上の医薬品であることを対象としています。医薬品が何を指すかは、第2条第1項に置かれています。事務連絡は、記1に該当する製品を無承認無許可医薬品として、指導及び取締りを行うよう求めています。
第68条の名宛人は「何人も」です。第68条に違反した者について、第85条第5号は2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。
販売の側にも条文が置かれています。第55条第2項は、第14条第1項の規定に違反して製造販売をされた医薬品の販売・授与等を禁じています。これに対する罰則は第84条第18号で、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(併科あり)です。
事務連絡が用いる「無承認無許可医薬品」の語は、承認と許可の両方に関わります。薬機法では、医薬品の製造販売の承認は第14条第1項に、医薬品の販売業の許可は第24条第1項に置かれています。
第24条第1項に違反したときは、第84条第9号が3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。
供給する側がどこまで述べれば広告として扱われるかの枠組みは、供給者はどこまで言えるかで扱います。
この指導の方針は、エクソソーム以外の製品にも及ぶのか
記3は、エクソソーム等を称する製品に限らないとしています。治療等に用いることを目的としていないのに医薬品と誤認させる製品についても同様である、という書き方です。
記2は、6類型に該当する場合に限らず指導を行うこととし、判然としない事例は当課まで相談されたい、と書いています。
記2の前段と記3は、指導の範囲を2方向に広げています。記2は記1の6類型に該当しない製品へ、記3はエクソソーム等を称さない製品へです。
2.上記に該当する場合に限らず、医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示する製品については指導を行うこと。個別の具体的な事例の対応について判然としない場合には、当課まで相談されたい。
同事務連絡 記2(前段)3.本事務連絡は、特にエクソソーム試薬に対する指導及び取締りの徹底を周知するものであるが、上記の指導の方針については、エクソソーム等を称する製品に限らず、疾病の治療等に用いることを目的としていないにも関わらず、医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示する製品についても同様であることに留意すること。
同事務連絡 記3(全文)記2にいう「当課」は、事務連絡の発出課である厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課です。この相談の求めは、事務連絡の名宛人である各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)に向けられたものです。
同課は、厚生労働省の「無承認無許可医薬品情報」のページの照会先としても示されています。同ページは、無承認無許可医薬品について、薬機法に基づく品質・有効性・安全性の確認がなされていない旨を記載しています。
同じ日に、医療機関側にはどの文書が出ているのか
同じ日に、医政局研究開発政策課から再生医療等提供機関の管理者あてに「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」が出ています。
監視指導・麻薬対策課の事務連絡が販売業者等への指導を求めるのに対し、こちらは医療機関の管理者に宛てられています。
医政局の事務連絡は、エクソソーム等を用いた医療について、諸外国を含め有効性・安全性が示され薬事承認を得て製造販売されている医薬品は現時点でない、と述べています。安全性への留意を求める文が、これに続きます。
ヒトの幹細胞の培養上清液及び当該上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞等の細胞の分泌物(以下「エクソソーム等」という。)を用いた医療(以下「当該医療」という。)については、現時点で、使用されるエクソソーム等で諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はありません。このため、当該医療を行う場合には、実施する医師・歯科医師の責任のもと、特にその安全性について留意する必要があると考えられます。
幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 事務連絡)本文あわせて、一般社団法人日本再生医療学会から「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」が発出され、同学会ウェブサイトにおいて公表されていることを挙げています。そのうえで、当該医療を行う際には、その品質やリスクの管理等について当該ガイダンスも適宜参照の上、安全な実施に努めるよう求めています。
| 文書 | 発出 | 宛先 | 求めていること |
|---|---|---|---|
| エクソソーム試薬に係る監視指導について | 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 | 各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局) | 管下販売業者等に対する薬機法に基づく指導及び取締りの徹底 |
| 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知) | 厚生労働省医政局研究開発政策課 | 再生医療等提供機関の管理者 | 安全な実施に努めること、学会ガイダンスの参照 |
2本は同じ日付の事務連絡ですが、名宛人が異なります。前者は製品を販売する側を所管する部局あて、後者は医療を提供する機関の管理者あてです。
医療機関の側に課される提供計画や広告の規律は、医療機関側のルールで扱います。
理解の確認
「研究用の試薬として販売している限り、この事務連絡の対象にはならない」という説明は、事務連絡の書き方のどこと食い違うか。
前文が定義する「エクソソーム試薬」は、そもそもエクソソーム等を治療等の目的に用いるものではなく試薬と称した製剤であり、事務連絡は試薬と称されている製剤を対象として書かれています。記1(6)が見ているのは称し方ではなく、試薬としての使用目的が明示されていないなど「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかかどうかと、試薬の用途とは異なる方法で販売されていないかです。同号は、医療機関に対し治療等の目的のために使用できる旨説明して販売するものや、使用者の口コミとして治療等の目的で使用できる旨の口コミを掲載しているものを、その例に挙げています。称し方は、記1の各号がとる述語のどれとも対応していません。
根拠:エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)前文および記1(6)(法令確認日 2026-09-08)
「記1の6類型のどれにも当たらなければ指導は行われない」と読むことができないのは、記2前段と記3がそれぞれ何を広げているからか。
記2前段は、上記に該当する場合に限らず、医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示する製品については指導を行うこと、としています。記3は、指導の方針がエクソソーム等を称する製品に限らず、疾病の治療等に用いることを目的としていないにも関わらず医薬品と誤認させるものにも同様であるとしています。記2は6類型の外側の製品へ、記3はエクソソーム等を称さない製品へと、別の方向に範囲を広げています。記1の直前のなお書きも、下記の内容が現時点で想定される製品の例を含むものであり、今後の状況を踏まえて見直しを行う可能性があると書いています。
根拠:同事務連絡 なお書き・記1・記2前段・記3(法令確認日 2026-09-08)
記2後段の「エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しない」という一文は、それらの製品の品質や有効性について何を述べたものか。
述べているのは、承認という手続を経た品目が現時点で存在しないという状態であって、製品の良し悪しの評価ではありません。ただし前文は、エクソソーム試薬は治療等に用いることを目的としていないことから薬機法に基づく承認を受けておらず、治療等に用いた場合の品質、有効性及び安全性が確認されたものではない、と書いています。承認を受けていないことは、確認が行われていないことを意味します。
根拠:同事務連絡 前文および記2(後段)(法令確認日 2026-09-08)
次に読む
- 5-2 「研究用」表示は何を意味するか — 表示の有無だけでは決まらない 「研究用」と表示しても、それだけで薬機法の外に出るわけではありません。
- 5-6 供給者はどこまで言えるか — 越えると広告になる線 薬機法は、広告の規律を「何人も」に向けています。
- 5-3 培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに置かれているか 答えは二つの法律にまたがります。
- 5-5 医療機関側のルール — 再生医療等提供計画と、医療広告の規律 エクソソームなど細胞の分泌物を用いる自由診療では、医療機関の側に2系統の規律がかかります。
- エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)厚生労働省法令等データベース(2026-09-08 確認)
- 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項、第14条第1項、第24条第1項、第55条第2項、第68条、第84条、第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品情報(厚生労働省。照会先:医薬局監視指導・麻薬対策課)厚生労働省(2026-09-08 確認)