30秒でわかる要点
- 薬機法の区分は「使用の目的」で決まる:薬機法の5つの区分は、物の由来や製法ではなく、「何に使用されることが目的とされているか」で決まります。医療機器と再生医療等製品(人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品など)は、さらに政令で定めるものに限られます(第2条第4項・第9項)。政令は、内閣が定める命令です。
- 「法の対象外」には条件が付いている:厚生労働省の事務連絡(2025年5月30日)は、再生医療等安全性確保法の対象について書いています。培養上清とセクレトーム(細胞から細胞の外に分泌されるタンパク質全般を指す呼び名)は、細胞が含まれないことが明らかである場合には法の対象外、という記載です。条件はこの一つで、満たされない場合の扱いには触れていません。
- 「法の対象外」は、薬機法の扱いを決めない:2025年5月30日の事務連絡は、再生医療等安全性確保法の範囲について答えたものです。対象外とされても、薬機法上の扱いは決まりません。品質、有効性又は安全性が確認されたことも意味しません。薬機法の側では、厚生労働省の事務連絡(2024年7月31日)が、医薬品のような効き目(医薬品的効果効能)をうたう製品や、ほのめかす製品を取り上げています。これらを、無承認無許可医薬品(必要な承認や許可を受けていない医薬品)として指導・取締りの対象にしています。同じ事務連絡は、ヒトの幹細胞の培養上清液などを指す「エクソソーム等」と称する製品に、薬機法の承認を受けた医薬品は存在しない、とも書いています。承認とは、製品ごとに国が審査して、製造販売を認めることです。
1. 薬機法は、規制する物をいくつに分けているのですか?
医薬品・医薬部外品(医薬品よりも作用がおだやかな製品)・化粧品・医療機器・再生医療等製品の5つです。どれも、使用の目的で定義されています。
医療機器と再生医療等製品は、この定義に加えて「政令で定めるもの」に限られます(第2条第4項・第9項)。
薬機法は、規制の対象にする物を、第2条で次の5つに分けています。
- 医薬品(第1項)
- 医薬部外品(第2項):医薬品よりも作用がおだやかな製品。薬用化粧品など
- 化粧品(第3項)
- 医療機器(第4項)
- 再生医療等製品(第9項):人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品など
定義の軸は、その物が何に由来するかではありません。何に使用されることが目的とされているかです。原材料が、目的を判断するときにどう扱われるかは、2.の節で見ます。
例
A社とB社が、同じ種類の細胞を培養した液から製品を作るとします。A社は肌に塗って清潔にする目的で、B社は病気の治療に使う目的で売るとします。原料が同じでも、定義が見るのはそれぞれの目的です。
「政令で定めるもの」という二段目
再生医療等製品の定義は第9項にあります。第1号が定めるのは、次のような物です。人や動物の体の構造・機能の再建、修復、形成、または病気の治療・予防に使用されることが目的とされている物のうち、人や動物の細胞に培養その他の加工を施したものです。
ただし条文は、これにあたる物をすべて再生医療等製品としているわけではありません。「政令で定めるもの」という限定が付いています。
この政令は、薬機法施行令(昭和36年政令第11号)です。施行令の第1条は、第4項の医療機器を別表第一(政令の末尾に付いた一覧表)のとおりとしています。第1条の2は「法第二条第九項の再生医療等製品は、別表第二のとおりとする」と定めています。
つまり区分は二段で書かれています。法律の定義が入口の広さを決め、政令の別表が対象になる物を挙げる、という形です。この区分が2014年に加わった経緯は、『1-5 「再生医療等製品」とは、どんな製品?』のページで扱います。
医薬品の定義のうち、第1項第2号は医薬部外品と再生医療等製品を、第3号はそれに化粧品を加えた3つを、かっこ書き(条文中の括弧の部分)で除いています。第9項も、冒頭で医薬部外品と化粧品を除いています。定義どうしが互いを名指しで外し合う形にして、同じ物の置き場所が重ならないようにしてあります。
2. ある物が医薬品にあたるかどうかは、何で決まるのですか?
薬機法第2条第1項第2号・第3号の医薬品では、決め手は使用の目的です。どちらの号も、医薬品を「使用されることが目的とされている物」と定義しています。
目的の判断要素は、厚生省(厚生労働省の前身)の通知(国の役所が法律の運用のしかたを示す文書)の別紙が、人が口から飲む物について挙げています。
どちらの号も、物の由来や製法を要件にしていません。
- 第2号:人や動物の病気の診断、治療、予防に使用されることが目的とされている物
- 第3号:人や動物の体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的とされている物
どちらにも、機械器具等でないことなどの条件が付いています。条文は次のとおりです。
目的は、何を見て判断されるのか
その目的をどう判断するかは、厚生省薬務局長の通知が示しています。1971年6月1日に出た「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」です。その別紙「医薬品の範囲に関する基準」は、人が経口的に服用する物(口から飲む物)について、次のどちらかにあたるかどうかで判断するとしています。
- その物が、医薬品としての目的を持っているか
- ふつうの人(通常人)が、医薬品としての目的を持つ物だと受け取るか
基準は、ふつうの人がどう受け取るかを、次の要素から総合的に判断すべきものとしています。
- 成分本質(原材料)
- 形状(剤型、容器、包装、意匠など)
- その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量
- 販売方法、販売の際の演述(売るときの説明)など
例
C社が、口から飲む健康食品を売るとします。この基準では、原材料だけが見られるわけではありません。容器や包装のデザイン、ラベルに書いた効能効果や飲み方、売るときの説明も、あわせて判断の要素になります。
原文で確かめる(基準の冒頭)
人が経口的に服用する物が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項第2号又は第3号に規定する医薬品に該当するか否かは、医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断することとなる。通常人が同項第2号又は第3号に掲げる目的を有するものであると認識するかどうかは、その物の成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断すべきものである。
無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号/最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」冒頭通知の本体の「記」(番号を付けて項目を並べた部分)の1は、医薬品にあたるかどうかは法第2条の定義に照らして判断されるべきもの、と書いています。同じ「記」の1は、基準そのものを、過去の判断を例示しているもの、としています。
「エクソソーム試薬」についての事務連絡
2024年7月31日、厚生労働省医薬局(医薬品などを担当する部局)の監視指導・麻薬対策課が、事務連絡を出しました。宛先は、都道府県・保健所設置市・特別区で衛生を担当する部局です。
この事務連絡は、はじめに言葉を二段階で定めています。
- エクソソーム等:ヒトの幹細胞の培養上清液と、その上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞(細胞が外に出す小さな粒)などの、細胞の分泌物
- エクソソーム試薬:エクソソーム等のうち、病気の治療や予防の目的に使うものではなく、「試薬」と称した製剤(製品として仕上げた物)として医療機関向けに広告・販売するもの
そのうえで、エクソソーム試薬のうち次のものについて、無承認無許可医薬品として、販売業者などへの薬機法に基づく指導と取締りを徹底するよう求めています。
- 医薬品と誤認させるもの
- 医薬品的効果効能を標ぼうする(うたう)もの、または暗示する(ほのめかす)もの
原文で確かめる(事務連絡の本文)
エクソソーム試薬のうち医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示するものについては、下記のとおり、無承認無許可医薬品として貴管下販売業者等に対する薬機法に基づく指導及び取締りの徹底をお願いいたします。
エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)本文指導の対象になる製品は、6つの類型(タイプ)に分けて、この事務連絡の「記」の1に挙げられています。
さらに「記」の3は、この方針がエクソソーム等を称する製品に限られない、と書いています。病気の治療などに使う目的ではないのに医薬品と誤認させる製品や、医薬品的効果効能をうたう・ほのめかす製品も、同様だとしています。
例
D社が、「試薬」と称したエクソソーム製品を、医療機関向けに売っているとします。カタログで病気の治療に使えるとほのめかしていれば、この事務連絡が挙げる、医薬品的効果効能を暗示するものとして、指導の対象になり得ます。
6つの類型の中身は、『5-1 エクソソーム「試薬」は、どんなときに指導の対象?』のページで扱います。「研究用」などの表示があることで何が決まるかは、『5-2 「研究用」と書けば、薬機法の医薬品にあたらない?』のページで扱います。
3. 培養上清液やセクレトームは、再生医療等安全性確保法の対象になるのですか?
厚生労働省のQ&A(2025年5月)は、細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外としています。対象外とされることは、品質、有効性又は安全性が確認されていることを意味しません。
条件が満たされない場合の扱いには、Q&A(A.1-1-07・A.1-1-08)は触れていません。
再生医療等安全性確保法(平成25年法律第85号)が対象にするのは、再生医療等技術を用いて行われる医療です。
再生医療等技術は、第2条第2項で定められています。第1号は、細胞加工物(細胞に培養などの加工をした物。下で説明)を用いる医療技術です。第2号は、核酸等(体内で細胞に導入される核酸など)を用いる医療技術です。核酸は、DNAやRNAなど、遺伝情報を担う物質です。ただし、第1号・第2号に挙がる技術のすべてではなく、そのうち「政令で定めるもの」に限られます。薬機法の区分と同じ、二段の書き方です(1.の節)。
原文で確かめる(第2条第2項)
ここでいう政令は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令(平成26年政令第278号)です。
「細胞加工物」とは
第1号の「細胞加工物」は、同じ条の第4項で定められています。人や動物の細胞に、培養その他の加工を施した物です。そのうち、再生医療等に使う物で、再生医療等製品でないものを「特定細胞加工物」と呼びます。
2025年のQ&Aは、培養上清とセクレトームをどう書いているか
この定義について、厚生労働省の医政局(医療の提供体制などを担当する部局)研究開発政策課が、2025年5月30日に事務連絡を出しています。題名は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて」です。このページでは「2025年のQ&A」と呼びます。A.1-1-07 などは、Q&Aの項目の番号です。
関係する答えは、次の2つです。
いわゆるエクソソームを含む細胞外小胞を用いた医療技術については、細胞を含まないことが明らかである場合には、法の対象外である。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&A(令和7年5月30日 事務連絡)A.1-1-07培養上清に細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である。セクレトームについては、細胞から細胞外に分泌されるタンパク質全般を指す呼称である。当該物質に細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である。
同 A.1-1-08どちらの答えにも、「細胞を含まないことが明らかである場合」という条件が付いています。付いている条件はこの一つです。
例
冒頭のクリニックの場面で考えます。「細胞が入っていない」と説明されたら、確かめる点は2つです。
1つ目は、Q&Aの条件です。2025年のQ&Aは、培養上清について「細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である」と書いています。
2つ目は、薬機法上の扱いです。この2つの答えは、再生医療等安全性確保法の適用範囲について答えたもので、薬機法上の扱いを述べたものではありません。薬機法の側は、2.の節で見た別の条文(使用の目的による定義)と、別の事務連絡で動きます。
第1種から第3種までの区分と、この法律が医療機関に課している手続は、『5-4 再生医療等安全性確保法の対象と第1〜3種は、どう決まる?』のページで扱います。
4. 細胞に由来する物なら、どれも一律に法の対象から外れるのですか?
外れません。2025年のQ&Aは、細胞を加工して得たミトコンドリア(細胞の中にある小さな器官)を特定細胞加工物にあたるとし、これを用いる医療技術を法の対象としています。
一方、同じQ&Aは、サイトカイン(細胞が出す、情報を伝えるたんぱく質。成長因子を含む)のみを投与する医療技術を、法の対象外と書いています。
2025年のQ&Aは、細胞に由来する物をひとまとめに扱っていません。項目ごとに問いと答えを分け、法の対象になるものとならないものを書き分けています。表1にまとめます。
表の「根拠」の列は、Q&Aの項目の番号です。「事務連絡の記載」が「法の対象である」で終わるか、「法の対象外である」で終わるかを見ると、書き分けがわかります。
| 問いの | 事務連絡の | 根拠 |
|---|---|---|
| エクソソームを | いわゆる | 令和7年5月30日 事務連絡 A.1-1-07 |
| 培養上清や | 培養上清に | 同 A.1-1-08 |
| サイトカインを | サイトカイン | 同 A.1-1-09 |
| 細胞を | 細胞を | 同 A.1-1-10 |
| 自己の | 末梢血を | 同 A.1-1-11 |
| 歯科 | PRPは、 | 同 A.1-1-14 |
「事務連絡の記載」の列は、各答の内容です。品質、有効性又は安全性の評価を示すものではありません。
表の中で「法の対象である」で終わるのは、ミトコンドリアとPRPの行です。培養上清やセクレトームの行には、「細胞が含まれないことが明らかである場合」という条件が付いています。
例
表のうち「加工」にかかわる2つの行を比べます。患者自身の血液(自己の末梢血)を、遠心分離せずに自然に固めた血餅(フィブリンクロット)として用いる医療技術があります。Q&Aは、自然に固める操作は加工にあたらないとし、この医療技術を法の対象外としています(A.1-1-11)。
一方、Q&Aは、歯科インプラントと多血小板血漿(PRP)を併用する場合を、法の対象としています(A.1-1-14)。PRPが細胞加工物にあたるためです。PRPは、血液から血小板を多く集めた液です。
「加工」に触れた答えは、ほかにもあります(A.1-1-15)。脂肪組織から脂肪組織間質細胞を採取し、酵素処理と遠心分離を行うことが、第2条第4項の「細胞加工物」の定義でいう「加工」にあたるか、という問いです。答えは「該当する。」の一文だけです。
5. エクソソーム等と称する製品で、薬機法の承認を受けた医薬品はあるのですか?
医薬局の事務連絡(2024年7月31日)は、現時点において、エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しない、と書いています。
同じ日付で医政局が出した事務連絡も、諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はない、としています。
2024年7月31日には、厚生労働省の二つの課が、それぞれ事務連絡を出しています。販売業者などへの指導を求めた医薬局の事務連絡(2.の節)と、再生医療等提供機関(再生医療等を提供する医療機関)の管理者にあてた医政局の事務連絡です。どちらも、承認を受けた医薬品が無いことに触れています。医薬局の事務連絡では「記」の2です。
例
あるクリニックが、2026年にこの2つの事務連絡を読むとします。「現時点」とあっても、どちらも2024年7月31日時点の記載です。
原文で確かめる(2つの事務連絡)
なお、現時点において、エクソソーム試薬を含め、エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しないことに留意すること。
エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)記2ヒトの幹細胞の培養上清液及び当該上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞等の細胞の分泌物(以下「エクソソーム等」という。)を用いた医療(以下「当該医療」という。)については、現時点で、使用されるエクソソーム等で諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はありません。
幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)日本再生医療学会のガイダンス(第1版)にも、「現状においてはEVsを主な有効成分とする医薬品に薬事上の販売承認を与えた国はなく」という記載があります。EVsは、細胞外小胞のことです。
以上は、どれも医薬品についての記載です。これらの事務連絡とガイダンスは、再生医療等製品の承認については述べていません。
「区分にあたらない」と「確認されている」は別の話
3.の節の「法の対象外」は、ある区分にあたるかどうかについての記載です。医薬局の事務連絡には、エクソソーム試薬についての記載があります。「薬機法に基づく承認を受けておらず、疾病の治療等に用いた場合の品質、有効性及び安全性が確認されたものではありません」というものです。行政の文書は、ある区分にあたるかどうかと、品質、有効性及び安全性が確認されているかどうかを、別の事項として書き分けています。
直感的なポイント
学校の成績表で、ある教科の欄が「対象外」になっていても、それでほかの教科の成績がわかるわけではありません。欄ごとに、見ているものが違うからです。ある区分にあたらないことと、品質、有効性及び安全性が確認されていることも、別の物差しです。
6. 医療機関に向けて、行政は何を参照するよう求めているのですか?
医政局の事務連絡(2024年7月31日)は、エクソソーム等を用いた医療を行う際に、日本再生医療学会のガイダンスも適宜参照するよう求めています。
このガイダンスは学会が作成した文書で、法令でも行政の通知でもありません。
この事務連絡の宛先は、再生医療等提供機関の管理者です。
事務連絡は、エクソソーム等を用いた医療を行う際に、品質やリスクの管理などについて、学会のガイダンスも適宜参照して、安全な実施に努めるよう求めています。末尾の(参考)欄には、ガイダンスのURLが載っています。
例
ある医療機関の事務長が、2024年7月31日に出た二つの事務連絡を、宛先で見比べるとします。医薬局の事務連絡の宛先は、都道府県などで衛生を担当する部局です(2.の節)。二つのうち、医療機関の管理者にあてた文書は、医政局の事務連絡のほうです。
原文で確かめる(医政局の事務連絡)
なお、一般社団法人日本再生医療学会より「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」が発出されており、同学会ウェブサイトにおいて公表されております。当該医療を行う際には、その品質やリスクの管理等について、当該ガイダンスも適宜参照の上、安全な実施に努めていただきますようお願いいたします。
幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)参照を求められている学会の文書には、何が書かれているか
ガイダンス(第1版)は、2024年4月30日付で、一般社団法人日本再生医療学会が、日本細胞外小胞学会の協力を得て作った文書です。
座長は寺井崇二です。本体は「1. リスク・プロファイリング」「2. 調製工程(製造工程)・品質」「3. EV調製物のチェック項目並びに効果検証」の3部でできています。
法令上の位置づけについて、ガイダンスは冒頭の「現状確認項目」で書いています。取り上げているのは、医師または歯科医師の指示の下にEV(細胞外小胞)を調製(製造)し、所属する医療機関の患者に使う医療行為です。
2024年4月付のガイダンスは、こうした医療行為について、国内では再生医療等安全性確保法の対象外とされている、と書いています。あわせて、特定認定再生医療等委員会や認定再生医療等委員会の審査を受けることはない、としています。これらは、国の認定を受けて、再生医療等を行う医療機関の計画について意見を述べる委員会です。
読むときは、この日付に気をつけます。これは、再生医療等安全性確保法を改めた改正法(7.の節)の施行日(法律の決まりが効力を持ち始める日)、2025年5月31日より前の記載です。3.の節で見た2025年のQ&Aよりも前です。2025年のQ&A(A.1-1-07)は、細胞外小胞を用いた医療技術について、細胞を含まないことが明らかである場合には法の対象外、と書いています。
ガイダンスは「現状確認項目」のこの記載に続けて、薬事未承認(国の承認をまだ受けていない)のEVを用いた治療を提供する医師または歯科医師に求めています。EVの品質とリスクについて自ら十分に理解したうえで、患者の安全確保に努めなければならない、というものです。
原文で確かめる(ガイダンスの「現状確認項目」)
EVsを医師または歯科医師の指示の下に調製(製造)しこれらの所属する医療機関の患者に施用する医療行為は、国内では「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(安確法)の対象外とされており、特定認定再生医療等委員会や認定再生医療等委員会の審査を受けることはない。したがって薬事未承認のEVs(EV調製物)を用いた治療(EV療法)を提供する医師または歯科医師は、EV調製物の品質及びリスクのプロファイルに関して自ら十分に理解した上で患者の安全確保に努めなければならない。
細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)1-1. リスク・プロファイリングの概要「現状確認項目」このほか、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の科学委員会が、2023年1月17日付で報告書を公表しています。表題は「エクソソームを含む細胞外小胞(EV)を利用した治療用製剤に関する報告書」です。ガイダンスは、この報告書を参照した旨を書いています。
7. この扱いは、これから変わることがあるのですか?
検討することが、改正法(再生医療等安全性確保法を改めた法律)の附則(法律の末尾の補足の規定)第2条で定められています。対象は、細胞の分泌物を用いる先端的な医療技術への法の適用の在り方などです。
検討の目途(めど。おおよその目標)は施行後二年で、改正法の施行日は2025年5月31日です。
ここでいう改正法は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)です。2024年6月14日に公布(成立した法律を国民に知らせること)されました。検討の決まりは、その附則第2条第1項に置かれています。
検討の対象として、「細胞の分泌物」が名指しで挙がっています。
2025年のQ&Aも、2つの答え(A.1-1-07・A.1-1-08)の末尾で、この附則に触れています。
原文で確かめる(2025年のQ&A A.1-1-08の末尾)
なお、改正法の附則において、細胞の分泌物を用いる医療技術については、改正法施行後2年を目途として、法の適用の在り方等について検討を加えること等が定められている。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&A(令和7年5月30日 事務連絡)A.1-1-08例
あるクリニックが、2025年のQ&Aで、培養上清を用いる医療技術の扱いを確かめるとします。いまの記載とあわせて、その答えの末尾が触れている附則の検討にも目を向けることになります。
検討はどこで行われているか
- 厚生労働省医政局の「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ」(作業部会)が、2026年7月1日に第7回を開いています。第7回の議題には「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」が含まれています。
- 国の審議会(厚生科学審議会)の再生医療等評価部会(審議会の下に置かれた会議)に、厚生労働科学特別研究の総括研究報告が出されています。この報告は、研究項目の第1に「細胞の分泌物を再生法の規制下とする場合の論点整理とリスク分類の考え方」を挙げています。再生法は、再生医療等安全性確保法の略です。
第7回のほかの議題は、「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループについて」と「再生医療等安全性確保法の施行状況等について」です。
報告が出されたのは、第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会です。研究の名前は、令和7年度厚生労働科学特別研究「再生医療に関連した新技術領域に関するリスク評価および妥当性評価のための総合的研究」です。研究代表者は岡田潔です。
改正法の施行日(2025年5月31日)は、2025年5月30日の事務連絡の冒頭にも書かれています。事務連絡での表記は、和暦の令和7年5月31日です。同じ附則第2条の第2項は、施行後五年を目途とする別の検討を定めています。
理解の確認
「培養上清液は細胞そのものではないから、薬機法上の医薬品には当たらない」という説明は、薬機法第2条第1項第2号・第3号の定義のどこと食い違いますか?
定義の軸と食い違います。第2号・第3号は、医薬品を「使用されることが目的とされている物」と定義していて、その物が何に由来するか、どう作られたかを要件にしていません。由来を理由にした説明は、定義の軸をすり替えています。目的の判断については、厚生省の通知(1971年6月)の別紙が、人が経口的に服用する物について要素を挙げています。成分本質(原材料)だけでなく、形状、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、販売の際の演述等を、総合的に判断すべきものとしています。原材料は、判断の要素の一つにとどまります。
根拠:薬機法第2条第1項第2号・第3号/無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号/最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」冒頭(法令確認日 2026-09-08)
2025年のQ&Aは、二つの医療技術で、再生医療等安全性確保法の対象かどうかを書き分けています。培養上清やセクレトームを用いる医療技術と、細胞を加工して得たミトコンドリアを用いる医療技術です。なぜ書き分けているのですか?
分かれ目は、その物が細胞加工物にあたるかどうかです。同法第2条第4項は、細胞加工物を「人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの」と定義しています。2025年のQ&Aは、細胞を加工して得たミトコンドリアを、特定細胞加工物にあたるとしています(A.1-1-10)。培養上清とセクレトームについては、「細胞が含まれないことが明らかである場合」という条件を付けて、法の対象外と書いています(A.1-1-08)。細胞に由来するというだけで、一律に法の適用から外れる、という読み方はできません。
根拠:再生医療等安全性確保法第2条第4項/再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)A.1-1-08・A.1-1-10(法令確認日 2026-09-08)
「再生医療等安全性確保法の対象外」とされていることは、その物の薬機法上の扱いや、品質・有効性・安全性について、何かを決めますか?
決めません。2025年5月30日の事務連絡が答えているのは、再生医療等安全性確保法の適用範囲です。薬機法上の扱いは、別の条文と別の事務連絡で動きます。医薬局の事務連絡(2024年7月31日)は、エクソソーム試薬について次のように書いています。薬機法に基づく承認を受けておらず、疾病の治療等に用いた場合の品質、有効性及び安全性が確認されたものではない、というものです。ある区分にあたらないことと、品質、有効性及び安全性が確認されていることとは、別の物差しです。
根拠:再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 事務連絡)A.1-1-08/エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)記2(法令確認日 2026-09-08)
次に読む
- 1-5 「再生医療等製品」
とは、 あるクリニックの事務長が、資料に「再生医療等製品」と「再生医療等」という似た言葉を見つけ、同じものか迷ったとします。どんな 製品? — 定義・ 11の 区分・承認の しくみ - 5-4 再生医療等
安全性確保法の あるクリニックの事務長が、再生医療等安全性確保法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律。以下「法」)を調べています。対象と 第1〜3種は、 どう 決まる? — 2025年の 条番号の 移動も - 5-1 エクソソーム
「試薬」は、 あるクリニックに、「試薬」と書かれたエクソソーム(細胞が外に出す小さな粒の一種)製品の案内が届いたとします。どんな ときに 指導の 対象? — 2024年7月の 事務連絡と 6類型 - 5-2 「研究用」と
書けば、 あるクリニックの事務長が、届いたカタログを見ています。薬機法の 医薬品に あたらない? — 表示だけでは 決まらない 理由
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項・第4項・第9項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(昭和36年政令第11号)第1条・第1条の2 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号/最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」 厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第2条第2項・第4項 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)附則第2条 衆議院 制定法律(2026-09-08 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)A.1-1-07・A.1-1-08・A.1-1-09・A.1-1-10・A.1-1-11・A.1-1-14・A.1-1-15 厚生労働省(2026-09-08 確認)
- エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)厚生労働省 法令等データベース(2026-09-08 確認)
- 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版・2024年4月30日/一般社団法人日本再生医療学会、協力:日本細胞外小胞学会)日本再生医療学会(2026-09-08 確認)
- エクソソームを含む細胞外小胞(EV)を利用した治療用製剤に関する報告書(2023年1月17日/PMDA科学委員会 専門部会)医薬品医療機器総合機構(2026-09-08 確認)
- 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ(第7回・2026年7月1日)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 令和7年度厚生労働科学特別研究「再生医療に関連した新技術領域に関するリスク評価および妥当性評価のための総合的研究」総括研究報告(第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会)厚生労働省(2026-09-08 確認)