30秒でわかる要点
- 「研究用」の表示だけでは決まらない:「研究用」と表示しても、それだけで薬機法の外に出るわけではありません。薬機法は医薬品を、成分ではなく物の「目的」で定めています(第2条第1項第2号・第3号)。表示は、その目的を外から判断するときの材料の一つです。
- 材料は5つ+「等」:口から飲む物について、国の通知(法律の運用のしかたを示す文書)が挙げる材料は5つです。成分本質(原材料)、形状、表示された使用目的・効能効果(効き目)・用法用量(使い方と量)、販売方法、販売の際の演述(売るときの説明)です。末尾に「等」を付け、これらを総合的に判断すべきものとしています。
- 表示を外しても解決しない:厚生労働省は2024年7月31日に事務連絡を出しています。その中で、エクソソーム(細胞が外に出す小さな粒の一種)の試薬について、試薬としての使用目的が明示されていないものなども、指導の対象に挙げています。表示を入れるか外すかではなく、製品と販売の全体が材料になります。
1. 「研究用」と表示すれば、薬機法の規制の外に出るのですか?
表示だけでは決まりません。薬機法は医薬品を物の「目的」で定め、国の通知(法律の運用のしかたを示す文書)は、その目的を製品と売り方の全体から見るとしています。
薬機法第2条第1項の第2号と第3号は、成分ではなく「目的とされている」ことを要件(条件)にしていて、表示はその目的を見るときの材料の一つです。
薬機法の第2条第1項は、医薬品を3つの号(条文の中の番号つきの項目)で定めています。成分の一覧で決めているのではありません。
- 第1号:「日本薬局方に収められている物」。日本薬局方は、国が定める医薬品の規格書です。載っているかどうか(収載の有無)で決まります。
- 第2号:「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」。病気の診断・治療・予防に使う目的の物です。
- 第3号:「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」。体のつくりや働きに影響を与える目的の物です。
なお、第2号と第3号からは、機械器具等(機械や器具、プログラムなど)や医薬部外品(医薬品よりも作用がおだやかな製品)などにあたる物が除かれています。
原文で確かめる(薬機法第2条第1項)
目的は、外から認定される
ところが、物の側に「目的」が書いてあるわけではありません。目的は外から認定されます。周りの事情から判断される、ということです。
その認定の材料を行政が文章にしたのが、国の通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙「医薬品の範囲に関する基準」です。無承認無許可医薬品とは、必要な承認や許可を受けずに作られたり売られたりしている医薬品のことです。承認は、製品ごとに国が審査して製造販売を認めること、許可は、製造や販売を仕事として行うために国や都道府県から受けるものです。
この通知は1971年6月に出され、2020年3月に最後の改正を受けています。このページでは「1971年の通知」と呼びます。
例
同じ成分の液体が、2通りに売られているとします。一方は細胞の実験に使う試薬として研究機関に、もう一方は病気の治療に使えるとうたって売られています。第2号と第3号は目的で医薬品を定めているので、成分が同じでも、2つが同じように見られるとは限りません。
2. 何が、判断の材料になるのですか?
成分本質(原材料)、形状、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、売るときの説明などです。1971年の通知は、総合的に判断すべきものとしています。
ただし、1971年の通知のこの基準は、自らの対象を、口から飲んだり食べたりする物と書いています。
1971年の通知の別紙の冒頭の本文(柱書(はしらがき)と呼びます)が、材料を名指ししています。次の5つで、並びの最後には「等」が付いています。
- 成分本質(原材料):何からできているか
- 形状(剤型、容器、包装、意匠等):錠剤や液体といった形、容器や包装、デザイン(意匠)
- その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量:何に使うか、どんな効き目か、どう使うか(量や回数)を、どう表示しているか
- 販売方法:どこで、だれに、どのように売るか
- 販売の際の演述:売るときに、口で説明すること(演述)
「研究用」の3文字は、このうち3番目の「表示された使用目的」に入ります。通知は、これらを「総合的に判断すべきもの」と書いています。どれか1つで判断する、という書き方はしていません。
直感的なポイント
5つの材料は、1つ通れば先へ進める関門の並びではありません。全体をひとつの絵として見るために並べた、材料の一覧です。「研究用」の表示は、その絵の一部分にあたります。
この基準が、自ら書いている対象と手順
柱書の言葉では、対象は「人が経口的に服用する物」です。
例
A社とB社が、どちらも口から飲む液体の製品を、容器に「研究用」と書いて売っているとします。A社は、研究機関にだけカタログを送っています。B社の営業担当は、医療機関を回り、病気の治療に使えると説明しています。表示だけを見れば、2社は同じです。けれども5つの材料のうち、販売方法と、売るときの説明が違います。A社の売り方も材料の1つで、それだけで結論が出る、とは通知は書いていません。
判定の手順も書かれています。まず、Ⅰ「医薬品の判定における各要素の解釈」に沿って原材料を分類し、効能効果・形状・用法用量が医薬品的かを検討します。判定は、そのうえでⅡの「判定方法」で行う、としています。
Ⅰには原材料・効能効果・形状・用法用量の4つの項(1から4)があり、販売方法と売るときの説明の項はありません。
原文で確かめる(1971年の通知の柱書)
人が経口的に服用する物が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項第2号又は第3号に規定する医薬品に該当するか否かは、医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断することとなる。通常人が同項第2号又は第3号に掲げる目的を有するものであると認識するかどうかは、その物の成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断すべきものである。
無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」柱書3. エクソソーム試薬について、行政は何を指導の対象にしているのですか?
厚生労働省の事務連絡が6つの類型(パターン)を挙げています。(6)は、試薬としての使用目的が明示されていないなど、治療等以外の目的だと明らかでないものです。
同じ事務連絡は、エクソソーム等と称する製品に、薬機法の承認を受けた医薬品は現時点で存在しないことに、留意するよう求めています。
この事務連絡は、2024年7月31日に、厚生労働省医薬局の監視指導・麻薬対策課が出したものです。題名は「エクソソーム試薬に係る監視指導について」です。
事務連絡は、宛先の自治体に「貴管下販売業者等に対する薬機法に基づく指導及び取締りの徹底」を求めています。受け持つ販売業者などへの指導と取締りを、きちんと行うように、という意味です。
宛先は、各都道府県・各保健所設置市(保健所を置く市)・各特別区(東京23区)の衛生主管部(局)です。
「エクソソーム試薬」とは
事務連絡が取り上げているのは、次のような製剤(使える形に仕上げた製品)を、医療機関向けに広告・販売する事例です。
- 中身:ヒトの幹細胞の培養上清液や、その上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞(細胞が外に出す小さな粒)などの、細胞の分泌物
- 名乗り方:病気の治療など(事務連絡の言葉では「治療等」)の目的に使うものではなく、「試薬」と称している
事務連絡は、これを「エクソソーム試薬」と呼び、指導の対象を6つの類型で挙げています。6類型の全体は、『5-1 エクソソーム「試薬」は、どんなときに指導の対象?』で扱います。ここでは、表示に直接かかわる類型(6)を見ます。
事務連絡は、エクソソーム試薬について「疾病の治療等に用いることを目的としていないことから、(中略)薬機法に基づく承認を受けておらず、疾病の治療等に用いた場合の品質、有効性及び安全性が確認されたものではありません」とも書いています。
類型(6)が挙げている2つのこと
- 治療等以外の目的で使う物だと、明らかでないもの:(6)は、試薬としての使用目的が明示されていない状態そのものを、その例に挙げています。
- 「試薬と称しながらも」、試薬の用途とは違う方法で売るもの:医療機関に、治療等の目的に使えると説明して売るもの。ネット上に、治療等の目的に使えるという使用者の口コミを載せているもの。この2つが挙がっています。
2つ目に挙がっている、説明して売る場面と口コミの場面は、どちらも製品の表示面ではなく、販売の場面で起きることです。
例
冒頭のクリニックの場面で考えます。カタログを送ってきた会社の営業担当が訪ねてきて、この製品は病気の治療に使える、と説明したとします。(6)が挙げる、医療機関に治療等の目的のために使用できると説明して売る場面と重なり、売った側が指導の対象になり得ます。
原文で確かめる(事務連絡の類型(6))
(6) 以上のほか、試薬としての使用目的が明示されていないなど、「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかでないものや、試薬と称しながらも次のように試薬の用途とは異なる方法で販売するもの
・ 医療機関に対し、疾病の治療等の目的のために使用できる旨説明して販売するもの
・ インターネットサイト等において、使用者の口コミとして、疾病の治療等の目的で使用できる旨の口コミを掲載しているもの
エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡)記1(6)6類型に当たらない場合と、エクソソーム以外の製品
記2(事務連絡の本文の2つ目の項目)は、6類型に該当する場合に限らず、指導を行うとしています。対象は、医薬品と誤認させる(間違えさせる)ものや、医薬品的効果効能を標ぼうし(うたい)、又は暗示する(ほのめかす)製品です。記2は、あわせて次の点を挙げています。
原文で確かめる(記2の留意点)
なお、現時点において、エクソソーム試薬を含め、エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しないことに留意すること。
同 記2記3は、この指導の方針が、エクソソーム等を称する製品に限られないことを書いています。「疾病の治療等に用いることを目的としていないにも関わらず、医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示する製品についても同様である」という記載です。
供給の場面で何が材料になるかは、『5-6 供給者の説明は、どこから「広告」になる?』で扱います。
4. 「研究用」表示の扱いを、行政が文章にした例はありますか?
あります。厚生労働省のガイドライン案です。検査キットが診断用の医薬品(体外診断用医薬品)にあたるかを、「研究用」等の表示の有無に関わらず判断するとしています。
案の段階の文書で、自ら書く対象は一般の消費者向けに売られる研究用の抗原検査キット(案の言葉では「研究用抗原定性検査キット」)です。
その文書は、「研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)」です。体外診断用医薬品とは、薬機法の定義では、もっぱら病気の診断に使う目的の医薬品のうち、人や動物の体に直接使わないものです。
案の「2.基本的な考え方」は、体外診断用医薬品にあたるかどうかを、「研究用」等の表示の有無に関わらず判断するものとする、と書いています。見るのは、製品の標ぼう事項(製品について示し、うたっている内容)や販売方法等です。
例
「研究用」と書かれた抗原検査キットが、一般の消費者向けにネットで売られているとします。案の2.によれば、見るのは表示だけではありません。容器や包装、店頭の広告、販売ページの記載などから、一般の消費者が体外診断用医薬品だと容易に認識できるかを、総合的に判断する必要がある、としています。
原文で確かめる(案の2.)
体外診断用医薬品の該当性については、「研究用」、「医療用」、「診断には使用できない」等の表示のみで判断するのではなく、製品の容器、包装における記載、店頭での広告、インターネット上での販売に係るウェブページ上の記載等の標ぼう事項により、一般の消費者が容易に体外診断用医薬品であると認識できるかどうかを総合的に判断する必要がある。なお、人の検体を用いて、感染症等の疾病の罹患に関係する病原体等を検出するとしているものについては、上述の製品の容器等の記載の標ぼう事項に関わらず、基本的には当該製品は体外診断用医薬品であると判断されるべきである。
以上を踏まえ、「研究用」等の表示の有無に関わらず、製品の標ぼう事項、販売方法等に基づき、以下の3.から5.までを踏まえ、体外診断用医薬品への該当性を判断するものとする。
研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)2.基本的な考え方1971年の通知と同じ考え方で見る
案の2.は、この考え方の出どころを1971年の通知に置いています。この通知は、口から飲む物について「医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断する」としています。通常人とは、ふつうの人のことです。案は「これと同様に」、人の体に直接使わない検出キットなども、同じ立て方で判断されるべきだとしています。
案の4.は、標ぼう事項に「製品の容器、包装等における記載だけでなく、チラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等における広告、宣伝や店頭での資材による説明及び口頭の演述も含まれる」と書いています。口での説明まで含めて見る、ということです。
案が自ら書いている対象
この案は、新型コロナウイルス感染症が広がった時期に、「研究用」等と称して売られた抗原検査キットを背景に作られました。案は、これを「研究用抗原定性検査キット」と呼んでいます。案の1.によれば、趣旨は、体外診断用医薬品にあたるかどうかの判断基準をはっきりさせることです。このキットが一般の消費者向けに売られている場合に、無承認無許可医薬品として取り締まるためだ、としています。
案の3.「本ガイドラインの対象について」は、対象を、一般の消費者向けに売られる研究用抗原定性検査キットとしています。
案の3.によれば、新型コロナウイルス感染症に限らず、インフルエンザや性感染症などの診断に使う製品、がんにかかるリスクを判定する製品も対象になるとされています。検体(調べるために体から採った物)も、人の体から得た物なら、唾液や尿など種類を問わないとされています。
研究機関等だけを相手にしたキットの扱い
案の5.は、明らかに研究機関等だけを対象にした研究用抗原定性検査キットを、このガイドラインの対象から外しています。研究機関等にだけ広告・販売しているものなどです。案は、その流通を妨げることは目的としておらず、明らかに体外診断用医薬品ではないとみなせるものとして除外する、と書いています。
一方で、研究機関等だけを相手にした広告や売り方だと、必ずしも言い切れないものもあります。案は、これについては4.の標ぼう事項などを踏まえて判断する必要がある、としています。
そのうえで、少なくとも次の1)から3)のどれかにあたる場合は「「研究用」等と称していることのみを理由に体外診断用医薬品に該当しないとは言えない」としています。
- 研究の目的に対する説明が妥当ではないもの
- 研究機関等ではなく、一般の消費者が使用することを暗示する表現を伴うもの
- 研究機関等のみを対象とした販売方法であるとみなすことができないもの
例
研究機関向けとされた抗原検査キットの販売ページに、家で手軽に調べられる、という一般の人向けの説明が添えられているとします。2)の、一般の消費者が使うことをほのめかす表現を伴うもの、にあたり得ます。そうであれば、案の書き方では、「研究用」と称していることだけを理由に、体外診断用医薬品に該当しないとは言えません。
細胞の分泌物を使う研究用試薬にも、この案は及ぶのか
この案が自ら書いている対象は、一般の消費者向けに販売される研究用抗原定性検査キットです。細胞の分泌物を用いる研究用試薬に、直接あてはまる文書ではありません。
案の6.は「本ガイドラインで示す考え方については、他の「研究用」等と称しながらも、疾病の診断、治療又は予防の目的で使用されると解される製品について、医療機器又は体外診断用医薬品への該当性を判断する際にも参考になるものと考えられる」と書いています。ほかの製品については「参考になる」というところまでで、案自身が及ぶ範囲をここまでと書いています。
また、この文書は、パブリックコメント(案を公表して意見を募る手続)にかけられた、案の段階のものです。成案(正式に定まったもの)が出されているかは、当サイトでは確認できていません。
5. 「研究用と書いてあれば医薬品ではない」という説明は、いまの資料と合っていますか?
合っていません。1971年の通知は表示を材料の一つに挙げ、事務連絡は、エクソソーム試薬について使用目的が明示されていないことを指導の対象にしています。
どちらの文書も、表示の記載だけで結論が出る、という書き方はしていません。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
容器に「研究用」と表示していれば、その製品は薬機法の医薬品には当たらない。表示さえ入っていれば足りる。
現行
昭和46年6月1日の通知は、表示された使用目的を、成分本質・形状・販売方法・販売の際の演述と並ぶ判断材料の一つとして挙げ、これらを「等」を付したうえで総合的に判断すべきものとする。令和6年7月31日の事務連絡は、「試薬としての使用目的が明示されていないなど、『治療等以外の目的で使用するもの』であることが明らかでないもの」と、試薬と称しながら試薬の用途とは異なる方法で販売するものを、いずれも指導の対象として挙げる。
根拠:無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」柱書/エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡)記1(6)。いずれも厚生労働省が公開する本文で確認(2026-09-08)。
表示を外せばよい、という話でもない
2024年の事務連絡は、表示を入れるか外すかではなく、製品と販売の全体がどう見えるかが材料になる、という書き方になっています。
例
冒頭のクリニックに届いたカタログで考えます。「研究用」と書いてあることだけでは、薬機法と関係ないとは言えません。
では、カタログから「研究用」の文字を消せばよいかというと、そうではありません。カタログに、試薬としての使用目的が書かれていないとします。事務連絡の類型(6)が挙げる状態として、問題になり得ます。一方で、使用目的を書き込めば済む、とも事務連絡は書いていません。
6. 医薬品と判断されたら、条文はどんな決まりを用意していますか?
承認を受けない製造販売は第14条第1項、承認を受けずに製造販売された医薬品の販売等は第55条第2項、承認前の広告は第68条です。罰則は第84条・第85条にあります。
いずれも、その製品が薬機法上の医薬品にあたると判断されることを前提にした規定です。
第14条第1項:製造販売の承認
医薬品の製造販売(作ったり輸入したりした製品を、市場に出すこと)をしようとする者は、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければなりません。ただし、厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品は除かれます。
原文で確かめる(第14条第1項)
第55条第2項:販売などの禁止
第55条第2項は、次の3つについて「前項と同様とする」と定めています。
- 認定又は登録を受けていない外国の製造所において製造された医薬品(国の認定や登録を受けていない、外国の工場などで作られた医薬品)
- 第13条第1項若しくは第8項等の規定に違反して製造された医薬品(製造業の許可などの決まりに違反して作られた医薬品)
- 第14条第1項若しくは第13項等の規定に違反して製造販売をされた医薬品(上で見た承認を受けずに市場に出された医薬品など)
同じ条の第1項の禁止は、「販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない」というものです。売ること、渡すこと(授与)、売ったり渡したりするために保管したり並べたりすることが禁じられ、この禁止が上の3つにも及びます。
なお、同じ条の第1項には「ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。」というただし書があります。厚生労働省令で別の定めをした場合は、その定めの範囲で、第1項の禁止が及ばない、という意味です。
第68条:承認前の広告の禁止
第68条は「何人も」、つまりだれであっても、と始まります。対象は、まだ承認や認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品(人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品など)です。その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない、と定めています。認証とは、国に登録された機関が、基準に合っているかを確かめて認めることです。
原文で確かめる(第68条)
例
A社が、容器に「研究用」と書いた製品を作り(または輸入し)、市場に出しているとします。B社はその製品を、ウェブサイトで病気の治療に使える製品として紹介し、販売していました。この製品が医薬品にあたると判断されれば、次の点がそれぞれ問題になり得ます。A社が承認を受けずに製造販売した点(第14条第1項)、B社がそれを販売した点(第55条第2項)、B社が承認前に効き目を広告した点(第68条)です。
罰則
- 第14条第1項・第55条第2項の違反:3年以下の拘禁刑(刑事施設に入れる刑)若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科(両方を科すこと)。罰則の条文は、順に第84条第3号と同条第18号です。
- 第68条の違反:2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はこれらの併科。罰則の条文は第85条第5号です。
理解の確認
薬機法第2条第1項の第1号と、第2号・第3号とでは、医薬品かどうかの決まり方がどう違いますか? そのため「研究用」の表示は、判断のどこに入りますか?
第1号は、日本薬局方に収められているかどうか(収載の有無)で決まります。第2号と第3号は、「目的とされている」ことを要件にしています。第2号は「使用されることが目的とされている物」、第3号は「影響を及ぼすことが目的とされている物」です。目的は物の側に書いてあるわけではないので、外から認定されます。その認定の材料を並べたのが、1971年6月1日の通知の、別紙の柱書です。柱書は、成分本質(原材料)、形状、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、販売の際の演述を挙げています。末尾に「等」を付け、総合的に判断すべきものとしています。したがって「研究用」の3文字は、3番目の材料の一部に入るもので、結論そのものではありません。
根拠:薬機法第2条第1項第1号〜第3号/無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」柱書(法令確認日 2026-09-08)
「『研究用』と書くから指導の対象になるのなら、表示を外せばよい」という考え方は、2024年7月31日の事務連絡のどこと食い違いますか?
類型(6)と食い違います。(6)は「試薬としての使用目的が明示されていないなど、『治療等以外の目的で使用するもの』であることが明らかでないもの」を対象に挙げています。そのため、表示を外すと、(6)が挙げる「試薬としての使用目的が明示されていない」状態に近づきます。さらに同じ類型の後半は、試薬と称しながら、医療機関に治療等の目的で使えると説明して売るものと、使用者の口コミを載せているものを挙げています。どちらも製品の表示面ではなく、販売の場面で起きることです。表示を入れるか外すかという軸では、答えが出ない作りになっています。
根拠:エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡)記1(6)(法令確認日 2026-09-08)
体外診断用医薬品のガイドライン案は、研究機関等だけを対象にした研究用抗原定性検査キットを、ガイドラインの対象から外しています。この除外は、細胞の分泌物を用いる研究用試薬にも、そのまま及びますか?
及びません。案の3.は、自らの対象を、一般の消費者向けに販売される研究用抗原定性検査キットと書いています。5.の除外は、その対象の内側での切り分けです。案の6.も、他の「研究用」等と称する製品については「参考になるものと考えられる」と書くにとどめ、案自身が及ぶ範囲をそこまでとしています。加えてこの文書は案の段階のもので、成案が出されているかは、当サイトでは確認できていません。
根拠:研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)3.、5.および6.(法令確認日 2026-09-08)
次に読む
- 5-1 エクソソーム
「試薬」は、 あるクリニックに、「試薬」と書かれたエクソソーム(細胞が外に出す小さな粒の一種)製品の案内が届いたとします。どんな ときに 指導の 対象? — 2024年7月の 事務連絡と 6類型 - 5-6 供給者の
説明は、 エクソソーム(細胞が外に出す小さな粒の一種)の試薬を卸す会社の営業担当が、院長から治療に使えるかと聞かれたとします。どこから 「広告」に なる? — 条文と 通知が 引く線 - 1-2 「医薬品」
とは、 健康食品の会社が、植物の粉末のカプセルを「食品」として売るとします。法律上どんな 物? — 定義の 3類型と、 食品が 医薬品と 判断される 仕組み - 3-1 健康食品が
医薬品と ハーブの粉末をカプセルに詰め、「1日3粒」と書いて売る。みなされるのは どんな とき? — 食薬区分の 4要素と 判断の順番
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項、第14条第1項、第55条、第68条、第84条、第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」 厚生労働省(2026-09-08 確認)
- エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡。厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課) 厚生労働省法令等データベースサービス(2026-09-08 確認)
- 研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)(厚生労働省。パブリックコメント資料) e-Gov パブリックコメント(2026-09-08 確認)