30秒でわかる要点
- 法律が定めているのは「検討すること」: 令和6年法律第51号 附則第2条第1項は、政府に施行後二年を目途とした検討と、その結果に基づく法制上の措置その他の必要な措置を求めています。対象とするとは書かれていません。改正法の施行日は2025年5月31日です。
- 検討事項の第一に挙がっている: 見直しワーキンググループ第7回(2026年7月1日)の資料3は、第一の項目に「エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清の法令上の取扱いについて」を掲げています。同じ資料には、表題に「(案)」が付いた当日の版(8項目)と、「(WG後追加)」と注記され「(案)」が外れた版(9項目)の2つが収められています。
- 「妥当」と書いたのは研究班であって行政ではない: 厚生労働科学特別研究の総括研究報告は、感染因子の不活化・除去工程を含まない細胞由来加工物について「法的対象とすることが妥当」と述べています。これは研究班の見解で、厚生労働省や審議会の決定ではありません。2026年9月12日の時点で、法律の改正も、対象とする旨の決定も行われていません。
1. 「検討する」と書いているのは、どの条文か?
再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)の附則第2条第1項です。
同項が政府に求めているのは、検討を加えることと、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずることです。
この規定は、改正法の本則ではなく附則に置かれています。条見出しは「検討」です。
条文が名指ししているのは、次のものを用いる先端的な医療技術です。
- 細胞の分泌物
- 人の精子と未受精の卵細胞との受精により生ずる胚に加工を施したもの
- その他の物
勘案するものとして挙がっているのは、当該医療技術に係る研究開発、当該医療技術を用いた医療の提供、諸外国における当該医療技術に係る規制の状況等の3つです。
述語は「検討を加え、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする」です。定められているのは、適用の在り方等について検討することです。対象とするとも、対象としないとも書かれていません。
同じ附則の第2項は、別の検討を定めている
附則第2条には第2項も置かれています。第1項とは、目途とする年数も、勘案する事項も異なります。
要点
「細胞の分泌物」を名指ししているのは第1項です。第2項は、改正後のそれぞれの法律の施行の状況等を勘案する一般的な見直しの規定で、こちらの目途は五年です。2つは別の規定です。
施行日そのものを定めているのは附則第1条です。「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」と書かれています。
改正法の施行日(令和7年5月31日)がどの文書に書かれているか、また細胞の分泌物を用いる医療が現在どの法律のどこに置かれているかは、培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに置かれているかで扱います。
2. 見直しワーキンググループとは、何をする場か?
再生医療等評価部会での議論を踏まえ、法に関連する今後の検討事項を、技術的・専門的な見地から議論する場です。
主催は医薬産業振興・医療情報審議官、庶務は医政局研究開発政策課で、原則として公開し、議事録を作成して公表すると開催要綱に書かれています。
正式名称は「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ」です。厚生労働省のページでは「医政局が実施する検討会等」の下に置かれています。
第7回では、資料1として開催要綱(令和8年6月改訂)と構成員名簿が配られています。開催要綱の「1.趣旨」は次のとおりです。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号。以下「法」という。)については、再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)附則第2条において、同法の施行後2年を目途として細胞の分泌物等の先端的な医療技術に対する法律の適用の在り方等について、また施行後5年を目途として施行の状況等を勘案し、法律の規定に検討を加えることとされている。これを踏まえ、厚生科学審議会再生医療等評価部会において、法に関連する今後の検討事項について議論を開始した。本ワーキンググループは、再生医療等評価部会での議論を踏まえ、法に関連する今後の検討事項について、技術的・専門的な見地から議論することを目的として開催する。
再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 開催要綱(令和8年6月改訂)「1.趣旨」(第7回 資料1)開催要綱の「2.検討事項」には、次の4つが並び、末尾に「等」が付いています。
- 細胞の分泌物の法令上の取扱い
- 再生医療等技術に関するリスク分類の見直し
- 認定再生医療等委員会の審査体制
- 研究以外で提供される再生医療等の妥当性の評価
「4.運営等」は、原則として公開するとともに議事録を作成し公表すること、医薬産業振興・医療情報審議官が主催し、その庶務は医政局研究開発政策課で行うことを定めています。
構成員は「3.構成員」が別紙に掲げる有識者により構成するとし、うち1人を座長として互選により選出するとしています。別紙の名簿には12名が50音順で掲げられています。
このワーキンググループが開かれてきた回次
第1回から第7回までの開催日と、厚生労働省の一覧ページに掲載されている議題を並べた表です。
| 回数 | 開催日 | 議題等(掲載されている表記) |
|---|---|---|
| 第1回 | 2020年4月22日(令和2年4月22日) | 1)再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループの座長選出について/2)再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループの検討事項等について |
| 第2回 | 2021年1月18日(令和3年1月18日) | 1)遺伝子治療(主にin vivo 遺伝子治療を想定)に対する法的枠組み/2)再生医療等技術のリスク分類・適用除外範囲 等 |
| 第3回 | 2021年6月2日(令和3年6月2日) | 1)遺伝子治療(主にin vivo 遺伝子治療を想定)に対する法的枠組み/2)再生医療等技術のリスク分類・適用除外範囲 等 |
| 第4回 | 2021年8月20日(令和3年8月20日) | 1)遺伝子治療(主にin vivo 遺伝子治療を想定)に対する法的枠組み/2)再生医療等技術のリスク分類・適用除外範囲/3)その他 |
| 第5回 | 2021年10月8日(令和3年10月8日) | ・再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループにおける検討結果のとりまとめ |
| (とりまとめ) | 2021年11月17日 掲載 | 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループとりまとめ |
| 第6回 | 2022年6月29日(令和4年6月29日) | ・in vivo 遺伝子治療に対する規制の検討(法の対象とする関連技術の範囲について) |
| 第7回 | 2026年7月1日(令和8年7月1日) | 1)再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループについて/2)再生医療等安全性確保法の施行状況等について/3)本ワーキンググループでの検討事項について(案) |
厚生労働省のワーキンググループ一覧ページの掲載内容(2026-09-12 確認)。一覧では議題が改行で並んでいるため、区切りを「/」で示しました。第7回については、一覧の議事録/議事要旨の欄に掲載がありません。
第1回から第6回までは2020年から2022年にかけて開かれ、2021年11月17日に「とりまとめ」が掲載されています。第6回の議題は in vivo 遺伝子治療に関するもので、細胞の分泌物は挙がっていません。
第7回は第6回から約4年後の開催です。議事次第には、令和8年7月1日(水)16時から17時まで、Web及び対面による会議と記載されています。
要点
検討会に提出された資料は、行政が処分や法令の解釈を示した文書ではありません。開催要綱が掲げているのは、このワーキンググループで議論する事項です。
3. 第7回の資料3には、何が並んでいるのか?
第一に「エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清の法令上の取扱いについて」が挙がっています。
資料3には2つの版が収められており、当日の版は表題に「(案)」が付いて8項目、WG後に追加された版は表題から「(案)」が外れて9項目です。
資料3は2部構成です。「1.本ワーキンググループ設置の経緯について」と「2.本ワーキンググループでの検討について」に分かれています。
設置の経緯の頁には、令和6年法律第51号 附則第2条の第1項と第2項が引用され、第113回再生医療等評価部会(令和8年1月15日)資料2(一部修正)と付記されています。資料3側の引用は、第1項の「(以下「新再生医療等安全性確保法」という。)」の括弧書きを省いています。
附則の引用に続けて、次の2つが挙げられています。
「細胞の分泌物」等を用いる先端的な医療技術について、再生医療等安全性確保法その他の法律の適用のあり方について早急に議論を深める必要性
改正法の施行状況等を勘案した更なる法改正について検討を開始する必要性
第7回 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料3「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」1.本ワーキンググループ設置の経緯について設置の経緯の頁には、同じ第113回再生医療等評価部会の資料2(一部修正)として「再生医療等安全性確保法に関連する今後の主な検討事項」も再掲されています。掲げられているのは次の5つです。I 法の適用範囲とリスク分類について、II 研究以外で実施されている再生医療等の提供の妥当性について、III 再生医療等に関する国民の理解の促進について、IV 再生医療等の提供の安全性の強化について、V 法の下での再生・細胞医療・遺伝子治療の実用化促進について。I の下に「細胞の分泌物(エクソソームを含む)の法令上の取扱い」が置かれています。
資料3が示す検討の進め方
資料3は、検討を次の順で進めると書いています。
研究・事業等で調査研究や検討を行う
厚生労働省科学研究や各事業等において、検討すべき課題について調査研究や検討を実施する、と記載されています。令和8年度現在のものとして、厚生労働科学研究 先端医療技術政策研究事業の2件(「再生医療等の安全性確保に係るリスク分類および妥当性に関する研究」「自由診療で実施されている再生医療の科学的根拠及び妥当性に関する研究」)と、厚生労働省委託事業 認定再生医療等委員会の審査の質向上事業「委員会審査に係る検討会」の計3件が挙げられています。
ワーキンググループで論点整理を行う
研究・事業等で浮き彫りとなった課題について、随時、本ワーキンググループで論点整理を実施し、今後の対応の方向性に関する報告書を作成する、と記載されています。
再生医療等評価部会で審議し、とりまとめる
見直しワーキンググループが作成した報告書について、再生医療等評価部会で審議し、とりまとめを実施する、と記載されています。図には「中間まとめ」と「フィードバック」も置かれ、実施回数や中間まとめ等の回数についてはイメージである旨が注記されています。
2つの版に並ぶ検討事項
資料3の末尾には、検討事項を並べた頁が2つあります。当日の頁は表題に「(案)」が付き、8つの項目が並びます。柱書は次のとおりです。
本ワーキンググループにおいては、下記の再生医療等安全性確保法に関する事項について、法見直しに向けた検討をしてはどうか。また、他に検討を進めるべき観点はないか、ご意見をいただきたい。
同資料3「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」の柱書もう1つの頁には「(WG後追加)」と注記があり、表題から「(案)」が外れています。項目は9つで、柱書の書き方も変わっています。
本ワーキンググループにおいては、再生医療等安全性確保法に関する下記事項について、法見直しに向けた検討を進める。
同資料3「本ワーキンググループでの検討事項について」(WG後追加)の柱書2つの版に並ぶ項目を、番号の順に突き合わせた表です。
| 番号 | 当日の版「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」 | WG後に追加された版「本ワーキンググループでの検討事項について」 |
|---|---|---|
| 1 | エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清の法令上の取扱いについて | エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清の法令上の取扱いについて |
| 2 | 再生医療等技術に係るリスク評価の考え方について | 再生医療等技術に係るリスク評価の考え方について |
| 3 | 自由診療として実施する再生医療等の在り方について | 自由診療として実施する再生医療等の在り方について |
| 4 | 再生医療等を提供する医師等の適正性の担保策について | 再生医療等の適切な判断に資する情報公開について |
| 5 | 認定再生医療等委員会における公正かつ適正な審査について | 再生医療等を提供する医師等の適正性の担保策について |
| 6 | 特定細胞加工物等製造施設の要件等について | 認定再生医療等委員会における公正かつ適正な審査について |
| 7 | 再生医療等の安全性確保のための行政機関の対応について | 特定細胞加工物等製造施設の要件等について |
| 8 | 再生・細胞医療・遺伝子治療の研究開発促進について | 再生医療等の安全性確保のための行政機関の対応について |
| 9 | (当日の版は8項目) | 再生・細胞医療・遺伝子治療の研究開発促進について |
第7回 資料3(令和8年7月1日)の記載。どちらの版も、一覧の末尾に「等」が付いています。追加された版では4番目に「再生医療等の適切な判断に資する情報公開について」が加わり、以降が1つずつ繰り下がっています。
要点
2つの版に並んでいるのは、このワーキンググループで検討する事項です。当日の版は「検討をしてはどうか」「ご意見をいただきたい」と書き、追加された版は「検討を進める」と書いています。いずれも、検討の結果として何が決まったかを述べたものではありません。
4. 研究班の報告書は、何と書いているのか?
研究班は、EV(細胞外小胞)及び培養上清について、再生医療等安全性確保法の対象として制度的に把握・監督する必要があると総括しました。
これは研究班の見解として報告されたものであり、厚生労働省や審議会の決定ではありません。
文書の名称は、令和7年度厚生労働行政推進調査事業補助金(厚生労働科学特別研究事業)「再生医療に関連した新技術領域に関するリスク評価および妥当性評価のための総合的研究」の総括研究報告です。研究代表者は岡田潔氏(日本再生医療学会 常務理事)です。
令和8年(2026年)5月28日に開かれた第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会に、資料1として提出されています。部会のページでの資料1の表示名は「令和7年度厚生労働科学特別研究事業『再生医療に関連した新技術領域に関するリスク評価および妥当性評価のための総合的研究』についての最終報告」で、PDF本体の表題は「総括研究報告」です。
報告の「1. 研究目的・方法」には、研究項目として次の4つが並んでいます。
- 細胞の分泌物を再生法の規制下とする場合の論点整理とリスク分類の考え方
- 再生法におけるリスク分類のためのリスク評価の具体的考え方の整理
- 自由診療で提供される再生医療等の妥当性に関する指標(案)の作成
- 特定核酸等を用いる医療における計画において記載を求める事項の整理
第1項目の表題は「規制下とする場合の」です。規制下とすることを前提とした書き方にはなっていません。
総括に書かれていること
EV(細胞外小胞)及び培養上清については、未承認・未検証のまま医療提供されるリスクや、培養上清をEVと称して投与する事例等を踏まえ、再生医療等安全性確保法の対象として制度的に把握・監督する必要があると考えられた。特に、感染因子の不活化・除去工程を含まない細胞由来加工物については、法的対象とすることが妥当とされた。
令和7年度厚生労働科学特別研究「再生医療に関連した新技術領域に関するリスク評価および妥当性評価のための総合的研究」総括研究報告「7. 総括研究としてのとりまとめ」細胞の分泌物を法の対象とする場合の論点整理とリスク分類の考え方について述語は「考えられた」「妥当とされた」です。研究班の検討の結果として書かれており、行政が講じた措置を述べたものではありません。
リスク分類については、感染性・一般毒性・製造管理等の共通リスクと、由来細胞差・体内分布・反復投与・遺伝子改変由来EV等のモダリティ固有リスクを組み合わせて評価する必要があるとしています。既存分類への位置付けに加え、新たなカテゴリー設定も含めた検討が必要とされた、と書かれています。
報告書の中の書き分け
報告書は、章ごとに見出しを変えて書き手を分けています。
- <有識者見解> 専門家ヒアリングの内容
- 研究班内における質疑・議論 班内の議論
- 7. 総括研究としてのとりまとめ 研究班としての総括
たとえば「再生医療等安全性確保法に対する5つの提言」は<有識者見解>の節に置かれています。その5番目は次のように書かれています。
エクソソーム等の生物・人由来で直接投与される製剤の適用範囲を安全性確保法内に拡大し、製造・品質管理のチェックを制度的に担保すべきと考える。
同報告「4. 現在の再生医療の取り組みと現状について <有識者見解> 再生医療等安全性確保法に対する5つの提言」5末尾は「と考える」です。提言として述べられたもので、制度がそうなったことを示すものではありません。
報告書には、研究班内の議論として「EV以外の培養上清などについても定義は困難であるが、培養プロセス基準の未整備といった課題があり、エクソソームだけに規制を限定するのは適切ではない」という記載もあります。
報告書は、日本再生医療学会が2021年に「エクソソーム等の調製・治療に対する考え方」をまとめ、PMDAが2023年に「EV治療用製剤に関する報告書」を公表し、2024年4月に同学会が「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」を公表したと記載しています。いずれも法令でも行政の通知でもありません。2024年7月に厚生労働省が出した文書については、令和6年7月31日 事務連絡 — エクソソーム試薬に係る監視指導の6類型で扱います。
5. いま決まっていること、決まっていないことは何か?
決まっているのは、政府が検討を加え、その結果に基づいて措置を講ずるという附則の定めです。対象とするかどうかも、その時期も決まっていません。
現行の取扱いを示しているのは、令和7年5月30日付けの厚生労働省医政局研究開発政策課の事務連絡です。
この論点には、性格の違う4つの文書が関わっています。誰が作った文書で、いま何を示しているかが、それぞれ異なります。
4つを、種別・作成者・示している内容で並べた表です。
| 文書 | 種別 | 出したのは誰か | 何を示しているか |
|---|---|---|---|
| 令和6年法律第51号 附則第2条第1項 | 法律 | 国会 | 政府に、施行後二年を目途とした検討と、その結果に基づく法制上の措置その他の必要な措置を求めている |
| 再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 事務連絡) | 事務連絡 | 厚生労働省医政局研究開発政策課 | 細胞を含まないことが明らかである場合の、現在の取扱い |
| 第7回ワーキンググループ 資料3(当日の版「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」と、WG後に追加された版) | 検討会の資料 | 厚生労働省(見直しワーキンググループ) | このワーキンググループで検討する事項 |
| 令和7年度厚生労働科学特別研究 総括研究報告 | 研究報告 | 研究班(研究代表者 岡田潔) | 研究班としての総括と、有識者の見解 |
4つのうち、法令として効力を持つのは1行目だけです。2行目は法令の解釈・運用を示す行政の文書、3行目と4行目は検討の過程で作られた資料です。
直感的なポイント
道路の拡幅に例えるなら、附則第2条第1項は「広げるかどうかを二年を目途に検討せよ」という指示書です。ワーキンググループの資料3は、その検討で扱う項目を並べた会議の配布物です。総括研究報告は、依頼を受けた専門家が調べてまとめた文書です。いずれも、工事を発注した書類ではありません。
2行目の事務連絡が、細胞を含まないことが明らかである場合の現行の取扱いとして何を書いているかは、培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに置かれているかで扱います。
同じ事務連絡の A.1-1-07 と A.1-1-08 は、いずれも末尾に上の附則の検討規定を記載しています。1つの答えの中に、現在の取扱いと、検討規定の存在の両方が書かれています。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
培養上清やエクソソームを用いる医療は、再生医療等安全性確保法の対象になることが決まった。2027年から規制が始まる。
現行
令和6年法律第51号 附則第2条第1項が定めているのは、政府が施行後二年を目途として適用の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずることである。ワーキンググループの資料3は検討事項を並べたものであり、総括研究報告は研究班の見解である。2026年9月12日の時点で、法律の改正も、対象とする旨の決定も行われていない。
根拠:令和6年法律第51号 附則第2条第1項(衆議院 制定法律)/令和7年5月30日 事務連絡 A.1-1-07・A.1-1-08/第7回 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料1・資料3(厚生労働省)。2026-09-12 確認。
6. いまの法律は、どこまでを対象と書いているのか?
第2条第2項が、再生医療等技術として「細胞加工物を用いる医療技術」と「核酸等を用いる医療技術」の2つを掲げています。
掲げられたもののうち、政令で定めるものが再生医療等技術になるという構造です。
号として掲げられているのは、第一号と第二号の2つです。
- 第一号 細胞加工物を用いる医療技術
- 第二号 核酸等を用いる医療技術
「細胞加工物」と「核酸等」は、いずれも同条の中に定義が置かれています。条文は本ページの8節(用語の欄)に引いています。
第2項の柱書は「次に掲げるもののうち、その安全性の確保等に関する措置その他のこの法律で定める措置を講ずることが必要なものとして政令で定めるもの」です。法律が号として掲げた範囲の中から、さらに政令が定めたものが再生医療等技術になります。
つまり、対象の範囲を確かめるには、法律の号と政令の両方を見ることになります。
第二号は、2025年に加わったもの
第二号の「核酸等を用いる医療技術」は、令和6年法律第51号によって加えられ、令和7年5月31日に施行されました。
同じ改正で、第一種・第二種・第三種の定義を置く項の番号も動いています。この条番号の動きは再生医療等安全性確保法の射程 — 第1〜3種と2025年の条番号繰下げで扱います。
2025年に対象が広がったときに動いたのは、第2条の条文そのものでした。附則第2条第1項が、検討の結果に基づいて講ずるものとして挙げているのは「法制上の措置その他の必要な措置」です。
7. この先の検討は、どこで追いかけられるのか?
厚生労働省のワーキンググループのページと、厚生科学審議会再生医療等評価部会のページに、回次ごとの開催日・議題・資料が掲載されます。
法律そのものの現在の条文は、e-Gov 法令検索で確認できます。
確かめる先は4つあります。順に見ていきます。
ワーキンググループのページで回次を見る
「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ」の一覧に、回数・開催日・議題等・議事録/議事要旨・資料等・開催案内が並びます。開催のたびに行が増え、議事録は資料より遅れて掲載されることがあります。2026年9月12日の時点で、第7回の行の議事録/議事要旨の欄は空のままです。
審議会の部会に何が提出されたかを見る
厚生科学審議会再生医療等評価部会には、第117回(令和8年5月28日)のように研究報告が提出されます。部会のページには議事次第・委員名簿と資料の一覧が掲載されます。文書の表題(報告か、資料か、とりまとめか)と、誰が作った文書かを、そこで確かめます。部会のページ上の表示名と、PDF本体の表題が一致しないことがあります。
法律の条文が動いたかどうかを見る
再生医療等安全性確保法の現在の条文は e-Gov 法令検索にあります。第2条第2項に掲げられている号と、同条の各項の内容が、対象の範囲を示しています。
現行の運用上の取扱いを示す文書を見る
運用上の取扱いは、事務連絡のQ&Aの形で示されることがあります。現在のものは令和7年5月30日付けの事務連絡で、同日付けで令和7年2月18日付けの統合版が廃止されています。
本ページが確認した日は2026年9月12日、確認したワーキンググループの回次は第7回(2026年7月1日)です。第8回以降が開かれた場合、本ページの記載より新しい資料があります。
一次資料に自分で辿り着く手順は法令・通知の読み方 — 一次資料へ自分で辿り着くで扱います。施行日ごとに条文が変わる仕組みと版の見方は改正の時間軸 — 施行日別に変わった条文を追うで扱います。
要点
文書の表題に付く「(案)」「とりまとめ」「報告」は、その文書がどの段階のものかを示します。法令として効力を持つのは、公布・施行された法律・政令・省令です。
8. 用語は、どの条文のどこに定義があるのか?
「細胞加工物」と「核酸等」は、再生医療等安全性確保法 第2条の第4項と第5項に、それぞれ定義が置かれています。
「再生医療等技術」の定義は同条第2項で、掲げられた2つの医療技術のうち政令で定めるものを指します。
本ページで使った語のうち、法律に定義が置かれているものを並べた表です。いずれも再生医療等安全性確保法 第2条の中にあります。
| 語 | 定義の場所 | 条文に書かれている内容 |
|---|---|---|
| 再生医療等技術 | 再生医療等安全性確保法 第2条第2項 | 同項が掲げる第一号(細胞加工物を用いる医療技術)と第二号(核酸等を用いる医療技術)のうち、政令で定めるもの |
| 細胞加工物 | 同法 第2条第4項 | 「人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したものをいい」 |
| 核酸等 | 同法 第2条第5項 | 「人の体内で当該人の細胞に導入される核酸並びに核酸及びその他の遺伝子の発現と密接な関係を有する物を加工するための機能を有する物(これらを含有する物を含む。)」 |
再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第2条の記載(法令確認日 2026-09-12)。第2項の条文(各号は抜粋)は、本ページの6節に掲げています。
なお「細胞の分泌物」は、令和6年法律第51号 附則第2条第1項が先端的な医療技術に用いられる物として名指ししている語です。本ページはこの語を、同項の書きぶりのまま使っています。
理解の確認
「細胞の分泌物を用いる医療技術は再生医療等安全性確保法の対象になることが決まった」という説明は、令和6年法律第51号 附則第2条第1項のどこと食い違いますか。
同項の述語は「検討を加え、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする」です。政府に求められているのは、適用の在り方等について検討を加えることと、その結果に基づいて措置を講ずることであって、対象とすることではありません。同項は勘案する事項として、研究開発、当該医療技術を用いた医療の提供、諸外国における規制の状況等を挙げていますが、検討の結論をあらかじめ書いてはいません。「二年」は結論が出る期限ではなく、検討の目途として置かれた期間です。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)附則第2条第1項(法令確認日 2026-09-12)
第7回ワーキンググループの資料3と、厚生労働科学特別研究の総括研究報告は、どちらもエクソソーム・培養上清を扱っています。この2つは、誰が作った何という文書として区別されますか。
資料3は、厚生労働省の検討会である見直しワーキンググループの第7回(令和8年7月1日)に配られた資料です。表題は「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」です。同じPDFには「(WG後追加)」と注記され表題から「(案)」が外れた版も収められており、当日の版は8項目、追加された版は9項目です。どちらも第一の項目は「エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清の法令上の取扱いについて」で、並んでいるのは検討する事項です。一方の総括研究報告は、厚生労働科学特別研究事業の研究班(研究代表者 岡田潔)がまとめた報告で、第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会(令和8年5月28日)に資料1として提出されました。総括の述語は「考えられた」「妥当とされた」で、研究班の検討の結果として書かれています。どちらも、行政が処分や法令の解釈を示した文書ではありません。
第7回 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料3/令和7年度厚生労働科学特別研究 総括研究報告(第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会 令和8年5月28日)(2026-09-12 確認)
再生医療等安全性確保法が対象とする医療技術の範囲は、法律の条文だけを見れば確かめられますか。第2条第2項の柱書はどう書いていますか。
柱書は「次に掲げるもののうち、その安全性の確保等に関する措置その他のこの法律で定める措置を講ずることが必要なものとして政令で定めるものをいう」としています。法律が号として掲げた範囲の中から、さらに政令が定めたものが再生医療等技術になります。号として掲げられているのは、第一号の細胞加工物を用いる医療技術と、第二号の核酸等を用いる医療技術の2つです。したがって範囲を確かめるには、法律の号と政令の両方を見ることになります。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第2条第2項(法令確認日 2026-09-12)
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- 5-9 エクソソーム・培養上清液の投与に、提供計画は要るのか?義務の名宛人と、範囲を決める条文 「この投与に再生医療等提供計画は要るのか」という問いは、エクソソームや培養上清液が話題になるたびに出てきます。
- 5-4 再生医療等安全性確保法の射程 — 第1〜3種と2025年の条番号繰下げ 再生医療等安全性確保法の第1種から第3種までの定義は、2025年5月31日から法第2条第7項・第8項・第9項に置かれています。
- 5-3 培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに置かれているか 答えは二つの法律にまたがります。
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)附則第1条・第2条 衆議院 制定法律(2026-09-12 確認)
- 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ(厚生労働省。第1回から第7回までの開催日・議題等の一覧)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 第7回 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料1「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ開催要綱」(令和8年6月改訂)・構成員名簿 厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 第7回 同ワーキンググループ 資料3「本ワーキンググループでの検討事項について(案)」および同「本ワーキンググループでの検討事項について」(WG後追加)(令和8年7月1日)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 第7回 同ワーキンググループ 資料0-1 議事次第(令和8年7月1日)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会 資料一覧(令和8年5月28日)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 令和7年度厚生労働行政推進調査事業補助金(厚生労働科学特別研究事業)「再生医療に関連した新技術領域に関するリスク評価および妥当性評価のための総合的研究」総括研究報告(研究代表者 岡田潔。第117回厚生科学審議会再生医療等評価部会 資料1)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第2条 e-Gov 法令検索(2026-09-12 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)A.1-1-07・A.1-1-08 厚生労働省(2026-09-12 確認)