30秒でわかる要点
- 提出の義務を負うのは、医療機関の管理者:提供計画の提出を求めるのは再生医療等安全性確保法第4条第1項です。名宛人(その条文で義務の対象になる人)は、病院又は診療所の管理者(病院や診療所の管理の責任者)です。第13条の確認義務(提出された計画に載っている再生医療等であることなどを確かめる義務)の名宛人は、医師又は歯科医師です。物を供給する側は、どちらの条文の名宛人でもありません。
- 罰則も、医療機関側の義務に付いている:提出を欠いたまま提供した場合、第62条第1号が50万円以下の罰金を定めています。第一種再生医療等(この法律が再生医療等を3つに分けた区分の1つ)については、第60条第1項第1号が別に定めています。1年以下の拘禁刑(刑務所などの刑事施設に入れる刑)又は100万円以下の罰金です。従業者などが業務に関して違反したときは、第64条(両罰規定)が、事業主である法人や個人にも、それぞれの条の罰金刑を科すとしています。いずれも条文が定める上限です。
- 呼び名では決まらず、行政の記載には条件が付いている:要るかどうかの分かれ目は、再生医療等安全性確保法第2条と施行令(法律の細部を定める政令)第1条の定めに当たるかどうかです。行政の記載は、厚生労働省の事務連絡(2025年5月30日)の別紙にあります。事務連絡は、役所が運用上の注意などを担当者あてに伝える文書です。別紙の A.1-1-07(エクソソーム)と A.1-1-08(培養上清・セクレトーム)は、どちらも条件付きで同法の対象外としています。条件は、細胞を含まない(含まれない)ことが明らかである場合で、確かめ方は書かれていません。この事務連絡は、薬機法や医療法の扱いを決めたものでもありません。
1. 提供計画を出す義務は、誰にあるのですか?
再生医療等を提供しようとする病院又は診療所の管理者(病院や診療所の管理の責任者)です。再生医療等安全性確保法第4条第1項が、この管理者に提出を求めています。
物を供給する側は、この条文の名宛人(その条文で義務の対象になる人)ではありません。
再生医療等提供計画(この記事では「提供計画」と呼びます)は、再生医療等を提供する前に、あらかじめ厚生労働大臣に出す計画です。どこまでが「再生医療等」に入るかは、3.の節で説明します。
この記事では、再生医療等安全性確保法を「法」とも呼びます。下の条文カードでは、書き出しにある病院又は診療所の「管理者」が名宛人です。提出するのは、医療を提供する側です。
条文の括弧書き(補足):この条文には、括弧書きが2つ付いています。どちらも、名宛人の範囲を、医療を提供する側の内側で広げるためのものです。
- 「病院又は診療所」の側 医療法第5条第1項に規定する医師又は歯科医師の住所を含めます。
- 「管理者」の側 同項に規定する医師又は歯科医師を含めます。
医師・歯科医師には、第13条が向いている
同じ法律の第13条は、医師又は歯科医師に向けた条文です。再生医療等を行おうとするときに、確かめることを求めています。
確かめるのは、その再生医療等が、提出された提供計画に記載された再生医療等であることなどです。ここでいう計画は、第4条第1項又は第5条第1項(変更後の提供計画の提出)の規定により提出されたものです。
役割を分けると、計画を出すのが病院又は診療所の管理者です。出された計画に載っているかを確かめるのが、医師又は歯科医師です。
例
冒頭の場面で考えます。あるクリニックの事務長が、取引先のA社の営業担当に「この投与に再生医療等提供計画は要るのか」と尋ねたとします。
条文から言えるのは、提出が必要な場合に義務を負うのは、そのクリニックの管理者だということです。A社は、第4条第1項の名宛人ではありません。ただし、物を供給する側にかかる薬機法の決まりは別にあります(「供給者はどこまで言えるか」と5.の節で扱います)。要るかどうかの分かれ目は、3.の節で見る定義のつながりにあります。
計画に記載する第1号から第8号までの事項と提出先は、「医療機関側のルール(提供計画と広告)」で扱います。第4条第2項が定める、認定再生医療等委員会(国の認定を受けて、提供計画について意見を述べる委員会)の意見を聴く手続も同じページにあります。
2. 提出しないまま提供したら、どんな罰則があるのですか?
第62条第1号が50万円以下の罰金を定めています。第一種再生医療等については、第60条第1項第1号が1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金を定めています。
第64条は、法人の従業者等が業務に関してこれらの違反をしたとき、法人又は人(事業主である法人や個人)にも各本条の罰金刑(各条が定める罰金刑)を科すとしています。
第4条第1項に違反して再生医療等を提供した場合の罰則は、法の第六章(罰則)に置かれています。
第一種再生医療等は、法が再生医療等を第一種から第三種までに分けたうちの1つです。区分の中身は、「再生医療等安全性確保法の対象と区分」で扱います。拘禁刑は、刑務所などの刑事施設に入れる刑です。
対象になるのは、計画を出さずに提供したときだけではありません。書くべき事項を書かずに出したり、うその内容を書いて出したり(虚偽の記載)して、提供したときも含まれます。
第62条第1号は、末尾の括弧書きで、第60条第1項第1号に当たる場合をこの号から除いています。2つの条が同じ違反を重ねて捉えないようにした書き分けです。
原文で確かめる(第60条第1項第1号・第62条第1号)
例
あるクリニックで、提供計画を出さないまま再生医療等を提供したとします。第一種再生医療等に当たれば、第60条第1項第1号の対象になり得ます。当たらなければ、第62条第1号の対象になり得ます。
その違反が、クリニックを運営する法人の従業者などによって、法人の業務に関して行われたとします。その場合は、下で見る第64条により、法人も罰金刑の対象になり得ます。
同じ形の罰則は、ほかの義務にも置かれています。
- 第5条第1項(変更後の提供計画の提出) 第60条第1項第2号と第62条第2号
- 第13条の確認をしないで再生医療等を行った場合 第60条第1項第5号と第62条第3号
法人にも罰金刑を科す規定(第64条)
第64条は、いわゆる両罰規定です。両罰規定とは、違反した本人だけでなく、その人が業務をしていた法人なども罰する決まりです。
条文が対象にしているのは、法人の代表者や、法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者です。これらの人が、その法人又は人の業務に関して違反行為をしたときに働きます。
対象の違反行為は、第59条、第60条第1項、第61条から第63条までのものです。
ここに挙げた金額と刑は、いずれも条文が定める上限です。
3. 義務がどこまで及ぶかは、どの条文で決まるのですか?
第4条第1項の「再生医療等」の意味は第2条第1項にあります。そこから第2項の「再生医療等技術」、施行令(法律の細部を定める政令)第1条へと続きます。
第2条第1項は、薬機法第80条の2第2項の治験(医薬品などとして国に認めてもらうためのデータを集める臨床試験)に該当するものを、再生医療等から除いています。
第4条第1項は「再生医療等」という言葉を使っているだけで、その中身は書いていません。中身は、別の条文から政令へと順にたどって確かめます。たどる順番は、次のとおりです。
- 法第4条第1項 「再生医療等」の定義は、法第2条第1項にあります。
- 法第2条第1項 「再生医療等」を、再生医療等技術を用いて行われる医療と定めています。次に見るのは「再生医療等技術」です。
- 法第2条第2項 「再生医療等技術」を定め、最後は「政令で定めるもの」として政令に任せています。
- 施行令第1条 その政令です。ここで範囲が絞られます。
直感的なポイント
辞書を引いたら「別の見出し語を見よ」と飛ばされ、その先でまた飛ばされ、最後にようやく範囲が書いてある、という形です。どこか一つの条文だけを読んでも、範囲は出てきません。
例
投与に使う物が「エクソソーム」と呼ばれていても「培養上清液」と呼ばれていても、呼び名では、提供計画が要るかどうかは決まりません。
分かれ目は、次の2つがそろうかどうかです。1つ目は、その医療技術が第2条第2項第1号(細胞加工物を用いる医療技術)又は第2号(核酸等を用いる医療技術)に当たることです。2つ目は、施行令第1条が定めるものに当たることです。
出発点の定義(法第2条第1項)
括弧書きが、治験に該当するものを、この法律でいう再生医療等から除いています。
厚生労働省の施行通知(2025年5月)も、同じことを書いています。施行通知は、法・施行令・施行規則等の取扱いを示した通知です。施行規則は、法律と施行令を受けて、厚生労働省が定める細かい決まり(省令)です。通知は、国の役所が法律の運用のしかたを自治体などに示す文書です。
原文で確かめる(施行通知)
なお、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第 80 条の2第2項に規定する治験に該当するものは法の対象外となる。
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」等の取扱いについて(令和7年5月15日 医政研発0515第18号)Ⅰ(1)法第2条第1項関係次にたどる先は「再生医療等技術」(法第2条第2項)
法第2条第2項は、まず目的で医療技術を絞っています。人の体のつくりや働きを再建・修復・形成すること、又は人の病気の治療や予防に使うことを目的とした医療技術です(原文は表2)。
そのうえで、「次に掲げるもののうち(中略)政令で定めるもの」をいう、としています。
掲げられている2つは、上の例で見た第1号・第2号です。第1号の細胞加工物については、法第2条第4項が、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したものと定めています。柱書(条文の冒頭部分)の全文は、「培養上清液・セクレトームの法的位置」に掲げてあります。
政令は、範囲をどう絞っているか(施行令第1条)
その政令が、再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令(平成26年政令第278号)の第1条です。第1号と第2号の2つに分かれ、どちらも、対象から除く医療技術を挙げています。
施行通知Ⅱ(1)は、第1号のイからニまでの4つと、第2号のイ・ロの2つを掲げています。見出しは「法の対象とならない医療技術として政令で列挙するもの」です。
- 第1号 法第2条第2項第1号に掲げる医療技術のうち、イからニまでに掲げる医療技術以外の医療技術です。
- 第2号 法第2条第2項第2号に掲げる医療技術のうち、人の体内で当該人の細胞(中略)に別表に掲げる物を導入する医療技術であって、イ及びロに掲げる医療技術以外のものです。
核酸等の側は、物そのものが別表で絞られている
施行令の別表(第1条第2号関係)は、4つの号からなります。第4号は「前三号に掲げる物を含有する物(細胞の分泌物を除く。)」です。この号は、括弧書きで細胞の分泌物を名指しし、除いています。
同じ括弧書きは、再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号)の第2条第5号ニにも置かれています。
核酸等の定義、別表の全文、施行令第1条が列挙する6項目の内容は、「再生医療等安全性確保法の対象と区分」にあります。
4. エクソソームと培養上清液の記載は、どこにあるのですか?
厚生労働省医政局研究開発政策課の事務連絡(2025年5月30日)の別紙にあります。別紙の表題には「(令和7年5月30日版)」と版の日付が入っています。
別紙の A.1-1-07・A.1-1-08 は条件付きで法の対象外としていて、条件に当たるかの確かめ方は書いていません。
事務連絡は、役所が運用上の注意などを担当者あてに伝える文書です。この事務連絡の宛先は、各都道府県、保健所設置市、特別区の衛生主管部(局)です。衛生主管部(局)は、衛生行政を担当する部署です。
題名は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて」です。事務連絡のため、文書番号は付いていません。
本文は、法、施行令及び施行規則に関するQ&Aを別紙のとおりとする、と書いています。
本文は、関係団体等にも別途周知を行っている旨を記しています。挙げられているのは、公益社団法人日本医師会、公益社団法人日本歯科医師会、認定再生医療等委員会設置者、特定細胞加工物製造事業者その他の関係団体等です。
いつから使われ、どの版を廃止したか
この事務連絡は2025年5月31日から適用され、同じ日付で、2025年2月18日付けの統合版を廃止しています。2025年5月31日は、改正法の施行の日です。改正法は、2024年に再生医療等安全性確保法を改正した法律です(8.の節で説明します)。施行とは、法律の決まりが効力を持ち始めることです。
別紙の表題は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&A(令和7年5月30日版)」です。
原文で確かめる(事務連絡の本文)
日付を原文の和暦で書くと、事務連絡は令和7年5月30日、適用は令和7年5月31日、廃止された統合版は令和7年2月18日付けです。
なお、本事務連絡は改正法の施行の日(令和7年5月 31 日)から適用することとし、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関する Q&A(統合版)について」(令和7年2月 18 日付け医政局研究開発政策課事務連絡)については同日付けで廃止します。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)本文別紙のどこに書かれているか
別紙は「1.再生医療等技術に関する項目」から始まります。その最初の節が「1-1.再生医療等技術の範囲・該当性について」です。この節には、A.1-1-01 から A.1-1-18 までの18項目が並びます。
最初の A.1-1-01 は、法の対象となる再生医療等技術の範囲を問う項目です。書かれているのは、「「細胞加工物を用いる医療技術」及び「核酸等を用いる医療技術」が法の対象である」の一文です。
エクソソームと培養上清液は、その後ろに別々の項目として置かれています。
- A.1-1-07(エクソソーム) 「細胞を含まないことが明らかである場合には、法の対象外である」と書いています。
- A.1-1-08(培養上清・セクレトーム) 「細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である」と書いています。セクレトームは、この項目によれば、細胞から細胞外に分泌されるタンパク質全般を指す呼び名です。
どちらも、条件を付けた書き方です。語形は異なりますが、同趣旨の条件です。そして、この条件が満たされているかをどのように確かめるかは、どちらの項目にも記載がありません。
例
冒頭の事務長が、ある資料で「エクソソームを用いる医療技術は法の対象にならない」という説明を読んだとします。これは、A.1-1-07 から条件を落とした言い方です。
A.1-1-07 は、細胞を含まないことが明らかである場合、という条件を付けています。条件を落とすと、記載が置いていない範囲まで広がって読めてしまいます。
2つの項目の全文と、同じ節のほかの項目との書き分けは、「培養上清液・セクレトームの法的位置」にあります。
行政のQ&Aは、版が替わると前の版が廃止されることがあります。どの版が現行かの確かめ方は、「行政Q&Aの索引」にあります。
5. その記載は、品質やほかの法律の扱いまで決めているのですか?
決めていません。この事務連絡が扱うと書いているのは法、施行令及び施行規則で、薬機法や医療法の取扱いは書かれていません。
品質、有効性及び安全性については、2024年7月31日に別の事務連絡が2本出ています。
品質・有効性・安全性は、別の文書が扱っている
2本とも厚生労働省の事務連絡で、出した課と宛先が違います。
- 医政局研究開発政策課から、再生医療等提供機関(再生医療等を提供する医療機関)の管理者あて 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等について書いています。諸外国を含め、有効性・安全性が示され薬事承認を得て製造販売されている医薬品は、現時点(事務連絡が出た2024年7月31日の時点)でない、という内容です。薬事承認は、製品ごとに国が審査して、製造販売(製品を市場に出すこと)を認めることです。
- 医薬局監視指導・麻薬対策課から、都道府県等の衛生主管部(局)あて エクソソーム試薬について書いています。薬機法に基づく承認を受けておらず、疾病の治療等に用いた場合の品質、有効性及び安全性が確認されたものではない、としています。
2本の日付は、和暦ではどちらも令和6年7月31日です。記載内容は、「エクソソーム試薬の監視指導」と「培養上清液・セクレトームの法的位置」で扱います。
法律ごとに、条文が名宛人を置いている
次の表は、この記事に出てくる3つの条文について、それぞれ誰を名宛人に置いているかを並べたものです。「何人も」は、誰であっても、という意味の言葉です。薬機法第66条第1項と医療法第6条の5第1項は、どちらも広告などについての条文です。
| 条文 | 条文が |
|---|---|
| 再生医療等 | 再生医療等を |
| 薬機法 第66条第1項 | 何人も |
| 医療法 第6条の5第1項 | 何人も |
「何人も」の範囲は「規制されるのは誰か」で扱います。医療法の広告規制(第6条の5から第6条の8まで)の作りは「医療広告はなぜ限定列挙か」で扱います。
ある法律の適用範囲に入らないことは、別の法律の条文が置いている名宛人から外れることではありません。
例
A.1-1-07 の条件に当たり、再生医療等安全性確保法の対象外とされる場面を考えます。
その場合でも、薬機法第66条第1項や医療法第6条の5第1項の名宛人から外れるわけではありません。表1のとおり、この2つの条文は名宛人を「何人も」としています。
6. 提供する側とつくる側では、入口がどう違うのですか?
提供する側の入口は第4条第1項の提供計画、つくる側は第35条第1項の許可(施設ごとに国から受けるもの)又は第40条第1項の届出(行政に知らせる手続)です。
どちらの入口に立つかも、法第2条が置く定義に当たるかどうかで決まります。
この法律には、2つの仕組みがあります。医療を提供する側の手続と、特定細胞加工物等(定義は下で見ます)をつくる側の手続です。ここでいう入口は、それぞれの仕組みで最初に踏む手続です。法第1条は、目的を書いた規定の中で、この2つを並べています。
- 前半 「再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置を明らかにする」ことです。その入口が、第4条第1項の提供計画です。
- 後半 「特定細胞加工物等の製造の許可等の制度を定める」ことです。その入口は、法の第4章に置かれています。
原文で確かめる(第1条)
つくる側の入口は、許可・届出・認定に分かれる
- 許可 第35条第1項は、特定細胞加工物等の製造をしようとする者に、厚生労働大臣の許可を求めています。許可は、特定細胞加工物等製造施設ごとです。第40条第1項の規定に該当する者は除かれます。
- 届出 病院若しくは診療所に設置される施設など、第40条第1項に掲げる施設は、許可ではなく届出です。届出は、決められた事項を行政に知らせる手続で、審査して認めるものではありません。
- 認定 外国で、日本(本邦)で行われる再生医療等に用いられる特定細胞加工物等の製造をしようとする者については、第39条第1項が認定の規定を置いています。
第12条は、再生医療等提供機関の管理者が特定細胞加工物等の製造を委託しようとするときは、特定細胞加工物等製造事業者に委託しなければならない、としています。
つくる側の入口も、同じ定義に戻る
つくる側の手続の対象は「特定細胞加工物等」です。第2条第6項は、これを特定細胞加工物及び特定核酸等をいう、と定めています。
そのうち「特定細胞加工物」を、第2条第4項は「再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品であるもの以外のもの」と定義しています。再生医療等製品は、人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。
定義に「再生医療等に用いられる」という言葉が入っています。そのため、つくる側の入口も、第2条第1項と第2項の定義に戻ります。
例
あるクリニックが、院内に設けた施設で特定細胞加工物等をつくり、自院の再生医療等に用いる場面を考えます。
提供する側としては、第4条第1項の提供計画が問題になり得ます。つくる側としては、第40条第1項の届出が問題になり得ます。どちらも、まず第2条の定義に当たるかどうかが前提です。
許可・認定・届出の区別と、委託先となる者の範囲は、「再生医療等安全性確保法の対象と区分」で扱います。
7. 記載が変わっていないかは、どこで確かめるのですか?
後から出た文書の本文で確かめます。前の文書を廃止したことと、いつから適用するかが、そこに書かれています。2025年5月30日の事務連絡にも、その記載があります。
法令の側は、法律・施行令・施行規則の3段階の決まりを、同じ時点の版でそろえて見ます。
この記事に出てくる2つの文書では、次のとおりです。
- 厚生労働省の事務連絡(2025年5月30日) 前の版のQ&A(統合版)を廃止すると書いています(詳しくは4.の節)。
- 厚生労働省の施行通知(2025年5月15日) 2014年10月31日付けの通知を、同じ日付で廃止すると書いています。
日付と番号を原文の表記で確かめる
施行通知は、令和7年5月15日付けの医政研発0515第18号です。廃止された通知は、平成26年10月31日付けの医政研発1031第1号です。
例
手元に、2025年2月18日付けの統合版のQ&Aがあるとします。この統合版は、2025年5月30日の事務連絡の本文で、2025年5月31日付けで廃止されています。
同じように、2025年5月30日の事務連絡より後に出た文書がないか、その本文に廃止の記載がないかを確かめます。
法令は、3段階の決まりを同じ時点の版でそろえる
e-Gov 法令検索(国の法令データベース)が現行として示す版の施行日は、法・施行令・施行規則の3つで一致しません。
版の選び方は「再生医療等安全性確保法の対象と区分」で扱います。通知・ガイドラインの現行と廃止の別は「通知索引」で扱います。
8. この先、法の適用について検討は行われるのですか?
改正法の附則(法律の本体のあとに付く規定)に、細胞の分泌物を用いる医療技術について、施行後2年を目途に法の適用の在り方等を検討すること等の定めがあります。行政のQ&Aの2つの項目が、末尾の補足(なお書き)でそう書いています。
検討の過程で公表される資料は検討のための資料で、法令の改正や、行政の取扱いの変更として決まった内容ではありません。
このなお書きは、A.1-1-07(エクソソーム)と A.1-1-08(培養上清・セクレトーム)の末尾に、同じ文で置かれています。
ここでいう改正法は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律(令和6年法律第51号)です。
同じなお書きは、サイトカイン(細胞が出す、情報を伝えるたんぱく質)を扱う A.1-1-09 には付いていません。
例
検討の場で、今後の方向を書いた資料が公表されたとします。その場合も、法令の改正や取扱いの変更があったかどうかは、7.の節で見た方法で確かめます。
附則の条文と、検討がどこで行われているかは、「培養上清液・セクレトームの法的位置」で扱います。
9. この記事に出てきた言葉は、どの条文が定義しているのですか?
この記事で扱った語の定義は、いずれも再生医療等安全性確保法第2条と第4条第1項に置かれています。
行政の文書やQ&Aが新しく作った定義ではありません。
この記事に出てきた語と、定義を置いている条文を並べます。いずれも本文で引いたものをまとめ直したもので、新しい内容は足していません。
表は、左の列で語を探し、真ん中の列で定義を、右の列で定義を置いている条文を確かめる、という使い方ができます。
| 語 | 条文が | 定義を |
|---|---|---|
| 再生医療等 | 再生医療等技術を | 法第2条第1項 |
| 再生医療等技術 | 人の | 法第2条第2項、 |
| 再生医療等提供計画 | 再生医療等の | 法第4条第1項 |
| 特定細胞加工物 | 再生医療等に | 法第2条第4項 |
| 特定細胞加工物等 | 特定細胞加工物及び特定核酸等 | 法第2条第6項 |
「再生医療等技術」の柱書の全文と、施行令第1条が列挙する6項目の内容は「再生医療等安全性確保法の対象と区分」にあります。
例
ある資料で「特定細胞加工物」という言葉を見かけたとします。表を見ると、定義は法第2条第4項にあります。
定義には「再生医療等に用いられる」という言葉が入っています。そのため、6.の節で見たとおり、第2条第1項と第2項の定義にも戻って確かめます。
定義はいずれも条文の側に置かれています。資料での言い方や呼び名が変わっても、範囲を決めているのはこの条文です。
理解の確認
「エクソソームを用いる医療技術は法の対象にならない」と、条件を落として書いたとします。行政の記載の書き方と、どこが食い違いますか?
条件の有無です。A.1-1-07 は「細胞を含まないことが明らかである場合には、法の対象外である」と、条件を付けた形で書かれています。条件を落として読むと、記載が置いていない範囲まで広がります。A.1-1-08 も、培養上清とセクレトームについて「細胞が含まれないことが明らかである場合」という同趣旨の条件を置いています。さらに、この条件が満たされているかをどのように確かめるかについて、どちらの項目にも記載はありません。答えているのは再生医療等安全性確保法の適用範囲であって、ほかの法律の取扱いではありません。
根拠:再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)別紙 A.1-1-07・A.1-1-08(法令確認日 2026-09-12)
提供計画を出す義務があるかどうかは、投与する物の呼び名で決まりますか。決まらないなら、何で決まりますか?
呼び名では決まりません。法第4条第1項がいう「再生医療等」は、第2条第1項の定義に送られます。そこから第2項の「再生医療等技術」へ、さらに施行令第1条へと送られます。分かれ目は、次の2つがそろうかどうかです。1つ目は、その医療技術が第2条第2項第1号(細胞加工物を用いる医療技術)又は第2号(核酸等を用いる医療技術)に当たることです。2つ目は、施行令第1条が定めるものに当たることです。なお第2条第1項の括弧書きは、薬機法第80条の2第2項に規定する治験に該当するものを、この法律でいう再生医療等から除いています。
根拠:再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第2条第1項・第2項、第4条第1項/再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令(平成26年政令第278号)第1条(法令確認日 2026-09-12)
提供計画の提出義務と、それに付いている罰則は、物を供給する事業者に向けられたものですか?
向けられていません。法第4条第1項が名宛人に置いているのは、再生医療等を提供しようとする病院又は診療所の管理者です。同法第13条の確認義務の名宛人は、医師又は歯科医師です。提出を欠いたまま提供した場合の罰則も、この義務に違反した者についてのものです。第62条第1号が50万円以下の罰金、第一種再生医療等については第60条第1項第1号が1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金と定めています。第64条は、法人の代表者や従業者が業務に関して違反行為をしたときに、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科すとしています。いずれも条文が定める上限です。
根拠:再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第4条第1項、第13条、第60条第1項第1号、第62条第1号、第64条(法令確認日 2026-09-12)
次に読む
- 5-3 培養上清液・
セクレトームは、 あるクリニックの事務長が、培養上清液(細胞を培養した液の上澄み)を扱う会社から、「細胞が入っていないので、法律の規制は受けません」と説明されたとします。どの 法律の どこに 入る? — 薬機法と 再生医療等 安全性確保法 - 5-4 再生医療等
安全性確保法の あるクリニックの事務長が、再生医療等安全性確保法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律。以下「法」)を調べています。対象と 第1〜3種は、 どう 決まる? — 2025年の 条番号の 移動も - 5-10 細胞の
分泌物は あるクリニックの事務長が、業界のセミナーで「培養上清やエクソソームを使う医療は、もうすぐ再生医療等安全性確保法の対象になる」という話を聞きました。再生医療等 安全性確保法の 対象に なるのか? — 見直しの 検討のいま - 5-5 エクソソームなどを
使う あるクリニックの事務長が、自由診療(公的医療保険などの給付の対象にならない診療)を始める準備をしています。自由診療で、 医療機関が 守る ルールは? — 提供計画と 医療広告
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)本文、別紙「再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&A(令和7年5月30日版)」1-1.A.1-1-01・A.1-1-07・A.1-1-08・A.1-1-09 厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第1条、第2条第1項・第2項・第4項・第6項、第4条第1項、第12条、第13条、第35条第1項、第39条第1項、第40条第1項、第60条第1項第1号、第62条第1号、第64条 e-Gov 法令検索(2026-09-12 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令(平成26年政令第278号)第1条、別表(第1条第2号関係)e-Gov 法令検索(2026-09-12 確認)
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号)第2条第5号ニ e-Gov 法令検索(2026-09-12 確認)
- 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」等の取扱いについて(令和7年5月15日 医政研発0515第18号 厚生労働省医政局研究開発政策課長)本文、Ⅰ(1)、Ⅱ(1)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)厚生労働省(2026-09-12 確認)
- エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)前文 厚生労働省法令等データベース(2026-09-12 確認)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第66条第1項 e-Gov 法令検索(2026-09-12 確認)
- 医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5第1項 e-Gov 法令検索(2026-09-12 確認)