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事業者間の情報提供は、どこまで広告ですか? — 販売情報提供活動ガイドラインが及ぶ範囲

クリニックに製薬会社の担当者が来て、新しい薬を口頭で説明していく。学会の展示ブースで、医師向けの資料が配られる。こうした医療用医薬品(医師や歯科医師が使う、またはその処方や指示によって使われる医薬品)の情報提供には、専用のガイドラインがあります。厚生労働省の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(2018年9月)です。販売促進を期待して行うものなら、口頭の説明も、聞かれて答えた説明も対象に入ります。ただし、広告にあたるかどうかを決めるのは、このガイドラインではありません。このページでは、ガイドラインの対象、守ること、記録、展示ブースと添付文書の扱いを、例を交えて説明します。

30秒でわかる要点

  • 広告かどうかは、別の物差しで決まる:薬機法(医薬品や医療機器などについて定めた法律)上の広告にあたるかどうかは、3つの条件(3要件)で判断されます。3要件を示しているのは、別の通知(国の役所が、法律の運用のしかたを自治体などに示す文書)です。ガイドラインは、この物差しを作り替えるものではありません。適正化の対象にしているのは、広告と「広告に類する行為」の両方です。ガイドラインの対象に入らない活動でも、それだけで薬機法の広告の決まりの外に出るわけではありません。第66条第1項(虚偽・誇大な広告の禁止)と第68条(承認前の医薬品などの広告の禁止)は、「何人も」(だれであっても)に向けた決まりです。
  • 対象は医療用医薬品。口頭の説明も入る:対象は、医療用医薬品についての活動です。行う側は、医薬品製造販売業者(許可を受けて医薬品を市場に出す会社)とその委託先・提携先です。医薬品卸売販売業者(病院や薬局などに医薬品を売る業者)も入ります。聞かれて答えた説明や口頭の説明も入ります。口頭で説明した内容も記録に残させるよう、ガイドラインは求めています。伝える情報には、承認(製品ごとに国が審査して、製造販売を認めること)された範囲内であることなど、4つの要件があります。
  • 展示ブースと添付文書は、条件付きの整理:学会の展示ブースで配る医薬関係者(医師や薬剤師など)向けの資料が、一般の参加者にも渡ることがあります。厚生労働省の事務連絡(2018年3月)は、この配布を「原則として」一般の人向けの広告とは考えないとしています。事務連絡は、役所が運用上の注意などを担当者あてに伝える文書です。添付文書は、医薬品に添えられる、使い方や注意などを書いた文書です。自社サイトでの公開については、厚生労働省の通知(2003年3月)が、広告に当たらないとしています。ただし、公開されている添付文書と同じ内容で、それを超えない場合に限られます。この通知が今も効力を持つかは、確認できていません。

1. 「販売情報提供活動」とは、何のことですか?

製薬会社など(医薬品製造販売業者等)が、販売促進を期待して医療用医薬品の情報を提供することです。ガイドラインは、自分から伝えるか、聞かれて答えるかを問いません。

その薬の効能・効果(承認された使いみち)に関係する病気を知ってもらう活動(疾患啓発)も、一般の人向けのものを含めて、この言葉に入ります。

この言葉を定めているのは、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」です。厚生労働省医薬・生活衛生局長が、都道府県知事・保健所設置市長・特別区長にあてて出した通知に、別添として付いています。通知の題名は「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて」です。

定義は、ガイドラインの第1の2「適用範囲等」の(2)にあります。分けて読むと、次のようになります。

  • だれが:医薬品製造販売業者等(2の節で説明する3種類の事業者)が
  • 何を期待して:特定の医療用医薬品の名称や、有効性・安全性を知ってもらうことなどによる販売促進を期待して
  • 何をする:その医療用医薬品に関する情報を提供すること
  • やり方:定義は「能動的・受動的を問わず」と書き出されています。自分から伝える場合も、相手に求められて答える場合も入ります
  • 含まれるもの:医療用医薬品の効能・効果に関係する病気の啓発(疾患啓発)も入ります。定義は、ここに「一般人を対象とするものを含む」と書き添えています

例

冒頭と似た場面で考えます。クリニックの医師が、製薬会社の担当者に、ある医療用医薬品の特徴を尋ねたとします。担当者がその場で口頭で答えた場合も、販売促進を期待して情報を提供するものなら、この定義に入り得ます。定義は、求められて答えた場合を、定義の外に置いていないからです。

活動に使う資料や情報にも、「販売情報提供活動の資材等」という定義があります(第1の2(3))。口頭による説明、パソコン上の映像、電磁的に(電子データで)提供されるものなども入り、「その提供方法、媒体を問わない」とされています。紙のパンフレットだけを指す言葉ではありません。

原文で確かめる(第1の2(2)・(3))

(2)本ガイドラインにおいて「販売情報提供活動」とは、能動的・受動的を問わず、医薬品製造販売業者等が、特定の医療用医薬品の名称又は有効性・安全性の認知の向上等による販売促進を期待して、当該医療用医薬品に関する情報を提供することをいい、医療用医薬品の効能・効果に係る疾患を啓発(一般人を対象とするものを含む。)することも含まれること。

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(平成30年9月25日 薬生発0925第1号 別添)第1の2(2)

(3)本ガイドラインにおいて「販売情報提供活動の資材等」とは、販売情報提供活動に使用される資料及び情報をいい、口頭による説明、パソコン上の映像、電磁的に提供されるもの等、その提供方法、媒体を問わないこと。

同ガイドライン 第1の2(3)

ガイドラインが作られた理由

通知の本文は、ガイドラインを作るに至った状況として、次の3つの行為を挙げています。ガイドライン本体の第1の1「目的」も、同じ3つを挙げています。

  • 口頭の説明など、証拠が残りにくい行為
  • 明確な虚偽(うそ)や誇大(大げさ)とまではいえないものの、不適正な使用を助長すると考えられる行為
  • 企業側の関与がすぐには見分けにくく、広告にあたるかどうかの判断が難しいもの(研究論文など)の提供

そのうえで第1の1は、目的を「販売情報提供活動において行う広告又は広告に類する行為を適正化する」ことと書いています。

広告かどうかは、この文書では決まらない

薬機法上の広告にあたるかどうかを、このガイドラインが定めているわけではありません。広告かどうかは、別の通知が示す3つの条件(3要件)で判断されます(『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』)。

  • 顧客誘引性:買いたい気持ちにさせる意図が明確であること
  • 特定性:特定の医薬品などの商品名が明らかにされていること
  • 一般認知性:一般の人が見て知ることができる状態にあること

ガイドラインは、広告かどうかを測るこの物差しを作り替えるものではありません。

2. このガイドラインは、だれの、どの製品の活動に適用されますか?

医薬品製造販売業者、その委託先・提携先企業、医薬品卸売販売業者が、医療用医薬品について行う販売情報提供活動に適用されます。

医薬情報担当者(MR:医療関係者に医薬品の情報を伝える担当者)などの呼び名や所属部門にかかわらず、これらの事業者が雇う全ての者等に適用されます。

適用範囲を定めているのは、第1の2(1)です。対象は医療用医薬品についての販売情報提供活動で、行う側として3種類の事業者が挙げられています。

  • 医薬品製造販売業者:許可を受けて、医薬品を市場に出す会社です。
  • その委託先・提携先企業:販売情報提供活動を任された会社や、販売情報提供活動で提携している会社です。いわゆるコ・プロモーション(複数の会社が一緒に販売促進をすること)の相手先企業も含みます。
  • 医薬品卸売販売業者:病院や薬局などに医薬品を販売する業者です。
原文で確かめる(第1の2(1))

(1)本ガイドラインは、医薬品製造販売業者、その販売情報提供活動の委託先・提携先企業(いわゆるコ・プロモーションの相手先企業を含む。)及び医薬品卸売販売業者(以下「医薬品製造販売業者等」という。)が医療用医薬品について行う販売情報提供活動を対象とすること。

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(平成30年9月25日 薬生発0925第1号 別添)第1の2(1)

表1は、第1の2の(1)から(5)までを1行ずつまとめたものです。(4)は、活動する人の側の範囲です。

表1:ガイドライン第1の2「適用範囲等」が定めていること
項定めている内容
(1)対象は、医薬品製造販売業者、その販売情報提供活動の委託先・提携先企業(いわゆるコ・プロモーションの相手先企業を含む)及び医薬品卸売販売業者が、医療用医薬品について行う販売情報提供活動
(2)「販売情報提供活動」の定義。能動的・受動的を問わず、販売促進を期待して当該医療用医薬品に関する情報を提供すること。効能・効果に係る疾患の啓発(一般人を対象とするものを含む)も含む
(3)「販売情報提供活動の資材等」の定義。口頭による説明、パソコン上の映像、電磁的に提供されるもの等を含み、提供方法・媒体を問わない
(4)医薬情報担当者、メディカル・サイエンス・リエゾンその他の名称やその所属部門にかかわらず、医薬品製造販売業者等が雇用する全ての者等に適用
(5)各医薬品製造販売業者等及びその関連団体が、本ガイドラインをベースに自らに適した規約を別途作成し、役員・従業員に遵守させること

出典:同ガイドライン 第1の2(1)〜(5)

表1の(4)の医薬情報担当者は、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第135号)第2条第5項に規定する者とされています。

第1の2(5)は、事業者側が作る規約について「本ガイドラインの定める事項にとどまらず、更なる自主的な取組に関する事項を含み、かつ、遵守すべき事項を具体化したものであること」と書いています。第4の4は、本ガイドラインのほか、公正競争規約、その他の関連法規、業界団体の自主規範も遵守することを挙げています。公正競争規約は、景品表示法にもとづいて業界が定める、表示や景品についてのルールです。

ガイドラインの対象と、条文が禁止を向ける相手(名宛人)は別のもの

研究用の試薬や、医薬品以外の物について、このガイドラインが適用されるとは書かれていません。

一方、薬機法の第66条第1項(虚偽・誇大な広告の禁止)と第68条(承認前の医薬品などの広告の禁止)は、名宛人を「何人も」としています。名宛人とは、その条文で義務や禁止の対象になる人のことです。業の種類でも、相手方でも限定されていません(『1-6 規制されるのは誰?』)。

例

医薬品製造販売業者等にあたらないD社が、ある医療用医薬品について情報を発信する場面で考えます。D社の発信は、このガイドラインの対象に入りません。しかし、それだけで薬機法の広告の決まりの外にあることにはなりません。ガイドラインが自ら定める適用範囲と、第66条第1項・第68条の名宛人(「何人も」)の範囲は別のものだからです。

供給する側から見た線の引き方は、『5-6 供給者の説明は、どこから「広告」になる?』で扱っています。

承認されていない薬や、承認外の使い方の情報は、別の項が扱っている

未承認薬(国の承認をまだ受けていない医薬品)や、適応外薬(承認された効能・効果の範囲の外で使われる薬)の情報提供は、別の項が扱っています。国内では認められていない用法・用量(使う量と使い方)の情報提供も同じです。ガイドラインの第4の3「未承認薬・適応外薬等に関する情報提供」がその項で、8つの条件を挙げています。

適用範囲を定める第1の2(1)と、第4の3は別の規定です。第4の3の中身は、5の節「口頭の説明や、求めに応じた情報提供は、どう扱われると書かれているのか」で説明します。

患者向けの整理は、別の文書にある

患者向けの情報提供の側からも、行政の文書が線を引いています。厚生労働省の通知(2026年3月)は、患者などに向けた治験などの情報提供を扱っています。治験は、承認を得るために、人を対象に行う試験です。通知は、こうした情報提供について、広告にあたらないと判断して差し支えない要件を示しました。

ただし通知は、この要件を「それ以外の情報提供(例えば、医療関係者に対する販売情報提供活動など)について適用することはできない」と付け加えています。患者向けの整理と事業者間の整理は、別々の文書に、別々に置かれています。

出典:治験等に係る情報提供の取扱いについて(令和8年3月30日 医薬監麻発0330第1号)記3(1)

承認前の広告の禁止は、『2-3 承認前の医薬品・医療機器などは、広告できますか?』で扱っています。

3. 伝える情報の中身について、何が求められていますか?

4つの要件を全て満たすことです。承認された範囲内であること、安全性の情報も伝えて都合のよい情報だけを選ばないこと、根拠を示せること、引用元を書くことです。

その前提として、医療用医薬品を適正に使ってもらうために必要な情報提供を、適切に行うことに留意するよう書かれています。

第1の3「販売情報提供活動の原則」の(1)は、販売情報提供活動が次の要件を全て満たすよう求めています。

  • 承認された範囲内:伝える効能・効果、用法・用量などの情報は、承認された範囲内のものであること
  • 都合のよい情報だけを選ばない:有効性だけでなく、副作用を含む安全性などの必要な情報も伝えること。伝える情報を恣意的に(都合よく)選ばないこと
  • 根拠を示せる:科学的・客観的な根拠にもとづき、その根拠を示せる正確な内容であること。根拠は、元データを含めて第三者が評価・検証できるもの、または論文の査読など第三者の審査を経たもの(承認審査に使われた評価資料や審査報告書を含む)であること
  • 引用元を書く:資材等に引用する情報は、引用元を明記すること。社外の調査研究に、会社が物品・金銭・労務などを提供していた場合は、その具体的な内容も明記すること

4つ目には続きがあります。社外の調査研究は、臨床研究法や、人を対象とする医学系研究の倫理指針などを守ったものだけを使うよう書かれています。論文や研究成果の扱いは、『2-10 論文や治験の情報の発信は、薬機法の広告になりますか?』で扱っています。

例

A社が、自社の医療用医薬品の説明資料を作る場面で考えます。臨床試験で有効性を示したデータだけを載せ、副作用のデータを載せないとします。この資料は、2つ目の要件(安全性などの必要な情報も伝え、恣意的に選ばない)との関係で問題になり得ます。論文を引用するなら引用元を、社外の研究にA社がお金を出していたならその具体的な内容も、明記するよう求められています。

もう少し詳しく(4つ目の続き)

守るよう書かれている法令・指針は、次のとおりです。

  • 臨床研究法(平成29年法律第16号)
  • 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成26年文部科学省・厚生労働省告示第3号)
  • その他、これらに準ずる指針等

4つの要件の前に置かれている前提

第1の3は、4つの要件の前に、前提を1つ置いています。医療用医薬品の適正使用のために必要な情報提供を、適切に実施すべきことに留意すること、です。この情報提供は、「法第68条の2」に基づくものとして書かれています。

例として挙げられているのは、添付文書に記載された禁忌(その薬を使ってはいけない場合)についての情報提供です。医薬品リスク管理計画(RMP。医薬品ごとの安全対策をまとめた計画)についての情報提供等も挙げられています。

「法第68条の2」は、今は別の番号にある

ガイドラインが挙げる「法第68条の2」は、2018年9月25日時点の番号です。この「情報の提供等」の規定は、今は第68条の2の6にあり、2027年5月20日からは第68条の2の8になります。今の第68条の2は別の規定なので、番号のまま引くと別の規定に当たります。

原文で確かめる(条番号の移り変わり)

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

ガイドラインが「法第68条の2」を挙げているので、現在の第68条の2を見ればよい。

現行

ガイドライン発出時の第68条の2は「情報の提供等」だった。この規定は令和元年法律第63号により、2021年8月1日から第68条の2の5へ、2022年12月1日から第68条の2の6へ移り、2027年5月20日からは第68条の2の8になる。空いた第68条の2には、2021年8月1日から「注意事項等情報の公表」が、2027年5月20日からは「医薬品の安全性及び有効性に係る情報収集等に関する計画の作成等」が入る。第68条の2の5には、2022年12月1日から「医薬品、医療機器又は再生医療等製品を特定するための符号の容器への表示等」が入る。

根拠:e-Gov 法令検索の各施行版で条見出しを照合。版ID 335AC0000000145_20161216_428AC0000000108(第68条の2=情報の提供等)/同_20210801_501AC0000000063(第68条の2=注意事項等情報の公表、第68条の2の5=情報の提供等)/同_20221201_501AC0000000063(第68条の2の5=医薬品、医療機器又は再生医療等製品を特定するための符号の容器への表示等、第68条の2の6=情報の提供等)/同_20260521_505AC0000000063(第68条の2の6=情報の提供等)/同_20270520_507AC0000000037(第68条の2の8=情報の提供等)。

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第68条の2の8 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第68条の2の6 は機構による注意事項等情報の届出の受理になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

4. してはならないこと、積極的にすることは、何ですか?

してはならない行為が7つ、積極的にする行為が3つ挙げられています。虚偽・誇大な表現や不安をあおることは前者、ネガティブな情報の提供は後者に入ります。

ガイドラインの第4の1は、書かれていない(禁じられていない)ことなら自由にしてよい、という誤った認識を持たないよう求めています。

第1の3(2)は、不適正な使用や誤った使用を招かないよう、次の行為をしないことを求めています。

  1. 虚偽・誇大な表現や、誤解を招く表現を使うこと。そのほか、広告規制で禁じられている行為をすること
  2. 承認された効能・効果、用法・用量など以外の使い方を勧めること。外国で承認などを得ていても同じです
  3. 科学的または客観的な根拠なく恣意的に、特定の医療用医薬品の処方や使用などへ誘うこと
  4. 他社製品を悪く言うことなどで、自社製品が優れていると訴えること
  5. 病気にかかることや、病気の症状を過度に強調し、不安をあおること
  6. 一般の人向けの疾患啓発で、医療用医薬品による治療(診断と予防を含む)だけを勧めるなど、ほかに治療の手段がないかのように誤解させること
  7. そのほか、医療用医薬品の不適正な使用や誤った使用を招くおそれのある表現をすること

6番目は、相手が医療関係者ではなく一般の人である疾患啓発を名指ししています。1の節で見たとおり、定義が疾患啓発を「一般人を対象とするものを含む」として販売情報提供活動に含めていることと対応しています。

例

A社が、一般の人向けに、ある病気を知ってもらうウェブページを作る場面で考えます。その病気の治療として、医療用医薬品による治療だけを勧め、ほかに治療の手段がないかのように読める作りにしたとします。この場合は、6番目の行為との関係が問題になり得ます。

積極的にすることとして挙げられている3つ

第1の3(3)は、次の行為を積極的にすることを求めています。ネガティブな情報を伝えることも、この「積極的にすること」に入っています。

  1. 試験研究の結果に加えて試験の方法も示すなど、正確な理解に必要な情報を伝えること
  2. 比較試験では、試験の設計(優越性試験、非劣性試験など)と、それにもとづく結果を正確に示すこと。優位性を示せなかったことなど、品質・有効性・安全性についてのネガティブな情報も伝えること
  3. 厚生労働省や、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から求められた事項(副作用の発生率の調査など)の情報を伝えること

優越性試験は、比べる相手より優れているかを確かめる試験です。非劣性試験は、比べる相手より劣っていないかを確かめる試験です。PMDAは、医薬品の審査や安全対策を行う機関です。

書かれていないことの扱い

ガイドラインは、自らが書いていないことについても述べています。第4の1「本ガイドラインに明示されていない事項」です。判断の軸に置くよう求めているのは、医薬品製造販売業者等に求められる本来の責務は何か、という原点です。そのうえで、自らを厳しく律して活動するよう求めています。

例

A社が、ガイドラインに名前の出てこない新しい形式の説明会を考えたとします。第4の1は、こうした場面で、どこにも禁じられていないから自由に行ってよい、と考えないよう求めています。

原文の言い回しを見る(第4の1)

第4の1は、「本ガイドラインで定められていないこと(禁じられていないこと)であれば自由に行ってもよいとの誤った認識を持つことなく、医薬品製造販売業者等に求められる本来の責務とは何かという原点を判断の基軸として、自らを厳しく律した上で、販売情報提供活動を行うこと」と書いています。

5. 口頭の説明や、求めに応じた情報提供は、どう扱われると書かれているのか?

口頭の説明も「資材等」に入ります。第2の6は、口頭で説明した内容の記録も含めて業務記録を作らせ、適切に保管させるよう、事業者の経営陣に求めています。

求めに応じて未承認薬・適応外薬の情報を提供する場合の条件は、第4の3に8つ挙げられています。

第2の6は、医薬品製造販売業者等の経営陣に向けて、次のことを求めています。

  • 担当部門・担当者に、業務を適切に行うために必要な手順書を作らせる
  • 口頭で説明した内容の記録を含む業務記録を作らせ、適切に保管させる
  • 厚生労働省、関係自治体や PMDA から資料を求められたら、資材等に加えて手順書や業務記録を出すなどして、活動の状況を速やかに報告させる

例

冒頭の場面で考えます。製薬会社の担当者が、クリニックで新しい薬を口頭だけで説明していったとします。販売情報提供活動として行われた説明なら、紙の資料を渡していなくても「資材等」に入ります。その説明の内容も、業務記録に残す対象です。記録を作らせる役目を負うのは、説明した側の事業者の経営陣です。

原文で確かめる(第2の6)

医薬品製造販売業者等の経営陣は、販売情報提供活動の担当部門・担当者に、販売情報提供活動に係る業務を適切に行うために必要な手順書を作成させるとともに、業務記録(販売情報提供活動において口頭で説明等を行った内容の記録を含む。)を作成させ、当該業務記録を適切に保管させること。また、厚生労働省、関係自治体や PMDA から販売情報提供活動に関係する資料の提出を求められた場合には、販売情報提供活動の資材等に加えて手順書や業務記録を提出すること等により、活動状況を速やかに報告させること。

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(平成30年9月25日 薬生発0925第1号 別添)第2の6

記録のほかに求められている体制

第2「医薬品製造販売業者等の責務」は、記録のほかにも体制を求めています。

  • 監督部門と委員会(第2の2):「販売情報提供活動監督部門」を、担当部門から独立した形で社内に設けます。資材等や活動そのものが適切かなどを、モニタリングする(継続して確かめる)部門です。あわせて、自社からの独立性を持つ人が入った審査・監督委員会を設けます。
  • 使う前の審査(第2の3):資材等は、使う前にあらかじめ監督部門の審査を受けます。
  • 苦情の窓口(第2の8):販売情報提供活動についての苦情を受け付ける、外から分かる窓口を設けます。

委託先・提携先企業と医薬品卸売販売業者については、第4の5・第4の6が、審査・監督委員会の設置等に関する特例を置いています。資材そのものの置かれ方は、『5-8 医療機関へ渡した資料、置き方で扱いは変わる?』で扱っています。

求められて、未承認薬・適応外薬の情報を伝える場合

ふだんは、承認された範囲内の情報に限ること(3の節の1つ目の要件)と、承認外の使い方を勧めないこと(4の節の2番目)が求められています。ガイドラインの項の番号でいうと、第1の3(1)①と(2)②です。

第4の3は、医療関係者から求めがあった場合を定めています。未承認薬・適応外薬や、国内では認められていない用法・用量の情報です。この場合は、上の2つの規定にかかわらず、その情報をその医療関係者に提供することは差し支えない、としています。医療関係者以外の国民、患者やその団体から求めがあった場合も同様、と書かれています。

ただし、次の条件を全て満たすこととされています。

  1. 通常の販売情報提供活動とは切り分けること
  2. 伝える内容は求められた内容に沿ったものに限り、伝える相手は求めた人に限ること
  3. 求められていないのに、求められたかのように装わないこと
  4. 虚偽・誇大な内容にせず、科学的・客観的な根拠にもとづく正確な情報にすること。要約、省略、強調などをしないこと
  5. 会社が関わった試験研究の結果や論文などを渡すときは、その研究が、臨床試験の基準を定めた省令や臨床研究法などで適切に管理されたものであること
  6. 副作用の危険性が高まることや、臨床試験で有意差(偶然とはいえない差)を証明できなかったことなど、ネガティブな情報も適切に伝えること
  7. その効能・効果、用法・用量などが承認を受けていないことを、はっきり伝えること
  8. 経緯、提供先、提供内容など、情報提供の記録を作り、保管すること

3番目と8番目は、記録の側から見た条件です。求めがあったという事実そのものと、その経緯・提供先・提供内容を残すことが、条件に置かれています。

例

あるクリニックの医師が、製薬会社の担当者に、国内では認められていない用法・用量について自分から尋ねたとします。第4の3は、こうした求めに応じた情報提供を、8つの条件を全て満たす場合に差し支えないとしています。たとえば、伝える相手は尋ねた医師に限ります。承認を受けていないことをはっきり伝え、やりとりの経緯や内容を記録に残すことも条件です。

詳しく見る(第4の3の8つの条件)
  1. 通常の販売情報提供活動とは切り分けること
  2. 情報提供する内容は、要求内容に沿ったものに限定するとともに、情報提供先は要求者に限定すること
  3. 医療関係者・患者等から情報提供を求められていないにもかかわらず、求められたかのように装わないこと
  4. 提供する情報は、虚偽・誇大な内容であってはならず、科学的・客観的根拠に基づき正確なものでなければならないこと。また、情報提供にあたっては、要約、省略、強調等を行わないこと
  5. 医薬品製造販売業者等による関与があった試験研究の結果やそれに基づく論文等を提供する場合は、当該試験研究が医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)若しくは臨床研究法(平成29年法律第16号)又はこれらに相当するものにより適切に管理されたものであること
  6. 副作用の危険性が高まることや、臨床試験において有意差を証明できなかったこと等、ネガティブな情報についても適切に提供すること
  7. 情報提供する医療用医薬品の効能・効果、用法・用量等が承認を受けていないことを明確に伝えること
  8. 経緯、提供先、提供内容等、情報提供に関する記録を作成し、保管すること

6. 医薬関係者向けの資料が一般の人に届く場面は、どう整理されていますか?

学会の展示ブースでの配布は、事務連絡が「原則として」一般人向け広告とは考えないとします。添付文書の自社サイト公開は、通知が条件付きで広告に当たらないとします。

学会の展示ブースでは医薬関係者向けの資料だとわかる工夫が必要とされ、添付文書の条件は、公開済みの添付文書と同じ内容で、それを超えないことです。

医薬関係者(医師や薬剤師など、医療や医薬品にかかわる仕事の人)向けの資料が、一般の人の手に届く場面があります。この場面を扱った行政の文書が2つあります。

  • 学会の展示ブース:厚生労働省の事務連絡(2018年3月)
  • 自社サイトでの添付文書の公開:厚生労働省の通知(2003年3月)

前提:一般の人向けの広告が制限されている医薬品など

前提になるのは、医薬品等適正広告基準の第4の5です。この基準は、医薬品などの広告が虚偽や誇大にならないよう、厚生労働省が通知で示している基準です。

第4の5(1)の対象は、医師や歯科医師が自ら使う、またはその処方せんや指示で使うことを目的に供給される医薬品と再生医療等製品です。再生医療等製品は、人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。これらについて、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告をしてはならない、と定めています。

(2)が扱っているのは医療機器です。医師、歯科医師、はり師など医療関係者が自ら使うことを目的に供給される医療機器のうち、一般人が使うと保健衛生上の危害が起きるおそれのあるものです。これも(1)と同様にするものとしています。ただし、一般人が使うおそれのないものは除かれます。基準の条文は、医薬品等適正広告基準(薬生発0929第4号)のページで読めます。

では、「医薬関係者以外の一般人を対象とする広告」とは何を指すのでしょうか。基準を示した通知と同じ日(2017年9月29日)に出た解説の通知が、除くものを挙げる形で書いています。医薬関係者向けの新聞・雑誌、MRによる説明、主に医薬関係者が集まる学会などによる場合が、除かれるものとして並んでいます。

「医薬関係者以外の一般人を対象とする広告」とは、以下のものを除く広告をいう。

①医事又は薬事に関する記事を掲載する医薬関係者向けの新聞又は雑誌による場合

②MRによる説明、ダイレクトメール、若しくは文献及び説明書等の印刷物(カレンダー、ポスター等医薬関係者以外の者の目につくおそれの多いものを除く。)による場合

③主として医薬関係者が参集する学会、後援会、説明会等による場合

④その他主として医薬関係者を対象として行う場合

医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)別紙 第4の5<共通>(1)。東京都 医薬品等広告講習会資料 第2章「医薬品等適正広告基準に関する通知集」に収載された全文で確認

学会の展示ブースについて示されていること

厚生労働省の事務連絡(2018年3月)は、患者団体などが学会に参加する場面を取り上げたQ&A(質問と回答)です。この事務連絡は「医療用医薬品等」を、医療用医薬品、医療機器及び再生医療等製品を指す言葉として使っています。

問われたのは、医学薬学関連の学会で、製薬企業等が設置・運営する展示ブース等での配布です。医薬関係者向けの医療用医薬品等の広告資材を、主に医薬関係者に配り、あわせて一般参加者にも配る行為があります。これを、第4の5の制限でいう、一般人を対象とする広告と解するのか、という問いです。答えは次の3点です。

  • 原則:展示ブース等は、本来的に医学薬学関係者である学会会員を対象に設けられるものなので、原則として、一般人を対象とする広告活動とは考えない
  • ただし:その際は、医薬関係者向けの情報提供資材であることがわかる何らかの工夫が必要
  • また:一般人を誘う意図が確認できるときは、一般人を対象とする広告に該当することに留意する必要がある。その例として、製薬企業等が一般の人の参加を想定し、患者向けの広告資材を別に作って配る場合が挙げられている

例

冒頭の場面を、この事務連絡の前提に合わせて考えます。医学の学会の展示ブースで、製薬会社が医療用医薬品の医師向けの広告資料を配り、一般参加者も受け取る場合です。答えは「原則」だけで終わらず、医薬関係者向けだとわかる工夫が求められます。一方、一般参加者を見込んで患者向けの広告資材を別に作って配ることを、事務連絡は、一般人を誘う意図が確認できる例に挙げています。

原文で確かめる(事務連絡の回答)

A 学会における展示ブース等は、本来的に医学薬学関係者である学会会員を対象に設置されるものであることに鑑み、原則として、一般人を対象とする広告活動とは解さない。

ただし、その際は、医薬関係者向けの情報提供資材であることがわかる何らかの工夫が必要である。

また、例えば製薬企業等が医学薬学関係者以外の一般人の参加を想定し、患者向けの広告資材を別途作成して配布するなど、一般人を誘因する意図が確認できる際には、一般人を対象とする広告に該当することに留意する必要がある。

学会展示ブース等における医薬関係者向け広告資材の一般参加者への配布について(Q&A)(平成30年3月26日 事務連絡、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)。東京都 医薬品等広告講習会資料 第4章「表示・広告関連通知等」に 18 として収載された全文で確認

添付文書を一般の人が見られる場所に置くことについて

添付文書は、医薬品に添えられる、使い方や注意などを書いた文書です。これを一般の人も見られるサイトに載せることについては、事務連絡より前に、厚生労働省の通知(2003年3月)があります。広告にあたるかどうかの側から整理したものです。通知は、次の2点を示しています。

  • 記1:製薬企業等が、自社のホームページで医療用医薬品の添付文書を、医薬関係者以外の一般人を対象として情報提供すること。これは、3要件の1つ目(顧客を誘引する意図が明確であること)に該当せず、当時の薬事法上の広告には当たらないものと判断する
  • 記2:記1の添付文書は、公開されている添付文書と同じ内容で、それを超えないものに限る。基準になるのは、当時の「医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構」が「医薬品情報提供ホームページ」で公開していた添付文書。これ以外の場合は、1つ目の要件に該当するおそれがある

2003年3月の通知が現在も効力を持つかどうかは、本ページでは確認していません。厚生労働省側の原文URLが取れておらず、廃止・改正の有無も確認できていません。

この通知は、薬機法がまだ「薬事法」という名前だったころに出ています。記2の機構の名前と「医薬品情報提供ホームページ」も、発出当時の組織名と仕組みです。記1が引く通知は、広告の3要件を示した厚生省の通知(1998年9月)です(『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』)。

例

製薬会社のC社が、自社の医療用医薬品の添付文書を、一般の人も見られる形で自社サイトに載せる場面で考えます。添付文書の内容に独自の説明を書き足して載せると、公開されている内容を超えることになり得ます。記2は、公開されている内容と同一でない場合や、それを超える場合について、顧客誘引の要件に該当するおそれがあるとしています。

原文で確かめる(記1・記2)

1 薬事法における医薬品等の広告の該当性については、従前より「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知(以下「通知」という。))により、判断しているところであるが、製薬企業等が自社のホームページ上で医療用医薬品の「添付文書」について、医薬関係者以外の一般人を対象として、情報提供を行うことは、通知中の「1.顧客を誘因する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること」に該当せず、薬事法における広告には当たらないものと判断することとしたので、御了知願いたい。

2 上記1に云う「添付文書」の内容は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構によって「医薬品情報提供ホームページ」上で公開されている「添付文書」の内容と同一であり、かつ、当該内容を超えないものとし、これ以外の場合は、通知中の「1.顧客を誘因する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること」に該当するおそれがあることとする。

医療用医薬品等の情報提供と薬事法における広告との関係について(平成15年3月28日 医薬監第0328006号、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長)記1・記2。東京都 医薬品等広告講習会資料 第4章「表示・広告関連通知等」に 8 として収載された全文で確認

この通知は、「総合規制改革会議の『規制改革の推進に関する第2次答申』に関する対処方針について」(平成14年12月17日閣議決定)に基づいて発出されたものです。

2つの文書は、違うところに線を引いている

学会の事務連絡が見ているのは、場の性質です。展示ブースが本来的に学会会員を対象に設けられることを挙げて、「原則として」と書き、ただし書きを添えています。添付文書の通知が見ているのは、内容の範囲です。公開されている添付文書と同一で、それを超えないことを条件にし、これ以外は顧客誘引性の要件に該当するおそれがあるとしています。

7. ガイドラインが守られているかは、どのように確かめられていますか?

厚生労働省の委託事業で報告を集め、事例検討会で評価し、必要に応じて行政指導(法的な強制力なしに協力を求める指導)を行う、と報告書に書かれています。

全国から選ばれたモニター医療機関からの報告(令和7年度・9か月)では、報告の対象になった医薬品が延べ9件、そのうち違反が疑われたものが延べ6件でした。

厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課の委託事業として、医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業が行われています。令和7年度の報告書(令和8年3月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)は、この事業が次の5つでできていると書いています。

  • モニター調査
  • モニター医療機関以外からの報告(一般報告)の収集・評価
  • 医療関係者に対する普及・啓発活動
  • 医学専門誌・製薬企業ホームページ等に関する調査
  • 事例検討会

報告書は、その後の流れを図で示しています。事例検討会の評価結果について、厚生労働省が、法令違反に該当するかどうかの行政上の判断を行います。そのうえで、地方自治体と連携して行政指導を行う、という流れです。

報告はどこから集まるか

モニター調査は、全国から選ばれたモニター医療機関が行います。対象は、入手した広告資材と、製薬企業の社員等から受けた販売情報提供活動(院内での製品説明会等を含む)です。参加したイベント(講演会や学会のランチョンセミナー)等も対象です。ランチョンセミナーは、昼食の時間に開かれる講演会です。モニター医療機関の所在する地域・特性等は、秘匿情報とされています。

一般報告は、令和元年10月に設置された「医療関係者向け医療用医薬品の販売情報提供活動に関する調査窓口」で受け付けられます。

報告された件数

表2の「延べ」は、重なりも含めて数えた数のことです。左から、報告の対象になった医薬品の数、そのうち違反が疑われた医薬品の数、違反が疑われた点を項目ごとに数えた数、の順に並んでいます。

表2:報告が行われた延べ医薬品数と、違反が疑われた延べ医薬品数等(令和7年度・令和6年度)
区分対象期間報告が行われた延べ医薬品数うち違反が疑われた延べ医薬品数左記について違反が疑われた延べ項目数
モニター報告(令和7年度)9か月9件6件11件
モニター報告(令和6年度)9か月18件18件23件
一般報告(令和7年度)12か月14件8件12件
一般報告(令和6年度)12か月16件7件18件

出典:医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業 報告書(令和8年3月)図表9・図表13。原文では列の名称が異なり、図表9は「モニタリング対象期間」「疑義報告が行われた延べ医薬品数等」、図表13は「対象期間」「一般報告が行われた延べ医薬品数等」です。報告書は、違反が疑われた延べ項目数について、年度ごとに分類上の項目の追加・修正を行っているため単純な比較はできないと注記しています。

例

表2の1行目を読みます。令和7年度のモニター報告では、9か月の間に、延べ9件の医薬品について報告がありました。そのうち延べ6件で、違反が疑われました。違反が疑われた項目は延べ11件で、医薬品の数より多くなっています。2つ以上の項目が数えられた医薬品があるためです。

令和7年度に違反が疑われた項目で最も多かったのは、「エビデンスのない説明を行った」の4件でした(エビデンスは根拠のことです)。違反が疑われた延べ11項目の36.4%です。次いで多かったのは「有効性のみを強調した(副作用を含む安全性等の情報提供が不十分な場合も含む)」の2件で、同18.2%でした。

情報の入手方法で最も多かったのは、「製薬企業担当者(直接対面)」の3件でした。違反が疑われた延べ6医薬品の50.0%です。「製薬企業担当者(メール・電話)」と「製薬企業担当者(オンライン・Webグループ面談(院内))」が各1件で、同16.7%でした。

形式だけを整えた活動について、報告書が書いていること

報告書は、ガイドラインを意識した形をとる活動についても述べています。

例

報告書が挙げている事例です。オンラインで開かれた病院向けの説明会で、MRが説明したあと、カメラを切っていた学術担当者がカメラをつけました。そして、医療従事者から求められて説明した、という形をとりました。しかし実際には、資料は一連のものになっていました。報告書は、ガイドラインを意識し、それを回避する形式をとった情報提供の事例として挙げています。

原文で確かめる(報告書の記載)

オンライン形式の病院向け説明会で、MR による販売情報提供活動後に、カメラオフだった学術担当者がカメラオンにし、医療従事者からの求めに応じた形で説明を行ったという形式をとりつつ、実際には、資料は一連のものとなっているなど、ガイドラインを意識しそれを回避する形式をとった情報提供を行っている事例もみられた

医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業 報告書(令和8年3月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社。厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 委託事業)

報告書は、これを「いわば劇場型の販売情報提供活動」と書いています。5の節で見た第4の3は、求めに応じた情報提供の条件として、「通常の販売情報提供活動とは切り分けること」と「医療関係者・患者等から情報提供を求められていないにもかかわらず、求められたかのように装わないこと」を挙げています。

報告書の脚注によると、ガイドラインのQ&Aは2019年から2024年までに4回出ています。報告書の本文によると、4回目(2024年2月)は、他社製品との比較情報についても、どのような情報提供なら問題がないかを明確にしたものです。本ページはこれらのQ&Aの原文を確認していないため、内容には立ち入りません。

詳しく見る(報告書の脚注が記すQ&Aの日付)
  • 最初のQ&A:平成31年2月20日
  • その2:平成31年3月29日
  • その3:令和元年9月6日
  • その4:令和6年2月21日

理解の確認

「販売情報提供活動」の定義は「能動的・受動的を問わず」と書き出され、「資材等」の定義は「その提供方法、媒体を問わない」と続きます。なぜ、こうした広い書き方なのですか?

ガイドラインを作るに至った状況として、通知の本文と第1の1が「証拠が残りにくい行為(口頭説明等)」を挙げているためです。自分から伝えたかどうかや、媒体で線を引くと、求められて口頭で答えた説明が定義から抜け落ちます。そうなると、問題にしたい行為が範囲の外に出てしまいます。そこで第1の2(2)は、受動的な提供も定義に含めています。(3)は、口頭による説明・パソコン上の映像・電磁的に提供されるものを「資材等」に入れています。その帰結として第2の6は、口頭で説明等を行った内容の記録を含む業務記録を作り、保管することを求めています。

根拠:医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(平成30年9月25日 薬生発0925第1号 別添)第1の1・第1の2(2)(3)・第2の6(法令確認日 2026-09-08)

学会の展示ブースの事務連絡(2018年3月)と、添付文書の公開の通知(2003年3月)は、似た場面を扱っています。「医薬関係者向けの情報が一般の人に届く」場面です。線の引き方が違うのはなぜですか?

事務連絡が基準にしているのは、場の性質です。展示ブースは本来的に、医学薬学関係者である学会会員を対象に設置されるものだとしています。そのため「原則として」一般人を対象とする広告活動とは考えないとしています。そのうえで、医薬関係者向けだとわかる工夫の必要と、一般人を誘う意図が確認できる場合を書き添えています。通知が基準にしているのは、内容の範囲です。公開されている添付文書の内容と同一で、これを超えない場合に、顧客誘引性の要件に該当しないとしています。これ以外の場合は、同じ要件に該当するおそれがあるとしています。

根拠:学会展示ブース等における医薬関係者向け広告資材の一般参加者への配布について(Q&A)(平成30年3月26日 事務連絡)/医療用医薬品等の情報提供と薬事法における広告との関係について(平成15年3月28日 医薬監第0328006号)記1・記2(法令確認日 2026-09-08)

ある活動がこのガイドラインの対象に入らないなら、その活動は薬機法の広告の決まりの外にある、といえますか?

いえません。ガイドラインは第1の2(1)で、自らの対象を定めています。医薬品製造販売業者、その委託先・提携先企業、医薬品卸売販売業者が、医療用医薬品について行う販売情報提供活動です。これは、守る側を限った範囲です。これに対して、第66条第1項と第68条の名宛人は「何人も」で、業の種類でも相手方でも限定されていません。また、広告にあたるかどうかを測るのは、顧客誘引性・特定性・一般認知性の3要件(厚生省の通知、1998年9月)です。ガイドラインは、この物差しを作り替えるものではありません。

根拠:医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン 第1の2(1)/薬機法第66条第1項・第68条/薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号)(法令確認日 2026-09-08)

次に読む

  • 医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて(平成30年9月25日 薬生発0925第1号、厚生労働省医薬・生活衛生局長)別添「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&Aについて(その1=平成31年2月20日/その2=平成31年3月29日/その3=令和元年9月6日/その4=令和6年2月21日)原文URL未確認。本ページは発出日のみを、医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業 報告書(令和8年3月)脚注2の記載により確認(2026-09-08 確認)
  • 医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業 報告書(令和8年3月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社。厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 委託事業)図表9・図表13ほか 厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 医薬品等適正広告基準の改正について(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)別紙「医薬品等適正広告基準」第4の5(1)(2)厚生労働省(2026-09-08 確認)。本ページが引いた同日付の解説通知「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(薬生監麻発0929第5号)別紙 第4の5<共通>(1)は、この厚生労働省のPDFには含まれていません。解説通知は、東京都 医薬品等広告講習会資料 第2章「医薬品等適正広告基準に関する通知集」に収載された全文で確認しました
  • 学会展示ブース等における医薬関係者向け広告資材の一般参加者への配布について(Q&A)(平成30年3月26日 事務連絡、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)厚生労働省側の原文URLは確認できていません。本ページは東京都 医薬品等広告講習会資料 第4章「表示・広告関連通知等」に 18 として収載された全文で確認しました(2026-09-08 確認)
  • 医療用医薬品等の情報提供と薬事法における広告との関係について(平成15年3月28日 医薬監第0328006号、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長)記1・記2。厚生労働省側の原文URLは確認できていません。本ページは東京都 医薬品等広告講習会資料 第4章「表示・広告関連通知等」に 8 として収載された全文で確認しました。廃止・改正の有無は確認できていません(2026-09-08 確認)
  • 医薬品等広告講習会 資料(冊子の第2章「医薬品等適正広告基準に関する通知集」に平成29年9月29日付 薬生発0929第4号と同日付 薬生監麻発0929第5号が、第4章「表示・広告関連通知等」に 8「医療用医薬品等の情報提供と薬事法における広告との関係について」と 18「学会展示ブース等における医薬関係者向け広告資材の一般参加者への配布について(Q&A)」が収載されている)東京都保健医療局健康安全部薬務課(2026-09-08 確認)。東京都が作成した資料で、全国一律の基準ではありません
  • 治験等に係る情報提供の取扱いについて(令和8年3月30日 医薬監麻発0330第1号、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長)記3(1)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第66条・第68条・第68条の2・第68条の2の6 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)。条番号の沿革は、版ID 335AC0000000145_20161216_428AC0000000108(第68条の2=情報の提供等)、同_20210801_501AC0000000063(第68条の2の5=情報の提供等)、同_20221201_501AC0000000063(第68条の2の6=情報の提供等)、同_20260521_505AC0000000063(第68条の2の6=情報の提供等)の各施行版で条見出しを確認
  • 薬機法 2027年5月20日施行版条文(e-Gov 版ID 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)第68条の2・第68条の2の6・第68条の2の8 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)