30秒でわかる、この記事の要点
- 卸売で扱うとは、その製品の説明を繰り返すことです。聞かなかったことは、聞かなかったまま医療機関へ渡ります。
- 聞くのは12項目です。中身に4つ、試験と書類に4つ、剤形・保管・表示・出所に4つ。
- 全項目に満点を求めるのではなく、答えられない項目がどれかを見ます。返ってこない答えそのものが、情報になります。
- 安さの理由は、薄さだけとは限りません。ロットごとの試験と書類を省けば、そのぶん価格は下がります。
卸売で扱うということは、その製品の説明を、医療機関に対して自分の言葉で繰り返すということです。供給元から受け取った資料をそのまま渡す場合も変わりません。渡した先で説明をするのは、供給元ではなく扱う側になります。
厚生労働省が2024年7月31日に出した事務連絡(役所が運用上の注意などを担当者あてに伝える文書)「エクソソーム試薬に係る監視指導について」は、指導の対象になる6つの類型を挙げています。その(6)には、試薬と称しながら試薬の用途とは異なる方法で販売するものが入ります。その例として、医療機関に治療等に使えると説明して販売するものが挙がっています[1]。表示だけでなく、売り方と説明そのものが見られています。医薬品と誤認させる製品などへの指導は、この6つの類型にも、エクソソーム等と称する製品にも限られません(記2・記3)。薬機法第66条第1項と第68条の広告の決まりも、名宛人を「何人も」としています[2]。許可の有無や、相手が医療機関かどうかでは限定されていません。この線引きは供給者の説明は、どこから「広告」になるかで条文と通知に沿って整理しています。
つまり、聞いていないことは説明できません。聞いて確かめたことだけが、根拠を示して説明できる範囲になります。以下の12項目は、そのための質問リストです。どの会社の製品を検討する場合でも、同じ形で使えます。まず、中身について聞く4項目からです。
1. 中身について聞く4項目
この4項目が尋ねるのは、製品そのものが何でできているかです。答えが数値と書面で返ってくるかどうかで、残りの項目に答えられる体制があるかも見えてきます。
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由来細胞は何か。ドナーの年齢・健康状態は開示されるか
なぜ聞くのか。一般社団法人日本再生医療学会が2024年4月30日に公表した「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」は、危険因子の例に「細胞基材(またはセルバンク)の由来・細胞種・培養条件・継代数(細胞を植え継いだ回数)」を挙げています[3]。ドナーに由来する感染のリスクは、完成した製品を調べても見つけられません。ウイルスは通常の無菌試験では検出されず、製造工程で除去できる保証もないためです。この層は、細胞を受け入れる前の検査で止めるほかありません。試験がどの層を見ているかは培養上清液の「安全性試験済み」はどこまで信用できるかで整理しています。
答えの読み方。「ヒト幹細胞由来」という表記だけでは、どの組織から採った何の細胞かは決まりません。ドナー個人の年齢や健康状態をどこまで開示するかは、供給元によって違います。確かめられるのは2点です。どの検査項目を行ったかが具体的に挙がっているか。その記録がドナー単位・ロット(同じ条件で一度に製造した単位)単位で残っているか。一般社団法人日本臨床培養上清研究会の「幹細胞培養上清安全性基準」も、審査項目の5領域の1つに細胞提供者を置いています[4]。
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培地に動物由来成分・血清を使っているか
なぜ聞くのか。同じガイダンスは、3-1の推奨項目で「動物由来成分を含まないXeno-freeの培地を使うべきである」としています[3]。同じ節は、ウシ胎児血清(FBS)を使った場合に、ウシ血清由来の細胞外小胞(細胞が出す、膜に包まれた微小な袋。エクソソームはその一種)が混じるおそれを挙げています。予期しない生物活性が出る可能性があるためです。
答えの読み方。「無血清」と「ゼノフリー」は別の軸です。血清を含まないのに動物由来成分が入っている培地も、その逆も実在します(培地の「〇〇フリー」4区分の読み方)。また「無血清」は、拡大培養(細胞を必要な数まで増やす工程)では血清入りの培地を使い、回収のときだけ切り替えた場合にも使える表現です。聞き方は「無血清ですか」ではなく「どの工程まで血清を使っていませんか」になります(供給元に確認すべき6項目)。超遠心で後から取り除く手順には、手法の原理からくる限界があります。ウシ胎児血清を100,000 g・4℃で24時間まわしても、除去できた総RNAは19〜33%でした[5]。残る理由はなぜウシ血清由来RNAは「後から除去」できないのかで説明しています。
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実測の総タンパク濃度(mg/mL)はいくつか。「N倍濃縮」ではなく実測値か
なぜ聞くのか。培養上清液は、薬機法の承認を受けた医薬品ではありません。濃度や濃縮倍率の表示方法を定めた公的な基準がないのは、そのためです。「5倍濃縮」と書かれていても、何を基準にした5倍かは分かりません。回収した上清液そのものなのか、培養に使った培地量なのか、その会社の標準品なのかで意味が変わります。日本臨床培養上清研究会の安全性基準にも、濃度・濃縮倍率・含有量に関する審査項目は置かれていません[4]。
答えの読み方。実測の総タンパク濃度と液量が分かれば、1本に入っている総タンパク量が出ます。ここが決まらないうちは、1mLあたりの価格を並べても比較になりません。薄めれば液量は増え、1mLあたりの金額は下がるからです(1mL単価で比べると損をする理由)。あわせて、その数値がロットごとの実測か、製品共通の代表値かを確かめてください。ロット別の品質成績書(COA。そのロットを実際に試験した結果をまとめた書面)に載っているかどうかが目安になります。
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粒子数を示すなら、測定法・希釈率・計数対象は書かれているか
なぜ聞くのか。国際細胞外小胞学会の報告指針 MISEV2023 は、血漿中の細胞外小胞濃度の報告値が、測定法によって6桁(およそ100万倍)の幅を持つと述べています[6]。誤差ではありません。手法ごとに見えているものが違うために起きる差です。同指針は、手法が細胞外小胞に対して高い特異性を持つのでない限り、測定の出力は「粒子」または「細胞外粒子」に関するものとして記述されるべきだとしています。
答えの読み方。測定法の記載がない数字は、他社の数字と比べる意味を持ちません。「エクソソーム〇〇兆個」と書かれていても、同じ大きさのタンパク質の凝集体やリポタンパク粒子まで含めて数えている可能性があります。希釈してから測った場合、表示される数値は希釈の倍率を掛け戻した計算値です。倍率が書かれていなければ、計算の前に何をどの範囲で測ったのかを確かめられません。日本再生医療学会のガイダンスは、粒子数とタンパク量の両方に相関があることが望ましいとしています[3]。片方だけでは、粒子の中身が薄いのか濃いのかが分かりません。測定法ごとの見落としと数えすぎはエクソソームの「〇〇兆個」は本当に信用できるかにまとめています。
売り方と説明が判断の材料に入るという考え方は、古い通知にもあります。1971年6月1日の通知の別紙「医薬品の範囲に関する基準」は、その柱書で判断材料を並べています。成分本質(原材料)、形状、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、販売の際の演述(売るときの説明)です。末尾に「等」を付け、総合的に判断すべきものとしています[7]。ただし、この基準が対象として書いているのは、人が経口的に服用する物です。「研究用」という表示がこの枠組みでどう扱われるかは、「研究用」と書けば、薬機法の医薬品にあたらないのかで扱っています。
2. 試験と書類について聞く4項目
ここからの4項目は、製品そのものについて聞く質問です。いずれも供給元が書面で答えられる内容です。口頭の「実施しています」だけでは、確かめたことになりません。
4項目には共通する軸が1つあります。その数字が、届いたロット(同じ条件で一度に製造した単位)を測った値か、製品共通の代表値かという軸です。製品共通の代表値とは、過去のどこかのロットを測った結果や、カタログに載っている1つの数字を指します。手元の箱の中身を測ったものではありません。ロットごとに測っていなければ、いま届いた製品について言えることは何もありません[9]。
- 無菌試験は、ロットごとに行っていますか。代表ロットだけではありませんか。
無菌試験は、検体を培地で培養して微生物が増えてくるかを見る試験です[9]。増えるかどうかは、その検体ごとの結果です。別のロットで増えなかったことは、このロットの結果にはなりません。
当社は無菌試験を全ロットで実施し、第十八改正日本薬局方の直接法に準拠しています[8]。
この項目は、価格にも直結します。ロットごとに測れば、ロットごとに試験費用がかかります。代表ロットだけで出荷すれば、その費用は生じません。見積もりの安さの理由が、希釈ではなくここにある場合があります[10]。安いことの説明にはなりますが、得であることの説明にはなりません。
- エンドトキシンの規格値はいくつですか。そのロットの実測値はいくつですか。
エンドトキシン(細菌に由来する発熱性物質)は、グラム陰性菌(外膜を持つ種類の細菌)の細胞壁の成分です。菌が死んだあとも残ります。つまり、無菌試験に適合していてもエンドトキシンは含まれ得ます[9]。無菌試験とは別に聞く必要があるのは、このためです。
聞くのは2つの数字です。規格値は、出荷してよいかどうかを分ける線です。実測値は、そのロットで実際に出た値です。規格値だけを示す資料は、線の位置を教えているだけで、届いた製品がどこにあるかは教えていません。
「0.1 EU/mL 未満」のような表記を見たときは、その「未満」が規格値なのか、検出限界(その測定系で検出できる下限)なのかを確認します。感度の低い測定系ほど、大きな数値でも「未満」と書けてしまいます[9]。実測値が「未満」の形でしか出せない場合は、何を下限とする測定系かを聞いてください。
もう1つ、EU/mL は液量あたりの値です。フリーズドライ品のように溶かして使うものは、何mLで戻すかによって値が動きます。何mLに溶かした状態の数字かまで確認します[9]。当社は規格値を 0.1 EU/mL 未満とし、LAL法(カブトガニの血球抽出成分を使う測定法)で全ロット測定して、ロット別のCOAに記載しています[8]。
- マイコプラズマ検査は、どの方法で行っていますか。
マイコプラズマ(細胞壁を持たない非常に小さな細菌)は、通常の無菌試験の培養条件では検出されません[9]。だから別の試験が要ります。ここまでは項目5・6と同じ理屈です。
この項目で方法まで聞くのは、「マイコプラズマ検査を実施」という一文からは、何で調べたかが読み取れないためです。書面で確認したいのは、方法の名称と、その結果がロットごとに記録されているかどうかです。当社はPCR法(DNAの特定の部分を増やして検出する方法)で陰性を確認し、結果をロット別のCOAに記載しています[8]。
- COAはロット別に発行されますか。それは医療機関の手元まで届きますか。
COA(Certificate of Analysis/品質成績書)は、そのロットを実際に試験した結果を記した文書です[9]。項目5から7までの答えを確かめられるかどうかは、結局ここに集約されます。項目名の一覧ではなく、ロット番号の入った報告書そのものを請求してください。出せるかどうかで、運用の実態が分かります[9]。
卸売で扱う場合は、経路の問題がもう1つ加わります。製品は製造元から取扱事業者を経て医療機関へ渡ります。COAが取扱事業者のところで止まれば、使用を判断する医療機関の手元には何も残りません。届いたバイアルのラベルのロット番号と、手元のCOAのロット番号が一致するかどうかも、その場で照合できる形にしておきます。当社はロット別のCOAを発行し、製品に同梱してお届けしています。記載しているのは、無菌試験・エンドトキシン・マイコプラズマ・タンパク濃度の結果です[8]。
この項目も、価格に直結します。ロット別のCOAを出すには、ロットごとの試験と記録の費用がかかります。付けなければ、そのぶん安く売れます[10]。同じ金額の2製品があったとして、片方にロット別のCOAが付くなら、その2つは同じものではありません。
「ロット別」と「製品共通の代表値」の違いが意味すること
この4項目を通して、答えは2通りに分かれます。ロット別の値が返ってくるか、製品共通の代表値が返ってくるかです。
ロット別の値は、いま手元にある製品を測った結果です。数字が規格を外れれば、そのロットは出荷されません。試験は、出荷の可否を決める工程の一部として働いています。
製品共通の代表値は、その製品が過去に作られたときの記録です。製法が同じであることの説明にはなります。ただし、届いたロットで何が起きたかは含まれていません。代表値だけで運用している場合、試験は出荷の可否を決める工程には組み込まれていないことになります。
どちらを選ぶかは取り扱う側の判断です。判断の前に、いま見ている数字がどちらなのかを確かめておく必要があります。
3つの試験がそれぞれ何を検出し、何を検出しないかは培養上清液の「安全性試験済み」はどこまで信用できる?に、価格差の読み方は1mL単価で比べると損をする理由にまとめています。試験以外も含めた確認項目は供給元に確認すべき6項目をご覧ください。なお、試験結果の文書に効能効果の説明を添える場合は、資料全体の扱いが変わることがあります。その線引きは供給者の説明は、どこから「広告」になる?で扱っています。
3. 剤形・保管・表示・出所について聞く4項目
ここまでの8項目は、中身そのものを尋ねるものでした。残りの4項目は、その中身がどんな形で届き、何と呼ばれて売られ、どこで作られたかを尋ねます。中身が同じでも、この4つが違えば、受け取った施設の側でやることが変わります。
- フリーズドライなら、ラベルの「1mL」は乾燥前の液量か、戻すときの液量か。賦形剤は加えているか。 フリーズドライ(凍結乾燥。凍らせたまま氷を水蒸気にして抜く乾燥法)のバイアルに入っているのは粉で、液量は残っていません。ですからラベルの「1mL」には2通りの読み方があります。乾燥する前の液が1mLだったという意味か、使うときに1mLで戻すという意味かです。何mLで戻すかを使う側が決める製品では、液量は仕様として決まっていません。あわせて賦形剤(乾燥後のかたまりの形を保つために加える添加物)の有無と種類を聞きます。凍結乾燥では、固形分の少ない液ほど賦形剤を加えてかたまりの形を作るのが通常の製剤設計です。培養上清液の乾燥固形分には、もともと培地由来の塩と糖も含まれます[16]。バイアルの底に見える粉の量は、中身の量を表しません。剤形ごとの価格の読み方は幹細胞培養上清液は1mL単価で比べると損をする理由に、工程そのものはフリーズドライ(凍結乾燥)はなぜ「氷のまま」乾かせるのかにまとめています。
- 保管と輸送の条件は何度か。その条件は、実際に測った記録で裏づけられているか。 保管の条件と輸送の条件は、別に決まります。常温で保管できる製品でも、輸送中の温度は運ぶ側が管理する話です。聞くのは3つです。保管の上限温度と暗所の要否。配送の便と、到着までの温度を誰が管理するか。有効期限の起点。有効期限は製造日を起点とするのが一般的で、納品の時点で製造から経過した分だけ、手元での残存期間は短くなります。「有効期限2年」という表示だけでは、届いたバイアルに何か月残っているかは分かりません。カタログの数字は設計上の条件であって、実測値とは限りません。保管温度での安定性の試験結果と、輸送中の温度の記録が出るかまで確かめます。保管条件と配送条件の切り分けは培養上清液の保管に冷凍庫は必要かで整理しています。
- その製品は、何として供給されているか。効能効果の説明が付いていないか。 まず、研究用試薬として供給されているのかを確かめます。ただし「研究用」という表示だけで、薬機法の外に出るわけではありません。薬機法は医薬品を、成分ではなく物の「目的」で定めています(第2条第1項第2号・第3号)[11]。厚生労働省の通知は、その目的を判断する材料として、成分本質(原材料)、形状、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、販売の際の演述を挙げています。末尾に「等」を付けたうえで、これらを総合的に判断すべきものとしています[12]。表示は、材料の1つです。2024年7月31日の事務連絡は、エクソソーム試薬について指導の対象を6つ挙げました。その(6)には、試薬としての使用目的が明示されていないものが入ります。医療機関に対し、疾病の治療等の目的のために使用できる旨説明して販売するものも、同じ(6)に挙げられています[13]。「研究用」と書くか書かないかという軸では、答えが出ない作りです。カタログ・営業資料・ウェブページを取り寄せて、効能効果を示す記述がないかを見ます。条文と通知の追い方は「研究用」と書けば、薬機法の医薬品にあたらない?と供給者の説明は、どこから「広告」になる?にあります。
- 輸入品なら、どこの誰が作ったものか。製造環境は確かめられるか。 製造者の名称と所在地、製造施設、ロットごとの試験を行った機関を尋ねます。「海外で医薬品として承認されている」という説明は、日本で承認を受けていることを示しません。2024年7月31日の事務連絡は、諸外国において医薬品として承認等されている旨が説明されているものを、指導の対象の1つに挙げています(記1(2))。同じ事務連絡は、その時点でエクソソーム等と称する製品に薬機法の承認を受けた医薬品は存在しないとして、留意を求めています(記2)[13]。製造環境については、「クラス10,000」という表示そのものより、その数字の裏づけを聞きます。部屋の値か、作業面の値か。誰もいないときの値か、人が作業しているときの値か。浮遊粒子の測定記録が定期的に出ているか。数字の読み方はクリーンルームの「クラス10,000」とは何かに、輸入と紹介の場面は海外製品を扱う・紹介するとき、薬機法はどう関わる?にまとめています。
11と12は、扱う側にも跳ね返る
効能効果の説明は、供給元だけの問題ではありません。薬機法第66条第1項と第68条は、どちらも「何人も」で始まります[11]。業の許可の有無でも、相手が医療機関かどうかでも限定されていません。
広告にあたるかどうかは、3つの要件で判断されています。客を呼び込む意図が明確であること(顧客誘引性)。特定の医薬品等の商品名が明らかにされていること(特定性)。一般人が認知できる状態にあること(一般認知性)です[14]。会員専用のログインを求めても、そのことだけでネット上の表示が広告にあたらないことにはなりません[15]。
供給元から受け取った資材を、そのまま自社の資料やサイトに載せれば、その説明は自社のものになります。11で効能効果の記述を確かめるのは、供給元を選ぶためだけではありません。
試験の中身は培養上清液の「安全性試験済み」はどこまで信用できる?に、培地と血清の確認は培養上清液の「無血清」は本当に無血清?にまとめています。
12項目をどう使うか
この12項目は、全部に満点の回答を集めるための表ではありません。見るのは、答えられない項目がどれかです。
答えが返らない理由は、たいてい2つに分かれます。測っていないか、知らされていないかです。後者は、その会社が自社で製造していない場合に起こります。どちらも、供給元がその製品について持っている情報の範囲を示します。答えが返らないこと自体が、情報です。
返り方は、おおむね3通りです。数値や書面がその場で出る。確認して折り返すと言って、実際に返ってくる。質問そのものが流される。3つ目は、答えられないという答えとして受け取れます。
聞き方も結果を変えます。口頭ではなく、メールなど記録の残る形で尋ねます。回答は書面で受け取ります。COAは製品共通のカタログ値ではなく、これから納品されるロットのものを請求します。
そのうえで、答えの返らなかった項目が自施設にとってどれだけ重いかで判断します。重みは施設によって変わります。冷凍設備のない施設にとって、10は重い項目です。12項目すべてに満点を求めると、候補が残らないこともあります。
当社の場合
当社の幹細胞セクレトームは、研究用試薬として医療機関と取扱事業者へ供給しています。医薬品としての承認を受けたものではありません。
無菌試験・エンドトキシン測定・マイコプラズマ検査・タンパク濃度の結果をロット別のCOAに記載し、製品に同梱します。製造は東京・銀座のCPC(細胞培養加工室)で、ドナー選定から充填まで一貫して行っています。作業室はクラス10,000、その中に置いた安全キャビネットの作業空間はクラス100です。製造施設は見学を受け付けています。
剤形はフリーズドライと液体凍結の2つです。フリーズドライ品は1mLにつき1mL程度の純水または生理食塩水で戻す仕様で、戻したあとの液量が決まっています。発注は最小10本(1箱)から、平日14時までのご注文で最短翌日にお届けします(東京都内は翌日午前中、その他の地域は2営業日以内)。
取引条件は卸売供給に、製品仕様は幹細胞セクレトームにまとめています。この12項目は、当社に対しても同じようにお尋ねください。
よくあるご質問
12項目すべてに答えられる供給元でないと、取り扱ってはいけませんか。
そうではありません。この一覧は合否を付けるためのものではなく、何が分かっていて何が分かっていないかを整理するためのものです。答えが返らない項目があるなら、その不確かさを自分が引き受けたうえで扱うことになります。
どの項目がいちばん重いですか。
扱う目的によって変わりますが、書類の面では8番(COAがロット別に出るか)、中身の面では3番(実測の総タンパク濃度)が起点になります。この2つが押さえられていないと、ほかの答えを比べる土台がありません。
見積もりの段階で、ここまで聞いてよいものですか。
構いません。むしろ見積書と一緒にロット別のCOAを請求すると、製品共通の代表値しか返ってこないのか、ロット別のものが出てくるのかが一度に分かります。
自社で試験をやり直す必要はありますか。
この一覧は、供給元が示す記録を読むためのものです。自社で試験を行うかどうかは別の判断になります。ただし、示された数値がどの方法で測られたものかを確認しないまま、そのまま医療機関へ伝えることは避けてください。
出典
- [1] エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課)記1(6)、記2、記3
- [2] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第66条第1項、第68条
- [3] 日本再生医療学会(協力:日本細胞外小胞学会)「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」2024年4月30日(1-2 危険因子の例、3-1 推奨項目「EVs以外の混入物質の評価」、粒子数とタンパク量の相関)
- [4] 一般社団法人日本臨床培養上清研究会「幹細胞培養上清安全性基準」および認定製品一覧
- [5] Wei Z, Batagov AO, Carter DR, Krichevsky AM. Fetal Bovine Serum RNA Interferes with the Cell Culture derived Extracellular RNA. Sci Rep. 2016;6:31175. doi:10.1038/srep31175
- [6] Welsh JA, et al. Minimal information for studies of extracellular vesicles (MISEV2023): From basic to advanced approaches. J Extracell Vesicles. 2024;13(2):e12404.(国際細胞外小胞学会 ISEV)第5.1節
- [7] 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」柱書
- [8] 株式会社TechnoCell「幹細胞セクレトームの標準仕様」および「品質管理体制(Release tests)」(/secretome・/wholesale、2026年9月30日確認)。無菌試験=全ロット実施(第十八改正日本薬局方の直接法に準拠)、エンドトキシン測定=LAL法・規格値 0.1 EU/mL 未満・全ロット測定しロット別COAに記載、マイコプラズマ検査=PCR法で陰性を確認、COA=ロット別に発行し製品へ同梱(記載項目は無菌試験・エンドトキシン・マイコプラズマ・タンパク濃度)
- [9] TechnoCell 技術資料「培養上清液の『安全性試験済み』はどこまで信用できる? — 無菌試験だけでは足りない理由」(/knowledge/safety-testing、2026年9月4日更新)
- [10] TechnoCell 技術資料「幹細胞培養上清液は1mL単価で比べると損をする理由 — 見るべきは1本の価格ではなく濃さと中身」(/knowledge/wholesale-price-per-ml、2026年9月4日更新)※「検査を省けば、そのぶん安くなる」
- [11] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項第2号・第3号、第66条第1項、第68条(e-Gov 法令検索。法令確認日 2026-09-08)
- [12] 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号。最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」柱書(厚生労働省)
- [13] エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 事務連絡。厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課)記1(2)・記1(6)・記2
- [14] 薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号。厚生省医薬安全局監視指導課長通知)
- [15] インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について(平成26年5月22日 薬食監麻発0522第9号)別添 A3
- [16] Thermo Fisher Scientific「DMEM, high glucose(11965)」培地組成表(培養上清液の乾燥固形分に培地由来の塩と糖が含まれることの根拠。/knowledge/wholesale-price-per-ml が同じ出典を用いている)
本記事は、供給元へ確認する項目を整理したものです。当社の幹細胞セクレトーム(細胞が培養中に分泌した成分の総体)は研究用試薬として供給しており、特定の疾患に対する効果を示すものではありません。