30秒でわかる要点
- 通販の広告には、価格や支払の方法、事業者の名称などを表示する:価格(送料が別なら送料も)、支払の時期と方法などは、法第11条第1号から第6号までが挙げています。事業者の名称・住所・電話番号などは、第6号を受けた施行規則(法律の細かい事項を大臣が定めた命令)第23条第1号から第10号までが挙げています。書き方は規則第24条、一部を表示しないでよい場合は規則第25条にあります。
- 2022年6月1日からは、申込みの画面にも表示義務:申込みを受ける画面や書面には、分量と、法第11条第1号から第5号までの事項を表示します(第12条の6)。この義務への違反は、申し込んだ人が申込みを取り消せる権利(第15条の4の取消権)に結び付いています。表示をしない・事実と違う表示をしたときは、第70条第2号の罰則もあります。
- 違反には、行政処分と罰則の2本立て:行政処分は、第14条の指示(違反を正す措置をとるよう求める処分)と公表、第15条の2年以内の業務停止命令です。罰則は第70条から第74条までにあります。第74条第1項は両罰規定(違反した人だけでなく、その人が属する会社も罰する決まり)です。業務停止命令などへの違反(第70条第3号)について、3億円以下の罰金を置いています。
1. どんな取引が「通信販売」で、表示の義務は誰にあるのですか?
郵便や電話・ネットなどで申込みを受ける販売やサービスの提供で、電話勧誘販売を除くものです(第2条第2項)。表示の義務は、販売業者と役務提供事業者(サービスを提供する事業者)にあります。
買い手が営業のために、または営業として結ぶ契約など、第26条第1項が挙げる取引には、通信販売についての規定が適用されません。
特定商取引法は、規制の対象になる取引の種類ごとに節を分けています。通信販売は、そのうちの1つです。
どの取引が通信販売にあたるかは、法第2条第2項が定めています。販売業者や役務提供事業者が、「郵便等」で申込みを受けて行う取引です。対象は、商品や特定権利(法律が定める一定の権利)の販売と、役務(サービス)の提供です。ただし、電話勧誘販売にあたるものは除かれています。
表示の義務を負うのは、通信販売をする販売業者と役務提供事業者です。買い手の側に、表示の義務は置かれていません。
例
あるクリニックが、自院のサイトで化粧品の注文を受ける場面を考えます。このクリニックは販売業者として、第11条の表示義務の名宛人(義務の対象になる人)になり得ます。
中心になる条文は第11条です。通信販売の条件について広告をするときに、決められた事項を表示するよう求めています。
原文で確かめる(第11条の書き出し)
第11条の後半(「ただし」以下)は、一部を表示しないでよい場合の定めです。2.の節で説明します。
条文の「主務省令」は、第67条第4項により、内閣総理大臣と経済産業大臣が共同で出す命令とされています。これが特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)です。表示する事項の細かい中身は、この省令(以下「施行規則」または「規則」)に置かれています。
「郵便等」に何が入るか
申込みを受ける方法の「郵便等」は、施行規則第2条が4つに分けて定めています。郵便や信書便(国の許可を受けた民間の事業者が手紙などを届けるもの)、電話やファクシミリ・パソコンなどの機器を使う方法、電報、口座への払込みです。
原文の言い回しを見る(施行規則第2条)
- 第1号:郵便又は信書便
- 第2号:「電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器又は情報処理の用に供する機器を利用する方法」
- 第3号:電報
- 第4号:預金又は貯金の口座に対する払込み
消費者庁の「特定商取引法ガイド」は、通信販売の項目の下に「インターネットで通信販売を行う場合のルール」という項を置いています。
通信販売の規定が適用されない取引
第26条第1項は、同項の各号に挙げる販売やサービスの提供には、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の節(条文では「前三節」)の規定を適用しないとしています。第1号から第3号までは次のとおりです。
- 申込みをした人、買う人、サービスを受ける人が、営業のために、または営業として結ぶ契約にかかる販売やサービスの提供(第26条第1項第1号。条文では「営業のために若しくは営業として締結するもの」)
- 日本の外にいる人への販売やサービスの提供(第2号)
- 国や地方公共団体が行う販売やサービスの提供(第3号)
同じ表示に景品表示法や薬機法が重ねて働く場面の整理は、『7-10 1つの広告や表示に、どの法律がかかり得る?』にあります。このページは特定商取引法の側だけを扱います。
2. 広告に表示する事項は、どこに、何が書かれているのですか?
法第11条と施行規則第23条にあります。価格(送料が別なら送料も)、支払の時期と方法、引渡しなどの時期、撤回・解除に関する事項、事業者の名称や住所などです。
請求があれば書面やデータを遅滞なく(時間をおかずに)渡すと広告に表示するときは、規則第25条の定めに従って一部を表示しないことができます(第11条ただし書)。
表示する事項は、2つの条文に分かれて置かれています。法第11条は、第6号を「前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項」とし、細かい事項を省令に任せています。これを受けて書き込んでいるのが施行規則第23条です。法律が枠を決め、省令が枠の中を書き込む形です。
表示する事項のあらまし
条文の言葉を短くまとめると、次の4つのまとまりになります。正確な文言は、下の表1で確かめられます。
- お金と時期:販売価格(送料が含まれないなら送料も)、代金の支払の時期と方法、引渡し・移転・提供の時期(法第11条第1号〜第3号)。ほかに買い手が負担するお金があれば、その内容と額(規則第23条第4号)
- 申込みと契約の条件:申込みの期間の定めがあればその内容、申込みの撤回や契約の解除に関する事項(法第11条第4号・第5号)。2回以上続けて契約する必要があるときの条件、販売数量の制限など特別な条件(規則第23条第7号・第8号)
- 事業者の情報:氏名または名称・住所・電話番号(規則第23条第1号)。法人がネットで広告するときは、代表者か通信販売の業務の責任者の氏名(第2号)。外国の事業者が国内に事務所などを持つときは、その場所と電話番号(第3号)。広告メールを送るときは、電子メールアドレス(第10号)
- そのほか:品物が種類や品質について契約の内容に合わないときの、販売業者の責任についての定めがあれば、その内容(規則第23条第5号)。ソフトウェアなどを使うために必要な、パソコンの仕様や性能などの条件(第6号)。表示を省いて渡す書面などの費用を負担させるときは、その額(第9号)
原文で確かめる(表1:条文の文言)
| 根拠条項 | 表示すべき事項 |
|---|---|
| 法第11条第1号 | 商品若しくは |
| 法第11条第2号 | 商品若しくは |
| 法第11条第3号 | 商品の |
| 法第11条第4号 | 商品若しくは |
| 法第11条第5号 | 商品若しくは |
| 法第11条第6号 | 前各号に |
| 規則第23条第1号 | 販売業者又は |
| 規則第23条第2号 | 販売業者又は |
| 規則第23条第3号 | 販売業者又は |
| 規則第23条第4号 | 法第11条第1号に |
| 規則第23条第5号 | 引き渡された |
| 規則第23条第6号 | 磁気的方 |
| 規則第23条第7号 | 商品若しくは |
| 規則第23条第8号 | 前四号に |
| 規則第23条第9号 | 広告の |
| 規則第23条第10号 | 通信販売電子 |
表中の文言は条文から写しています。ただし、定義や読替えの括弧書きの一部を「(略)」等として省き、条番号の漢数字は算用数字に直しています。正確な文言は各条項を参照してください。各行は特定商取引に関する法律(版ID 351AC0000000057_20260812_508AC0000000064、施行日 2026-08-12)および同法施行規則(版ID 351M50000400089_20260521_508M60000402002、施行日 2026-05-21)の条文によります。
例
冒頭の「特定商取引法に基づく表記」の欄を、健康食品を通信販売するA社のサイトで考えます。A社が、2回以上続けて契約を結ぶ必要がある売り方をしているとします。その場合は、その旨と金額、契約期間などの販売条件も、表示する事項に挙がっています(規則第23条第7号)。
A社が法人でネットで広告しているなら、代表者か通信販売の業務の責任者の氏名も挙がっています(規則第23条第2号)。
第11条の号の数を5つとする説明を見かけることがあります。現行の条文では6つです。
古い説明と、現行の条文の違い
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
特定商取引法第11条が広告に表示させる事項は5つで、第4号が申込みの撤回・解除に関する事項、第5号が「主務省令で定める事項」。
現行
第1号から第6号までの6つ。第4号として「申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容」が置かれ、撤回・解除に関する事項は第5号、「主務省令で定める事項」は第6号になっている。第5号は売買契約だけでなく役務提供契約も対象に含む。
e-Gov 法令検索で、令和3年法律第72号の施行前の版(版ID 351AC0000000057_20220525_504AC0000000048、施行日 2022-05-25)と現行版(版ID 351AC0000000057_20260812_508AC0000000064、施行日 2026-08-12)の第11条を照合して確認(2026-09-08)。
書き方の決まり(規則第24条)
何を書くかだけでなく、書き方にも3つの決まりがあります。
- 送料は、金額で表示する(第1号)
- 引渡しや提供の時期は、期間または期限で表示する(第2号)
- 申込みの撤回や契約の解除に関する事項は、見やすい箇所にはっきり読めるように表示するなど、顧客が容易に気づけるように表示する。第15条の3第1項ただし書の特約があれば、その内容も含む(第3号)。この特約は、申込みの撤回や契約の解除(撤回等)ができるかどうかや、その条件の定めです(6.の節で説明)
一部を表示しないでよい場合(規則第25条)
第11条のただし書は、例外を置いています。請求があれば、表示事項を書いた書面を遅滞なく渡すか、データ(電磁的記録)を遅滞なく提供する、と広告に表示する場合です。このときは、事項の一部を表示しないことができます。
どこまで省けるかは、施行規則第25条が決めています。第25条第1項と第2項は、買い手が負担するお金を広告に全部表示しない場合と、全部表示する場合とに分けています。
- 負担するお金を全部表示しない場合(第1項):次の事項の一部を表示しないことができます。法第11条第1号から第3号まで(価格、支払の時期と方法、引渡しなどの時期)、第5号(撤回・解除)と第6号(省令で定める事項)です。
- 負担するお金を全部表示する場合(第2項):法第11条第2号・第3号(支払の時期と方法、引渡しなどの時期)、第5号・第6号の事項の一部を表示しないことができます。
どちらの場合も、省けない事項が決められています。
詳しく見る(第25条の細かい条件)
第1項・第2項とも、括弧書きで、省ける対象から除いているもの(つまり省けないもの)があります。規則第23条第6号から第10号までの事項です。法第15条の3第1項ただし書の特約があるときは、撤回等ができるかどうか、できる期間などの条件、商品などの引取りや返還の費用の負担に関する事項も除かれます。第2項は、さらに規則第23条第4号も除いています。
第2項のただし書は、次の3つについて「この限りでない」としています。第2項の場合でも、これらは省けないということです。
- 商品を渡す前などに、代金の全部か一部を支払う場合の、代金の支払時期
- 申込みを受けた後、遅滞なく商品を送らない、権利を移さない、またはサービスを提供しない場合の、法第11条第3号の事項
- 品物が種類や品質について契約の内容に合わないときに、販売業者がその責任を負わない場合の、販売業者の責任に関する事項
同条第3項は、ネットなど電子情報処理組織を使って広告をする場合の定めです。決められた3つの方法で、法第11条各号の事項の一部を提供すると表示するときは、その一部を表示しないことができます。第4項第2号は、そのうち顧客ファイルに記録して見られるようにする方法について、記録した時から6月間、消したり書き換えたりできないものであることを求めています。
3. 広告に書いてはいけないことは、決まっているのですか?
第12条が決めています。著しく事実と違う表示と、実際より著しく優良・有利だと人を誤認させる表示を禁じています。対象の事項は施行規則第26条が挙げています。
裏付けの資料を求められて出さないと、指示や業務停止命令の場面では、その表示は実際にどうかを問わず第12条の表示とみなされます(第12条の2)。
第11条が「何を書くか」を求めるのに対し、第12条は「どう書いてはいけないか」を定めています。名宛人は、第11条と同じく販売業者と役務提供事業者です。
禁じられている表示は、次の2つです。
- 事実と大きく違う表示(条文では「著しく事実に相違する表示」)
- 品質などが実際よりずっと良い、または条件が実際よりずっと得だと、人に思い込ませるような表示(条文では「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」)
どの事項についての表示が対象になるかは、条文の末尾で「主務省令で定める事項」に任されています。施行規則第26条が、次の4つを挙げています。
- 商品の種類・性能・品質・効能、サービスや権利の種類・内容・効果など(第1号)
- 国、地方公共団体、通信販売協会、そのほかの有名な団体や個人が、商品や事業者などにかかわっていること(第2号)
- 商品の原産地や製造地、商標、製造者名(第3号)
- 法第11条の各号の事項(第4号)
施行規則第26条第4号により、第11条で表示させる価格・支払の時期・引渡しの時期・申込みの期間・撤回や解除に関する事項も、第12条の対象です。表示しなければならない事項と、誤認させてはならない事項は、ここで重なります。
原文で確かめる(第12条)
例
化粧品を通信販売するA社が、実際には受けていない有名な団体の推薦を、受けたかのように広告に書く場面を考えます。施行規則第26条が挙げる2つ目の事項(有名な団体などの関与)についての表示として、第12条が問題になり得ます。
裏付けの資料を出さないとき(第12条の2)
主務大臣(この法律で権限を持つ大臣。7.の節で説明します)は、第12条の表示にあたるかを判断するために必要があると認めるときに、資料の提出を求めることができます。表示をした事業者に、期間を決めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を出すよう求めるものです。
事業者が資料を出さなかったときは、その表示は第12条の表示に該当するものと「みなす」とされています。
ただし、みなしが働くのは、第14条第1項(指示)と第15条第1項(業務の停止等)を適用する場面に限られています。
原文で確かめる(第12条の2)
同じ構造の規定が景品表示法第7条第2項にあり、その条文と運用指針の内容は『7-3 広告に書いた効果・性能の根拠を示せないと、どうなる?』で扱っています。第12条の「著しく事実に相違する表示」などの文言と、景品表示法第5条第1号・第2号の文言との違いは『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』にあります。
4. 申込みを受ける画面には、何を表示するのですか?
分量と、価格(送料が別なら送料も)、支払の時期と方法、引渡し・移転・提供の時期、撤回・解除に関する事項など、法第11条第1号〜第5号の事項です(第12条の6)。
申込みになることや、これらの事項について、人を誤認させる表示も禁じられています(第2項)。
第12条の6は、法改正で新しく設けられた規定です。2022年6月1日から施行(効力を持ち始めること)されています。
第12条の6が対象にするのは、広告一般ではありません。「特定申込み」を受ける場面です。特定申込みは、次の2つの申込みをまとめた呼び方です。
- 事業者(またはその委託を受けた者)が様式を決めた書面で、顧客が行う申込み
- 事業者などがパソコンやスマホなどの画面に表示する手続に従って、顧客が行う申込み
この書面や画面には、次の事項を表示しなければなりません(第1項)。
- 商品・特定権利・サービスの分量(第1号)
- 法第11条第1号から第5号までの事項。価格(送料が別なら送料も)、代金の支払の時期と方法、引渡し・移転・提供の時期、申込みの期間の定め(あれば)、撤回や解除に関する事項です(第2号)
あわせて第2項は、この書面や画面で、次の2つについて人を誤認させるような表示を禁じています。
- 書面を送ることや画面で送信することが、申込みになること(第1号)
- 第1項で表示する事項(第2号)
原文で確かめる(第12条の6)
第12条の6が申込みの場面で改めて求めるのは、第11条のうち第1号から第5号までです。第11条第6号(施行規則第23条の各号)は、この場面の表示事項に挙げられていません。
直感的なポイント
買い物にたとえると、第11条の広告は商品棚の値札、第12条の6の申込み画面はレジで支払う前の明細にあたります。価格や支払の条件などが、見る場面と申し込む場面の2か所で示される仕組みです。
例
冒頭の通販サイトで、買い手がカートに商品を入れ、最後の確認画面に進んだ場面を考えます。この画面は、特定申込みの手続が表示される画面にあたり得ます。あたる場合は、第12条の6第1項により、分量や価格、支払の時期と方法、引渡しの時期などの表示が求められます。
ボタンを押すことが申込みになることについて、人を誤認させるような表示は、第2項第1号の問題になり得ます。
申込み内容の確認・訂正は、別の条文にある
申込みの内容を確認・訂正できるようにしていないことは、第12条の6ではなく第14条で扱われています。第14条第1項第2号は、顧客の意に反して申込みをさせようとする行為を、指示の対象に挙げています(条文では「顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの」)。
施行規則第42条第1項は、その行為を定めています。電子契約(画面の手続に従って申し込む契約)の申込みを受けるときに、顧客が操作する際、申込みの内容を容易に確認・訂正できるようにしていないことです。
例
ネットの申込みで、確定の前に数量や内容を確かめたり直したりする手段が無い場面を考えます。この場面は、第14条第1項第2号の指示の対象として問題になり得ます。
消費者庁の特定商取引法ガイドは、ここまでの2つの決まりを、次のように説明しています。
事業者が定める様式等(申込書面や最終確認画面)に基づいて申込みの意思表示が行われる場合には、その申込み段階において、一定の事項を表示しなければならないほか、そこで誤認させるような表示を行うことも禁止されており、違反した場合には行政処分や罰則の対象となります(法第12条の6)。 また、インターネットで行う通信販売の場合には、最終確認画面において、顧客が申込みの内容を容易に確認し及び訂正することができるようにしていない場合には、顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為として、行政処分の対象となります(法第14条第1項第2号、省令第16条第1項)。
消費者庁「ガイドライン|通信販売|特定商取引法ガイド」同じページは、申込み段階の表示の詳しい解釈について「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」を策定していると記しています。この記事はそのガイドライン本体を参照していないため、内容には触れません。
上に引いた消費者庁のページは、2026年9月8日に閲覧した時点で「省令第16条第1項」と記しています。同じ規定は現行の施行規則では第42条第1項です。条文を引くときに版と条番号をどう確かめるかは法令・通知の読み方、ほかの分野で同じ種類の食い違いが起きている箇所は『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』にまとめています。
施行規則の条番号が動いた経緯
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
通信販売の広告表示事項の細目は施行規則第8条、誇大広告等の禁止の対象事項は第11条、顧客の意に反して申込みをさせようとする行為は第16条第1項。
現行
同じ規定は施行規則第23条、第26条、第42条第1項にある。2023年6月1日施行の版から、通信販売の節の条番号がこの位置に動いている。
e-Gov 法令検索で、版ID 351M50000400089_20220601_504M60000402001(施行日 2022-06-01、令和4年内閣府・経済産業省令第1号)では第8条・第11条・第16条、版ID 351M50000400089_20230601_505M60000402002(施行日 2023-06-01、令和5年内閣府・経済産業省令第2号)および現行の版ID 351M50000400089_20260521_508M60000402002(施行日 2026-05-21)では第23条・第26条・第42条であることを照合して確認した。あわせて同法令(法令ID 351M50000400089)の改正沿革を取得し、施行日順の全9版のうち2022年6月1日施行の版の次が2023年6月1日施行の版で、その間に別の版が無いことを確認した(いずれも2026-09-08)。
5. 承諾のない相手に、通販の広告メールやファクシミリ広告を送れますか?
通信販売の広告としては、原則として送れません。電子メール広告は第12条の3、ファクシミリ広告は第12条の5が、承諾のない送信を禁じ、承諾や請求の記録を作って保存するよう求めています。
電子メール広告の記録は、その相手に広告メールを送った日から3年間保存します(施行規則第30条第2項)。
ここでいう電子メール広告は、通信販売の条件について送る広告メールのことです(条文では「通信販売電子メール広告」)。まず電子メールから見ます。
承諾のない送信の禁止と、3つの例外(第1項・第2項)
第12条の3第1項は、相手の承諾を得ないで電子メール広告をしてはならないとしています。例外は次の3つです。
- 相手から請求を受けて送るとき(第1号)
- 申込みや契約をした人に、申込み・契約の内容や、契約の履行(商品の発送など)に関する事項を知らせる通知に付けて送るとき。通知の方法と送り方は主務省令が定めます(第2号)
- 受け取る人の利益を通常損なうおそれがないと認められる場合として、主務省令で定める場合(第3号。施行規則第29条が2つの場合を挙げています)
第2項は、受け取らないという意思を示した相手への送信を禁じています。その後に改めて請求を受けたり、承諾を得たりした場合は、ただし書で除かれています。
例
化粧品を通信販売するA社が、商品を買った人に、発送を知らせるメールを送る場面を考えます。そのメールに新商品の広告を載せることは、第1項第2号の例外にあたるかどうかが問題になり得ます。この例外は、主務省令が定める方法で通知し、その定めに従って広告を送る場合に限られます。
配信の停止を申し出た人に、改めて請求や承諾を受けないまま広告メールを送ることは、第2項の禁止にあたり得ます。
記録の作成と保存(第3項)
第3項は、電子メール広告をするときに、承諾を得たことや請求を受けたことの記録を作り、保存するよう求めています。記録の中身は施行規則第30条第1項が定めています。同条第2項は、保存の期間を「相手方に対し通信販売電子メール広告を行つた日から三年間保存しなければならない」としています。
ただし、第1項第2号・第3号の例外で送る場合は除かれています。条文は「第一項第二号又は第三号に掲げる場合を除き」と書いています。
受信を断るための表示(第4項)
第4項も、同じく第1項第2号・第3号の場合を除き、表示を求めています。広告メールには、第11条の各号の事項に加えて、相手が受け取らない意思を示すために必要な事項を表示します。
その事項は、施行規則第31条が2つに分けて定めています。受信を断る連絡ができる電子メールアドレスなどを、広告メールの本文に、容易に気づけるように表示することとされています。
広告メールの業務を他の者に任せる場合の定めもあります。第12条の3第5項は、一括して委託したときの定めです。承諾・請求を受ける業務、記録を作り保存する業務、受信を断るための事項を表示する業務の全てを、他の者に一括して委託している場合です。その委託にかかる広告メールには、第3項と第4項を適用しないとしています。
委託を受けた者(条文では「通信販売電子メール広告受託事業者」)自身の義務は、第12条の4にあります。同条第2項は、第12条の3第2項から第4項までを準用しています。準用とは、同じ決まりを必要な読み替えをして使うことです。その際、第3項と第4項の「第一項第二号又は第三号」とあるのは「次条第一項第二号」と読み替えるものとしています。
ファクシミリ広告(第12条の5)
ファクシミリ広告には、第12条の5が第1項から第4項まで、同じ趣旨の規定を置いています。
- 承諾のない送信を、3つの場合を除いて禁じる(第1項)
- 受け取らない意思を示した相手への送信を禁じる(第2項)
- 第1項第2号・第3号の場合を除いて、記録の作成・保存と、受信を断るための事項の表示を求める(第3項・第4項)
ただし、電子メールの第12条の3第5項(一括して委託したときの不適用)にあたる項と、第12条の4(受託事業者の義務)にあたる条は、置かれていません。
6. 注文を受けた後には、どんな決まりがあるのですか?
3つあります。代金を先に受け取ったときの通知(第13条)、商品・特定権利の売買についての8日間の撤回・解除(第15条の3)、申込みの取消権(第15条の4)です。
販売業者が撤回等の特約を広告に表示していた場合は、8日間の決まりはただし書で除かれます(ネットの画面で申し込む場合などは、申込みの画面での表示も必要)。
代金を先に受け取ったときの通知(第13条)
第13条第1項は、商品を渡す前などに、代金の全部か一部を受け取る通信販売についての規定です。郵便等で申込みを受け、代金の全部か一部を受け取ったときは、遅滞なく書面で知らせなければなりません。知らせるのは、申込みを承諾するかどうかなど、主務省令で定める事項です。
ただし、代金を受け取った後、遅滞なく商品を送ったり、権利を移したり、サービスを提供したりしたときは除かれています。第2項により、申込みをした人の承諾を得れば、メールなどの電磁的方法で知らせることもできます。その場合は、書面で通知したものとみなされます。
知らせる事項は、施行規則第37条が定めています。
- 申込みを承諾するかどうか(第1号)
- 事業者の氏名または名称、住所、電話番号(第2号)
- 受け取った金額と、それ以前に受け取った分があれば、その合計額(第3号)
- お金を受け取った年月日(第4号)
- 申込みを受けた商品名と数量、または権利やサービスの種類(第5号)
- 承諾するときは、引渡し・移転・提供の時期(第6号)
例
A社が、振込で代金を先に受け取り、入荷を待ってから商品を送る場面を考えます。入金の後すぐには商品を送らないため、第13条第1項の通知の対象になり得ます。
商品を受け取ってから8日間(第15条の3)
商品や特定権利の販売条件を広告した販売業者に、通信販売で申込みをした人や、その業者から買った人は、8日を過ぎるまで、申込みの撤回や契約の解除ができます。8日は、商品を受け取った日(権利なら移転を受けた日)から数えます。条文はこの2つをまとめて「申込みの撤回等」と呼びます(第15条の3第1項)。撤回等があったときに、商品を引き取ったり返したりする費用は、購入者の負担です(第15条の3第2項)。
ただし書は、販売業者が撤回等についての特約を広告に表示していた場合を、この8日間の決まりから除いています。
電子消費者契約(画面の手続に従って消費者が申し込む契約として、別の法律が定めるもの)にあたる場合などは、条件が1つ増えます。広告への表示に加えて、ただし書がいう「広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法」でも表示していることです。その方法は施行規則第44条が定めています。顧客が申込みになる操作をするための表示の中で、見やすい箇所にはっきり読めるように表示するなど、容易に気づけるように表示する方法です。
原文で確かめる(第15条の3第1項)
ここで押さえておきたいのは、対象の契約です。第15条の3第1項が挙げているのは、商品と特定権利の売買契約です。役務提供契約(サービスの契約)は挙げていません。
名宛人も「通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者」と書かれ、役務提供事業者は入っていません。第11条・第12条・第12条の6が、販売業者と役務提供事業者の両方を名宛人にしているのとは、書き方が異なります。
例
A社の通販サイトで健康食品を買った人が、届いた日から数えて8日を過ぎる前に、申込みをやめたいと考えた場面を考えます。A社が撤回等についての特約を表示していなければ、第15条の3第1項本文の8日間が働き得る場面です。
特約を表示していた場合は、その表示の場所と方法が、ただし書の条件に合っているかが問題になり得ます。
申込みの取消し(第15条の4)
第15条の4も、第12条の6と同じく2022年6月1日に加わった規定です。第15条の4第1項は、特定申込みをした人に、申込みを取り消す権利(取消権)を置いています。取り消せるのは、次のことで各号が定める誤認をし、それによって申込みをしたときです。
- 第12条の6第1項に違反して、事実と違う表示をされたこと、または表示をされなかったこと
- 第12条の6第2項の各号の表示をされたこと
例
最後の確認画面に分量が表示されておらず、1回分だけの申込みだと思って申し込んだところ、実際は複数回分の契約だった場面を考えます。この人が、第15条の4第1項により申込みを取り消せるかどうかが、問題になり得ます。
第15条の4第2項は、第9条の3第2項から第5項までを準用しています。
7. 表示の義務に違反すると、どうなるのですか?
行政処分として、第14条の指示と公表、第15条の業務停止命令があります。罰則は第70条から第74条までにあり、第74条は会社なども罰する両罰規定です。
第68条により、主務大臣の権限に属する事務の一部は、政令(内閣が定める命令)で定めれば、都道府県知事が行うようにできます。
指示と公表(第14条)
第14条第1項は、次の場合に、主務大臣が事業者に、違反を正すための措置などをとるよう指示できるとしています。
- 次の規定に違反したとき
- 第11条(広告の表示)、第12条(誇大広告等の禁止)
- 第12条の3(広告メール。第5項を除く)、第12条の5(ファクシミリ広告)
- 第12条の6(申込み画面の表示)、第13条第1項(代金を先に受け取ったときの通知)、第13条の2
- 第14条第1項の各号の行為(4.の節の、申込みの内容を確認・訂正できるようにしていないことなど)をしたとき
どちらも、通信販売の取引の公正と、購入者などの利益が害されるおそれがあると認めるときです。指示をしたときは、その旨を公表しなければなりません(第3項・第4項)。
業務の停止など(第15条・第15条の2)
第15条第1項により、主務大臣は、2年以内の期間を限って、通信販売の業務の全部か一部を止めるよう命じることができます。命じられるのは、次のときです。
- 第14条と同じ違反などがあり、取引の公正と購入者などの利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき
- 事業者が指示に従わないとき
広告メールの業務を受託した事業者(通信販売電子メール広告受託事業者)への業務停止は、1年以内です(第15条第3項)。命令をしたときの公表は、第15条第4項・第5項が定めています。
原文で確かめる(第15条第1項)
第15条の2第1項は、業務停止を命じるときに、人に対する禁止命令を置いています。範囲に入るのは、次の人です。
- 事業者が法人なら、その役員と使用人(従業員)、そして命令の日の前1年以内に役員や使用人だった人
- 事業者が個人なら、その使用人と、命令の日の前1年以内に使用人だった人
このうち、命令の実効性を確保するために業務を制限するのが相当と認められる人として、主務省令で定める人が対象です。止めるよう命じた範囲の業務を、新しく始めることを禁止できます。
施行規則第43条は、この「主務省令で定める者」を「法第十五条第一項前段の規定により停止を命ぜられた業務の遂行に主導的な役割を果たしている者」としています。止めるよう命じられた業務を、中心になって進めている人のことです。
例
A社が業務停止命令を受けた場面で、その業務を中心になって進めていた役員を考えます。この役員が、止めるよう命じられた範囲の業務を新しく始めることは、第15条の2第1項の禁止命令の対象になり得ます。
罰則(第70条から第74条まで)
表2は、法律の罰則の章(罰則章)から、違反ごとに、条番号と法定刑(法律が定める刑の重さ)を並べたものです。拘禁刑は、刑事施設に収容する刑です。「併科あり」は、拘禁刑と罰金の両方を科すことができるという意味です。
| 根拠条項 | 対象と | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第70条第2号 | 第12条の6第1項に | 3年以下の |
| 第70条第3号 | 第15条第1項から | 3年以下の |
| 第71条第2号 | 第14条第1項又は | 6月以下の |
| 第72条第1項第1号 | 第12条に | 100万円以下の |
| 第72条第1項第4号 | 第12条の6第2項に | 100万円以下の |
| 第72条第1項第5号 | 第13条第1項に | 100万円以下の |
| 第72条第2項 | 同条第1項第2号の | 1年以下の |
| 第74条第1項 | 法人の | 第70条第3号は |
各行は特定商取引に関する法律(版ID 351AC0000000057_20260812_508AC0000000064、施行日 2026-08-12)第70条から第74条までの条文によります。
罰則章を見ると、第11条の違反そのもの(広告に表示事項を表示しないことなど)は掲げられていません。例外は、第72条第2項が挙げる電子メール広告の場合です。第11条の違反は、第14条の指示と第15条の命令の対象として置かれています。その指示に違反すれば第71条第2号、命令に違反すれば第70条第3号の罰則があります(表2)。
例
A社が業務停止命令を受けたのに、A社の代表者が会社の業務として通信販売を続けた場面を考えます。この行為は、第70条第3号の対象になり得ます。そのうえで、第74条第1項の両罰規定により、A社にも3億円以下の罰金が科され得ます。
権限を持つのは誰か
これらの権限を持つ「主務大臣」は、第67条第1項が定めています。第67条第3項は、消費者庁の所掌に係る権限(消費者庁が受け持つ分野の権限)を、消費者庁長官に委任する(任せる)としています。
理解の確認
同じ表示事項なのに、第11条とは別に第12条の6が置かれているのは、2つの条文が働く場面がどう違うからですか?
第11条は、販売条件や提供条件についての広告に向けた義務です。第12条の6は、特定申込みを受ける書面や画面に向けた義務です。広告を見る場面と、申込みをする場面は別です。そのため申込みの場面で、分量と第11条第1号から第5号までを改めて表示させています。第11条第6号(施行規則第23条の各号)は、この場面の表示事項に挙げられておらず、広告の側の義務として残ります。違反したときの結び付き先も別で、第12条の6は第15条の4の取消権と第70条第2号の罰則に結び付いています。
根拠:特定商取引法第11条、第12条の6第1項、第15条の4第1項、第70条第2号/同法施行規則第23条(法令確認日 2026-09-08)
広告に撤回等の特約を表示していたかどうかで、第15条の3第1項の8日間が働くかどうかが分かれます。条文がどう組み立てられているからですか?
第15条の3第1項は、本文で、商品の引渡しや特定権利の移転を受けた日から数えて8日を過ぎるまで、申込みの撤回等ができるとしています。そのうえで、ただし書で、販売業者が撤回等についての特約を広告に表示していた場合は「この限りでない」としています。つまり、法定の8日間は、特約の表示が無いときに働く、初期設定のような決まりとして置かれています。だから第11条第5号が、撤回・解除に関する事項を広告の表示事項に挙げています。施行規則第24条第3号は、「見やすい箇所において明瞭に判読できるように」という表示の方法まで定めています。電子消費者契約にあたる場合などは、広告への表示に加えて、規則第44条の方法での表示も求められます。
根拠:特定商取引法第15条の3第1項、第11条第5号/同法施行規則第24条第3号・第44条(法令確認日 2026-09-08)
第12条の2で求められた資料を出さず、その表示が第12条の表示とみなされたとします。このみなしは、どこまで働きますか?
条文は、みなしが働く範囲を、第14条第1項(指示)と第15条第1項(業務の停止等)の規定を適用する場面と書いています。この2つに限られます。資料の提出を求める仕組みは、行政処分をするかどうかを主務大臣が判断するために置かれているからです。第72条第1項第1号は、第12条に違反する表示に100万円以下の罰金を置いています。しかし、罰則の適用は、みなしの範囲に入っていません。
根拠:特定商取引法第12条の2、第14条第1項、第15条第1項、第72条第1項第1号(法令確認日 2026-09-08)
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- 特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)第2条、第23条から第26条まで、第29条から第31条まで、第37条、第42条から第44条まで。参照した版は 351M50000400089_20260521_508M60000402002(施行日 2026-05-21、令和8年内閣府・経済産業省令第2号による改正)。条番号の異動の確認には 351M50000400089_20220601_504M60000402001(施行日 2022-06-01)および 351M50000400089_20230601_505M60000402002(施行日 2023-06-01)と、同法令の改正沿革(施行日順に全9版)を用いた e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
- ガイドライン|通信販売|特定商取引法ガイド(消費者庁)。本ページが引用したのはこの索引ページの記載であり、同ページが策定を挙げる「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」本体は参照していない 消費者庁(2026-09-08 確認)