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モールでは、誰が責任を負う? — 出品者と運営者に向けた条文、薬機法の要請

健康食品を扱うA社が、B社の運営するネットのモールに出品したとします。出品ページに問題があれば、条文が向くのはA社とB社のどちらでしょうか。答えは法律ごとに違います。薬機法第66条第1項は「何人も」(だれであっても)、景品表示法第5条は「事業者」が主語です。特定商取引法第11条は「販売業者又は役務提供事業者」(売る側やサービスを提供する側)です。場を提供する側を正面から扱うのは取引DPF法(モールなどを使う消費者を守る法律)です。提供者に置かれるのは努力義務(努めることを求める決まり)で、行政ができるのは要請(命令ではなく、措置を求めること)です。以下、同法と、場の側への薬機法の要請を見ます。

30秒でわかる要点

  • 条文の主語は、法律ごとに違う:薬機法第66条第1項と第68条は「何人も」(だれであっても)です。景品表示法第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」(自分が供給する商品やサービスの取引について)です。特定商取引法第11条は「販売業者又は役務提供事業者は」です。モールなど場を提供する側を主語に置いているのは、取引DPF法第3条第1項です。
  • 提供者には努力義務、行政ができるのは要請:取引DPF法第3条第1項は、場の提供者(取引デジタルプラットフォーム提供者)に、3つの措置を「講ずるよう努めなければならない」としています。努めることを求める努力義務です。第4条第1項は、行政(内閣総理大臣)が提供者に、売る側による場の利用の停止などを「要請することができる」と書いています。第4条第2項は要請をした旨の公表、第5条第1項は消費者から提供者への開示請求を定めています。
  • 場の提供者に対し、薬機法は送信防止措置の「要請」:薬機法が場の提供者に触れるのは、「特定電気通信役務提供者」という語によってです。違反する広告の送信が流れている場の側を指す語で、定義は別の法律から借りています。第72条の5第2項は、第66条第1項又は第68条に違反する広告について、この相手に送信を防止する措置を「要請することができる」としています。第66条第1項・第68条そのものの主語は「何人も」のままです。この第2項は、2027年5月20日から第72条の6第2項になります。

1. モールで売るとき、各法律の条文は誰に向いているのですか?

法律ごとに違います。薬機法第66条第1項は「何人も」、景品表示法第5条は「事業者」、特定商取引法第11条は「販売業者又は役務提供事業者」が主語です。

モールなどの場を提供する側を主語に置いた条は、取引DPF法(令和3年法律第32号)にあります。

1つの出品ページには、いくつもの法律の条文が同時にかかります。ある条文が誰に向いているかを決めるのは、条文の主語です。条文が、義務・禁止や命令・要請を向けている相手を「名宛人」と呼びます。

直感的なポイント

条文の主語は、手紙の宛名のようなものです。宛名に書かれていない人には、その条文は向いていません。

表1は、モールでの通信販売に関係する条文が主語に置いている語を、原文の表記のまま並べたものです。取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)は、以下このページでは「取引DPF法」と書きます。

表1:モールでの通信販売に関係する条文が、主語に置いている語
条文主語に置かれている語(原文)出典
薬機法 第66条第1項何人も医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第66条第1項
薬機法 第68条何人も同法第68条
景品表示法 第5条事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条柱書
景品表示法 第22条第1項事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について同法第22条第1項
特定商取引法 第11条・第12条販売業者又は役務提供事業者は特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第11条柱書・第12条
取引DPF法 第3条第1項取引デジタルプラットフォーム提供者は取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)第3条第1項柱書
取引DPF法 第4条第1項内閣総理大臣は(要請の相手方は取引デジタルプラットフォーム提供者)同法第4条第1項
薬機法 第72条の5第2項厚生労働大臣又は都道府県知事は(要請の相手方は特定電気通信役務提供者)薬機法第72条の5第2項

確認した版は次のとおりです。薬機法と景品表示法は2026年5月21日施行(法律の決まりが効力を持ち始めること)の版、特定商取引法は2026年8月12日施行の版です。取引DPF法は2025年6月1日施行の版です。

表1の読み方

主語の語を、法律ごとにやさしく読むと次のとおりです。

  • 薬機法(第66条第1項・第68条):「何人も」。だれであっても、という書き方です。
  • 景品表示法(第5条・第22条第1項):「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について」。自分が供給する商品やサービスの取引についての、事業者です。
  • 特定商取引法(第11条・第12条):「販売業者又は役務提供事業者は」。売る側と、サービスを提供する側の事業者です。
  • 取引DPF法(第3条第1項):「取引デジタルプラットフォーム提供者は」。モールなどの場を提供する側です。

表の最後の2行は、主語が行政です。かっこの中に、要請を受ける相手が書いてあります。

例

冒頭のA社が、B社の運営するモールに健康食品を出品した場面で考えます。A社の出品ページの広告は、薬機法の「何人も」の条文の対象になり得ます。A社は、自分が供給する商品の取引として景品表示法第5条の、売る側として特定商取引法第11条の名宛人にもなり得ます。表1の中で、場を提供する側を主語に置いているのは取引DPF法第3条第1項です。B社のモールが取引デジタルプラットフォーム(2.の節)にあたり、B社がその提供者にあたれば、B社はこの条の名宛人になり得ます。

薬機法の「何人も」と、景品表示法の「自己の供給する」という限定の違いは『1-6 規制されるのは誰?』で扱っています。3つの法律の重なりと執行主体(法律に基づいて処分などを行う役所)はどの法律で見るか、景品表示法第5条第1号と第2号の書き分けは『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』にあります。出品ページに表示する事項そのものは『7-8 通販の広告と申込み画面には、何を表示する?』にあり、ここでは繰り返しません。

「デジタルプラットフォーム」という語を使う法律

表1のうち、条文に「デジタルプラットフォーム」という語を使っているのは取引DPF法だけです。薬機法・景品表示法・特定商取引法の現行条文に、この語は出てきません。3法の現行版の全文を、e-Gov 法令検索(国が公開している法令の検索サイト)で2026年9月8日に検索して確かめました。

薬機法が場の提供者に触れるのは、「特定電気通信役務提供者」という別の語によってです。違反する広告の送信が流れている場の側を指す語で、定義は別の法律から借りています(4.の節で説明します)。この語を名宛人にしている条は、現行の薬機法に2組あります。

このページで扱うのは、第66条第1項又は第68条に違反する広告についての、第72条の5第2項と第72条の6です。第72条の6は、要請を受けて措置を講じた場合の損害賠償責任の制限を定める条です。

もう1組は、指定薬物等に係る違法広告についての、第76条の7の2第3項と、損害賠償責任の制限を定める第76条の7の3です。2組の条文は、同じ「特定電気通信役務提供者に対して、当該送信を防止する措置を講ずることを要請することができる」という書き方をしています。指定薬物に関する2組目は、このページでは扱いません。

2. 「取引デジタルプラットフォーム」と「販売業者等」は、どう決められているのですか?

取引DPF法第2条です。別の法律が定める「デジタルプラットフォーム」のうち、消費者が画面から申込みなどをできる場が対象です。提供者が自分の場で自ら販売などを行う場合は、「販売業者等」から除かれます。

同法第1条は、対象を、特定商取引法第2条第2項に規定する通信販売に係る取引としています。

取引DPF法は、場を提供する者と、その場で売る者とを、別の語で定義しています。そして、別の条で扱っています。定義は第2条にまとまっています。

どんな場が「取引デジタルプラットフォーム」か

第1項の書き方は2段構えです。まず外側の枠として、別の法律(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)の「デジタルプラットフォーム」の定義を借ります。そのうえで、その場が次のどちらかの機能を持つものに絞ります。

  • 第1号:消費者が、画面に表示される手続に従って送信し、売る側(販売業者等)に、通信販売の売買契約や有償のサービスの契約の申込みができる機能
  • 第2号:競りその他の政令(内閣が定める命令)で定める方法で、契約の相手になる消費者を決める手続に参加できる機能(第1号にあたるものを除く)

場を提供する側は、第2項が定義しています。「事業として」「単独で又は共同して」取引デジタルプラットフォームを提供する者が、取引デジタルプラットフォーム提供者です。このページでは「提供者」と短く書きます。

例

ネット通販のモールで、消費者が商品ページから画面の手続に沿って注文を送る場面は、第1号の機能に関わります。ネットオークションのように、売る側(販売業者等)が出品した商品の買い手となる消費者を、競りで決める場面は、第2号の機能に関わります。ある場が実際に取引デジタルプラットフォームにあたるかは、第1項の定義の全体に照らして見ることになります。

原文で確かめる(第2条第1項・第2項)

「消費者」と「販売業者等」

この2つの語も第2条にあります。どちらも、括弧書き(条文の中で、かっこに入れて書き添えた部分)で範囲を狭めています。

  • 消費者(第3項):個人に限られます。個人でも、商業、工業、金融業その他の事業を行う場合は除かれます。
  • 販売業者等(第4項):販売業者と、役務(サービス)の提供の事業を営む者です。ただし、提供者が、自らが提供する取引デジタルプラットフォームを利用して販売などを行う場合は除かれます。

例

モールを運営するB社が、自分のモールで自社の商品も売っているとします。第4項の括弧書きが「販売業者等」から除いているのは、このようにB社が自分のモールで自ら売る場合です。同じモールに出品するA社は、「販売業者等」の側にあたり得ます。

買う側も見てみます。第3項の「消費者」は個人です。研究用試薬を扱う会社が、仕事で使う物をモールで買う場面は、個人の買い物ではありません。この法律で消費者に向けられた仕組み(5.の節の開示請求など)を読むときは、この定義を前提にします。

原文で確かめる(第2条第3項・第4項)

第4項に出てくる「特定権利」の意味は、特定商取引法第2条第4項から借りています。

対象になる取引

対象になる取引は、第1条に書かれています。第1条によると、この法律の目的は、提供者の協力を確保することです。何についての協力かというと、取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売の取引を適正にすることと、もめごと(紛争)の解決を進めることです。

ここでいう通信販売は、特定商取引法第2条第2項が定めるものです。販売業者などが郵便などの方法で申込みを受けて行う販売やサービスの提供のうち、電話勧誘販売にあたらないものです。

原文で確かめる(第1条・特定商取引法第2条第2項)

第1条は、この法律が「取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売(特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)第二条第二項に規定する通信販売をいう。以下同じ。)に係る取引の適正化及び紛争の解決の促進」に関し提供者の協力を確保することを目的とすると定めています。

販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないもの

特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)第2条第2項

3. モールなどの提供者には、どんな措置が求められているのですか?

第3条第1項の3つで、どれも努力義務です。消費者と売る側の連絡を円滑にする、販売条件などの表示への消費者からの苦情に、調査など必要と認める措置をとる、必要に応じて売る側に所在などの情報を求める、です。

第2項は、講じた措置の概要や実施の状況などの開示を定めています。

提供者に向けられた条は第3条です。第1項は、次の3つの措置を挙げています。3つの号は、向いている先が違います。

  • 第1号(連絡):消費者が、売る側(販売業者等)と円滑に連絡できるようにするための措置
  • 第2号(苦情への対応):売る側の販売条件などの表示について、消費者から苦情の申出を受けたときに、事情の調査その他、表示の適正を確保するために必要と認める措置
  • 第3号(情報の求め):売る側に、必要に応じて、所在に関する情報その他、売る側の特定に役立つ情報の提供を求めること

第2号だけは、条文に要件が書き込まれています。対象は「販売条件又は役務の提供条件の表示」で、消費者から苦情の申出を受けた場合であることが要件です。

例

モールで化粧品を買った個人が、出品ページの価格の表示が実際の請求と違うと、モールに苦情を申し出たとします。この苦情は、第2号が挙げる「販売条件又は役務の提供条件の表示」についての苦情の申出にあたり得ます。この場面で提供者に求められているのは、事情の調査その他の必要と認める措置を、講ずるよう努めることです。

原文で確かめる(第3条第1項)

「努めなければならない」という語尾

第1項は、3つの措置を「講ずるよう努めなければならない」と書いています。求められている強さは、この語尾に出ています。このように、努めることを求める決まりを努力義務と呼びます。

同じ法律の中でも、語尾は書き分けられています。提供者の措置を定める第3条第1項は「努めなければならない」、提供者の開示を定める第2項は「開示するものとする」です。内閣総理大臣の指針を定める第3項は「定めるものとする」、内閣総理大臣の要請を定める第4条第1項は「要請することができる」です。

開示と指針(第2項から第4項)

第2項の開示の相手は、消費者です。開示する事項と開示のしかたは、内閣府令(内閣府が出す命令)で定めます。

第3項と第4項は指針の定めです。内閣総理大臣は、これらの措置について「その適切かつ有効な実施に資するために必要な指針」を定めるものとされています。定めたり変えたりしたときは、遅滞なく(時間をおかずに)公表しなければなりません。指針の本文は、このページでは扱いません。

指針を定めて事業者の措置を促す仕組みは、景品表示法にも置かれています。同法第22条第1項は、事業者に「景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置」を講じなければならないと定めています。第2項は、内閣総理大臣が指針を定めるものとしています。第1項が並べている2つの事項のうち、景品類(おまけや懸賞の賞品など)ではなく、後段の表示に関する事項が本ページに関係します。景品表示法側の内容は『7-1 優良誤認と有利誤認は、どこが違う?』で扱っています。

4. 行政は、モールなどの提供者に何ができるのですか?

取引DPF法第4条第1項は売る側による場の利用の停止など、薬機法第72条の5第2項は送信を防止する措置を、「要請することができる」と定めています。命令ではありません。

これに対し薬機法第72条の5第1項は、違反した者に対して「命ずることができる」という書き方です。

要請は、措置をとるよう求めることです。以下、取引DPF法、薬機法の順に見ます。

取引DPF法の要請(第4条)

第4条第1項で、内閣総理大臣は提供者に、売る側による販売などに係る場の利用の停止その他の必要な措置をとるよう、要請できます。要請できるのは、販売条件などの表示が次の2つの要件のどちらにも当たり、消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときです。

  • 第1号(表示の内容):商品の安全性の判断に役立つ事項など、内閣府令で定める重要事項についての表示であること。そのうえで、著しく事実に相違する表示か、実際のものよりも著しく優良・有利だと人を誤認させる表示であると認められること
  • 第2号(売る側の事情):表示をした販売業者等が特定できない、所在が明らかでないなどの事由で、その者が表示を是正する(正す)ことを期待できないこと

2つの要件は、見ている先が違います。第1号は表示の内容、第2号は表示をした販売業者等の側の事情です。第1号の「重要事項」の中身は、内閣府令に委ねられています。

例

あるモールの出品ページに、商品の安全性の判断に役立つ事項について、著しく事実に相違する表示があったとします。表示をした出品者本人によって表示が正されることを期待できる場面では、第2号の要件が欠けます。出品者が特定できず、所在もわからない場面では、第2号の要件にも当たり得ます。そのうえで消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときに、提供者への要請が問題になり得ます。

原文で確かめる(第4条第1項)

第2項は、要請をしたときに、その旨を公表できるとしています。第3項は、要請を受けて措置をとった場合、その措置で販売業者等に生じた損害について、提供者は賠償の責任を負わないとしています。

薬機法の要請(第72条の5第2項)

薬機法は第72条の5に、性質の違う2つの手段を並べています。

例

冒頭のA社の出品ページの広告が、第66条第1項又は第68条に違反する広告だとします。条文の上では、広告をしたA社には第1項の命令が、その広告の送信が流れている場の側(特定電気通信役務提供者)には第2項の要請が、それぞれ問題になり得ます。

第1項が命ずる内容と名宛人は、第72条の5 措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)が条文とともに扱っています。要請を受けて措置を講じた場合の損害賠償責任の制限を定める第72条の6も、同じページが条文とともに扱っています。ここでは繰り返しません。ここで引くのは、要請の相手が誰かを書いている第2項です。

この条文は、令和7年法律第37号により 2027年5月20日 から 第72条の6 へ繰り下がります。空いた番号には別の規定が入ります(第72条の5 は業務運営の改善命令になります)。2027年以降に条番号だけを引くと、別の規定に当たります。

この施行日は e-Gov 法令検索に確定した施行日として記録されているものです(施行期日を定める政令の番号は未確認)。これに対し 2028年5月20日 施行分は e-Gov 上も予定日で、政令で確定します。

第2項が要請の相手として置いている「特定電気通信役務提供者」は、括弧書きのとおり、別の法律の定義を借りたものです。特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)の第2条第4号です。

古い説明との違い

薬機法第72条の5第2項は、過去の版と文言が異なります。よく見かける古い説明では、要請の対象は第68条に違反する広告だけとされています。現行の条文の対象は、第66条第1項又は第68条に違反する広告です。引用している法律の題名と号番号も違っています。

よく見かける説明と、現行の条文を並べて見る

よく見かける説明と、現行

よく見かける説明

送信防止措置の要請の対象は、第68条に違反する広告だけ。条文上の呼称は「承認前の医薬品等に係る違法広告」。引用されている法律の題名は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)」で、特定電気通信役務提供者は同法第2条第3号。

現行

対象は第66条第1項又は第68条に違反する広告で、条文はこれを「特定違法広告」と呼ぶ。引用されている法律の題名は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)」で、特定電気通信役務提供者は同法第2条第4号。

古い側は、日本法令外国語訳データベースシステムが掲載する薬機法(最終更新 平成27年法律第50号)の日本語条文の第72条の5。現行側は e-Gov 法令検索の薬機法2026年5月21日施行版(版ID 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063)第72条の5第2項。引用先の法律の法令番号は平成13年法律第137号のまま変わっておらず、現行の題名は e-Gov 法令検索の法令ID 413AC0000000137 で確認できます。どの改正によって題名と号番号の差が生じたかは確認できていません。

条文と食い違う古い記述の一覧は『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』にあります。

5. 消費者は、モールに出品者の情報の開示を請求できるのですか?

第5条第1項が開示請求を定めています。ただし、自分の債権(相手に支払などを求める権利)を行使するために、売る側の情報の確認が必要な場合に限られます。

その債権は、金銭の支払を目的とし、かつ、その額が内閣府令で定める額を超えるものに限られます。

請求の相手は、モールなどの提供者です。提供者が持っている、売る側の情報の開示を求めます。ただし条文は、請求できる場面を重ねて絞っています。

  • 債権の種類:金銭の支払を目的とするもの
  • 債権の額:内閣府令で定める額を超えるもの
  • 必要性:その債権を行使するために、販売業者等情報(売る側の氏名又は名称、住所など、内閣府令で定める情報)の確認を必要とする場合
  • ただし書:売る側の信用を毀損する(傷つける)目的その他の不正の目的による請求は除かれる

例

モールで商品を買った個人が、出品者に代金の返還を求めたいのに、出品者の住所がわからない場面を考えます。この場面では、返還を求める債権を行使するために、出品者の住所などの確認が必要かが問題になり得ます。債権の種類と額も、上の条件に照らして見ることになります。

原文で確かめる(第5条第1項)

請求の手続(第2項・第3項)

請求をする消費者は、内閣府令で定めるところにより、次の3つを記載した書面か、記録した電磁的記録(データ)を出さなければなりません(第2項)。

  1. その請求で、売る側の情報(販売業者等情報)の確認が必要な理由
  2. 開示を求める情報の項目
  3. 開示を受けた情報を、第1項ただし書の不正の目的に使わないという誓約

第3項は、提供者の側の手続です。請求が第1項本文の要件に当たり、かつ、不正の目的によるものでないと思料する(考える)ときの定めです。このとき提供者は、開示するかどうかについて、その販売業者等の意見を聴かなければなりません。販売業者等と連絡することができない場合は除かれます。

情報が動く向きは、条によって違います。第5条は、消費者から提供者への開示請求です。第3条第1項第3号は、提供者から販売業者等への情報提供の求めで、「講ずるよう努めなければならない」措置の1つです。

第5条第1項の「内閣府令で定める額」と「内閣府令で定めるもの」の内容は、このページでは扱いません。

6. この法律は、行政と事業者のあいだに、どんな仕組みを置いているのですか?

官民協議会(行政と民間が協議する場。第6条・第7条)と、だれでもできる内閣総理大臣への申出(第10条)です。協議会の庶務(事務)は消費者庁が処理します。

この法律による権限は、一部を除いて消費者庁長官に委任(任せること)されます(第11条)。

官民協議会

第6条第1項は、内閣総理大臣が取引デジタルプラットフォーム官民協議会を組織するものとしています。構成員として条文が挙げているのは、次の6つです。

  • 内閣総理大臣
  • 国の関係行政機関
  • 取引デジタルプラットフォーム提供者を構成員とする団体
  • 独立行政法人国民生活センター
  • 地方公共団体
  • 消費者団体

必要があると認めるときは、学識経験を有する者その他の、官民協議会が必要と認める者を構成員に加えることができます(同条第2項)。

協議会の役割は、第7条第1項にあります。必要な情報を交換し、消費者の利益の保護のための取組について協議します。あわせて内閣総理大臣に、取引の適正化と紛争の解決の促進に関する施策について、意見を述べます。

必要があると認めるときは、構成員に、情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができます(同条第3項)。同条第4項は「官民協議会の庶務は、消費者庁において処理する」と書いています。

第8条は、協議会の事務に従事する者と、かつて従事していた者に、事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないという義務を課しています。

だれでもできる申出

第10条第1項の主語は、薬機法第66条第1項と同じく「何人も」です。取引デジタルプラットフォーム(モールなど)を利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、だれでも内閣総理大臣に申し出て、適当な措置をとるよう求めることができます。

申出があったときは、内閣総理大臣が必要な調査を行います。申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければなりません(同条第2項)。

例

化粧品を扱う会社の営業担当者が、あるモールで、消費者の利益が害されるおそれがあると思う出品を見つけたとします。第10条第1項の主語は「何人も」なので、消費者ではないこの担当者も、申出をする立場になり得ます。

原文で確かめる(第10条第1項)

何人も、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)第10条第1項

権限の所在

第4条第1項などの条文は「内閣総理大臣」を主語にしていますが、第11条が権限の委任(任せること)を定めています。この法律による権限は、第3条第3項及び第4項、第6条第1項並びに第7条第1項の規定によるものを除き、消費者庁長官に委任されます。この法律の実施のため必要な手続その他施行に関し必要な事項は、内閣府令に委ねられています(第12条)。

薬機法・景品表示法・健康増進法・医療法が重なる場面で、どの役所がどの条文で動くかは『7-10 1つの広告や表示に、どの法律がかかり得る?』で扱っています。違反の端緒(きっかけ)がどこから入るかは『6-8 違反は、どうやって見つかる?』にあります。

理解の確認

取引DPF法第2条第4項は、提供者が自分の場を使って自ら販売などを行う場合を、「販売業者等」から除いています。なぜ、このように除いているのですか?

この法律は、場を提供する者(第2条第2項の取引デジタルプラットフォーム提供者)と、その場で売る者(第4項の販売業者等)を、別の語で定義し、別の条で扱っています。第3条第1項第3号は、提供者が販売業者等に情報の提供を求める措置です。第4条第1項は、提供者に対して、販売業者等の利用の停止などを要請する仕組みです。どちらも、両者が別人であることを前提にしています。提供者が自ら売る場合は同じ者になり、この前提が成り立ちません。そのため、括弧書きが「販売業者等」から除いています。除かれるのは、この法律の中の語の範囲です。表1に並べた他の条文の主語(薬機法第66条第1項・第68条の「何人も」など)が動くわけではありません。

根拠:取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)第2条第2項・第4項、第3条第1項第3号、第4条第1項(2025年6月1日施行版。法令確認日 2026-09-08)

取引DPF法第4条第1項の要請は、表示が第1号(著しく事実に相違する表示など)に当たるだけではできず、第2号も満たす必要があるとされています。なぜですか?

第1号は表示の内容についての要件、第2号は表示をした販売業者等の側の事情についての要件で、見ている先が違います。第2号は、販売業者等が特定できないこと、その所在が明らかでないことその他の事由により、その者による表示の是正を期待することができないことを求めています。表示をした本人に是正させられる場面では、この要件が欠けます。そのため、場を提供する側へ利用の停止などを求める道には進みません。加えて、第4条第1項の語尾は「要請することができる」で、命令ではありません。

根拠:取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)第4条第1項第1号・第2号(2025年6月1日施行版。法令確認日 2026-09-08)

薬機法第72条の5は、第1項では「命ずることができる」、第2項では「要請することができる」と語尾を書き分けています。これは、両項の名宛人(その条文が、義務・禁止や命令・要請を向けている相手)のどんな違いによるのですか?

第1項の名宛人は、第66条第1項又は第68条に違反した者、つまり広告を行った本人です。第2項の名宛人は、特定電気通信役務提供者です。この語は、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)第2条第4号の定義を借りたものです。違反する広告の送信が流れている場の側を指します。名宛人が、違反した者本人か、その情報が流れている場の側か。この違いに、命令と要請の書き分けが対応しています。場を提供する側に薬機法が触れるのは、この送信防止措置の要請の場面です。第66条第1項・第68条そのものの主語は「何人も」のままです。

根拠:薬機法(昭和35年法律第145号)第72条の5第1項・第2項(2026年5月21日施行版。法令確認日 2026-09-08)

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  • 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)第1条・第2条・第3条・第4条・第5条・第6条から第12条まで e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。2025年6月1日施行版・版ID 503AC0000000032_20250601_504AC0000000068)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第66条第1項・第68条・第72条の5・第72条の6・第76条の7の2・第76条の7の3 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。2026年5月21日施行版・版ID 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063)
  • 薬機法 2027年5月20日施行版(版ID 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)第72条の5・第72条の6・第72条の7・第76条の7の2 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)厚生労働省(2026-09-08 確認)
  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条・第22条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。2026年5月21日施行版・版ID 337AC0000000134_20260521_504AC0000000048)
  • 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第2条第2項・第2条第4項・第11条・第12条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。2026年8月12日施行版・版ID 351AC0000000057_20260812_508AC0000000064)
  • 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)第2条第1号・第4号・第5号 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(最終更新 平成27年法律第50号)第72条の5の日本語条文 日本法令外国語訳データベースシステム(2026-09-08 確認)