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エクソソーム・培養上清液の卸売に許可は要るのか
医薬品の卸売販売業許可との関係

培養上清液やエクソソームを医療機関に卸すとき、医薬品の卸売販売業許可は要るのでしょうか。結論を先に書くと、許可がかかるのは「薬機法上の医薬品を売る行為」で、エクソソーム等と称する製品に薬機法の承認を受けた医薬品は存在しないと、2024年7月31日の事務連絡が述べています。ただし、これで話は終わりません。医薬品にあたるかどうかは、表示ではなく目的で決まるからです。この記事では、どこまでが許可の外で、どの操作がその線をまたぐのかを、条文と通知に沿って追います。

30秒でわかる、この記事の要点

  • 医薬品の卸売販売業許可は、医薬品を売るときの許可です。エクソソーム等と称する製品に薬機法の承認を受けた医薬品は存在しない、と2024年7月31日の事務連絡が述べています。
  • 医薬品にあたるかどうかは、表示ではなく目的で決まります。成分本質・形状・表示された効能効果・販売方法などを総合して判断されます。どれか1つで決まるものではありません。
  • 「研究用」と書けば外に出られる、という話ではありません。同じ事務連絡は6つの類型を挙げ、それに限らず指導を行うよう都道府県などに求めています。
  • 化粧品として売る場合、輸入する場合、医療機関の側には、それぞれ別の手続があります。どれも「卸すかどうか」とは別に生じます。

1. 結論 — 当社の研究用試薬の供給に、医薬品の卸売販売業許可はかからない

結論から書きます。当社は幹細胞セクレトーム(幹細胞培養上清液。細胞を培養した液から細胞を除いたもの)を研究用試薬として供給しています。エクソソーム(細胞が出す小さな膜の粒。細胞外小胞の一種)は、この液に含まれる成分の一つで、単離した製剤を供給しているわけではありません。当社製品は医薬品としての承認を受けたものではないため、医薬品の卸売販売業許可の対象ではありません。ただし、取り扱う品目の位置づけや、表示・説明の仕方によって適用される規制は変わります。理由は2つあります。ひとつは、この許可が「薬機法上の医薬品を売る行為」にかかるものだからです[1]。もうひとつは、2024年7月31日の事務連絡の時点で、エクソソーム等と称する製品に、薬機法の承認を受けた医薬品は存在しないとされているからです[7]。卸すべき医薬品が、品目として無いということです。

以下、この筋道を条文の順に追います。

許可がかかるのは「医薬品を売る行為」です

薬機法第24条第1項は、薬局開設者か医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として医薬品を販売・授与してはならないと定めています[1]。授与とは、ただで渡すことです。売ったり渡したりするための貯蔵(保管)と陳列(並べておくこと)も、同じ条文の対象に入っています。

許可を受けずにこれを行ったときの罰則は、第84条第9号です。3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方が定められています[2]。

ここで見ておきたいのは、条文の対象が「医薬品」だという点です。許可が要るのは、扱う品目が薬機法上の医薬品にあたるときです。品目が医薬品にあたらなければ、この条文は働きません。

卸売販売業は、売る相手が条文で決まっています

医薬品の販売業の許可は、店舗販売業・配置販売業・卸売販売業の3つの区分に分かれています(第25条)[3]。医療機関に医薬品を売るのは、このうち卸売販売業(医薬品を薬局・病院・診療所の開設者などに卸す区分)です。第25条第3号は、卸売販売業の許可を、医薬品を薬局開設者等に対し販売し、又は授与する業務について行うものとしています。

薬局開設者等とは、同号が挙げる相手です。薬局開設者、医薬品の製造販売業者・製造業者・販売業者、病院・診療所・飼育動物診療施設の開設者などが並びます。「薬局開設者等」という略称は、第34条第5項で用いるものとして同号に置かれています。同号の末尾には「その他厚生労働省令で定める者」とあり、その中身は施行規則第138条にあります[4]。

売る相手は、許可を受けた側が選べる形になっていません。第34条第5項は、許可に係る営業所から、薬局開設者等以外の者へ医薬品を販売・授与することを禁じています[4]。卸売販売業とは、医薬品を決められた相手にだけ卸すための許可だということです。扱う物が医薬品でなければ、この仕組み自体が関わりません。

卸売販売業の営業所が医薬品を卸せる相手の範囲 左に「卸売販売業の営業所」があり、そこから線が伸びて、第25条第3号が挙げる相手を囲んだ枠につながっています。枠の中には、薬局開設者、医薬品の製造販売業者・製造業者・販売業者、病院・診療所・飼育動物診療施設の開設者、その他厚生労働省令で定める者(施行規則第138条)の4つが並びます。枠の外へ向かう線には×印が付いており、薬局開設者等以外の者への販売・授与は第34条第5項で禁じられていることを示します。 卸せる相手は、条文で決まっている 第25条第3号が挙げる相手以外には、販売も授与もできない 薬局開設者等(第25条第3号) 薬局開設者 医薬品の製造販売業者・製造業者・ 販売業者 病院・診療所・飼育動物診療施設の 開設者 その他厚生労働省令で定める者 (施行規則第138条) 卸売販売業の 営業所 薬局開設者等以外の者 販売・授与は禁止(第34条第5項) 卸売販売業の営業所が医薬品を卸せる相手の範囲 上に「卸売販売業の営業所」があり、その下に第25条第3号が挙げる相手を囲んだ枠が続きます。枠の中には、薬局開設者、医薬品の製造販売業者・製造業者・販売業者、病院・診療所・飼育動物診療施設の開設者、その他厚生労働省令で定める者(施行規則第138条)の4つが並びます。枠の外へ回り込む線には×印が付いており、薬局開設者等以外の者への販売・授与は第34条第5項で禁じられていることを示します。 卸せる相手は、 条文で決まっている 第25条第3号が挙げる相手 以外には、販売も授与もできない 卸売販売業の営業所 薬局開設者等(第25条第3号) 薬局開設者 医薬品の製造販売業者・ 製造業者・販売業者 病院・診療所・ 飼育動物診療施設の開設者 その他厚生労働省令で定める者 (施行規則第138条) 薬局開設者等以外の者 販売・授与は禁止 (第34条第5項)
図1:卸売販売業の許可は、第25条第3号が挙げる相手に卸すための許可です。薬局開設者等以外の者への販売・授与は、第34条第5項で禁じられています。

医薬品にあたるかどうかは、使用の目的で決まります

では、何が医薬品にあたるのでしょうか。薬機法第2条第1項第2号は、人や動物の病気の診断・治療・予防に使用されることが目的とされている物を医薬品としています。同項第3号は、人や動物の体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的とされている物です[5]。どちらにも、機械器具等でないことなどの条件が付いていて、かっこ書きで、第2号は医薬部外品と再生医療等製品を、第3号はそれに化粧品を加えて除いています。どちらの号も、物の由来や製法を条件にしていません。決め手は使用の目的です。

その目的をどう判断するかは、1971年6月1日の厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙「医薬品の範囲に関する基準」が示しています[6]。人が口から飲む物についての基準ですが、挙げられている判断の要素は次の4つです。

  • 成分本質(原材料)
  • 形状(剤型、容器、包装、意匠など)
  • その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量
  • 販売方法、販売の際の演述(売るときの説明)など

並びの最後には「等」が付いています。基準は、これらを総合的に判断すべきものである、としています。どれか1つで判断する、という書き方はしていません。

これらが、卸売を考えるうえでの分かれ目になります。同じ液を扱っていても、何を表示し、どう説明して売るかによって、医薬品にあたると判断され得るからです。表示と判断の関係は「研究用」と書けば、薬機法の医薬品にあたらない?で扱っています。

医薬品にあたるかどうかを判断する4つの要素 中央に「医薬品にあたるか」と書いた濃い青の箱があり、その四隅に置いた4つの箱から線が集まって、中央の箱に入っています。4つは、成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠など)、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法・販売の際の演述です。このうち表示にあたる箱と、そこから伸びる線だけを青で示し、残る3つは灰色です。下に「どれか1つで判断する、という書き方はしていません」と添えています。 4つの要素を総合して判断する 表示は4つのうちの1つ。材料の一部であって、結論ではない 成分本質(原材料) 形状(剤型、容器、包装、意匠など) その物に表示された 使用目的・効能効果・用法用量 販売方法、販売の際の演述 医薬品にあたるか どれか1つで判断する、という書き方はしていません 医薬品にあたるかどうかを判断する4つの要素 4つの要素を縦に積み、左側の線で1本にまとめて、下の「医薬品にあたるか」へ矢印で入れた図です。4つは、成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠など)、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法・販売の際の演述です。このうち表示にあたる箱と、そこから左の線へつながる枝だけを青で示し、残る3つは灰色です。下に「どれか1つで判断する、という書き方はしていません」と添えています。 4つの要素を総合して 判断する 表示は4つのうちの1つ。 材料の一部であって、結論ではない 成分本質(原材料) 形状(剤型、容器、包装、意匠など) その物に表示された使用目的・ 効能効果・用法用量 販売方法、販売の際の演述 医薬品にあたるか どれか1つで判断する、という 書き方はしていません
図2:医薬品にあたるかどうかを判断する4つの要素。表示はそのうちの1つで、どれか1つで決まるものではありません。

承認を受けた医薬品は、確認されている範囲では存在しません

厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課の事務連絡(役所が運用上の注意などを担当者あてに伝える文書)「エクソソーム試薬に係る監視指導について」(令和6年7月31日)の記2の後段に、次の一文があります。現時点において、エクソソーム試薬を含め、エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しない、というものです[7]。

ここでいうエクソソーム等は、同じ事務連絡の前文が定めた語です。ヒトの幹細胞の培養上清液と、その液に含まれる可能性のある細胞外小胞などの細胞の分泌物を指します[7]。一文の冒頭にある「現時点」は、事務連絡が出た2024年7月31日の時点のことです。

同じ日に、厚生労働省医政局研究開発政策課も事務連絡を出しています。こちらは、使用されるエクソソーム等で諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品は現時点でない、と書いています[8]。

薬機法には、医薬品とは別の区分として再生医療等製品(人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品など)があります。承認の条文は第23条の25第1項、販売業の許可は第40条の5第1項と、それぞれ別に置かれています[9]。こちらも確かめておきます。PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が公表する「新再生医療等製品の承認品目一覧」を2026年9月12日に確認した範囲では、販売名・一般的名称・類別名称のどの欄にも「エクソソーム」「細胞外小胞」を含む品目はありませんでした[10]。確認の手順と確認日は「エクソソーム」製品に、承認されたものはある?にまとめてあります。

したがって、「医薬品を売る許可」の話にはなりません

ここまでを順に並べます。卸売販売業の許可は、医薬品を薬局開設者等に売るための許可です。医薬品にあたるかどうかは、使用の目的で決まります。そして、2024年7月31日の事務連絡の時点で、エクソソーム等と称する製品に承認を受けた医薬品は無く、再生医療等製品の側も、PMDAの「新再生医療等製品の承認品目一覧」を2026年9月12日に見た範囲では、該当する品目を確認できていません。

そのため、「承認された医薬品を仕入れて医療機関に卸す」という形の取引は、この分野では成り立ちません。卸す物が無いからです。もっとも、承認を受けていないことは、それ自体では薬機法上の医薬品にあたらないことの理由になりません。承認を受けずに作られたり売られたりしている医薬品は、無承認無許可医薬品として扱われるからです。医薬品にあたるかどうかを決めるのは、先に見たとおり第2条第1項第2号・第3号の目的であり、その目的は、上に挙げた4つの要素から総合的に判断されます[6]。当社は研究用試薬として供給しており、疾病の治療等に用いることを目的としていません。この総合的な判断で第2号・第3号の目的を持つ物とされない範囲にとどまるかぎり、扱う物は薬機法上の医薬品にあたらず、第24条第1項も働きません。医薬品の卸売販売業許可の対象ではない、というのはこの意味です。

ただしこれは、効能効果をうたわなければそれで足りる、という意味ではありません。上の4つの要素は、1つ通れば先へ進める関門の並びではなく、総合的に判断すべきものとされています[6]。2024年7月31日の事務連絡の記1(6)も、試薬としての使用目的が明示されていないなど「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかでないものや、医療機関に対し疾病の治療等の目的のために使用できる旨説明して販売するものを、指導を行う類型に挙げています[7]。明示的にうたっていなくても、対象になり得るということです。

「許可が要らない」ことと、「守る決まりが無い」ことは別です。2024年7月31日の事務連絡の前文は、「試薬」と称した製剤のうち、医薬品と誤認させるものと、医薬品的効果効能を標ぼうする(うたう)もの・暗示する(ほのめかす)ものを、無承認無許可医薬品(必要な承認や許可を受けていない医薬品)として、管下の販売業者などへ指導・取締りを徹底するよう都道府県などに求めています[7]。指導や取締りの根拠は薬機法そのものであって、事務連絡ではありません。判断の枠組みは培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに入る?にあります。

この結論には条件が付いています。許可の対象にならないのは、扱い方が医薬品にあたらない範囲にとどまっている場合です。同じ液でも、何と書き、どう説明し、誰にどんな目的で売るかによって、薬機法上の位置づけは動きます。次の節では、どの操作がその線をまたぐのかを、条文と事務連絡に沿って見ていきます。

2. ただし「医薬品と判断されれば」、話は変わります

ここまでの話は、その製品が薬機法上の医薬品ではない、という前提の上に立っています。前提が変われば、要る許可も、守る決まりも入れ替わります。そして、医薬品にあたるかどうかは、容器やカタログの表示だけでは決まりません。

第2号・第3号の決め手は、表示ではなく「目的」

薬機法第2条第1項は、医薬品を3つの型で定めています。第1号は、日本薬局方(国が定める医薬品の規格書)に収められている物です。載っているかどうか(収載の有無)で決まります。第2号は「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(中略)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)」、第3号は「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)」です[11]。どちらも、機械器具等(機械器具やプログラムなど)でない物に限られ、かっこ書きの区分は除かれます。目的を要件にしているのは、この第2号と第3号です。原料が同じでも、目的が違えば扱いは分かれます。

ところが、物の側に目的が書いてあるわけではありません。目的は、周りの事情から外側で判断されます。その判断材料を行政が文章にしたのが、1971年6月1日の通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙「医薬品の範囲に関する基準」です[6]。その柱書(はしらがき。冒頭の本文)が挙げるのは、次の5つです。

  • 成分本質(原材料)
  • 形状(剤型、容器、包装、意匠など)
  • その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量
  • 販売方法
  • 販売の際の演述(売るときの口頭の説明)

柱書は末尾に「等」を付け、これらを総合的に判断すべきものとしています。1つ通れば先へ進める関門の並びではありません。なお、この基準は自らの対象を「人が経口的に服用する物」と書いています。判断の軸を目的に置いているのは条文そのものの書き方で、この通知は、その目的を何から見るかを並べた文書です。二つの法律のどちらで何が決まるかは培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに入る?で扱っています。

「研究用」と書けば外に出られる、という話ではありません

「研究用」の3文字は、5つの材料のうち3番目の「表示された使用目的」に入ります。材料の一部であって、結論ではありません[6]。

では表示を外せばよいかというと、そうでもありません。次に見る2024年7月31日の事務連絡は、試薬としての使用目的が明示されていないこと自体を、指導の対象の例に挙げています[7]。表示を入れるか外すかという軸では、答えが出ない作りです。

「研究用」の扱いを行政が別の分野で文章にした例もあります。厚生労働省の「研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)」です。体外診断用医薬品(もっぱら病気の診断に使う医薬品のうち、体に直接使わないもの)にあたるかどうかを、「研究用」等の表示の有無に関わらず判断する、と書いています[12]。案は、この考え方の出どころを1971年の通知に置いています。ただし、この文書は、パブリックコメント(案を公表して意見を募る手続)にかけられた、案の段階のものです。成案(正式に定まったもの)が出されているかは、当サイトでは確認できていません。自ら書く対象も、一般の消費者向けに売られる研究用抗原定性検査キットです。細胞の分泌物を使う試薬に、直接あてはまる文書ではありません。経緯は「研究用」と書けば、薬機法の医薬品にあたらない?にまとめています。

2024年7月31日の事務連絡が挙げた6類型

厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課は、2024年7月31日に事務連絡(役所が運用上の注意などを担当者あてに伝える文書)「エクソソーム試薬に係る監視指導について」を出しました[7]。宛先は、各都道府県・各保健所設置市・各特別区の衛生主管部(局)です。供給者に直接あてた文書ではありません。自治体に対して、受け持つ販売業者などへの指導と取締りの徹底を求めたものです。

取り上げているのは、ヒトの幹細胞の培養上清液や、そこに含まれる可能性のある細胞外小胞などの分泌物を、治療等(病気の治療または予防)の目的に使うものではなく「試薬」と称した製剤です。事務連絡はこれを「エクソソーム試薬」と呼びます。そのうち、医薬品と誤認させるものと、医薬品的効果効能を標ぼうし(うたい)、又は暗示する(ほのめかす)ものを、無承認無許可医薬品(必要な承認や許可を受けずに作られたり売られたりしている医薬品)として扱う、という構えです。

指導を行う製品として、記1が次の6つを並べています。

  1. 病気の治療などの目的に使える、とはっきり示されたり、ほのめかされたりしているもの
  2. 外国で医薬品として承認などを受けている、と説明されているもの
  3. 薬機法の承認を受けた医薬品との比較などで、治療などができるかのように誤認させるもの
  4. エクソソーム等を使った治療などの研究が盛んだ、といった説明で、治療などができるかのように誤認させるもの
  5. 品質が医薬品と同じ水準だ、といった表現で、医薬品と同じ目的に使えるかのように誤認させるもの
  6. そのほか、「治療等以外の目的で使用するもの」だと明らかでないものや、「試薬」と称しながら試薬の用途とは違う方法で売るもの

並んでいるのは、製品の性質ではありません。何が示され、どう売られているかです。(1)から(5)は製品に付された説明や表現に関わり、(6)は使用目的の示し方と売り方に関わります。

6つは閉じた一覧でもありません。記2は、6類型に当たる場合に限らず、医薬品と誤認させる製品などには指導を行うとしています。記3は、この方針がエクソソーム等を称する製品に限られないとしています。記1の直前のなお書きも、内容は現時点で想定される製品の例を含むもので、今後の状況をふまえて見直すことがある、と断っています[7]。

記2の後段は、あわせて留意を求めています。現時点において、エクソソーム試薬を含め、エクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しない、という一文です。「現時点」は、事務連絡が出た2024年7月31日を指します[7]。承認された品目の確かめ方は承認された「エクソソーム」製品はあるかで扱っています。

6類型の全文、各号がとる述語の違い、同じ日に医療機関の管理者あてに出たもう1本の事務連絡との関係は、エクソソーム「試薬」は、どんなときに指導の対象?で扱っています。

医薬品と判断された場合に、条文が用意している決まり

事務連絡が使う「無承認無許可医薬品」という言葉は、承認と許可の両方に関わります。以下はいずれも、その物が薬機法上の医薬品にあたると判断されることを前提にした決まりです[11]。

  • 第14条第1項:医薬品の製造販売をしようとする者は、品目ごとに厚生労働大臣の承認(製品ごとに国が審査して、製造販売を認めること)を受けなければなりません。ただし、厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品は除かれます。
  • 第24条第1項:業として医薬品を販売するには、薬局開設の許可か医薬品の販売業の許可が要ります。卸売販売業は、その販売業の3区分の1つです。
  • 第55条第2項:第14条第1項に違反して製造販売をされた医薬品などについて、「前項と同様とする」と定めています。同じ条の第1項の禁止は、「販売し、授与し(人に渡し)、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない」というものです。
  • 第68条:まだ承認や認証を受けていない医薬品などについて、その名称・製造方法・効能・効果・性能に関する広告を禁じています。名宛人(禁止の対象になる人)は「何人も」です。

罰則も置かれています。拘禁刑は、刑事施設に収容する刑です。

  • 第14条第1項・第55条第2項の違反:3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方(第84条第3号・同条第18号)
  • 第24条第1項の違反:3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方(第84条第9号)
  • 第68条の違反:2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方(第85条第5号)

目を向けたいのは、条文が行為ごとに分かれている点です。承認を受けずに市場へ出した行為は第14条第1項、それを販売した行為は第55条第2項、承認前に効き目を広告した行為は第68条です。製造していなくても、売った行為と広告した行為は自分の行為にあたります。販売業の区分と、卸売販売業が売れる相手は医薬品を売るのに要る許可に整理しています。

説明のしかたも、材料の一つです

判断材料には、表示だけでなく販売方法と売るときの説明が含まれていました。供給する側の言葉は、製品の外にある要素として見られます。

薬機法上の広告にあたるかどうかは、3つの要件で判断されています[13]。

  • 顧客を誘引する意図が明確であること(顧客誘引性)
  • 特定の医薬品等の商品名が明らかにされていること(特定性)
  • 一般人が認知できる状態であること(一般認知性)

いずれも満たす場合に、広告にあたると判断する、という枠組みです。なお、第66条第1項は、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する条文です。これらについて、うそ(虚偽)や大げさ(誇大)な記事を広告したり、記述したり、広めたり(流布)することを禁じています。第66条第1項と第68条の名宛人は、どちらも「何人も」です。業の許可の有無でも、相手が事業者か消費者かでも限定されていません。

相手を医療機関に絞れば外れる、とも読めません。厚生労働省のQ&A(2014年5月)は、IDやパスワードでログインを求める場合について書いています。そのことをもって、インターネット上の表示が広告にあたらないことにはならない、という答えです。ここでいう「一般人」は、広告を行っている者以外の者を指します[14]。ただしこのQ&Aが述べているのはインターネット上の表示で、紙の資料や口頭の説明には触れていません。

口頭の説明については、2024年の事務連絡の記1(6)が、医療機関に治療等の目的のために使えると説明して売るものを、指導の対象の例に挙げています[7]。事業者どうしのやり取りには、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(2018年9月)という別の文書もあります[15]。ガイドラインが自分の対象として引いた線と、条文が「何人も」で引いた線は、別のものです。境目の引かれ方は供給者の説明は、どこから「広告」になる?と事業者間の情報提供は、どこまで広告ですか?で扱っています。

3. 化粧品として売る場合、輸入する場合、医療機関の側

ここまでは、卸売販売業の許可という一本の軸で見てきました。実務の相談は、そこで終わらないことが多くあります。よく出てくるのが次の3つです。化粧品として売る場合、海外から入れて国内に出す場合、そして医療機関の側に生じる手続です。いずれも、卸売販売業の許可とは別の条文に置かれています。順に見ていきます。

卸売販売業の許可とは別に生じる、3つの手続 上段に、医薬品の卸売販売業許可(医薬品を薬局開設者等に売るための許可)を置き、その下に区切り線と「これとは別に生じる」の見出しを置いています。下段には、同じ大きさの箱が3つ並びます。左は「化粧品として売る」で、製造販売業の許可、製造業の許可、品目ごとの届出。化粧品の側の手続を一式そろえます。中央は「海外から入れる」で、輸入の確認(第56条の2)。販売・授与の目的で輸入するおそれがある場合などは、確認がされません(第2項)。右は「医療機関が使う」で、再生医療等安全性確保法の手続。判断するのは医療機関で、供給する側が代わって判断することはできません。3つは並列で、どれも卸売販売業の許可とは別に生じます。 「卸すかどうか」とは別に、3つの手続がある 医薬品の卸売販売業許可(医薬品を薬局開設者等に売るための許可) これとは別に生じる 化粧品として売る 製造販売業の許可 製造業の許可 品目ごとの届出 化粧品の側の手続を 一式そろえる 海外から入れる 輸入の確認(第56条の2) 販売・授与の目的で輸入する おそれがある場合などは、 確認がされない(第2項) 医療機関が使う 再生医療等安全性確保法 の手続 判断するのは医療機関。 供給する側が代わって 判断することはできない 卸売販売業の許可とは別に生じる、3つの手続 いちばん上に、医薬品の卸売販売業許可(医薬品を薬局開設者等に売るための許可)を置き、区切り線と「これとは別に生じる」の見出しをはさんで、同じ大きさの箱を3つ縦に並べています。1つめは「化粧品として売る」で、製造販売業の許可、製造業の許可、品目ごとの届出。化粧品の側の手続を一式そろえます。2つめは「海外から入れる」で、輸入の確認(第56条の2)。販売・授与の目的で輸入するおそれがある場合などは、確認がされません(第2項)。3つめは「医療機関が使う」で、再生医療等安全性確保法の手続。判断するのは医療機関で、供給する側が代わって判断することはできません。3つは並列で、どれも卸売販売業の許可とは別に生じます。 「卸すかどうか」とは別に、 3つの手続がある 医薬品の卸売販売業許可 医薬品を薬局開設者等に売るための許可 これとは別に生じる 化粧品として売る 製造販売業の許可・製造業の許可 品目ごとの届出 化粧品の側の手続を一式そろえる 海外から入れる 輸入の確認(第56条の2) 販売・授与の目的で輸入するおそれが ある場合などは、確認がされない(第2項) 医療機関が使う 再生医療等安全性確保法の手続 判断するのは医療機関。供給する側が 代わって判断することはできない
図3:化粧品として売る場合、海外から入れる場合、医療機関が使う場合。3つは並列で、いずれも卸売販売業の許可とは別の条文に置かれています。

化粧品として売るなら、化粧品の側の手続を一式そろえる

薬機法の5つの区分は、物の由来や製法ではなく、何に使用されることが目的とされているかで分かれます。化粧品の定義は第2条第3項にあります[16]。人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦(塗ってすり込むこと)、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものです。ただし書きが、2つを化粧品から除いています。病気の診断・治療・予防や体の構造・機能への影響も併せて目的とされている物と、医薬部外品です。区分の分かれ方は医薬部外品と化粧品は、何で分かれる?にまとめています。

化粧品として売ると決めた場合、そろえる手続は2つの層に分かれます。事業者として受ける許可と、品目ごとの手続です[17]。

  • 事業者として — 化粧品製造販売業許可(第12条第1項の表)。この許可を受けた者でなければ、業として化粧品の製造販売はできません。人体用の製造販売業の許可は、総括製造販売責任者が業務を行う事務所の所在地の都道府県知事の事務です(薬機法施行令第80条)[18]
  • 製造する場所ごとに — 国内の製造所は製造業の許可(第13条第1項)。許可は、厚生労働省令で定める区分に従い、製造所ごとに与えられます(第13条第2項)[17]
  • 品目ごとに — 厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品は、品目ごとの承認(第14条第1項)。それ以外の化粧品は、製造販売の前に、品目ごとの届出(第14条の9第1項)。化粧品の届出に係る事務は、都道府県知事が行います[18]

承認・認証・届出・許可の関係は、承認・認証・届出・許可は、何が違う?に地図の形でまとめてあります。

うたえる効能の範囲も、卸売とは別に効いてきます。化粧品が効能としてうたえる範囲は、法律の条文ではなく通知の一覧にあります。2011年7月21日の通知の記の1が、別表第1に(56)「乾燥による小ジワを目立たなくする。」の1項を加えるとし、同じ通知の別紙に付いている改正後の別表第1が、56項目として並んでいます[19]。医薬品等適正広告基準が、承認を要しない化粧品についてこの範囲をこえてはならないとしています[20]。成分の書き方にも決まりがあります。特定の成分を取り出して示す表示(特記表示)について、2025年3月10日の通知は、原則として行わないとしています。同じ通知の留意事項とQ&Aに基づく場合に限って認め、その場合は配合目的を必ず併記することとしています[21]。詳しくは化粧品がうたえる効能は、どこまで?にあります。

化粧品として届け出たという事実は、その品目を投与に使ってよいことを示すものではありません。区分を決めるのは使用の目的です。塗って使う化粧品として届け出た品目を、注射や点滴に使う前提で供給すれば、その目的の側が問われ得ます。エクソソーム試薬について、2024年7月31日の事務連絡は、医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼうし、又は暗示するものを、無承認無許可医薬品として指導・取締りの対象に挙げています[7]。事務連絡の中身はエクソソーム試薬の事務連絡で扱っています。

海外から入れて国内で流通させる場合

輸入した物を売ることは、薬機法では「製造販売」にあたります。第2条第13項が、製造をした物だけでなく、輸入をした物を販売し、貸与し、又は授与することも製造販売としているためです[22]。ここでいう製造は、ほかに委託して製造をする場合を含み、ほかから委託を受けて製造をする場合を除きます。海外から取り寄せて国内の医療機関へ渡す形は、条文の上では、国内で作って渡す形と同じ枠に入ります。

そのうえで、輸入という場面そのものについての条文が別にあります。承認・認証を受けず、届出もしないで輸入しようとする者に、厚生労働大臣の「輸入の確認」を求める第56条の2第1項です。この条は準用(必要な読み替えをして、同じ条文を使うこと)という形で、ほかの区分にも及びます。化粧品は第62条、医薬部外品は第60条、医療機器は第64条、再生医療等製品は第65条の4です[23]。

輸入の確認は、製造販売のための許可・承認の代わりにはなりません。条文の上では、それぞれ別々に必要になります。業として海外の製品を国内に出す場合、医薬品・医薬部外品・化粧品の行に置かれているのは次の手続です[17]。

  • 製造販売業の許可(第12条第1項)
  • 国内の製造所は製造業の許可(第13条第1項)、保管のみを行う製造所は登録(第13条の2の2第1項)
  • 外国の製造所は認定(第13条の3第1項)、保管のみを行う製造所は登録(第13条の3の2第1項)
  • 品目ごとの承認(第14条第1項)、承認を要しないものは届出(第14条の9第1項)

外国の製造所についての条文は、認定または登録を「受けることができる」という書き方です。義務の書き方ではありません。ただし、承認の側と売る側に、これを求める規定があります。認定や登録を受けていない外国の製造所で製造された医薬品は、販売・授与することも、販売や授与の目的で貯蔵・陳列することも禁じられています(第55条第2項)。化粧品については第62条が、この第55条を準用しています[25]。なお、ここで挙げた条文のうち、第13条の3(医薬品等外国製造業者の認定)は改正が、第13条の3の2(保管のみを行う製造所に係る登録)は削除が予定されています。予定日は2028年5月20日で、e-Gov 法令検索の上でも予定日です。施行日は政令で確定します[24]。輸入の手続の全体は医薬品や化粧品を輸入するとき、何が要る?にあります。

海外での承認は、日本の承認とは別のものです。2024年7月31日の事務連絡は、諸外国で医薬品として承認等されている旨が説明されている製品を、指導の対象の1つに挙げています(記1(2))。同じ事務連絡は、その時点で、エクソソーム試薬を含めエクソソーム等と称する製品に、薬機法に基づく承認を受けた医薬品は存在しないとして、留意を求めています(記2)[7]。

自社では売らず、海外の販売サイトへ誘導するだけの形も、広告の側で見られます。2014年5月22日の通知のQ&AのQ5は、医薬品等を海外から日本国内に販売するサイトまたは個人輸入代行を行うサイトを紹介・誘導しているサイトを「紹介サイト」と呼び、そこに特定の医薬品名等が表示されている場合を取り上げています。A5は、当該紹介サイトが広告に該当するかは個別具体的に判断されるとしています。そのうえで、リンク先の販売または輸入代行行為を行う主体となる事業者と同一である場合や、同一とみなせるような場合等には、医薬品等の広告に該当する可能性があるとしています[14]。海外製品を扱う場面の全体は海外製品を扱う・紹介するとき、薬機法はどう関わる?で扱っています。

確認を受けずに輸入した場合の罰則は、第84条第21号にあります。3年以下の拘禁刑(刑事施設に収容する刑)もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。法人には、第90条第1号により1億円以下の罰金刑が別に定められています[26]。いずれも条文が定める上限です。

医療機関の側に生じる手続は、医療機関が判断する

供給する側の許可とは別に、投与する医療機関の側にも手続の問題があります。再生医療等提供計画(再生医療等の提供の前に、あらかじめ厚生労働大臣に出す計画)です。提出を求める再生医療等安全性確保法第4条第1項が名宛人(その条文で義務の対象になる人)に置いているのは、再生医療等を提供しようとする病院又は診療所の管理者です。同法第13条の確認義務の名宛人は、医師又は歯科医師です[27]。物を供給する側は、どちらの条文の名宛人でもありません。

提供計画が要るかどうかは、呼び名では決まりません。分かれ目は、同法第2条第1項の「再生医療等」、第2項の「再生医療等技術」、そして施行令第1条をたどった先の範囲に当たるかどうかです[28]。エクソソームと呼ぶか培養上清液と呼ぶかは、この判断とは別のことです。たどり方はエクソソーム・培養上清液の投与に、提供計画は要るのか?と再生医療等安全性確保法の対象と第1〜3種は、どう決まる?に書いてあります。

行政の記載は、2025年5月30日の事務連絡の別紙にあります。別紙の A.1-1-07(エクソソーム)は「細胞を含まないことが明らかである場合には、法の対象外である」と書いています。A.1-1-08(培養上清・セクレトーム)は「細胞が含まれないことが明らかである場合は、法の対象外である」と書いています[29]。どちらも条件付きの書き方です。そして、この条件が満たされているかをどのように確かめるかは、どちらの項目にも書かれていません。

この記載の射程には、注意すべき点が2つあります。1つは、この事務連絡が扱うと書いているのが法・施行令・施行規則だという点です。薬機法や医療法の取扱いは書かれていません。この点はエクソソーム・培養上清液の投与に、提供計画は要るのか?で詳しく扱っています。もう1つは、対象外であることが、品質・有効性・安全性が確認されたことを意味しないという点です。こちらは培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに入る?で詳しく扱っています。なお、両項目の末尾には同じなお書きが置かれ、細胞の分泌物を用いる医療技術について、改正法の附則に、施行後2年を目途に法の適用の在り方等を検討すること等の定めがあると書かれています[29]。

罰則も、医療機関側の義務に付いています。提出を欠いたまま提供した場合、第62条第1号が50万円以下の罰金を定めています。第一種再生医療等については、第60条第1項第1号が1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金を別に定めています。従業者などが業務に関して違反したときは、第64条の両罰規定(違反した本人だけでなく、その人が業務をしていた法人なども罰する決まり)により、法人や個人にもそれぞれの条の罰金刑が科されます[27]。いずれも条文が定める上限です。

ここから導かれることは1つです。供給する側が、医療機関に代わって判断することはできません。義務を負うのは医療機関の管理者であり、医師・歯科医師です。供給元が「提供計画は要りません」と説明しても、それで医療機関の義務がなくなるわけではありません。罰則が向いている先も、医療機関の側です。「細胞が入っていないので、法律の規制は受けません」という一言は、条件と、条件の確かめ方と、対象となる法律の範囲を、まとめて省いた言い方になります。

供給する側にできるのは、判断の材料をそろえて渡すところまでです。細胞が含まれないことを、どの工程で、どの試験で確かめたのか。ロットごとの試験成績書に何が載っていて、何が載っていないのか。製造する場所の管理はどうなっているのか。こうした事実を記録の形で示せば、医療機関は自分の責任で判断できます。確認する項目は供給元に確認すべき6項目と培養上清液の「安全性試験済み」はどこまで信用できるかにまとめています。供給する側の説明が、どこから広告の問題になるかは供給者の説明はどこから広告になるかで扱っています。

なお、2024年7月31日には、医療機関に宛てた事務連絡ももう1本出ています。医政局研究開発政策課から再生医療等提供機関の管理者あてのもので、幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について、諸外国を含め有効性・安全性が示され薬事承認を得て製造販売されている医薬品は現時点でない、と書いています[8]。医療機関がこの文書を読んでいることを前提に話を進めたほうが、行き違いは少なくなります。

4. 実務として、何を確かめておけばよいか

許可が要るかどうかは、扱う品目が薬機法上の医薬品にあたるかどうかで決まります。そして、あたるかどうかは、製品に書かれた文言だけで決まるものではありません。厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課が2024年7月31日に出した事務連絡は、使用目的の示し方や売り方も、指導を行う類型の中に並べています[7]。取扱いを始める前に確かめておきたいことを、確認する順に6つ挙げます。

  1. 自社がどの立場で関わるのか。自社の名で販売するのか、注文を取り次ぐのか、他社の製品を紹介するだけなのかを、先に決めます。広告について定めた第66条第1項と第68条は、どちらも「何人も」で始まり、業の許可の有無でも、相手が事業者か消費者かでも限定されていません[30]。紹介や取次ぎであれば関わらない、とは読めない書き方です。
  2. 製品の位置づけが、書面に書いてあるか。何の目的で使う製品として供給されているかを、仕様書・表示・カタログで確かめます。2024年7月31日の事務連絡の記1(6)は、試薬としての使用目的が明示されていないなど「治療等以外の目的で使用するもの」であることが明らかでないものを、指導を行う類型の一つに挙げています[7]。
  3. 「法の対象外」という説明が、どの法律の話か。再生医療等安全性確保法の対象外である、という説明を受けたときは、それが薬機法の話ではないことを確かめます。2025年5月30日のQ&Aは、セクレトームを「細胞から細胞の外に分泌されるタンパク質全般を指す呼び名」と説明したうえで、培養上清とセクレトームについて、細胞が含まれないことが明らかである場合に同法の対象外と書いています[29]。対象外とされても、薬機法上の扱いは決まりません。
  4. 海外の製造元から調達する場合は、輸入の手続を別に確かめる。輸入しようとする物が薬機法上の医薬品にあたる場合、承認や認証を受けず、届出もしていないものについては、原則として厚生労働大臣の確認が要ります(第56条の2第1項)[23]。この確認は、申請すれば必ず受けられるものではありません。販売や授与の目的で輸入するおそれがある場合などには、確認がされません(第2項)。確認を要しない場合は、第56条の2第3項と施行規則第218条の2の4が定めています。
  5. 説明資料と、口頭の説明の文言。記1の(1)から(5)は製品に付された説明や表現を、(6)は使用目的の示し方と売り方を対象にしています。(6)が例に挙げているのは、医療機関に病気の治療などの目的に使えると説明して売るものと、インターネットのサイトなどに治療などの目的で使えるという使用者の口コミを載せているものです[7]。記2は、6つの型に当てはまる場合に限らず、医薬品と誤認させるものなどには、指導を行うとしています。
  6. 医療機関・取扱事業者との契約と、記録の残し方。誰に供給するか、再販を認めるか、どの資料を使ってよいかを、取引の条件として書面にします。あわせて、いつ・誰に・どのロットを出荷し、どの版の資料を渡したかを残しておけば、後から確かめられます。なお、医療機関の側で再生医療等提供計画の提出が問題になる場合、その義務を負うのは病院又は診療所の管理者です(再生医療等安全性確保法第4条第1項)[27]。供給する側は、この条文の名宛人ではありません。

6つに共通するのは、どれも後から書面で示せるかどうかという点です。製品の位置づけも、説明の文言も、出荷の記録も、口頭で説明できるだけでは確かめようがありません。

研究用試薬の供給について、資料の審査手順や記録の保管を直接定めた文書は、ここでは確認できていません。参考になる例として、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインがあります。資材等を使用前に社内の監督部門が審査すること、口頭で説明した内容の記録を含む業務記録を作成し保管することを定めた文書です(第2の3・第2の6)[15]。ただしこのガイドラインの対象は、医薬品製造販売業者等が医療用医薬品について行う販売情報提供活動で、研究用試薬の供給はその範囲に入っていません。

当社の場合

当社は、幹細胞セクレトーム(細胞が培養中に分泌した成分の総体)を研究用試薬として供給しており、医薬品としての承認を受けたものではないため、医薬品の卸売販売業許可の対象ではありません。ただし、取り扱う品目の位置づけや、表示・説明の仕方によって適用される規制は変わります。

医療機関へ供給する取扱事業者とのお取引も承っています。ご提供先は医療機関に限ります。一般消費者への直接販売を目的とするお取引はお受けしていません。

全製品にロット別のCOA(品質成績書)を発行し、製品に同梱しています。記載しているのは、無菌試験・エンドトキシン・マイコプラズマ・タンパク濃度の結果です。上の2番目と6番目の項目は、当社に対しても同じようにお尋ねください。

製造は、東京・銀座のCPC(細胞培養加工室)で行っています。約100坪の施設で、ドナー選定から充填まで一貫して行っています。

発注単位・納期・支払条件・契約締結までの流れは卸売供給のページに、この節で引いた条文と通知を原文までさかのぼった解説は薬機法解説にまとめています。個別の論点は、培養上清液・セクレトームは、どの法律のどこに入るか、「研究用」と書けば医薬品にあたらないのか、供給する側の説明は、どこから「広告」になるのかをご覧ください。

本記事は、公開されている法令・通知・事務連絡の記載を整理したもので、2026年9月8日時点で施行されている条文に基づきます。個別の取引について、許可の要否や、表示・説明が適切かどうかを判断するものではありません。判断は、扱う品目、表示の内容、説明のしかた、販売の方法によって変わります。実際の取扱いにあたっては、所轄の自治体の担当部署や、薬事に詳しい専門家にご確認ください。当社の幹細胞セクレトームは研究用試薬として供給しており、特定の疾患に対する効果を示すものではありません。

よくあるご質問

培養上清液を医療機関に卸すのに、医薬品の卸売販売業許可は要りますか。

扱う物が薬機法上の医薬品にあたらないかぎり、第24条第1項の販売業の許可は働きません。医薬品にあたるかどうかは、成分本質・形状・表示された効能効果・販売方法などを総合して判断されます。承認を受けていないことは、それ自体では医薬品にあたらないことの理由になりません。必要な承認を受けずに売られている物は、無承認無許可医薬品として指導の対象になります。

「研究用」と表示しておけば、規制の外に出られますか。

出られません。表示は判断の材料の一つで、それだけで決まるものではありません。2024年7月31日の事務連絡は、試薬としての使用目的が明示されていないものや、医療機関に治療等の目的で使用できる旨を説明して販売するものなど、6つの類型を挙げています。詳しくは「研究用」と書けば、薬機法の医薬品にあたらない?をご覧ください。

効能効果を書かなければ、どんな説明をしてもよいのですか。

そうではありません。書面に書かなくても、口頭の説明や販売のしかたが判断の材料になります。事務連絡の記2は、6つの類型に当てはまる場合に限らず、医薬品と誤認させるものや医薬品的効果効能を標ぼう・暗示する製品には指導を行うよう求めています。

海外から輸入して、国内の医療機関に卸すことはできますか。

輸入には薬機法第56条の2の確認があり、販売や授与の目的で輸入するおそれがある場合などは確認がされません。国内で流通させるには、その物の位置づけに応じた手続が別に要ります。海外製品を扱う・紹介するとき、薬機法はどう関わる?に整理しています。

医療機関が使うときの手続は、供給する側が確かめるべきですか。

確かめるのは有用ですが、判断は医療機関が行うものです。再生医療等安全性確保法の手続は医療機関に課されており、供給する側が代わって判断することはできません。細胞を含まない培養上清液は同法の対象外として扱われていますが、適用の可否は個別の使用形態によります。

出典

  1. [1] 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律。昭和35年法律第145号)第24条第1項 — 法令確認日 2026-09-08/この版の施行日 2026年5月21日(e-Gov法令検索)
  2. [2] 同法 第84条第9号(第24条第1項の違反に対する罰則)— 法令確認日 2026-09-08
  3. [3] 同法 第25条(第1号 店舗販売業/第2号 配置販売業/第3号 卸売販売業)— 法令確認日 2026-09-08
  4. [4] 同法 第34条第5項、および薬機法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第138条 — 施行規則は版ID 336M50000100001_20260619_508M60000100104、施行日 2026-06-19(2026-09-08 確認)
  5. [5] 同法 第2条第1項第2号・第3号(医薬品の定義)— 法令確認日 2026-09-08
  6. [6] 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日 薬発第476号/最終改正 令和2年3月31日 薬生発0331第33号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」柱書(厚生労働省。2026-09-08 確認)
  7. [7] エクソソーム試薬に係る監視指導について(令和6年7月31日 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)前文・記1(1)〜(6)・記2・記3(厚生労働省法令等データベース。2026-09-08 確認)
  8. [8] 幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)(令和6年7月31日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)本文
  9. [9] 薬機法 第2条第9項(再生医療等製品の定義)、第23条の25第1項(製造販売の承認)、第40条の5第1項(販売業の許可)— 法令確認日 2026-09-12
  10. [10] 新再生医療等製品の承認品目一覧(独立行政法人医薬品医療機器総合機構/PMDA)2015年度〜2026年度の各年度別表。2026年9月12日確認
  11. [11] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項、第14条第1項、第24条第1項、第25条、第55条第2項、第66条第1項、第68条、第84条、第85条(e-Gov 法令検索。法令確認日 2026-09-08、この版の施行日 2026-05-21)
  12. [12] 研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)(厚生労働省。パブリックコメント資料)2.・3.・6.(e-Gov パブリックコメント。2026-09-08 確認)
  13. [13] 薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号 厚生省医薬安全局監視指導課長通知)記(2026-09-08 確認)
  14. [14] インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について(平成26年5月22日 薬食監麻発0522第9号)別添 A3、Q5・A5(厚生労働省。2026-09-08 確認)
  15. [15] 医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(平成30年9月25日 薬生発0925第1号 別添)第1の2(1)・第2の3・第2の6(厚生労働省。2026-09-08 確認)
  16. [16] 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律。昭和35年法律第145号)第2条第3項 — 化粧品の定義(法令確認日 2026-09-08、この版の施行日 2026-05-21)
  17. [17] 薬機法 第12条第1項の表、第13条第1項・第2項、第13条の2の2第1項、第13条の3第1項、第13条の3の2第1項、第14条第1項、第14条の9第1項 — 製造販売業の許可、製造業の許可が厚生労働省令で定める区分に従い製造所ごとに与えられること、製造所の登録・認定、品目ごとの承認と届出(法令確認日 2026-09-08)
  18. [18] 薬機法施行令(昭和36年政令第11号)第80条、同条第2項第8号及び第9項 — 人体用の製造販売業の許可と、化粧品に係る第14条の9の届出の事務を都道府県知事が行うこと
  19. [19] 化粧品の効能の範囲の改正について(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)記の1及び別紙(改正後の別表第1)— 記の1が別表第1に(56)「乾燥による小ジワを目立たなくする。」の1項を加え、別紙の改正後の別表第1が化粧品の効能56項目として付いていること
  20. [20] 医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日 薬生発0929第4号 別紙)第4の3(2)
  21. [21] 化粧品における特定成分の特記表示について(令和7年3月10日 医薬監麻発0310第3号)記、Ⅰ 留意事項1
  22. [22] 薬機法 第2条第13項 — 「製造販売」の定義(括弧書きの「他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を除く」を含む)
  23. [23] 薬機法 第56条の2第1項・第2項・第3項(輸入の確認と、確認をしない場合)、第60条・第62条・第64条・第65条の4(準用)、および薬機法施行規則 第218条の2の4
  24. [24] 薬機法 第13条の3(医薬品等外国製造業者の認定)、第13条の3の2(保管のみを行う製造所に係る登録)、および同法 2028年5月20日施行予定版(令和7年法律第37号による改正後。版ID 335AC0000000145_20280520_507AC0000000037)— 第13条の3の改正予定と第13条の3の2の削除予定。e-Gov 法令検索上も予定日で、施行日は政令で確定
  25. [25] 薬機法 第55条第2項 — 販売、授与等の禁止
  26. [26] 薬機法 第84条第21号、第90条第1号 — 輸入の確認を受けずに輸入した場合の罰則と両罰規定
  27. [27] 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第4条第1項、第13条、第60条第1項第1号、第62条第1号、第64条(法令確認日 2026-09-12)
  28. [28] 再生医療等の安全性の確保等に関する法律 第2条第1項・第2項、再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令(平成26年政令第278号)第1条
  29. [29] 再生医療等の安全性の確保等に関する法律等に関するQ&Aについて(令和7年5月30日 厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡)別紙 A.1-1-07・A.1-1-08(なお書きを含む)
  30. [30] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第66条第1項・第68条

本記事は、公開されている法令・通知・事務連絡の記載を整理したもので、2026年9月8日時点で施行されている条文に基づきます。個別の事案についての判断の代わりになるものではありません。当社の幹細胞セクレトーム(細胞が培養中に分泌した成分の総体)は研究用試薬として供給しており、医薬品・医療機器としての承認を受けたものではありません。

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