30秒でわかる要点
- 名乗りではなく、実態で見る:厚生労働省の通知(2002年8月)は、「輸入代行業」と称していても、実態として輸入をしている場合は許可が要るとしています。この許可の当時の名前は「輸入販売業の許可」でした。通知が見ているのは、商品の受け取りなどの輸入の効果が、誰に帰属するか(誰のものになるか)です。
- 代行業者だと知らせる広告は規制しない/無承認医薬品の広告は違法:通知は、代行業者だと知らせる広告は、当時の薬事法(今の薬機法の、題名が改められる前の名前)の上では規制するものではないとしています。一方で、無承認医薬品(国内で承認されていない医薬品)の広告は違法だとしています。代行業者のサイトには、名前の一部を伏せ字(文字を記号などで隠すこと)にしたり、画像だけを載せたりした表示などもあります。通知は、金額を示すなど客を引きつける性質が認められる場合などで、特定の医薬品だとわかるときは、こうした表示も広告として取り扱うとしています。
- 今の薬機法に「輸入販売業」の語はない:通知の用語は2002年当時のものです。今の薬機法では、輸入は「製造販売」(製造や輸入をした製品を、売ったり貸したり渡したりすること)の定義(第2条第13項)に含まれます。医薬品を業として(仕事として)製造販売するには、第12条第1項の許可が要ります。承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告を禁じるのは第68条で、名宛人(禁止の対象になる人)は「何人も」、つまり誰でもです。
1. 個人輸入の代行業について、国はどんな文書で考え方を示したのですか?
厚生労働省の通知「個人輸入代行業の指導・取締り等について」(2002年8月)です。厚生労働省の医薬局長から、各都道府県知事あてに出されました。
本文は、第1 定義、第2 無許可輸入(必要な許可を受けずにする輸入)にあたる事例など、第3 代行業者への指導など、第4 無承認医薬品の広告の4つに分かれます。
通知の冒頭は、国内で承認されていない医薬品を、国民が自分で海外から輸入することを「個人輸入」と呼んでいます。こうした医薬品を、通知は「無承認医薬品」と呼びます。そして、個人輸入のときに、輸入の手続の代行を個人輸入代行業者に頼む人がいる、と書いています。
通知が出された理由も、冒頭にあります。個人輸入したダイエット用の健康食品などによると疑われる、健康被害の事例がありました。その事例で、代行業者が、実際には無承認医薬品の輸入や広告をするなど、法律に違反する行為をしている例がみられたためです。
そこで通知は、医薬品の無許可輸入にあたる事例などをはっきりさせ、指導・取締りの参考にしたとしています。通知の末尾は「指導・取締りを行われたい」と求める形です。
原文で確かめる(通知の冒頭)
近年、国民の健康意識の高まりやインターネットの普及等に伴い、国内で承認されていない医薬品(以下「無承認医薬品」という。)を国民が自ら海外より輸入し(以下「個人輸入」という。)、使用する事例が増加しているが、その際、個人輸入代行業者に輸入手続きの代行を委託するものがみられる。
先般の個人輸入したダイエット用健康食品等によると疑われる健康被害事例において、これらの個人輸入代行業者が、実際には無承認医薬品の輸入や無承認医薬品の広告を行うなど薬事法(昭和35年法律第145号)に違反する行為を行っている事例がみられることから、今般、医薬品の無許可輸入に該当する事例等を明確化し、指導取締りの参考としたので、今後は、下記に従い、貴管下関係業者に対して、遺漏のないよう指導・取締りを行われたい。
また、近年の健康被害事例の発生を踏まえ、厚生労働省としては安易な個人輸入に対して注意喚起を行ってきているところであるので、都道府県においても必要な周知・啓発を図られたい。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号、厚生労働省医薬局長)本文。法律名は発出当時の表記正式な日付と番号は、平成14年8月28日 医薬発第0828014号です。本文(「記」と書かれた後の部分)の見出しは「無許可輸入の具体例等について」です。
第3が求めている指導
第3は、都道府県が代行業者にする指導の中身です。
例
ある代行業者が、以前に手続を代行した医薬品について、海外で危害が起きているという情報を知ったとします。第3は、都道府県に対して、この業者が消費者に情報を伝えるなどして健康被害を防ぐよう努めることを、指導するよう求めています。
原文で確かめる(第3)
輸入代行業者が、過去に輸入者から代行手続きの委託を受け輸入代行行為を行った医薬品等について、海外等において当該医薬品等に関する危害が発生している等の情報に接した場合にあっては、消費者に対し当該情報を伝えるなど健康被害の発生防止に努めることを指導されたい。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第3厚生労働省が呼びかけている注意
通知の冒頭は、都道府県に、必要な周知・啓発も求めています。厚生労働省は、個人輸入について注意を呼びかけるページ(あやしいヤクブツ連絡ネット)を公開しています。そこには、次の記載があります。
- 「実際に、個人輸入した未承認医薬品による健康被害や、個人輸入した医薬品が偽造品であったという事例があります。」
- 「個人輸入した医薬品等により起こった健康被害は、多くの場合、自己責任となります。」
厚生労働省のページは「未承認医薬品」(国の承認をまだ受けていない医薬品)と書いています。
この通知が、いまも現行かどうか
この通知が、後の通知によって廃止や改正をされたかどうかは、手元の資料では確認できていません。全文は、東京都が公開している医薬品等広告関係通知集に載っていて、このページの引用はこれによります。
通知を日付と番号で特定し、後の文書に引かれているか、廃止されていないかを確かめる手順は、『1-10 法令や通知の原文は、どこで読める?』で扱います。
2. 通知は、代行業者に許可が要るかどうかを、何で見分けているのですか?
商品の受け取りなどの輸入の効果が、誰に帰属するか(誰のものになるか)です。通知は、効果が代行業者に帰属する場合は、当時の「輸入販売業の許可」が必要だとしています。
通知は「輸入者」を、実質的に輸入の効果が帰属する者と定義しています。
通知の第1は、3つの言葉を定義しています。
- 輸入:外国から積み出された貨物(品物)を、日本の領土内に引き取ること
- 輸入者:実質的にみて、日本に引き取る品物の処分権(その品物をどうするかを決められる権利)を持つ者。つまり、実質的に輸入の効果が帰属する者
- 輸入販売業者:「業として、医薬品等を輸入する者」
第2の1は、代行業者の業務を、一般に、輸入者に頼まれて個別の商品の輸入の手続を請け負うもの、としています。そのうえで、商品の受け取りなどの輸入の効果が帰属する場合は、輸入販売業の許可の取得が必要だとしています。
第2の2の書き出し(柱書)も、名乗りではなく実態を見ています。「輸入代行業」と称していても、外国の業者から医薬品を輸入し、客に販売するなど、実態として輸入をしている場合は、許可の取得が必要だとしています。「輸入販売業の許可」は当時の名前で、今の薬機法での扱いは6.の節で説明します。
直感的なポイント
友人に頼まれて海外の通販サイトに注文を入れてあげる人と、自分で買った品物を友人に売る人の違いに似ています。前者では、品物は友人あてに届きます。後者では、品物はいったん自分のものになってから、友人に渡ります。このたとえが示すのは、通知が見ている点、つまり品物が誰のものになるかだけです。
例
A社が、客から頼まれた海外の医薬品を自分あてに取り寄せ、受け取ってから客に渡すとします。この場面では、商品の受け取りという輸入の効果がA社に帰属するかが問われます。「代行」と名乗っていても、通知の考え方では許可が問題になり得ます。
B社は、客の注文と代金をまとめて外国の販売業者に送り、商品は外国の業者から客に直接届くとします。通知は、このように外国の業者から消費者へ直接届く形について、「消費者=輸入者」と注記しています。ただし、代行業者が商品のリストを示して希望を募る形では、そのリストが広告にあたるかが、別に問題になります(3.の節)。個別の事業がどの形にあたるかは、通知の記載だけでは決まりません。
原文で確かめる(第1・第2の1・第2の2 柱書)
第1 定義
1 輸入
「輸入」とは、外国から積み出された貨物を本邦の領土内に引き取ることをいう。
2 輸入者
「輸入者」とは、実質的にみて本邦に引き取る貨物の処分権を有している者、すなわち実質的に輸入の効果が帰属する者をいう。
3 輸入販売業者
「輸入販売業者」とは、業として、医薬品等を輸入する者をいう。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第1輸入代行業者の行う業務の範囲については、一般に、輸入者の要請に基づき個別商品の輸入に関する役務(手続き)を請け負うものであり、商品の受け取り等の輸入の効果が帰属する場合は、輸入販売業の許可の取得が必要なものであること。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第2の1(業務の範囲)輸入代行業と称している場合であっても、外国の業者から医薬品を輸入し、顧客に販売する行為を行うなど実態として輸入行為を行っている場合は輸入販売業の許可の取得が必要であるので、必要な指導取締り等適切な措置を行われたい。なお、現在までに輸入代行業と称するもののうち、その事業の形態により薬事法違反行為と考えられるものについて以下のとおり類型化したので、取締り等に当たり参考とされたい。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第2の2(輸入代行業者の行う違反事例等の態様)柱書。法律名は発出当時の表記3. 通知は、代行業をどんな形に分けているのですか?
3つの形です。第2の2が「違反事例等の態様」(態様は形のこと)として2つを、第2の3が違反事例とならない形として1つを挙げ、それぞれ別紙に図を付けています。
(1)には注2で許可が必要だと書かれ、(1)と(2)の商品リストには注1で広告についての注意が付いています。
3つの形は、分かれ目が2つある道筋として書かれています。1つ目の分かれ目は、代行業者が商品のリストを「不特定多数の者に示し、その輸入の希望を募る」手順があるかどうかです。2つ目は、商品が代行業者の手を経て消費者に渡るか、外国の販売業者から消費者に直接届くかです。
- (1) 輸入行為(別紙1):代行業者がリストを示して希望を募ります。前もって注文を見込み、個人使用の目的として輸入しておいた商品か、依頼を受けて自分の資金で輸入した商品を、消費者に渡します。通知は注2で、許可の取得が必要としています。
- (2) 能動的手続代行行為(別紙2):代行業者がリストを示して希望を募ります。代金と送付先のリストを外国の販売業者に送り、外国の販売業者が消費者に直接商品を送ります。
- (3) 受動的手続代行行為(別紙3):消費者が、希望する商品の輸入を代行業者に頼みます。そのあとは(2)と同じく、代金と送付先のリストが外国の販売業者に送られ、外国の販売業者が消費者に直接商品を送ります。
「能動的」は自分から働きかけること、「受動的」は他から働きかけられて動くことを表す言葉です。(2)と(3)のように外国の販売業者が消費者に直接送る形について、通知は「消費者=輸入者」と注記しています。
第2の3は、(3)を、代行業者が消費者に頼まれて注文や支払いなどの輸入の手続を請け負い、商品の受け取りなどの効果が消費者に帰属する形だと書いています。
(1)と(2)の最初の手順(リストを示して希望を募る)には、注1が付いています。広告についての注意です。商品リストが無承認医薬品の広告にあたる場合は、違反になるとしています。商品名を伏せ字などにしている場合もあります。その場合でも、商品の認知度や添えられた写真などから総合的にみて広告にあたると考えられるときは、違反になるとしています。
原文で確かめる(表1と、注1・注2、第2の3)
| 通知の類型 | 通知が | 通知が |
|---|---|---|
| (1) 輸入行為 |
①輸入代行業者は、 |
①に |
| (2) 能動的手続代行行為 |
①〜③は |
①に |
| (3) 受動的手続代行行為 |
①消費者は、 |
④の |
手順の文言は通知の原文によります。〈 〉は、原文で各手順に付されている注の位置を示すために本文で補ったものです。
注1) 商品リストが無承認医薬品の広告に該当する場合、薬事法違反となる。なお、商品名が伏せ字などであっても、当該商品の認知度、付随している写真等から総合的にみて広告に該当すると考えられる場合は、薬事法違反となる。
注2) 輸入販売業の許可が必要となるため、許可なく行えば薬事法違反となる。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第2の2(1)の注1・注2。同じ注1は(2)にも付されている。法律名は発出当時の表記「輸入代行業者は、消費者の要請に基づき個別商品の発注、支払い等の輸入に関する手続を請け負うものであり、商品の受け取り等の輸入の効果が消費者に帰属する場合。」
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第2の3 柱書通知がこの3つを示したのは、冒頭にあるとおり「医薬品の無許可輸入に該当する事例等を明確化し、指導取締りの参考とした」ためです。個別の事業がどの形にあたるかは、この記載だけでは決まりません。
例
消費者が払うお金を、表1で見てみます。3つの形のどれにも、「消費者は、輸入代行業者の手数料が上乗せされた価格を支払う」という手順があります。形の違いは、冒頭で見た2つの分かれ目に表れます。
別紙3のあとに、参考として「代行業者不在型の個人輸入」の図が置かれています。消費者が外国の業者に注文し、代金を払い、商品が送られるという3手順の図で、代行業者は現れません。
4. 代行業者のサイトの表示は、広告としてどう扱われるのですか?
通知は、代行業者だと知らせる広告は、当時の薬事法(今の薬機法の、題名が改められる前の名前)の上では規制するものではないとしています。無承認医薬品(国内で承認されていない医薬品)の広告は、違法だとしています。
第4の1は、代行業者のサイトの伏せ字や画像だけの表示でも、客を引きつける性質が認められる場合などで、特定の医薬品だとわかるときは、広告として扱うとしています。
この区別は、第2の2の書き出しの末尾にある、次の一文に書かれています。
また、薬事法上、輸入代行業者が、輸入代行業者である旨の広告を行うことを規制するものではないが、この様な場合においても、無承認医薬品の広告を行うことは違法であることについて、十分に周知指導されたい。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第2の2 柱書。法律名は発出当時の表記伏せ字や画像だけの表示を、広告として扱う場合
輸入代行業者がインターネットなどを使ってする無承認医薬品の広告について、通知は第4に独立した節を置いています。通知は、こうした広告を厳しく監視指導(広告を見て、問題があれば指導すること)するよう求めています。安易な個人輸入を後押しして健康被害のおそれがあり、違法な行為でもあるからです。
第4の1はまず、広告かどうかを、これまで次の3つの条件で判断してきたと書いています。
- ① 顧客を誘引する(客の購入意欲を高める)意図が明確であること
- ② 特定の医薬品などの商品名が明らかにされていること
- ③ 一般の人が認知できる状態にあること
そのうえで、代行業者のホームページなどにある、無承認医薬品の商品名などの表示を取り上げています。名前の一部を伏せ字にしたり、文字をぼかしたり、写真や画像だけを載せたりする表示などです。こうした表示でも、金額を示すなど客を引きつける性質が認められる場合などで、特定の医薬品だとわかるときは、広告として取り扱うとしています。通知は、わかるかどうかを、商品の認知度や、添えられた写真・説明書きなどから見るとしています。
例
冒頭で見た、海外の医薬品の名前と価格を並べた代行サイトで考えます。名前の一部を記号で隠していても、価格が示され、写真や説明から特定の医薬品だとわかるとします。第4の1の考え方では、広告として扱われ得ます。その医薬品が国内で承認されていなければ、無承認医薬品の広告として問題になり得ます。
原文で確かめる(第4の柱書・第4の1)
第4 無承認医薬品の広告
輸入代行業者によるインターネット等を利用した無承認医薬品の広告については、安易な個人輸入を助長する行為によって健康被害のおそれが危惧されるとともに、薬事法上違法な行為であることから、以下に留意の上、厳正な監視指導を図られたい。
1 医薬品の広告該当性
医薬品の広告に該当するかについては、かねてより、①顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること③一般人が認知できる状態にあることに基づき判断してきているが、輸入代行業者のホームページ上等におけるいわゆる無承認医薬品の商品名等の表示については、名称の一部を伏せ字とした場合や文字をぼかす、写真や画像イメージのみを表示するなどの場合であっても、金額を示すなど商品に対する顧客誘因性が認められる場合などであって、当該商品の認知度、付随している写真及び説明書き等から特定医薬品であることが認知できる場合は、広告に該当するものとして取り扱うこと。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第4の柱書・第4の1。法律名は発出当時の表記。原文の「顧客誘因性」は原文どおり3つの条件の出どころと、広告を禁じる条文
①②③は、厚生省(当時)の通知(1998年9月)が示した3つの条件(広告該当性の3要件)です。この1998年の通知も、出された背景として、個人輸入の手続の間に入る代行業者の広告に触れています。
原文で確かめる(1998年の通知)
医薬品等の広告に係る監視指導については、薬事法第66条から第68条までの規定に基づき実施しているところであるが、近年、新聞、雑誌、テレビ等の従来の広告媒体に加えインターネットが普及しつつあり、情報伝達経路の多様化、国際化が進捗している。また、医薬品等がいわゆる「個人輸入」により国内に輸入され、その輸入手続きに介在する輸入代行業者の広告の中にも医薬品等について取り扱われている状況が散見される。
薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号、厚生省医薬安全局監視指導課長通知)本文。法律名は発出当時の表記承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告を禁じているのは、今の薬機法の第68条です。名宛人(その条文で義務や禁止の対象になる人)は「何人も」、つまり誰でもです。
禁じられるのは、まだ承認や認証を受けていないこれらの製品の、名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告です。認証は、国に登録された機関が、基準に合っているかを確かめて認めることです。再生医療等製品は、人や動物の細胞に培養などの加工をして作る製品などです。
例
代行業をしていない会社や個人が、承認前の医薬品の名称や効能について広告をした場合も、第68条の対象になり得ます。名宛人が「何人も」で、代行業者に限られないからです。
第68条の内容は、『2-3 承認前の医薬品・医療機器などは、広告できますか?』で扱います。「何人も」が誰まで及ぶかは、『1-6 規制されるのは誰?』で扱います。
3つの条件の中身と、ネット上の表示についての厚生労働省のQ&A(2014年5月)は、『2-1 そもそも薬機法の「広告」とは?』で扱います。このQ&Aは、Q1とQ3で「個人輸入代行行為を行っている場合」を、Q5で「個人輸入代行を行うサイトを紹介・誘導しているサイト」を、それぞれ問いの中で名指ししています。Q5への回答(A5)は、『5-7 海外製品を扱う・紹介するとき、薬機法はどう関わる?』で扱います。
このQ&Aの正式な日付と番号は、平成26年5月22日 薬食監麻発0522第9号です。
医薬品にあたるかどうかの基準
ある品物が医薬品にあたるかどうかについて、第4の2は、判断の基準のありかを示しています。厚生省(当時)の通知(1971年6月)の中の「医薬品の範囲に関する基準」です。内容は『3-1 健康食品が医薬品とみなされるのはどんなとき?』のページで扱います。
原文で確かめる(第4の2)
2 医薬品の範囲
薬事法第2条第1項第2号又は第3号に規定する医薬品に該当するか否かについては、昭和46年6月1日薬発第476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の監視指導について」の中の「医薬品の範囲に関する基準」として、具体的な判断のための基準が示されているところであること。
個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第4の2。法律名・表題は発出当時の表記第4の2が引く通知(1971年6月)の表題は、厚生労働省の通知(2020年3月)の本文では「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」と書かれています。同通知の別紙が「医薬品の範囲に関する基準」です。無承認無許可医薬品は、必要な承認や許可を受けずに作られたり売られたりしている医薬品のことです。正式な日付と番号は、第4の2が引く通知が昭和46年6月1日 薬発第476号、厚生労働省の通知が令和2年3月31日 薬生発0331第33号です。
5. 個人輸入そのものは、今の薬機法のどこに書かれているのですか?
第56条の2第1項です。承認・認証を受けず、または届出(決められた事項を行政に知らせる手続)をせずに医薬品を輸入しようとする人に、厚生労働大臣の確認を求めています。
同じ決まりは、医薬部外品(医薬品より作用がおだやかな製品)・化粧品・医療機器・再生医療等製品にも準用(読み替えて使うこと)されています。
第56条の2第1項の対象は、承認や認証を受けず、または届出をせずに医薬品を輸入しようとする人です。この人は、申請書に書類を添えて厚生労働大臣に出し、その輸入について確認を受けなければなりません。申請書に書く事項と、添える書類は、厚生労働省令(厚生労働大臣が定める、法律の細かい決まり)で決められています。この決まりを、医薬品以外の製品に準用している条文は、第60条・第62条・第64条・第65条の4です。
原文で確かめる(第56条の2第1項)
同じ条の第2項は、大臣が確認をしない場合を定めています。第3項は、確認を受けなくてよい場合を定めています。
第2項第1号は、確認をしない場合の1つ目です。売ったり人に渡したり(授与)する目的で輸入するおそれがある場合として、厚生労働省令で定める場合を挙げています。
原文で確かめる(第2項第1号)
「個人的使用に供せられ、かつ、売買の対象とならないと認められる程度の数量を超える数量の医薬品の輸入をする場合その他の申請者が販売又は授与の目的で輸入するおそれがある場合として厚生労働省令で定める場合」
薬機法 第56条の2第2項第1号例
ある人が、国内で承認などを受けていない医薬品を、海外から取り寄せようとしているとします。その量は、個人で使う分で、売り買いの対象にならないと認められる量を超えています。この場面は、第2項第1号が、確認をしない場合の最初に挙げているものにあたり得ます。
確認を受けなくてよい場合の細目も、厚生労働省令に置かれています。輸入の確認の手続と、医薬品以外の区分への準用は、『5-7 海外製品を扱う・紹介するとき、薬機法はどう関わる?』で扱います。
この条文ができたのは、通知よりも後
第56条の2は、2020年9月1日に施行(法律の決まりが効力を持ち始めること)された改正で置かれました。この改正の施行前の版の本則(法律の本体)に、第56条の2はありません。
そのため、2002年に出された通知は、この条文に触れていません。通知が書いているのは、当時の許可の名前と、無承認医薬品の広告の2つです。通知が対象にしているのも、輸入そのものではなく、輸入の手続の間に入る事業者です。
改正法は、令和元年法律第63号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」です。令和元年12月4日に公布(成立した法律を、官報で国民に知らせること)されました。
6. 通知の「輸入販売業の許可」は、今の薬機法では何にあたるのですか?
今は、第12条第1項の許可(製造販売を仕事として行うための許可)の枠に収められています。輸入が「製造販売」の定義(第2条第13項)に含まれるからです。
今の薬機法の条文に「輸入販売業」という語はなく、通知は2002年当時の法律の題名と用語で書かれています。
よく見かける説明と、現行
よく見かける説明
医薬品を業として輸入するには「輸入販売業の許可」が要る。広告の禁止は「薬事法第68条」。
平成14年8月28日 医薬発第0828014号は、第1の3で「輸入販売業者」を定義し、第2の1・第2の2で「輸入販売業の許可の取得が必要」と書き、第4で「薬事法上違法な行為」と書いています。
現行
現行の薬機法の条文に「輸入販売業」の語は置かれていません。輸入は第2条第13項の「製造販売」の定義に含まれ、業として製造販売をするには第12条第1項の許可を受けた者でなければなりません。条番号の第68条は、現在も第68条です。
根拠:薬機法(昭和35年法律第145号)第2条第13項・第12条第1項・第68条。参照した版は版ID 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063、施行日 2026-05-21。e-Gov 法令検索の本則の全文に「輸入販売業」の語が現れないことを確認(2026-09-08)。通知側の用語は平成14年8月28日 医薬発第0828014号 第1の3・第2の1・第2の2・第4
今の薬機法では、輸入は「製造販売」の定義の中に入っています(第2条第13項)。製造販売とは、製造や輸入をした医薬品などを、売る・貸す・渡す(授与する)ことです。医療機器のプログラムを、通信回線を通じて提供することも含まれます。
原文で確かめる(第2条第13項)
第12条第1項は、医薬品・医薬部外品・化粧品の種類に応じた許可を受けた者でなければ、業として製造販売をしてはならないと定めています。そのため、業として医薬品を輸入して売るには、この許可が要ります。
製造そのものは、第13条第1項の製造業の許可にかかわります。販売については、第24条第1項が、薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として医薬品を販売・授与などしてはならないと定めています。この条には、ただし書(例外を定める部分)が置かれています。
承認・認証・届出・許可が、法律のどこに置かれているかは、『1-7 承認・認証・届出・許可は、何が違う?』にあります。
例
ある健康食品会社の広報担当者が、2002年の通知で「輸入販売業の許可」という語を見つけたとします。今の薬機法でこの語を探しても見つかりません。確かめるときは、第2条第13項の「製造販売」の定義と、第12条第1項の許可を見ます。
法律の題名も変わっている
通知の本文は、出された当時の法律の題名で書かれています。今の題名は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。題名を改めたのは、平成25年法律第84号です。法令番号(法律ごとの番号)は、昭和35年法律第145号のまま変わっていません。
古い記述と今の条文の対応は、『8-7 手元の解説は、いまの条文と合っている?』で扱います。改正の施行日の並びは、『8-6 2025年の薬機法改正は、いつから、どの条が変わる?』で扱います。
2027年5月20日に施行される改正の後の版でも、第68条と第56条の2の条文は、今と同じ文言です(e-Gov 法令検索で確認)。条番号から解説を引くときは、条文索引を使えます。
7. 通知が挙げた2つの違反は、今の薬機法ではどの条文と罰則にあたるのですか?
業として製造販売をするための許可は第12条第1項に、承認前の広告の禁止は第68条にあります。罰則は、第84条第2号と第85条第5号です。
どのルート(違反への対応の道筋)が動くかを決めるのは行政で、通知は都道府県知事に指導・取締りを求める形の文書です。
通知が「違反となる」と書いているのは、2つです。第2の2の注1は、無承認医薬品の広告を挙げています。注2は、輸入販売業の許可を受けずに輸入することを挙げています。ただし「輸入販売業」は当時の許可の名前で、今の条文にはありません(6.の節)。次の表2は、今の薬機法の側だけを並べたものです。
罰則の章(第十八章)は、違反した条文の番号で対象を書き、刑を定めています。法定刑は、法律が定める刑の範囲です。拘禁刑は刑事施設に入れる刑で、併科は拘禁刑と罰金の両方を科すことです。
| 違反したとされる | 罰則の条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第12条第1項 | 第84条第2号 | 3年以下の |
| 第68条 | 第85条第5号 | 2年以下の |
第84条第2号は「第十二条第一項の規定に違反したとき。」、第85条第5号は「第六十八条の規定に違反した者」と書かれています。法定刑は各条の柱書によります。参照した版は版ID 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063、施行日 2026-05-21。
例
ある会社が、許可を受けずに、国内で承認されていない医薬品を仕事として輸入し、客に売っていたとします。今の薬機法では、第12条第1項への違反が問題になり得ます(罰則は第84条第2号)。その医薬品の名前や効能をサイトで広告していれば、第68条への違反も問題になり得ます(罰則は第85条第5号)。
罰則のほかにも、行政の手段がある
罰則は、行政が動かすルートの一部です。薬機法の第十三章(監督)には、次のようなものが置かれています。
- 立入検査(役所の職員が施設に入って調べること)
- 廃棄・回収の命令
- 業務の停止・許可の取消し
- 違反広告についての措置命令(違反の中止などを命じる役所の命令)
- 第75条の5の2以下の課徴金(違反で得た売上などをもとに、国が納めさせるお金)
行政指導から刑事罰までの6つのルートの全体は、『6-1 薬機法に違反すると、どうなる?』で扱います。措置命令は第72条の5 措置命令、課徴金は薬機法の課徴金で扱います。罰則の全体は、『6-7 薬機法に違反すると、どんな刑罰がある?』にあります。
通知の「貴管下関係業者に対して、遺漏のないよう指導・取締りを行われたい」は、管轄する地域の業者に、漏れなく指導・取締りをしてほしい、という意味です。
行政指導(役所が、法的な強制力なしに協力を求めて行う指導)の定義と任意性は、『6-2 行政指導は、どの法律で決まっている?』で扱います。違反が見つかるきっかけは、『6-8 違反は、どうやって見つかる?』で扱います。
第84条と第85条は、2027年5月20日に施行される改正で変わります。改正法は、令和7年法律第37号です。表2に挙げた第84条第2号・第85条第5号の号番号は、e-Gov 法令検索の2027年5月20日施行版でも同じです。
理解の確認
「輸入代行業者と名乗っていれば許可は要らない」という説明は、通知の考え方のどこと食い違いますか?
通知が名乗りではなく、輸入の効果が誰に帰属するか(誰のものになるか)を見ている点です。第1の2は「輸入者」を、実質的にみて日本に引き取る貨物の処分権を持つ者、つまり実質的に輸入の効果が帰属する者と定義しています。第2の2の書き出し(柱書)も、輸入代行業と称していても、実態として輸入行為を行っているときは許可の取得が必要だとしています。(1) 輸入行為の形で許可が要るとされるのは、商品が代行業者の手を経て消費者に渡り、効果が代行業者に帰属する形だからです。
根拠:個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第1の2・第2の1・第2の2 柱書・第2の2(1)注2
通知は、代行業者であることを知らせる広告は規制しないとしながら、同じ文で、無承認医薬品の広告は違法だとしています。両者は何が違うのですか?
禁止の対象が、事業の種類ではなく品目だからです。第68条は「何人も」を名宛人として、承認を受けていない医薬品などについて、その名称・製造方法・効能・効果又は性能に関する広告をしてはならないと定めています。代行という事業を知らせる表示は、この対象に触れません。しかし、表示が無承認医薬品の名称などに及べば、同条の対象になります。第4の1は、次の場合には、名称を伏せ字にする・文字をぼかす・画像だけを示す場合でも、広告として取り扱うとしています。金額を示すなど顧客誘因性(客を引きつける性質)が認められ、商品の認知度や、添えられた写真・説明書きから特定の医薬品だとわかる場合です。
根拠:薬機法第68条(法令確認日 2026-09-08)/個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第2の2 柱書・第4の1
今の薬機法の条文には「輸入販売業」という語がありません。それでも、業として(仕事として)医薬品を輸入して売るのに許可が要るのは、なぜですか?
輸入が「製造販売」の定義の中に入っているからです。第2条第13項は「製造販売」を、製造をし、又は輸入をした医薬品などを、それぞれ販売し、貸与し、若しくは授与することと定義しています。そのため、輸入して売ることは製造販売にあたります。第12条第1項により、種類に応じた許可を受けた者でなければ、業として製造販売をすることはできません。通知の「輸入販売業の許可」は2002年当時の名前です。許可がなくなったのではなく、今は別の名前の枠に収められています。
根拠:薬機法第2条第13項・第12条第1項(法令確認日 2026-09-08、版ID 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063)/個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号)第1の3・第2の1
次に読む
- 1-9 医薬品や
化粧品を 化粧品を扱う会社が、海外の見本市で見つけた化粧品を、日本に取り寄せたいと考えたとします。輸入する とき、 何が 要る? — 輸入の 確認 (薬監証明)と 業許可 - 2-3 承認前の
医薬品・ 承認が必要な海外の医療機器を、日本で扱おうとしている会社があるとします。医療機器などは、 広告できますか? — 薬機法第68条 - 5-7 海外製品を
扱う・紹介する A社の担当者が、海外で作られたエクソソーム(細胞が外に出す小さな粒の一種)の製品を、自社のサイトで紹介しようとしています。とき、 薬機法は どう 関わる? — 輸入の 確認と 紹介サイト - 6-1 薬機法に
違反すると、 化粧品を扱うA社の広報担当が、社内研修で「薬機法に違反すると2年以下の罰則」と聞いたとします。どうなる? — 行政指導から 刑事罰までの 6つの ルート
- 個人輸入代行業の指導・取締り等について(平成14年8月28日 医薬発第0828014号、厚生労働省医薬局長から各都道府県知事あて)第1〜第4および別紙1〜3。本文は東京都が公開する医薬品等広告関係通知集(医薬品等広告講習会資料 第4章 表示・広告関連通知等)の6により確認 東京都保健医療局(2026-09-08 確認)
- 東京都 医薬品等広告講習会資料(医薬品等広告関係通知集 第4章 表示・広告関連通知等)東京都保健医療局(2026-09-08 確認)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第13項・第12条第1項・第13条第1項・第24条第1項・第56条の2・第60条・第62条・第64条・第65条の4・第68条・第84条・第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。参照した版は版ID 335AC0000000145_20260521_505AC0000000063、施行日 2026-05-21)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号。令和元年12月4日公布)による改正後・2020年9月1日施行の薬機法。第56条の2(輸入の確認)はこの版から本則に現れる e-Gov 法令検索(薬機法 2020年9月1日施行版)(2026-09-08 確認。版ID 335AC0000000145_20200901_501AC0000000063。改正法そのものの条文ページではありません)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 2027年5月20日施行版(令和7年法律第37号による改正後・未施行)第56条の2・第68条・第84条・第85条 e-Gov 法令検索(2026-09-08 確認。版ID 335AC0000000145_20270520_507AC0000000037)
- 薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号、厚生省医薬安全局監視指導課長通知。表題・法律名は発出当時の表記)厚生労働省 法令等データベース(2026-09-08 確認)
- インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について(平成26年5月22日 薬食監麻発0522第9号)Q1・Q3・Q5 厚生労働省(2026-09-08 確認)
- リスクが潜む個人輸入/医薬品等を海外から購入しようとされる方へ(あやしいヤクブツ連絡ネット)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 医薬品の範囲に関する基準の一部改正について(令和2年3月31日 薬生発0331第33号。別紙は昭和46年6月1日 薬発第476号「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」)厚生労働省(2026-09-08 確認)
- 薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号。法律の題名の改正を含む)。e-Gov 法令検索には同改正法そのものの条文ページが無いため、リンク先は改正後の薬機法の条文ページです e-Gov 法令検索(薬機法)(2026-09-08 確認)